校條亮治氏

パイオニアマーケティング(株)
代表取締役社長

校條 亮治
Ryoji Menjo

体験イベントを全国展開し
ダイレクト・コミュニケーションによってお客様の感動を導く

プラズマテレビの第8世代にあたる新商品「KURO」を発表したパイオニアは、AV専業メーカーとしての立場をあらためて明確にし、お客様の価値の創造と訴求を図る新たなマーケティング展開をすすめてきた。新商品においては、全国で実施される先行体験イベントをはじめ、お客様と感動を共有するダイレクト・コミュニケーションを展開していく。その意気込みについて、パイオニアマーケティングの校條社長に伺った。

インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征

商品を訴求するだけではない
お客様が感動を味わえる空間
これを提供することを目指すのです

先行体感イベントで
新商品を徹底訴求

―― 御社はこのたび、新しいプラズマテレビを発表されました。非常に注目しております。

校條 このプラズマテレビ「KURO」は、我々パイオニアがポジショニング変更をしたということにおける第一弾商品です。我々は、商品を通じてお客様に感動をどう伝えるかということを第一義としています。ですから従来のようなマーケティングをせず、感動を伝えきるためのマーケティング、コミュニケーション活動をしていきます。具体的には、ダイレクトコミュニケーションを展開したいということが基本的なスタンスです。
まず、テレビ宣伝ということでなく、ウェブや専門誌を使ったコミュニケーションを強化していきます。そして真っ先に申し上げたいことは、我々にとっては30数年ぶりにキャラバンを立ち上げ、体感キャンペーンとして17都市でイベントを行うことです。
校條 亮治氏これは発売後に商品が店頭に並んで全貌が明らかになる前、先行イベントとして行うところがポイントです。今回の新商品がどういうものかということを、流通の方やお客様にダイレクトに伝えようというのが主旨なのです。ウェブで受付けを開始しておりますが、ぜひ1万人以上の方々に体験していただきたいと思っております。
イベントで商品に触れていただくことにより、ご来場いただいた方々がオピニオンリーダーとなって、本物の映像、音とは何かを多くの方が知られる機会が増えていけば幸いだと思います。またさらに年末に向けては、こういったことのミニバージョンとして、合展や個展を各支店でできるところでやっていただきたいと思っております。
この体感イベントではプラズマテレビがメインになってはおりますが、新しい映像の世界、そしてそこに音を加えた世界を味わっていただくことも目的のひとつです。当社の新しいホームシアターも味わっていただけますし、また一方で本当の映像と音の組み合わせとはどういうものかということをご理解いただくよう、評論家の方々に日頃のお考えを語っていただき、プロの目から見たAVの楽しいあり方が伝わればと思います。単なるメーカーの宣伝ではない形でお楽しみいただければ幸いです。
ハイエンドな「ホームシアター」や「サラウンド」というのはこんなに素晴らしい世界なのだということを徹底的に体感していただこうと、高級スピーカーを使った展開も致します。また機器を設置してどんな部屋になるかということを具体化して、リビングルームでの映像空間をイメージしたブースも作ります。各ハウスメーカーさんやインテリアコーディネーターさんのご紹介のお客様にも、ぜひ見ていただきたいと思います。
こういったことが体感キャンペーンの狙いですが、パイオニアにとっては30何年ぶりのキャラバンということで、その昔は私もこういったものを企画して全国をまわった経験があります。原点回帰ということで、ダイレクトコミュニケーションとは何かということを、AV専業メーカーにしかできないやり方でやっていくつもりです。
こうしてまず体感キャンペーンでダイレクトコミュニケーションをとる、それからウェブや専門誌を通じて知っていただき、店頭でも触れていただく。このようなマーケティング手法で目指しているのは感動体感ということです。売り場づくり、お客様づくり、人づくりという3つを今回のマーケティングのベースに置いていますので、売り場づくりでは体感ブースを徹底的に展開し、お客様づくりでは体感キャンペーンによってファンを拡げていくのです。
こういうお客様は、メーカーが自らつくらなくてはなりません。ただ刈り取るだけではいけませんし、そこから拡がり得るという確信をもっています。私どもがAV専業メーカーとして業界を活性化していくためには、ただ店頭で価格訴求をするだけではいけないと思います。
私どものメンバーだけでなく、販売店の皆様が価値をきちんと伝えてくださるところに、ひと味違う販売のあり方があるだろうと思っています。これをメーカーの責務としてお伝えしたい。それが今回の第8世代プラズマの、ダイレクトコミュニケーションのシナリオです。

店頭ではシステムも提案
「黒」のブースで価値表現

―― 「パイオニア・プレミア・フェスタ'07」につきましては、お客様への発信について音元出版もお手伝いさせていただいておりますが、お客様が非常に高い興味を抱いていらっしゃることが伝わってきています。

校條 昔は私もステレオコンサートといったようなことをやって回りましたが、その当時「ステレオを聴くのは不良の始まりだ」などと言われたものです。ところが、集まって来られた方々は新しいお客様であり、そこからオーディオのブームが始まっていったわけです。
我々が今回体感キャンペーンを行うのもそこです。今回のターゲットユーザーは30代から40代、どちらかというと都会型の方たちです。だからといって、こういった体感イベントを都会ではやるけれども、地方のお客様に対応できないということではいけません。それならば商品を持って出ようということになりました。これについては、地方のご販売店と協力して、微力ながら地方経済を活性化したいという思いもあります。

