永島一男氏

オンキヨー(株)
オーディオ営業本部国内営業部部長

永島 一男
Kazuo Nagashima

いい音=原音質を提供する商品で
店頭対策も十二分に強化し
付加価値販売を実践していく

オーディオ専業メーカーとしての一貫したポリシーをもち、常に原音質を追求し続けるオンキヨー。最近では、オーディオPCという新たなる提案や、次世代対応のAVアンプへの早期展開など一層の活躍ぶりが話題となっている。ここで同社のオーディオ営業本部 国内営業部の永島部長にご登場いただき、年末年始の商戦をふり返るとともに、今後に向けた展開について、さまざまな角度から伺った。オンキヨーが目指す付加価値展開と、その確かな展望が明らかになる。

インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征

オンキヨーではどんな商品も低価格帯へは踏み込みません
ブランドを付加価値で守ります

―― まず年末・年始商戦の状況をお聞かせいただけますか。

永島 私どもでは、全体でほぼ前年並みをキープという結果となりました。当初の予算配分からはだいぶカテゴリーは変わってしまい、非常に苦しい商戦でしたが、数字的には年度の達成はできると見ております。
我々が考えている以上にマーケットの変化は速く、やはりテレビまわりのシアターシステムが今非常に重要視されています。それに対する手も打ってきたのですが、それを上回るスピードでこのカテゴリーが拡大しました。特に年末年始は非常に大きなうねりが来たと思います。

永島一男氏

―― シアター商品では、どのあたりの価格帯が伸びたのでしょうか。

永島 AVアンプに関しては、我々は前年比200%ほどを達成しました。台数はそこそこですが金額が上がり、我々にとってもいい傾向であると言えます。また2・1チャンネルのパッケージシアターが大きく引っ張り、ミニコンの台数を上回る結果になりました。日本ではパッケージシアターはなかなか伸びず、我々もそこまで行くとは思わなかったのですが、これがテレビまわりの入門機と位置付けられてきたのかと思います。
2008年度は北京オリンピックをめがけて各社のハイビジョンテレビが出てきますし、いよいよブルーレイの時代になります。ブルーレイは画質だけでなく音質もフルスペックというところが期待されますので、上期のターゲットはそこだと思います。

―― 流通対策につきまして御社では、専門店、量販店、インストーラーとそれぞれのカテゴリーを明確にした方法をとってこられました。

永島 だいぶ以前からそういう対策をとってきましたが、昨年は専門店様とインストーラー様を量販店様のカテゴリーから明確に分離しました。今までカスタムインストーラー様のところを中心にやってきましたが、それにプラスして専門店様への対策を強化していこうということで、全国の約100店様を含め「カスタムインストール課」として統合 したという第一歩を昨年踏み出しました。2007年度に半分、2008年度にもう半分のお店様を移管しまして、こういった体制が完了することになります。
また、量販店様へはまったく違ったアプローチになります。その一例として、大手量販店様には専門のスタッフを派遣してフェアを行います。1日コーナーをいただいて、例え ばスピーカーでいい音を出すといったテーマでお客様を説得していくことを地道にやってきましたが、これをもっと拡げていきたいと思います。
機器をただ置いておくだけではいい音は出ません。いい音の出る状態へ、各お店様の展示も見直させていただきたいと思っています。我々も、他の各社さんもいいコンポを出しておられるのに、店頭でいい音が出なければ意味がありません。電源まわりからスピーカーケーブルなど、社員も協力させていただいていろいろと変えていきたいと思います。
今当社では独自に勉強会を毎月行っていますが、まずメーカーの人間が識らなくては何もできません。その上で販売店様にも講師を招いて、「いい音とは」というところをじっくりとご説明していきます。たとえミニコンであっても違いがあるということを、お店の方からお客様に説明していただかなくては我々の努力が伝わりません。お店の方へ、そしてお店の方を通じてお客様へ「いい音=原音質」をお伝えすることは我々の使命だと思っていますから、そこは地道な努力でやっていくつもりです。

