巻頭言

景気は必ず良くなる

和田光征
WADA KOHSEI

百年に一度の世界的経済危機に対して、各国が国家をあげて景気対策に取り組んでいる。米国では議会が以下のような内容の景気対策法案を可決、オバマ大統領が署名し成立、即実行に移された。

<米国の景気対策法案の骨子>

  • ・総額7870億ドル(72兆5000億円)
  • ・歳出増で約64%、減税で約36%
  • ・バイ・アメリカン(米国製品を買う)条項維持、国際協定順守で適用
  • ・350万人の雇用を創出

以上のような内容だが、2009年後半に景気下支え効果が表れてくることは間違いない。64%を占める歳出の内訳を見ると、橋や道路、配電綱の刷新に1200億ドル、グリーン・ニューディールなどに380億ドル、医療保険や雇用保険の拡大などの安全網に1930億ドルとなっている。36%を占める減税では勤労者向けが柱となり、新車や住宅の購入への減税、設備投資の償却加速や教育費の減免策なども盛り込まれている。これがいよいよ動き出した。

同時に2月13日からローマでG7(主要七カ国財務省、中央銀行総裁会議)が開かれ、14日に共同声明を発表した。その骨子は次のとおりである。

<G7共同声明の骨子>

  • ・各国は内需拡大、雇用創出のための財政、出動を機動的に行う
  • ・各国が例外的措置を含めた金融市場安定化策を行ってきたことを確認
  • ・経済回復にならない保護主義の台頭に強い懸念
  • ・人民元は切り上げが望ましい

G7が経済危機を封じ込める姿勢を示し、今後は各国が実行と成果の為に緊急に動き出すこととなる。世界経済の低迷は2009年中は続くと明言もしており、予断を許さない。

しかし、世界経済危機克服のために主要国が一致して動き、スピードを上げて対応すれば、必ずや成果を生み出すものと確信する。百年前の危機では各国が一致して動くこともなく、結局は世界対戦を引き起こしている。

米国もしっかりと動き始めた。この項で参考文献にした朝日、読売、日経、産経、東京各新聞の論調は総じて歓迎しているものの「有効な危機脱出は見通せていない」とか、「米国は旧来のばらまき」、「オバマの財政政策は綱渡り」と必ず否定要素を散りばめている。いい記事も終わりに近づいてマイナス志向になると、読者はその内容全体を否定的に理解してしまう場合が多い。今回の経済危機における各紙の景気や企業情報の発信スタイルは、民を失望の淵へと引き込む典型となり、消費行動をマイナスへと極端に誘導してしまったといえよう。この点は由々しき問題である。

私は、世界が実体経済主義に動き始め、必ずや来年後半には景気の下支え効果が表れ始め、経済は復活へ向かって動き出すと確信している。故に米国の景気対策法案やオバマ大統領の行動力、発言やG7、G20などのエポックに対しては記憶にしっかりと止めておきたいのである。同時にハゲタカファンドの悪なども永遠に忘却してはならないと思っているし、覇権主義についても国家はもとより、企業も持ってはならないと強く記憶に止めている次第である。

それにしても、日本国政治の緊張感のなさはなげかわしい。

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