ヤマハエレクトロニクスマーケティング(株) 関口 博氏 売り場づくり、人づくりで 国内のオーディオ、ホームシアターマーケットに新たな光明が見えてきた。DAPや薄型テレビの爆発的な伸張で、ユーザーの中に音楽やシアターサラウンドを楽しむ下地ができ、音楽配信や放送などコンテンツを送り出すインフラも整ってきた。感性にこだわりをもち、お客様に訴えるマーケティングを展開、この秋からさまざまな新製品を連打していくというヤマハにおいて、ヤマハエレクトロニクスマーケティングの新社長に就任された関口氏に、今後の取り組みについてを伺った。 インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征 感動をお客様に味わっていただくには ―― このたび関口さんは、ヤマハエレクトロニクスマーケティングの社長にご就任されました。まずは、抱負をお聞かせいただきたいと思います。 関口 ヤマハは今年の春、新たな経営方針を発表しました。会社全体のドメインを再整理し、音・音楽に係わる事業がもともとヤマハの強みですから、そこを括って「The
Sound Company」と名付けました。楽器・音響・音楽ソフト、AV機器、サウンドネットワーク、半導体、という括りでやっております。Soundに係わる分野というのは当社のコア・コンピタンスであり、そこから今後の成長性をつくり上げるということを内外ともに明示してやっていくわけです。 ―― 国内において、最近のAVを含めた音まわりの状況をどのように見ていらっしゃいますか。 関口 我々のビジネスが今後発展につながるチャンスは、4つあると思います。 ―― ホームシアターについて御社は、専用室に構築する本格的シアターから、YSPでもっと手軽に楽しめるシアターまでさまざまな提案をして来られました。テレビが大画面・高精細化するとともに、地上デジタル放送でマルチチャンネル、高音質が当たり前の環境になってくると、テレビの音まわりにはもっと大きなビジネスチャンスがあると思われます。 関口 アメリカだけでなく欧米や中国富裕層市場も含めて捉えると、ホームシアター環境はポピュラーですが、日本の場合は大画面テレビに対するホームシアターの装着率は低く、日本のお客様にしてみればホームシアターは特別なものだという思いがあるわけです。 ―― AVアンプを中心としたコンポマーケットについては、どのようにご覧になりますか。 関口 今年は光ディスクのブルーレイやHD DVDといったところに対応するインターフェイスの仕様がグレードアップしてきて、そこを軸に再活性化するだろうと思います。サラウンドフォーマットも、インターフェイスフォーマットもバージョンアップし非常に大きな話題になって、ここでまた需要に弾みがつくだろうと思います。 ―― ここ数年間の苦戦は、フォーマットが固まらないといったところに原因がありました。そのフラストレーションがここにきて解消され、今まで眠っていた需要が年末に向けて目覚め、マーケットが立ち上がって来そうです。 関口 新しい光ディスクに伴うサラウンドフォーマットということと、テレビ側と音側とのインターフェイスが共通化できることによって、お客様にとっての操作性が各段に上がること。そういったところでの需要層の拡大、そこがご販売店からのお客様への提案としても活性化してくると思います。お客様からすると、使い勝手ということではまた一段と敷居が下がるということになるのではないでしょうか。 ―― かつてAVアンプ、ホームシアターを立ち上げたというかなりの部分を、御社のシネマDSPでの、販売店さんとの活動が担ったと思います。 大澤 このところテレビ売り場の方や、AVに関わりをもって来なかった方に向けた講習会をしています。今やお客様の方が知識レベルが上がったことに対して、テレビ売り場の方も従来のままでは応対できない。しかしそこに対しての啓蒙が、まだ十分ではありません。そういうところに対して、私どもが過去、シネマDSPの体験ショップということでやっていた経験を活かしています。 ―― 特に日本人は昔から、感性で評価する人種だと言えます。オーディオはもともと白物より付加価値が高いという認識がされていましたが、今や白物の方が高い価値付けをされていて、オーディオが価格だけで売られているという状況にあります。それをひっくり返さないといけません。 関口 かつてのハイファイも急に立ち上がったわけではなく、いろいろなものがまとまってきてああいった需要になっていったと思いますし、今まさに当時のハイファイが確立する前段階にあった状況と似てきていると感じます。しかし、お客様が音に対して関心をもつ状況というのはいろいろありますが、それが需要にきちんと結びつくようなメーカーの努力などがまだ足りないのではないかと感じられます。提案とか、啓蒙といったことをもっとやっていかないと、ハイファイの市場はできていきません。 ―― その端的な例が今の2chオーディオに現れていると思います。先ほど関口社長がおっしゃったとおり、DAPなどによって間口がどんどん拡がるとともに、ユーザーはプレーヤー本体よりも高価なヘッドホンで音を聴いています。そこにどういうメッセージを伝えるか。DAPをもっといい音で聴くということが、いずれユーザーをセットステレオ、ハイコンポを含めたコンポーネントへと導いていくための予備軍をつくるはずです。 関口 ハイファイについては復活のインフラが整ってきています。ヤマハでは、まず定着に時間がかかるスピーカーからということでソアボを出しました。そして次はいよいよエレクトロニクスです。ソアボを十分に鳴らせるような商品を秋からデビューさせていきます。 ―― 今回関口さんが社長に就任された、ヤマハエレクトロニクスマーケティングについて伺いますが、今後の課題といったことはどのようにお考えですか。 関口 業界を見渡すと、音もののビジネスは多様化しています。その中で、今のヤマハのスタンディングポジションをもう少し明確にして、我々が考えているコンセプトをより明確に市場へ価値伝達することが重要だと思っています。それは先ほど申し上げたように、音をベースにした物づくりと、感性をお客様に伝えられるようなマーケティング活動であり、それを4つの領域で展開することです。 ―― 力強いお話しを伺うことができました。ありがとうございました。 ◆PROFILE◆ Hiroshi Sekiguchi |