―― 商品についても差別化の対策をとられているのでしょうか。

永島 当社のインテグラについては、全世界モデルで別格です。日本とアメリカで展開していますが、これをヨーロッパに拡げ、アジアも本格的にやることになります。
またオンキヨーブランドでは、ミニシステムでも単品コンポーネントでも、シアターシステムでも、しっかりしたものを出していこうという信念を持っています。
オンキヨーブランドは低価格帯へ踏み込まないということを再確認する意味で、昨年も価格設定させていただきましたが、おかげさまで売上げも落ちませんでした。これは当社の基本方針でもありますし、オンキヨーブランドの価値を守っていきます。しかしそれには付加価値が必要です。
2008年度、当社では国内営業に目を向けた商品がかなり出て参ります。昨年はマイナーチェンジが多かったのですが、今年はフルモデルチェンジということになります。2008年は付加価値をつけた高価格帯で、多種多彩なモデルを出していきたいと思っています。
また、年頭所感や中間報告でトップが申し上げたように、最終的にはオーディオPCというものをやっていきたいという思いがあります。しかし我々はPCをやるのではなく、PCのアーキテクチャーを利用しながら本当のオーディオをやりたいということです。「高音質」、「快音質」、「原音質」というように明確なポリシーを持ちながら、要はマスターの音源をしっかり再生できるような装置を開発することなのです。そのひとつの手段がオーディオPCであり、目指すところは皆同じです。

―― オーディオPCは一昨年誕生し、昨年もう一段こなれた形で出てきました。

永島 今年は春にオーディオPCを出します。これが一昨年から続いたオーディオPCの第三弾ということになります。
昨年と違うのは、ソーテックが一緒になりましたので、基本的にはPC売り場ではソーテックが営業するということになり、オーディオ売り場はオンキヨーが営業することになります。そしてPC売り場に適したもの、オーディオ売り場に適したものという区別も商品に対しては行います。ただしオーディオPCに関しては、ソーテックが扱う商品もオンキヨーブランドで出します。
とにかくオンキヨーが関わるものについては、音のクオリティを維持していく。PCであってもそれは同じです。その最高峰にあるのがオンキヨーブランドのオーディオPCだということになるのです。

―― 音楽配信が恒常化してきますと、これをかつてのチューナーによるエアチェックと考えることができます。我々がFM放送を楽しんだと同じようにこれを取り込んでいけるはずだと考えておりましたが、御社ではまさにそこを追求されました。

永島一男氏永島 ブームになってから始めては遅いので、先行投資は8年程前から行っていました。それがいよいよ商品化されて、現実にはそういう形になりつつあります。しかし一方でCDがなくなるわけでもなく、音楽を楽しむ方法は多種多彩になっていくのではないでしょうか。お客様本意で好きな方法が選ばれると思います。レコードを聴く方もいれば、オーディオPCにレコードの音源を取り入れる方もいる。そういう様々な方法に対して商品を提供していくということです。大量生産して大量に売るという時代は終わりました。我々にはオーディオしかなく、小回りがききますから、そういう意味でうまく対応できると思います。
また一方で、テレビメーカーさんとのコラボレーションをしていかないと難しい時代でもあります。リンクという囲い込みがありますから、それと音はどうしてもかかわってきます。それも今年のテーマであり、かなり思い切ったものを出すつもりです。そういった意味で、音まわりではかなり取り返せるのではないかと思います。
オーディオはちょっと曲がり角に来て、それが年末年始の商戦ではっきり出てきたという気がします。それは、音楽配信がある程度中心に来たということです。そこの対策をとっておかないと、メーカーはある時突然困ることになってしまいます。我々としては、配信であれCDであれ、原音質ということが基準です。音楽をつくったもとのところに戻って、それを再生できる装置を提供するということです。
もっともアンプ、CD、スピーカーというのはオーディオ装置の基本だと思っていますから、そこははずせません。CDであれレコードであれ、お客様が求めておられるものは、オーディオメーカーとしてつくり続けていく責務があります。

―― 昨年はAVアンプをフルラインナップで出され、各社さんの中で一番早い立ち上がりとなりました。動きのよかったモデルはどのあたりでしょうか。

永島 やはり一番出たのは605シリーズですが、これは価格帯からみて当然とも言えます。しかし驚いたのは805や905シリーズの動きで、我々が国内であまり積極的にやっていなかった価格帯ですが、かなり出ました。ここは2008年度も引き続きフルラインナップで出していきたいと思います。

