まず音を聴かせる
ハイコンポから始まるもの 各社の今後の展開は
―― ここで1つ押さえておきたいのは、今回の話題の中心であるハイコンポを含めたピュアオーディオの市場が、徐々に上向きになっているということです。これについて、どのくらいの時間軸のもとで、どうしていかれるのかということをお伺いしていきたいと思います。もちろんこれはユーザーとの兼ね合いや、あるいは流通の形態の問題もあると思いますけれども。
市川 われわれの歴史を振り返ると、ハイコンポ〜当時、私どもが初めに出したときはポイントコンポという名前を使っていましたが〜その第1世代が出たのが1992年頃でした。その後、プレスタという名前に変わってから、ハイコンポというように表現をしたと思います。そしてラピシア、それからエフという商品を出していきまして、すべて少しずつターゲットにする層を変えたのです。同じようなコンポだけれども、ある商品では比較的高い年齢層、次の商品では学生さん、さらに次は女性層といった形でシリーズを出していきました。 小宮山 われわれとしては、基本的にハイコンポを強化していきたいと考えています。エシュールというのを昨年出しましたけれども、その際、Kシリーズをベースに発展型を考えていって、最初にアンプの部分だけをまずつくったのです。その部分だけのベースでいろいろな評論家の方々にご意見を伺いながら。
ただ、これは発展性という意味ではある程度閉じた世界なんですね。ですから一方で発展型の、例えば欲しい機能を追加できるような、バリエーションを持たせる形態。そういうものも、いわゆるハイコンポの世界で考えていきたいと思っています。 そしてもう1つ、ピュアオーディオというところに関して言いますと、私どもはレシーバー、サラウンド系のものは、欧州向けに出したものがありますが、欧州でも非常にピュアの高まりがあるという当社の販社からの声が非常に強く、サラウンドとピュアを切り替えられる機能を持たせたものを発売します。 価格帯によっては、他社さんでも同様のものはありますけれども、当社の場合はローエンドの機種にそういう機能を搭載しています。5・1chも7・1chでもそういうセットがあって、ボタン1つ、リモコン1つでピュアモードにも変えられます。こういった機能を持たせて、ピュアの市場の掘り起こしを国内外でやっていきたいと思っています。 ブランドのこだわりで新たなる商品展開を
―― トリオブランドの商品を記念モデルとして出されましたね。あれはいかがでしたか。 小宮山 私どもがもくろんだ予定台数は超えて販売できました。期間限定という前提の商品ですから、店頭に展開しての売り方はしませんでした。電話でお問い合わせいただくか、あとは当社のホームページからご注文をいただく方法だけです。
小林 当社の場合は、商品づくりそのもののスタンスは全く変えていません。ただ、音の良さはもちろんですが、使いやすさとか発展性といった特徴は、その時その時のニーズに合わせて出していっています。当分は24ビット96ヘルツの、要するにPCからCD以上の音源を再生させることができる、ここのところに商品や販促を集中させて取り組んでいこうと思っています。しばらくの間は、ここに徹底的にこだわります。 佐倉 私どもでは、あまり時間軸の先の話を明らかにはできないのです。でも、私どもでハイコンポカテゴリーに入るウエストボロウのシリーズがしばらく途絶えておりまして、それを今年9月くらいから、再度、違った形で発表させてもらうというつもりではおります。その先のことについては、今のところは分かりません。 鹿野 当社では、3月にSystem501という、幅280ミリ、奥行き250ミリの商品を出したばかりなので、まだこれから市場の反応をつかむ時期だと思っています。 価格至上主義では終わる 専門商法がポイント ―― 鹿野さんのところでは、スピーカーもいい製品を出されていますね。
鹿野 おかげさまで、SS-AR1はご評価いただいています。お恥ずかしい話ですけれども、スピーカーとしては久しぶりに1本およそ90万円という価格帯のところで出させていただきました。こういったものは、もちろん大量に売れるわけではないですが、やはりそういうお客様にすぐ反応してもらえるという実感もあります。こういったものから今回のハイコンポまで、もちろん対象になるお客様は違うとは思いますが、やはりある意味では原点に帰って、本当に音に親しんでいただきたいという思いです。それをどう伝えるかということを、徹底してやりたいと思っています。 ―― 皆さんの現状とこれからについてご発言いただきました。ありがとうございます。次には、店頭の問題を考えてみたいと思います。
