(株)デオデオ
代表取締役社長

友則和寿
Kazutoshi Tomonori

さらに磨きのかかる接客力
スピードも兼ね備えた
サービス力で差別化する

デジタルAV商品がさらに複雑化していく中で、お客様が安心して、気持ちよく買い物ができる環境を提供するべく、得意の接客力にさらに磨きをかけるデオデオ。需要喚起に欠かせない価値提案型の売り場づくりにも一層力が入る。店頭にも大きな変化が予想される07年。そこで、いかに強みを発揮し、存在感をアピールしていくのか。デオデオ・友則和寿社長に話を聞く。

インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征

需要を掘り起こしていくことは
販売店にとっての大きな役割。
提案できる店づくりが重要ですむ

―― この1年で薄型大画面テレビの普及はさらに加速。地デジも12月1日からいよいよ全国へ拡がりました。リビングルームのテレビがブラウン管テレビから薄型大画面テレビへと変わることは、単なるテレビの買い替えにとどまらない、ライフスタイルの大きな変化を促し、そこに新たなビジネスチャンスも生まれてきていると思います。始まりました2007年、さらに、どのような変化を予想されますか。

友則氏

友則 実際にデジタル放送をご覧になると、その画面の美しさに心を奪われます。今後はこの美しい画面、大きな画面で何を楽しむかということに関心は高まることでしょう。クオリティの高い番組や映像、ゲーム・ソフトなど、コンテンツへの要望はますます高くなります。

また、大画面の迫力で得られる臨場感をさらに高めるために、音やリビングの環境に対して要望が出てきます。5・1chはもちろんのこと、リビングを映像を楽しむ空間として捉え、AVラックやソファーなども含めた周辺機器の需要は高まると思います。

加えて、その他のデジタル商品、例えばデジカメやムービーといったような商品とリンクさせることで、新しい楽しみ方やより高度な楽しみ方ができ、非常に幅広い商品、環境設備にまで波及することが期待できます。

―― 例えば、薄型大画面テレビを購入された方の多くは、映画やスポーツはもっと大きな画面で楽しみたいという潜在ニーズをお持ちです。ホームシアターシステムをはじめ、本誌でも「2WAYシアター」として提案しております、2つの大きな画面で楽しむプロジェクターの需要も、さらに伸長するインフラが整いつつあると思います。

友則 50インチの薄型大画面テレビを購入されたお客様は、部屋にテレビが入ると、「これは凄い」と皆さん笑顔をこぼされます。ところが2、3ヵ月もすると、その大きさが当たり前になってしまいます。

私の友人もそうなのですが、ある日、自宅に招いて我が家の150インチのスクリーンを見ると、「やはりこれがいいわ」ですよ。購入してしばらくは大型インチに新鮮に感動しますが、時間が経つとそれが当たり前になってしまいます。正に、2WAYシアターはそういうお客様に提案すべき商品システムです。われわれの商売のチャンスは、まさにそこにあります。

これは、先日フルハイビジョンの薄型テレビを購入されたお医者様の話なのですが、映像や音楽が好きな方で、広島でも地上デジタル放送が10月からスタートになりましたので、「大変きれいだ」と感激されていらっしゃいます。それで、「こんなに凄い映像なら、音ももっとよくしたい」とおっしゃるわけです。

これは、誰もが自然に感じることだと思いますが、ホームシアターというのをご存じないお客様もいれば、知っていても、何かスピーカー・システムを必要以上にスペースや経費面をおおげさに考えられていて、導入を諦めてしまっているケースも少なくありません。われわれがビジネスとして、もっとうまく仕掛けていかなければならないと思います。

―― ピュアオーディオのマーケットも含めて、団塊世代の動向が注目されていますね。もちろん、団塊世代は皆豊かだというわけではありませんが、団塊マネーだけでなく、学生の頃から流行を創り、トレンドをリードしてきた世代として注目しなければならないと思いますが、いかがでしょう。

友則 団塊世代は日本の高度経済成長を支え、いままで一生懸命に働いてこられたわけですが、これからはもっとゆっくりと、しかも、自分らしいオリジナルな生活をしたいという気持ちを持っていると思います。スローライフというコンセプトがもてはやされていますが、団塊世代は間違いなく、そのリーダー役になっていくと思います。

団塊世代の回帰が伝えられるピュアオーディオやホームシアターなど、われわれの業界としても、ビジネスをどのように結び付けていくかは、重要なテーマのひとつだと思います。

―― われわれの業界にはいろいろなところに成長の芽がありますね。

友則氏

友則 私は娘と一緒にビデオレンタルショップへよく行くのですが、『LOST』や『PRISON BREAK(プリズン・ブレイク)』など、今、米国のドラマが物凄く流行しています。新作はいつも貸し出し中で、借りるのも至難の業ですよ。このチャンスをわれわれのビジネスにどうにかして活かせないかと、思案しています。

借りていく大半は若い人ですが、家では恐らく小さなテレビで見ていると思います。できればもっと大きな画面で見たいと思っている。30インチクラスの薄型テレビなら十数万円で手に入るのですから、ホームシアターも含めて、これだけ活発に動いている人に対し、店頭からいかにアピールできるかだと思います。

スカパーさんでは、今「時代劇チャンネル」が大変人気を集めているそうです。時代劇をご覧になる方はお年を召した方が多いので、通常の番組案内とは別に、大きな文字の番組案内を有料で用意したところ、飛ぶように売れたそうです。