―― イベントは8月末からいよいよ始まりますね。大変楽しみです。そして発売となった後、店頭での展開はいかがでしょうか。

校條 まず申し上げたいのは、この商品はテレビではなく、感動体感を提供するシステムとしての提案をしていくということです。新しいAVアンプやブルーレイプレーヤーをシステム化した4つのホームシアターをつくり、これをベースに店頭展開していきたいと思います。
店頭では、我々が価値表現できるコーナーがなければいけません。アドバンスモデル発売の際、すでに私どもの価値をしっかり伝えていただくようご販店様とお話をさせていただき、ご理解賜ったお店では理想の店頭展開ができるようになりました。これは、おかげさまで成功だったと見ております。アドバンスモデルは予定通りの販売台数をクリアし、なおかつ1店舗あたりの回転率は、圧倒的に高くなっているのです。また販売店さん側からの利益率から見れば、圧倒的に上がっているわけです。
ご販売店からすれば、私どもが提案した内容をご理解いただき、それによって本当に価値をわかっていただける方に買っていただいた。そして、お客様には非常にお喜びいただきました。新しいお客様がそこに定着され、新しいビジネスモデルができたということです。
今回はブランドネームも「KURO」にしましたので、徹底的に黒をベースにしたブースを用いた店頭展開を図り、高級感のあるお店づくりをお手伝いしようと思います。
「seeing and hearing like never before」というのがキャンペーンワードですが、このメッセージとブランドネームの「KURO」を出し、バックパネルから黒で統一した演出で、お客様の映像空間、音像空間をつくっていこうということなのです。

校條 亮治氏―― 店頭のスタッフについてはいかがですか。

校條 店頭スタッフとしてパイオニアの名称の入ったコスチュームを着せた、パイオニアの技術説明員を店頭に出します。単なるヘルパーということではありません。これは全店展開とはいかないのですが、その代わり販売店様でも徹底的な研修を行います。

AV専業メーカーとして
打ち出した新たな戦略

―― 御社はAV専業メーカーとしての立場を打ち出し、新たなマーケティング戦略を図っておられます。

校條 当社はこれまでポジショニング変更をいろいろ論議しましたが、ようやくそれができ、今事業戦略の整備を行っているところです。さらに商品戦略がその下に来るわけですが、なかなか一気に変われるわけではありません。それでも、プラズマディスプレイとしてPDPー5000EXをこだわりの商品に仕上げました。あとは販売マーケティングの戦略をどうするかというところになります。
国内のマーケティング戦略において、パイオニアはともかくAV専業メーカーに戻ります。それに基づくチャネル戦略の変更も行います。PASS店とは、我々がつくった特約店制度、認定店制度なのですが、今およそ300法人の皆様がいらっしゃいます。今回、そのPASSの方々の中からも、ご自身で費用を出されて、自立した、日本で初めてのAVショップの連合体である「PASS会」が設立され、その旗揚げが行われたところです。当面は180法人くらいからのスタートですが、我々としても非常に喜ばしいことです。
そこにはパイオニアも、メーカーとして参画することになりました。もともとPASS店のPASSとは「パイオニア・オーソライズド・スペシャリティ・ストア」なのですが、今回の連合体の名称も「PASS会」と言います。中身は違いますが、これまでパイオニアとともにやってきたのだから、名前は変えたくないというご意向があってのことです。
「PASS会」では4つの研究会をつくりまして、1つは「オーディオ販売研究会」。これはあくなきオーディオの世界を強化、再活性化させようというものです。
それから「ディスプレイ販売研究会」。単なるテレビに飽き足りない方々やそこを目指す新しいお客様をつくっていこうということで、ディスプレイとはどうあるべきかというメーカー側の考え方と流通側の意見を合わせながら、商品研究をし、売り方や使い方の開発もするというものです。
それから「インストール研究会」。私どもはハウスメーカーさんと長い間協業をやらせていただきましたが、ホームシアターがこれから増えていく中で、PASS会の皆さんと一緒に市場づくりをやっていこうと。ハウスメーカーさんは頂点に何社かありますが、市場の構成比で圧倒的に多いのはローカルな工務店さんであり、我々だけでは開発できないところをPASS会の皆さんと一緒に商品提供やインストールをして、新しくつくりあげていくつもりです。
それから「経営研究会」といって、販売手法や次世代の方々を育成し、お店の経営について支援するという成り立ちです。この4つの研究会を置いて、それぞれを「PASS会」の副会長さんが担っていただくという形で活動します。
「PASS認定店」というのはあくまでも我々の認定制度であり、今回の「PASS会」は似て非なるものです。自立した会として、日本で初めてAVショップの連合体ができあがるということなのです。昨年あたりから論議を始め、有志の方々で世話人会を開いて、ようやく設立のはこびとなりました。ここではメーカーとご販売店が対等の立場で、健全なAV市場の発展のために力を尽くそうという崇高な設立憲章もできています。

―― 今回の先行体験イベントによるダイレクト・コミュニケーション展開と、こういった活動を始めとした新たなマーケティング戦略により、AV市場の価値を問う御社の姿勢を大変頼もしく感じております。新たな販売店連盟も発足され、これからがますます楽しみですね。本日は誠に有り難うございました。

◆PROFILE◆

Ryoji Menjo

1947年11月22日生まれ。岐阜県出身。66年パイオニア(株)入社後、パイオニア労働組合中央執行委員長(専従)兼、パイオニア関連労働組合協議会議長、パイオニア(株)CS経営推進室長を経て04年6月パイオニア(株)執行役員CS経営推進室室長に。05年7月パイオニアマーケティング(株)代表取締役社長に就任、パイオニアの原点に立ち返り改革を推進。趣味は、旅行、音楽、歴史。