エプソン販売(株) 田場 博己氏 既存の常識を壊す新商品で映像の楽しみ方を提案 年末商戦目前。ホームシアター関連商品が例年以上の盛り上がりを予感させているが、期待のかかるプロジェクター市場に一石を投じる新商品がエプソンから登場した。映像の楽しみ方をひろげ、新たなユーザー層へのアプローチを図る新商品の販売戦略をはじめとするプロジェクター事業への取り組みについて、エプソン販売・常務取締役の田場氏に伺った。 インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征 既存の「常識を壊す」 ―― 御社が今年投入されたプロジェクター新製品がいよいよ店頭に並び、話題となっています。まず、田場さんご自身のプロジェクター事業との関わりについて、経緯をお聞かせください。 田場 当社のバックグラウンドは時計ですから、液晶プロジェクターも時計に使う液晶技術から発展したものだと言えます。液晶の表示も、エンジンも、全てそこから進化したものです。 ―― プロジェクターを手がけているメーカーはさまざまですが、御社はそういった多数のメーカーにパテントの供給などされていますね。またプロジェクターのホームユース市場を活性化させるということで、さきほどのELP-3000で参入され、EMPーTW10で革命的な低価格を実現しました。そして今回の新商品へとつながっていくわけですが、マーケットを建設的に拡大させようという御社の行動の中に、哲学を感じます。 田場 当社がいちばん当社らしいところとして、歴史的にも既存価値破壊型ということが挙げられると思います。 新たな市場をつくる ―― EMP-DM1につながる流れの発端となったEMP-TWD1には私も大きな衝撃を受けました。しかし、さらにもっと驚いたのは、その後のTWD3、そしてEMP-TWD10、DM1へと進化した時間の短さです。特にDM1は、新しいマーケットをつくる市場創造型の商品として注目しています。 田場 おっしゃるとおり、まさに市場創造ということを意識して活動をしています。その中で、これまでプロジェクターユーザーだった方なら新商品の価値に反応してくださると思いますが、プロジェクターとは全く関係のないところにいた方に対していかに効率よく告知していくかということが、市場の創造を左右していくと考えます。 ―― 今回の新商品、プロジェクターの新しい楽しさを提案するEMP-TW10、EMP-DM1そして本格シアター向のEMP-TW2000販売戦略についてお聞きします。 田場 まず告知ということが一番大きいと考え、今年はテレビCMを展開します。以前EMP-TWD1の時もテレビCMをやりましたが、やはりそのタイミングでぐっと伸びましたので今回も期待しています。 ―― 市場でも大変期待の大きな新商品ですが、店頭における反応はいかがでしょうか。 田場 店頭にはまだ出たばかりですが、今のところ予想に反してD10の比率が高く、DM1とD10のお客様は半々といったところです。やはりお店に来られる方は、ある程度プロジェクターをご存じという方で、D1やD3と同じ価格で画質の解像度を上げたD10のパフォーマンスに惹かれていらっしゃるようです。それに対してDM1はプロジェクターをご存じないという方がターゲットになりますので、テレビCMの始まる11月以降に認知が広がると期待しています。 あらためて取り組むべき ―― もうひとつの新商品であるEMP-TW2000について伺います。この商品は、通常以外のチャネルでも展開していくのでしょうか。 田場 D10やDM1のような商品は気軽に色々と楽しんでいただくものですが、それに対してTW2000は本格的にホームシアターを展開するためのマニアックな商品ですから、これは専門店やデベロッパーなどを中心に開拓していく予定です。 ―― 私は2wayということを提唱していますが、テレビが大型化して、一般のお客様は40インチクラスのテレビ画面でホームシアターができると満足しています。そこにもっと大画面、本格的ホームシアターの魅力を訴求して、テレビとプロジェクターの2wayを推奨する必要があると思います。建築士会のメンバーである設計士さんが抱えるお客様の3割くらいの方がホームシアターを欲しがるそうです。新築マンションのモデルルームでも、そういう問い合わせが増えているそうです。まだまだ2wayの需要はあるはずです。 田場 いくらテレビが大きくなったとはいえ、一般家庭に100インチのテレビというのはなかなか無理があります。そういう意味でも2wayというのは現実味があると思いますね。テレビに対してプロジェクターが不利になるところ、たとえば輝度だったり、無線への対応であったり、そういうところでもっと特徴が出せると思っています。常識を壊す会社として、どんどん挑戦していきますのでご期待ください。 ―― 田場さんご自身は、非常に人間好きな方であるとお見受けします。物づくりや戦略についても、人間からモノを考えるという風に拝見しているのですが、ご自身ではどんな哲学をお持ちなのでしょう。また、映像や映画というものについて、どんなお考えをお持ちですか。 田場 私自身は、いつも前向きに考えたいという思いでいます。後ろ向きでいても何もいいことはありません。いろいろな局面でつらさはあっても、これが将来役に立つと考えるようにしよう、と思っています。また当社は常識を破りたがるということを申し上げましたが、手離れのいい商品をつくりたがる、ということも言えると思います。つまりメンテナンスのいらない商品、壊れにくい商品ということですね。そこについては私自身も大きな自信があります。 ―― これから年末に向けて、いよいよ商戦がスタートします。あらためて新商品にかける意気込みのほどをお伺いしたいと思います。 田場 今回新しい商品を提案させていただきましたが、プロジェクター市場を広げようという意気込みでやっております。これまでになかった市場をぜひつくっていきたいと思いますので、よろしくお願い致します。 ―― 御社、そして田場さんご自身の哲学に触れ、新商品を始めとするプロジェクターにかける思いを伺うことができ、大変期待しております。本日はありがとうございました。 ◆PROFILE◆ Hiromi Taba |