遠水  清氏

基本からもういちどしっかり取り組み
オーディオをご提案できる体制をつくる
(株)ヨドバシカメラ
販売本部
店舗企画担当
遠水 清氏
Kiyoshi Tomizu

ヨドバシカメラでオーディオビジュアルの店頭づくりをリードする遠水氏。地デジ完全移行まで商材の中心となるテレビからホームシアター、加熱するヘッドホン、話題のPCオーディオなど2010年に注力するべきテーマについて、話を伺った。

 

PCオーディオを今年スタート
試聴コーナーを構築していく

最大商材のテレビから
ホームシアターの展開は図る

── オーディオビジュアルの店頭づくりにおいて、今後注力されていくテーマをお伺いしていきたいと思います。

遠水 2011年の地デジ移行までは、とにかくテレビとレコーダーが売れるのは間違いありません。ですから、テレビを中心としたインドアのつながる商品を展開していこうと考えています。

 

── 昨年からエコポイント制度が実施されテレビは台数がかなり動いてはいますが、同時に価格下落の動きも激しくなっています。

遠水氏遠水たしかにテレビの値崩れは激しいですが、これは競争です。時代の商品こそ競争が激しくなるのはある程度仕方ないものと思います。32インチクラスは非常に値ごろ感が出て、買い替えにぴったりですし、エコポイントもつきます。このクラスのテレビを購入されるお客様に、いくらお薦めしてもインチアップをされる方は少ないでしょう。ここは地デジ普及のために、ある程度の覚悟は必要です。こういう商品は、エスカレーター前など目立つ場所で大々的に島展開し、販売を加速します。

そして付加価値を訴求できる40インチ以上のウエートを上げるためには、まず品揃えの充実です。特に大型店舗の場合はフルラインナップを展開し、上級クラスの画質や機能の違いを訴求できるような店頭展開が必要なのです。壁面を利用したメーカーブースで、インチ差による画面の違いとラインナップの違いを両方見ていただける展示にしています。

またエコポイントについては、昨年末から店頭で申請サポートを積極的に行うようにしました。売り場は大変ではありますが、これもお客様サービスの一環であり、顧客獲得のためのひとつの手段ということです。こういうことをやってくれる店ということでも口コミにつながれば、有効ではないかと思います。

そんな中でホームシアターが昨今ではかなり認知されてきました。ヤマハさんのYSPやデノンさん、パイオニアさん、ボーズさんなどの商品がおかげさまで年末もかなり盛り上がり、ホームシアターの間口がだいぶ広がったと感じますね。

またラックシアターに関しては、昨年末からマルチメディアAkibaをはじめとする店鋪に新たな什器を投入して注力しています。今までテレビ売り場の展示では、ラックの上にあるテレビのプライスカードやPOPで商品が見づらく目立たなくなっている状況でした。そこでこの際、ラックシアターもテレビも両方目立たせることにこだわった展示台を新しくつくったのです。

つくりは非常にシンプル、要するにテレビラックを載せるためのステージであり、バックに板壁をつけました。テレビやラックシアターが目立つよう台は薄いグレー、壁は白と薄い色合いで、台の正面部分にPOPをつけます。こうして展示位置が高くなったことで、ラックシアターが目に留まりやすくなったのです。

これをお客様の導線に沿って通路側に6台、コーナーの奥に6台と2カ所に設置し、その裏側には各メーカーさんの大型シアターを設置しました。40インチ前後のテレビに照準を合わせていますが、ラックシアターをテレビと同時購入していただけそうなお客様層に合わせた展開ということです。

 

ホームシアターはすべて展示
まずは認識していただくこと

── 昨今遠水さんは、マルチメディアAkibaを始め全国の店舗で精力的に店頭の改装を進めておられましたが、もうすべて完成されたのでしょうか。

遠水いいえ、決して終わりはなく売り場は日々進化させます。各店とも新しいことにアンテナを張って、それを最大限に表現できる売り場へ常に変化していくのです。

マルチメディアAkibaではテレビコーナーからオーディオコーナーにかけての導線上、あらゆる場所にパッケージのシアターシステムを展示しました。そして最終的にはコンポーネントのコーナーにたどり着きます。そこでAVアンプやスピーカーなどさまざまなグレードの商品を、商品の色合いなども含めて実際にご覧いただくことができるのです。テレビコーナーから興味を持っていただいて、各メーカーのブースなどを経由して最終的にそちらのコーナーに来ていただくような流れになっています。実際に商品をご覧になることによって、まずその存在を知り、いずれ興味を持っていただくことにつながります。

