- ヤマハらしい商品を幅広くご提案し
お客様に選ばれるブランドを目指す
- ヤマハエレクトロニクスマーケティング(株)
- 代表取締役社長
-
- 鶴見照彦氏
Teruhiko Tsurumi
「4本の柱」戦略で、提案性の高い商品を連打するヤマハ。この秋も「薄型TVオーディオ」「iPodオーディオ」カテゴリーで多くの新商品を発表、“全方位・フルラインナップ戦略”を展開していく。ヤマハエレクトロニクスマーケティングの鶴見社長が、年末商戦に向けた新製品と戦略の全貌を語る。
価格を超えた価値の提供で
広範なお客様を獲得していく
「バリュー・フォー・マネー」の
新しい価値提案を目指す
── 秋以降の商戦に向け「iPodオーディオ」「薄型TVオーディオ」のカテゴリーにあたる多くの新製品が登場しました。まずはその背景についてお聞かせください。
鶴見ここ数年何度もご説明させていただいていますが、私どもは「iPodオーディオ」「薄型TVオーディオ」「AVコンポーネント」「Hifiコンポーネント」の『4本の柱』という戦略を展開しております。この中でも、「iPodオーディオ」と「薄型TVオーディオ」の2つは“事業成長の柱”ということで今秋以降さらに強化し、ヤマハファンの拡大と元気なブランドのアピールを目指していきたいと思います。
そのための方策として、具体的には3つの考え方があります。まず、お客様に新しい価値をご提案できる商品を発売すること。2番目は、お客様の裾野拡大を目指し、ゼネラル商品群を拡充していくこと。3番目には、価格以上の価値、バリュー・フォー・マネーを追求していこうということです。
これに向け多彩な新商品を発売していきますが、同時にカラーバリエーション戦略を打ち出し、エントリー層からマニア層まで広範なお客様をカバーしていくつもりです。さらにその他のカテゴリーでもヤマハらしい商品を拡充し、今まで以上にお客様に「選ばれるブランド」となることをテーマに事業展開して参ります。
ヤマハらしさについてですが、現在全社をあげて「The Sound Company」を旗印に、音のクオリティはもちろんデザインも追及しています。デザインは社内の研究所で行っていますが、楽器に通じるモチーフを使ってヤマハらしさを出していきたいと思っています。
これまで当社は特に高級、中級価格帯のところを得意としていましたが、エントリーのお客様も含めて、より広範に商品やサービスをご提供したいという思いが強くあります。そういった中で昨年以降、システムスタイルでお求め安い価格、簡単セッティング、簡単操作で使える商品の拡大を図っております。
景気の低迷もありますが、昨今は消費者の皆様のモノの買い方がずいぶん変わってきました。新製品であっても、従来と同じようなものでは買い替えにはつながりません。新しい価値、しかもバリュー・フォー・マネー=価格を超えた価値をご提供できなくてはなりません。
またホームシアターについてはまだ普及の度合いが低く、大画面テレビに対する付帯率はおそらく1割程度に止まっているのではと思います。設置性や使い勝手が複雑で二の足を踏まれていた方や、ご家庭で奥様やお子様の賛同を得られないケースが多いと聞いておりました。
そこで今回「薄型TVオーディオ」のカテゴリーでは、テレビ前に設置できる薄いスピーカーや、サブウーファーと一体になったアンプといったご提案もしております。これらは新しい価値であり、設置性の障害を取り除きながらより幅広いお客様にホームシアターを楽しんでいただきたく企画した製品群です。
買い方やニーズに合わせた
全方位・フルラインナップ戦略
── 「薄型TVオーディオ」では、“全方位・フルラインナップ戦略”がうたわれています。
鶴見最高音質をご要望されているお客様にはYSPの最高峰「YSP-4100」をご提案しており、単品と専用ラックをご用意しています。より簡単設置というところでは、ご好評のポリフォニー。これまでブラックだけでしたが、新たにホワイトバージョンと、65インチサイズのテレビまで対応したYRS-2000も加えました。さらにすでにテレビやラックをお持ちのお客様に、低価格で手軽にホームシアターを後付けできる“YHT”という新シリーズを立ち上げました。
フルラインナップ戦略というのは、ホームシアターを薄型テレビと同時購入されるのか、あるいは薄型テレビを一旦購入された後、音が物足りないということで改めて購入されるのかという売り方を想定した分け方でもあります。YSP、YRS、YHTとそれぞれにお客様は違うということを実感していますが、これだけのラインナップであってもお客様を取り合うということはなく、多彩なニーズに対応できるものと考えております。
これらは基本的にテレビ売り場でご紹介するのが正攻法と考えており、私どもの大きなテーマのひとつです。今、展示什器をご用意したり、販売店様がご使用になっているラックに、ご相談の上で設置させていただいたりという形での方策を考えています。また各販売店様に、商品説明や研修などを通じて新製品をご紹介しています。さらに、販売員様がいない場合であってもお客様にアピールできるようなPOPもご提案しています。
── 「YSP-4100」は専門店さんにとっても重要な商材ですね。またホワイトバージョンのポリフォニーも素晴らしいと思います。
鶴見専門店様にとっても量販店様にとっても、薄型テレビ購入顧客というのは大きなターゲットになります。「YSP-4100」はもともとAVアンプをお持ちのお客様にとって、家族と共有するセカンドシステムにもなり得ます。また、2004年のYSP第一号機をお求めになったお客様の買い替え需要にもお応えするのではと思います。
