巻頭言 それでも勝とう! 和田光征 百年に一度といわれる世界同時不況、前号で「新しい時代」をタイミングよく掲載したが、まさかその数週間後に米国発の金融恐慌が始まり、世界をアッという間に覆い尽くしてしまうとは予想だにしなかった。 あれから1カ月、世界中が混乱の只中にあって企業倒産、雇用不安、消費の減退が加速し、出口が見えない状況に陥ってしまった。 日本だけとればバブル景気破綻による失われた10年の経験があり、多少影響は少なかったようであるが、しかし輸出立国である限り、俄かに影響を受け、世界の不況に完全に取り込まれてしまった。とりわけ製造業の雄、トヨタショックは否が応でも決定的となり、その後は転がり落ちるように日本経済も悪化の一途を辿っている。 まさに未曾有の不況の到来である。 クリスマス商戦や年末商戦が始まっているのに困ったことである。とりわけ、10月に入ってから消費行動が突然低迷し始め、そのうねりは加速し、世界はもとより日本も包み込み、3月決算がどうなるかによってさらなる不況への突入が心配されている。 業界ジャーナリストとして私は、40年にわたって、オイルショックや変動相場移行、プラザ合意、バブル崩壊等々によって起こった不況を体験してきたが、その殆どは国内が大変であっても輸出で稼ぐという図式で乗り切ってきた。いわゆる国内問題的要素が強かったように思う。 今回のような世界同時不況になり、輸出そのものが円高の影響を受け、なおかつ米国はもとより世界の消費低迷のあおりを受けるということは全くの未体験領域であり、ここは業界の発展の為に衆知を結集して乗り切らねばならないと決意しているところである。 こうした時代は企業の優劣が顕著になりやすい。時代のせいにして後ろ向きの経営をしていたり、対応を怠ればひとたまりもない。 今こそ動物商法の時代である。 動物商法とは積極商法である。対して植物商法がある。消極商法といわないまでも植物のようにそこに生えている、店舗を構えて客待ちをするという商法である。一方、動物はどんな状況下でもその空腹を満たす為に風雨を避け、エサを求め自分のものにしてしまう。 つまり、こうした時代はお客様の元へ出かけることである。お客様とお店の距離を最短にして顧客にすることである。動物のようにお客様を見つけ出すことである。要は、お店の規模であったり立地であったりという違いはあるが、まずはベクトルを動物商法に合わせることであり、それがこうした時代を乗り切る過去からの教えである。 何はともあれ勝たなければならない。同業者と傷をなめ合っている場合ではなく、勝たなければならないのである。お客様のふところに飛び込んで、しっかりとお客様を識らない限り、何も起こらないのである。 この不況は来年も続いていくだろう。動物商法を完璧にとったとしても安泰ではないが、しかし行動を起こすしかないのである。 私たちも市場創造のため積極的に業界発展に寄与していく覚悟である。
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