例えば山口のジョイフルさんは、基本的に定価販売というスタンスで販売して、成功しています。オーディオもシアターもやっていますね。あそこでは、たとえばご夫婦で来たときに、店の人が説明をしたり、視聴室で音を聴いたり画を見たりするんですけれども、そのあと店の人は全部引くんですね。店には子供用のスペースもあって、お子さん連れであってもご夫婦だけにしておくことができるんです。それで2人だけで自由に機器を触ったり視聴したりしながら、「どうする?」となるわけです。買おうか買うまいか、どうしようかと。それで15分ぐらいたつとだいたい定まってきて、「いかがですか?」と聞くとだいたい決まるそうなんです。 これを「お客様タイム」と言いまして、しっかりとご説明した上でこういうシチュエーションとか、タイミングをつくることによって、お客様も納得し、満足された上でご成約に至るわけですね。 また一方では、ホームシアターをやっておられる名古屋のネクストさんなど、いろいろな意味で非常に上品な店の展開をしているところもありますね。そういうようなお店が、やはりここへ来てオーディオの展開などされていますよね。 今求められている専門店の形というのは、ジョイフルさんやネクストさんといったお店のような売り方ができるところではないかと思うのです。そういう新しい形の専門店は、結構あるんですね。 往々にして専門店というと、昔からずっとやっているところがメインになって、そこを大事にする戦略は多いと思います。しかし昔ながらの店というのは影響力がやや弱まっていますよね。徐々に差が開いていますから。 そして、やはり資金力のある大きな店こそ、もっとお客様が家族で来られるような演出をしてもらいたい。そういう意味での専門商法というべきやり方があると思うのです。 価格とかポイントといった価値が先行してしまうと、たたき売られてしまって、ハイコンポの寿命などはすぐに終わってしまいます。そんなふうに終わらせないためにも、専門商法を展開できる店を、たとえばわれわれも応援したり、育成したりしていきたい。メーカーさんとしても売る場所をしっかり決めて、断固とした姿勢でやっていくというようなことをしないと、必ず値崩れを起こしてしまいます。 経済誌でも書かれていましたが、大手量販の中には過激なところもありますよね。まだ戦争状態が続くと思います。そんな中にあっては、とにかくこういうハイコンポのような提案ものは、本当にじっくり、じっくり、しっかり売っていかないと、マーケットができていきません。そこは忍耐をして、売り方も、販売店への入れ方も、少し考えていく必要があるのではと思います。 新しいタイプの専門店
量販店にこそ展開したい 音を体験していただく場づくり
佐倉 さきほど言われたジョイフルさんは私も1度行ったことがあるんですけれども、大きいお店ですよね。ホームシアターのようなかなりの金額のものを売るのだったらそういう売り方でやれますけれども、ハイコンポのように10万円から20万円のものを、お客さんを15分座らせて2人で話をさせてというわけにはなかなかいかないですよね。 鹿野 そういう意味でも、専門店ではないディーラーさんの存在は非常に大きいですよね。まさにそこでどう見せるかということを考えていかないと、伸びないのではないでしょうか。もちろん大変なことですけれども。 ―― そういう意味では、量販店の中でも店によっては郊外型とか市街地にあるとか、そういうところである部分は専門化を図っていこうというような意見は聞いています。 市川 販売の規模で言いますと、メーカーさんによって、売れたというふうに評価するか、まだまだだというふうに評価するかは違うと思いますが、私どもはオーディオメーカーですから、オーディオの商品しかありません。ですからいまだにカートリッジもありますし、ターンテーブルもある、CDプレーヤーもラインナップを持っていまして、アンプもある、スピーカーもあるという状態です。 ―― 音を聴いていただける場づくりというのは必要ですよね。専門店、量販店にかかわらず、ユーザーに聴いていただくための地道なプロモーション活動をとにかく続けていくことが肝心だと思います。 |