YSP-4100はさまざまな機能を搭載しており、それをお客様にも販売員様にも理解していただくためにプロモーション映像をつくり、「YouTube」にもアップロードしたところ、発表から1ヵ月の時点で再生回数が1万5000回を超えるまでになっています。このように大きく注目されており、専門店様の中でもこの商品を扱っていただくことが変化のきっかけにもなるのではと思います。
白いポリフォニー(YRS-1000W)は、私どもも大変期待しており、展示を始めたところ、店頭でも大きな存在感を発揮しています。白いラックを要望されていたというお客様の声も多くあり、いよいよ今回他社様に先駆けて商品化を実現できました。お客様第一主義の商品として、今後の展開も楽しみになります。
── YHTシリーズは、中〜小型テレビでもサラウンドを楽しむということを提案でき、非常に興味深いと思います。
鶴見今回の新作ラインナップでは、テレビのサイズ別でもお客様がご検討いただけるような商品構成になっております。YHT-S400はスピーカー部分が幅800ミリであり、40インチから32インチくらいのテレビにもうまく訴求できるものと考えます。
今回、アンプの中にサブウーファーが内蔵される形としましたが、基本的には設置性のよさを考慮したものです。これは我々の方から、ウーファーは必ずラックの中に入る形にして欲しいということで事業部とやりとりを致しました。FMチューナーも内蔵し、「サブウーファーレシーバー」と呼ばれる新しいジャンルをつくるものとなりました。
また昨今は、ゲーム機の性能が大きく進化しております。AVメーカーとしても一歩踏み込んだアプローチができると考え、新製品にはゲームモードを搭載しました。私どもは伸びる市場に特化して事業を展開していく姿勢でおりますが、ゲームもまさにそういった市場であり、今後も期待しております。
YHTについて、メインはテレビ売場ですが、ご販売店様の方からお声をかけていただくケースもありゲーム売場での展開も想定しております。S400は薄型テレビまわりで大々的に展開し、S350の裾野を広げる意味でも、ゲーム売場にも置かせていただくことでいろいろなお客様に対してアピールできるチャンスが生まれると考え、ぜひやっていきたいと思います。
カラー展開とワイヤレスで
新たな楽しみを提供
── 「iPodオーディオ」にも、多くの新製品が登場しています。
鶴見このカテゴリーを本格的に展開して2年目になりますが、今年はラインナップを拡充しました。今回私どもは、デザインと、iPodをお手元においてシステムで音を遅延なく聞けるというワイヤレス技術の製品をご提供しています。音、デザイン、技術で新しい提案をしていきたいと思っています。
また不景気の中でも明るさを提案していこうとカラー展開を大きく実施しており、MCR-040というモデルでは全10色を用意しました。一般ルート向けの5色と当社の直販サイト限定の5色です。大型店様に関しましては、店頭での5色展開をお願いしておりますが、多くのお店様にご賛同いただいています。
こういったシステム商品は、残念ながら年率8掛けのペースで縮小しています。しかしiPodやウォークマンといったデジタルオーディオプレーヤーまわりは、比較的安定しており、私どももここでの裾野拡大をぜひ狙っていきたいところです。
MCRのシリーズは、CDプレーヤー搭載でiPodやUSBオーディオもつながるといった内容で、昨年発売しました330、230という商品と同じコンセプトです。そしてTSXシリーズは、デジタルオーディオプレーヤーを中心とした使い方となります。これは昨年からのクロックラジオの機能をさらに追求し、より視認性が高く目覚まし機能もiPodと連動させており、デザイン性を求めたものとなっています。
いずれのシリーズも、手元でiPodを操作できるワイヤレス対応モデルも用意しております。言葉で表現するよりも一度使っていただきますと、その便利さや面白さにご納得いただけます。いかに店頭で認識していただけるかが大きな課題であり、ここについての訴求はぜひ積極的にやっていきたいと思っております。今POPや什器を用意しているところです。
── 低音再生も本格的ですね。
鶴見今回は、低音をかなり意識しています。特に若いお客様は低音を大変重視されますので。MCRにはヤマハのアクティブ・サーボ・テクノロジーが搭載されており、豊かな低音感があります。TSXにもサブウーファーが搭載されており、低音が充実しています。
当社全体に、モノづくりもサービスも顧客第一主義でという考えが根底にあります。商品開発も顧客第一主義で、お客様が何を求められているのかを考えながら行っているのです。私どもセールスアンドマーケティングカンパニーとしては、提案型商品の価値をお客様にいかにお伝えしていくか。これをとにかく100%の力を発揮してやることが使命です。
私どもは、お客様の“期待値超え”を目指してバリュー・フォー・マネーの商品をご提供していきます。先ずは価格に対してお客様の信頼感を取り戻していきたく願っております。発売後半年くらいで小売価格を何割も下げてしまうようなことは、最初に買ってくださったお客様を裏切る行為だと思うからです。お客様にとって私どもは、どれだけ安くなるかを問われるのではなく、ベネフィットを問われるメーカーでありたいと思っております。
── いよいよ年末商戦です。
鶴見ヤマハらしいアイテムを開発し、販売することを通じ、お客様に選んでいただけるブランドを目指します。新しい価値をご提案し、裾野を広げていくと共に、価格を超えた価値をご提供するバリュー・フォー・マネーを実践していきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。