私の戦略は、お客様に、パッケージであってもラックシアターであっても、とにかくまずシアターシステムを買っていただく。そして楽しさを味わっていただくということです。そこから、いずれグレードアップを望まれる方も当然出て来ます。特に男性のお客様など機器がお好きな方は多いですし、興味を抱いていただけると思っています。

店頭ではさまざまなグレードの商品を全て並べ、パッケージシステムだけでなくコンポーネントもあるということを見て認識していただくことが狙いです。知っていれば次のステップへとつながるからです。ホームシアター商品は、店頭で全部展開しなくてはというのが昔からの私の考えです。5・1chのサラウンドヘッドホンもあれば、デスクトップシアターもあり、AVアンプ、プロジェクターのシアターもあります。すべてを網羅しないとお客様の取り込みはできないと思っています。しっかり展示展開して、体感できるコーナーづくりを実践しています。

 

── 2011年の地デジ移行後に、テレビに次いで基幹になるカテゴリーは何でしょうか。

遠水氏遠水 2011年の7月24日でテレビの動きがぱたりと止まるとは思っていません。今年の夏頃から3Dや、その先には4K2Kといったトピックスが控えており、映像面での楽しさやそれに伴ってホームシアターも引き続き伸びて行くだろうと思います。テレビの買い替えはそこから先もまだまだあると思いますし、ボリュームをつけたある程度の展開は必要であると考えています。

あとはレコーダーで、BDのウェイトを上げて考えていきたいと思っています。10万円以下の価格帯が増えてくれば、もっと加熱してくるでしょう。ただDVDもまだまだお客様の多いカテゴリーですから、こちらも気を抜かずにやっていきたいと思います。

ホームシアターは、やはりHDMIのハイスピードイーサネットの規格に合わせて新製品が出てくると予測しています。高級モデルはそれからじっくり仕掛けて、年末へ向けてやっていこうと思います。

 

昨今の注目カテゴリー
PCオーディオを店頭で

── オーディオ分野では、昨年あたりからPCオーディオが注目されてきました。音元出版コンシューマー誌の「AVレビュー」でも、読者の話題となっているテーマです。

遠水 今年、やりますよ。今いろいろと仕掛けているところです。今はマルチメディアAkibaを中心にUSBのDACや外付けドライブ、ケーブル関係のアイテムをひとつのショーケースに収まるくらいのラインナップでしかお見せしていません。しかし商品の動きを見ていると、いよいよ加熱して来たかと、今年が一番の仕掛け時と感じます。

とはいえ、何でもかんでも高級オーディオと結びつけた見せ方にすると、非常にわかりづらいものになってしまうと思います。まず入り口から、PCオーディオをやってみようというきっかけづくりをやろうと思います。マルチメディアAkibaから体感できるコーナーをつくり、その成功例を各店におろしていこうという考えです。来年にはもう、お客様の口からPCオーディオに関することばが普通に出てくるようになると思います。

 

── PCオーディオを店頭できちんと実践されているお店はまだほとんどなく、お客様はネットで情報を収集して商品を購入されている状態です。御社が店頭でこれをしっかりとお見せになると、お客様に対しても業界全体に対しても大きな推進力になります。

お客様の中には、CDには思い入れがなく、大事なものはアナログレコードであり、アナログのシステムをしっかりと持った上で、あとはCDプレーヤーでなくPCのシステムがあればいいという考えの方もいらっしゃるようですね。

遠水そういう方は多いと思います。パソコンの音は悪いのだという認識を持つ方は比較的高い年齢層の方中心に必ずいらっしゃいますが、そういう方にいくら訴求してもCDから離れることはないと思います。しかし不思議なことに、アナログをやっている方の方がPCオーディオに興味を持たれるケースが多いのです。そこからアナログレコードの音源をPCに入れてCDに焼くのかというと、そうではなく、音源のひとつとしてPCオーディオに取り組むということなのですね。

ここ数年はアナログ熱も高まっています。プレーヤーというより、カートリッジやトランス、イコライザーなどの周辺商品がハイエンドを含めてよく売れています。今まで扱いがなかったようなブランドも、ずいぶん増えて来ました。品揃えを充実させるため、これからも幅広く扱っていきたいと思っています。

アナログは音を出すまでの恚V式揩楽しんでいる方が多いのですね。レコードによって、カートリッジを付け替えてみたり。アナログプレーヤー自体の構造はメカのかたまりですから、面白いですよね。それにスピーカーの次に、入り口のカートリッジによって音は変わりますので、いちばん簡単にハイエンドの世界に入れる部分ではないかと思います。