自分が価値を認めるものに対しては対価を惜しまない。こうした人たちに、いかに訴えていけるかを、もう一度、真剣に考え、取り組んでいきたいと思います。

―― 薄型テレビの登場により、店頭でも生活シーンの中で見せていくような価値提案も求められています。そうした中で、御社ではマリーナホップ店という新たな業態を展開され、大変注目されていますね。

友則 デオデオデザインセンターマリーナホップ店は、住をテーマにした新しいスタイルのお店です。ホームシアターは、テレビやDVDなどの単品だけでなく、ソファなどのファニチャーを含めたリビングの住空間としての提案が重要で、これまでの店舗ではなかなか十分なスペースが取れずにいました。この度マリーナホップにオープンさせた店舗では、リビングだけでなくベッドルームや屋根裏部屋、子ども部屋の改装などといった生活のあらゆるシーンを想定したご提案をさせていただき広島エリアのモデルルーム的存在として、たいへん期待しています。

米国シカゴに「Abt」という家電専門店があります。家電はじめ、AVソファやラックも販売しているのですが、そこで目に止まったのが、革のAVソファなどの特注品のコーナーなんです。70万円から200万円ほどするのですが、これが驚くように売れています。しかも、それらの高額な商品は受注生産で、2ヵ月から3ヵ月待ちで商売されているんですよ。

これは日本でもチャンスがあると思いました。先日オープンしたマリーナホップでは、実験的にこうした展開も行っています。

―― これからは、価格というキーワードの一方で、価値提案が求められてくる。そこはまさに、デオデオさんの真骨頂ではないかと思いますが、これからの店づくり、人づくりという点ではどういった点を重視されていきますか。

友則 数年前からとりわけ力を入れてきているのが「接客」です。この点については投資も惜しまず行ってきましたが、今後も変わらず力を入れていく方針です。

デジタル商品はますます複雑になりますし、しかもそれが、今後はつながってくる。お客様が商品選びにご苦労される中で、最適な商品をお薦めするのがわれわれのコンセプトです。そのためには、接客レベルをいかに上げるかが一番重要だと考えています。

全体でどうするというのではなく、社員一人ひとりひとりを見ながら教育を行っています。おかげさまで、家電アドバイザーという資格にも相当力を入れているのですが、今では全販売社員の4割強が資格をとり、恐らくこれは、業界でもトップクラスだと思います。さらに接客レベルを上げて、お客様に気持ちよく買い物していただきたいと思います。

これまで社員を中心に行ってきましたが、デジタルAV商品だけでなく、最近は白物商品もだんだんむずかしくなってきていますので、07年にはパートさんの接客力強化にも力を入れていきます。

また、需要を掘り起こしていくのも販売店の大きな役割になります。そのために接客とともに重要になってくるのが店づくりです。さきほどお話したマリーナホップも、まさにいま立ち上げたばかりですが、ホームシアターをはじめとするテーマに対し、本当の提案ができる店づくりに力を入れていきたいと思います。

友則氏

―― お客様からも大変ご評価の高い部分だと思いますが、さらに磨きをかけていくということですね。

友則今は、お客様の声をいかに早く吸い上げ、そのご要望にお応えできるか。そこでは同時に、スピードも求められています。そこにも力を入れて取り組んでいます。人間がやることですから、すべてがうまくとはいかないですが、徐々にそして確実にその効果は表われてきていると思います。

―― こうした取り組みは、デオデオさんにとどまらず、エディオングループ全体にも波及してくるのですか。

友則 エディオンの基本理念は「サービス型小売業」です。アフターサービスの充実はもちろん、接客でいかにお客様に快適なお買い物をしていただくかもサービスのひとつとなります。価格だけというのはエディオンの方針にはありません。お客様にご評価していただけるアフターサービス力、接客力、店作りの質をいかにスピードをもって高めていくのかがこれからのテーマといえます。その中で今、この3つのサービス力を上げていくことについては、3つの事業会社で共通テーマとして取り組んでいます。

デオデオでは、週に一度、社長報告会を行っています。そこには、役員や部門長がすべて顔を揃え、お客様からいただいたクレームや要望、お褒めの言葉がすべて報告されます。まだまだお叱りの声が多いですが、しかし、お叱りいただいているうちが華。お叱りいただけなくなったら、それは、お客様がわれわれに何も期待されていないということになります。お客様のひとつひとつの声に、よりスピーディーにお応えしていきたいと思います。

友則 デオデオは、07年に創業60周年を迎えます。この間、一貫して弊社を支えているのは『お客様第一主義』という経営理念です。これは今後も変わることはありません。同業他社の動きにあわせて何かをするのではなく、常にお客様にとっての私たちであるように考え行動することで、地域のお客様の支持を得たいと考えています。

業界では、生き残るのは3社であるとか4社であるとか言われますが、何社残るのかは市場の決めること。流通業は変化対応業であり、業界再編にしろ何にしろ、市場やお客様のニーズに素早く応えていく企業が結果的に支持を得て、長く存続し続けることになるのだと思います。

―― 今後も御社のさらなるご活躍に期待しております。本日はどうもありがとうございました。

◆PROFILE◆

Kazutoshi Tomonori

1951年2月28日広島県生まれ。広島県出身。74年東京理科大学理学部卒業、同年バローズ(株)(現日本ユニシス(株))に入社、77年富士ゼロックス(株)入社を経て、82年第一産業(株)(現(株)デオデオ)に入社。89年商品事業本部長、90年取締役営業統括本部長。その後、常務取締役・取締役副社長を経て、03年代表取締役社長に就任。現在に至る。趣味は映画鑑賞、旅行(遺跡巡り)