巻頭言

「CHANGE」

和田光征
WADA KOHSEI

アメリカ大統領予備選が佳境にはいってきたが、中でもオバマ、ヒラリー両候補の戦いは誠に白熱していて、フィクションよりも面白くなってきた。
 
ヒラリー本命説が当初はあったが、ここにきてオバマにますます勢いがついているが、ヒラリーの巻き返しも注目もので目が離せない。
 
選挙戦を見て、アメリカという国は多人種国家であるということを再認識し、とりわけ黒人のウェイトの高さに驚かされる。黒人であるオバマは当然ながら多くの黒人の支持を受けており、同時に人種を問わずに若者達からの圧倒的な支持をも受けているようだ。戦争がからむ共和党やいわゆる大人達への拒否反応、或いは世界からの嫌われ者になってしまったアメリカから、好意をもたれるアメリカへのCHANGEを訴えているのだろうか。
 
先般、アメリカの首都であるワシントンDCでオバマがヒラリーに圧勝した。首都で黒人のウェイトが60%を超えていることに驚いた。都市部にいく程ヒラリー支持かと思ったが全く逆で、圧勝を続けるオバマは、今や黒人達や若者達の英雄になっている。
 
インターネットを介して個人から集められるオバマの選挙資金は、軽く1千億円を超えており、その資金が宣伝費として爆弾のように投下され、資金面でもヒラリーは大差をつけらている。支持者の一人一人が提供している資金だからこそ価値があり、その差が勝敗を決するといっても過言ではない。
 
私は人種差別論者ではない。しかし、黒人達の永い苦痛の歴史を思い、彼らがキング牧師や偉人達の犠牲によって勝ち得た公民権、その極としての選挙権の行使を、今、オバマという彼らのスーパースターに向けることの意味を少なからず考えているのではないかと思ってしまうのである。
 
そして、黒人達の全米での人数の多さは静かな連帯を生んでいるのではないか。CHANGEの標識にそんなことも感じてしまうのは私だけだろうか。
 
後半戦にはいって、多人種はどう動くのだろうか。もちろん、人種の事など問題外というのが大統領だろうから何も起こり得ないかも知れないが、多人種、とりわけ白人達は心理的にもそうではないだろう。
 
その昔、インドシナ半島でアメリカの当時のダレス国務長官が「ドミノ理論」を提唱し、防共戦争を続け結局はベトナム戦争で敗北した。しかしオバマが大統領になった暁には、アメリカの白人優位社会からドミノ倒しのように黒人や多人種主導の社会になるのではないかという懸念が、白人達の深奥に生まれているのではないだろうか。一方、黒人やヒスパニック等は地位向上や雇用の促進等を通じて、豊かさを求め始めるだろう。
 
これらは私のうがった見方かも知れないが、いずれにしてもいろいろなCHANGEが考えられる大統領選になることは言うまでもない。その結果によって、アメリカばかりではなく世界中でCHANGEが起こることは必定であろう。

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