―― メーカーはこれまでメガ量販に翻弄されてきた感がありますが、メーカーがしっかりつくったものを、しっかり販売するという方向性は強調するべきだと思います。専門店チャネルを構築し、商品をしっかりと供給する。そこで売る人も安心します。

永島 流通さんもいろいろな変化がありますが、消費者は変わりません。そこに合致するものを出していけばいいのではないかと思います。そして、出しただけで売れる時代は終わりました。専門店様に対しても、オンキヨーブランドも含めて、これからインテグラを中心に販売していこうと考えています。
また幸い、スピーカークラフトやモンスターケーブルといったブランドもありますから、これを再構築していきたいです。特にモンスターケーブルはHDMIの長尺ものがいよいよ出てきますし、スピーカークラフトも含め、高額商品も展開していきたいと思います。

―― 御社は一方で、ソリューションを提供されるというスタンスを昨年から明確にとられていますが、今年の方針はいかがでしょうか。

永島 基本的にはマルチルーム提案を行いますが、これはある程度できてきました。セキュリティ分野は今のところまだですが、照明はルートロンさんとやっており、これをもっと拡げていきたいと思います。我々には輸入専門の部門があり、これを強化して国内営業の中に取り込み、コントロールしながら露出度を上げていくつもりです。いろいろなメーカーさんとやらせていただく可能性もあります。
またオンキヨーブランドについては、昨年からブランドイメージコーナーを提案しています。それまでは商品個々にPOPをつくったりしていましたが、ここでは基本的に、5点くらいの展示グッズについてオンキヨーを前面に出し、すべてのものを統一していきたいと思います。オンキヨー=音がいい=高い、つまり音を求めたら価格は高くなるということであり、その場所ではいい音が出ていなければなりません。ここはきっちりとやっていきます。いい音ということをアピールできるデモ用のCDも当社で用意して、必ずこれを再生していただくということも昨年からやっております。そして専門店様に対しては、さらに付加価値の高い展開をしていきたいと思います。

―― 薄型テレビがこれだけ普及し、さらに薄さを競う方向へきています。こうなると物理的に、テレビのスピーカーに音のよさを求めるのは無理があります。しかし映画など見ていますと、いくら画面が大きくても音が貧弱では面白さが半減してしまいます。年末年始にシアターシステムが売れたのも、お客様がそこに気づかれてきたからではないでしょうか。

永島 シアターシステムも、音のよさをきちんと訴求すればお客様にわかっていただけます。壁掛けテレビが主流になれば、スピーカーを置くスペースも生まれてきますから、シアターシステムはもう一度見直されるのではないでしょうか。居間はテレビを中心に構成されますから、そこに置かれるスピーカーはデザインも含め、新しいテイストを持ったもの、訪れた人に自慢できるようなものが求められると思います。これを昔のままの感覚でつくってしまってはだめですね。色も形も吟味して、そこにまったく新しい価値を提供すれば、きっと受け容れられるのではないでしょうか。

―― 居間は文化基地であり、「ハッピーファミリーの文化基地」というのが私の主張するコンセプトです。ここから考えていけば、いい画、いい音は当然、そして個々の部屋へも拡がっていきます。

永島 テーマを持って、市場を創っていかなくてはなりません。10年先であってもこうしたいという、イメージを想起させるものが必要でしょうね。そういうものをいろいろと見せて、触らせる場づくりも重要です。

―― 今後のテーマもたくさんありますね。御社の姿勢を非常に頼もしく感じていますし、これからのご活躍も楽しみです。ありがとうございました。

◆PROFILE◆

永島 一男 氏 Kazuo Nagashima

1950年7月7日生まれ、神奈川県出身。1974年立教大学経営学部卒業、同年オンキヨー(株)入社。以後国内営業部門を中心に勤務。1998年東京営業所長から鳥取オンキョー(生産部門)へ。2003年鳥取オンキョー社長に就任。2005年国内営業部へ復帰、現在に至る。