巻頭言 乾かない水 和田光征 「業界の建設的な発展に寄与する」、これは私どもの創業以来の社是で、私たちの仕事においてしっかりと遵守され、行動されている規範でもあります。 当然ながら若輩の頃は理解したつもりになっていた訳でしたが、先代からのその思想をずっと叩き込まれる過程で、真髄に近づけていったように思います。しかし、私に決定的理解をさせたのが松下幸之助著作集でした。 「業界が発展しなければ自社の発展はない。異業種から羨ましがられるような素晴らしい業界でなければならない」 私は業界とは何ぞやと自問しました。そして、業界の核は何か、それは商品であることを理解します。業界の建設的な発展とは、商品開発による市場創造であるとの結論へと立ち至る中で、私なりの業界認識をしました。 それは業界の「メーカー、流通」という認識でなく、「ユーザー、メーカー、流通」という発想と認識でした。つまり、ユーザーを業界認識として完全に取り込み、人間を市場創造の根幹に据えて考慮していく、それも時間軸を重視し、市場創造する。 そんな中で創り出した言葉に「明日の今日、昨日の今日」があります。「明日から考えることしか成功はない」が私の持論で、また行動の原点です。そのことは未来を予測し、徹底的に検証し、結論づけていくというもので時間軸の重大性が認識できます。 「あなたは百年後を予測できますか」といえば「できます」と傲慢にも答えます。何故なら百年後も人間が存在し、喜怒哀楽も日常の行動も不変だからです。 今、団塊世代云々と言われていますが、彼らを取り込む為に業界全体或いは産業界全体が時間軸で市場創造すべく、アクションを起こしています。的を射た「明日の今日」思想の業界が勝利を収めていくものと思いますが、私たちの業界も勝利者にならなければなりません。 『水は乾いた大地の生命の液である。大海の底から大地の内臓たる洞窟に流れ込み、そして枝分かれした水脈の傷から噴出しては低地に戻る。血液が海から脳に登りつめるのと同じだ。不断の運によって絶えず水は循環する』レオナルド・ダ・ヴィンチ 水は自然を動かす。水の動き、そのエネルギーは宇宙大系の中心にすえるとレオナルド・ダ・ヴィンチは言っています。 私は現在、業界も市場創造も、こうしたことと同様であると思っています。水こそユーザーが求める商品であり、そのことは活き活きとしたものでなければならないのです。そしてまたメーカーは右記の如き商品という水の創造する心臓部であり、販売店はユーザーの乾いた大地へ生命の水としての商品を届けなければなりません。 市場創造すること、そして、業界発展の根本にこうした自然の摂理をすえて認識し、考察することが、「明日の今日」思考にとって極めて重要であると思います。 そして、何はともあれ、市場創造を第一にユーザーを乾いた大地ではなく、いつも潤いのある大地へと誘うことが、人も羨む素晴らしい業界なのだと思います。 その為にも公明正大で、普遍的大道に業界人が立脚することこそ重要であろうと思います。
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