また若い方でもアナログに興味を持たれる方が増えています。予備知識がない方もたくさんおられますから、店頭で懇切丁寧にご説明します。

 

── PCオーディオなどの新しい動きを、ご自身ではどう捉えておられますか。

遠水ゆっくり取り組もうという思いです。私にとってのメインソースはやはりアナログであり、それはこの先も変わらないと思います。しかしもちろんハイクオリティなダウンロード音源の音のすばらしさもわかっています。

ただ私は、音がいいだけではライブラリーにしません。あくまでも音楽が中心であり、音がいいだけでソフトを買うということはしないのです。要するに好きな曲は、ラジカセで聴いたって幸せなのです。いまだにメインは音楽、個人的にはアナログの音が一番好きですが、仕事ではしっかりとPCオーディオに取り組んで、来年には結構な市場をつくり、刈り取りたいと思っています。

 

これからも強気で
ピュアオーディオを

── 一昨年のリーマンショック以降、お客様の動きにはどのような変化がありましたでしょうか。

遠水やはりご来店の人数は減りました。アクセサリーを含めて厳しい状態です。特にオーディオでは、ハイエンドになるほどそれが顕著な状態でしょう。当社ではエントリーからミドルクラス以下の商材がメインですから、単価は低くてもある程度の台数は売れてはいましたが、高額商品はやはり影響がありましたね。しかしこの12月はおかげさまでかなり回復していい状況でした。ピュアオーディオもここで弱気にならず、まだまだ強気で取り組んでいこうと思っています。

 

── オーディオの売り場はピュアオーディオからPCオーディオ、デジタルオーディオプレーヤー、ヘッドホン、システムコンポなど多くのアイテムがあります。今後重点を置かれるのはどこでしょうか。

遠水それぞれのコーナーをきちんとわかりやすくして、全部やらないとだめですね。

ミニコンポは通常のものが落ち込んでいますが、ここの潜在需要は必ずあります。縮小されている法人さんも多いですが、うちはハイコンポを中心に、iPodなどとのつながりにも注力して丹念にやります。そこからホームシアターにもつながりますし、逆に落とせないアイテムと捉えています。iPod対応の真空管システムなども、まだニーズは未知数ではありますが、積極的に取り組んでいます。

ヘッドホンは相変わらず売れるでしょう。住宅環境の影響も大きいと思いますが、高級ヘッドホンが売れるというのはそういう事情でしょうね。

 

── スピーカーではなく、ヘッドホンで聴くピュアオーディオシステムの構築も、ひとつのテーマになりそうです。また当社がマルチメディアAkibaの店頭でやらせていただいたヘッドホンのイベントでは、若いお客様がたくさん来てくださいました。皆ご自分のデジタルオーディオプレーヤーをつないで、中にはヘッドホンアンプを持参されるという方もいて、これらがいかに若い方に浸透しているかということがわかりました。

遠水女性向けや高額タイプなども含め、ヘッドホンのブームはまだ続くと思いますから、売り場はこれからも充実させていきたいと考えています。5・1chヘッドホンはそろそろ役目を終えたのではと捉えていますが、大型ヘッドホンはまた違うやり方を展開し、そしてカナル型を含めた中型クラスのところ、特にファッション系のアイテムを拡張し、さらに強化していきます。

高額ヘッドホンの試聴コーナーでも、iPodをつないで聴きたいというご要望が多く、当初から自由にお手持ちの機器をつなげるようなかたちにしていました。ヘッドホンアンプの使い方も私がつくって掲示したところ、お客様はじつに多くの方がつないでお聴きになりますね。5〜6万円のヘッドホンをiPodにと思いましたが、そういうニーズは多いのですね。

 

── 最後になりましたが、今年の抱負をお聞かせください。

遠水2010年は特に、オーディオに基本からもういちどしっかり取り組みます。品揃え、社員教育、商品知識をますます強化していきたいと思います。私も自ら講師となって社員にノウハウを伝授していきますし、それらを総合させ、お客様にオーディオをしっかりとご案内し、提案できる体制をつくっていきたいと思います。

 

◆PROFILE◆

遠水 清氏 Kiyoshi Tomizu
1954年生まれ。'78年(株)ヨドバシカメラ入社。'81年東口店カメラ売り場責任者、'83年西口本店AV売り場責任者に。'85年西口本店副店長、'90年横浜駅前店店長を歴任、'94年仕入れ担当に就任。2001年販売本部 店舗企画担当に就任し、現在に至るまで全店AV売り場の店頭づくりを手掛ける。

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