青柳マテウ氏

首尾一貫したお客様志向を武器に
メモリーカード市場活性化を牽引する!
サンディスク(株)
代表取締役 マネージング ディレクター
青柳マテウ氏
Matthew Aoyagi

メモリーカードを利用したこれまでにない新しい楽しみ方や利便性が次々に実現されていく。その一方、カード選びの情報が十分でないユーザーがまだまだ数多くいることも実情だ。付加価値提案の要とも言えるメモリーカード市場。その活性化へ、トップブランド「サンディスク」はいかに臨んでいくのか。青柳マテウ氏に話を聞く。

 

ユーザーが何をしたいのかを知り、
何ができるのかを伝えることが大切

信頼感が築き上げる
売上シェアbP

── メモリーカードでは世界シェア1のサンディスクですが、国内市場でも07年から4年連続で売上シェア1を獲得されています。

青柳 フラッシュからコントローラーに至る設計から生産まで、全てを自社で行っていることが、サンディスクの最大の強みです。メモリーカードには色々なフォーマットがありますが、コンパクトフラッシュの自社開発からはじまり、SDカードやマイクロSDは東芝とパナソニックとの共同開発、メモリースティックはソニーとの共同開発と、主要なカードフォーマットの開発に関わってきました。すなわち、サンディスクの持つ技術がひとつのベースとなり、それを使用した製品が人々の生活の楽しみ方やスタイルを大きく変えているのです。

そして、そのハイパフォーマンスとハイクオリティは多くのお客様にも認められ、世界市場でトップシェアを獲得しています。シェア50%以上という国や地域も珍しくないほどです。そして日本でも、07年から4年連続でマーケットシェア1位を獲得しています。

── 記録メディアのこれまでの流れの中では、例えばブルーレイディスク(BD)でも、BDレコーダーと同じブランドのものを選ぶユーザーが多いといった傾向が見受けられます。そのような中で、メディア専業メーカーである御社の強みはどこにあるのでしょう。

青柳 メモリーカードは二次製品ですから、お客様はデジタルカメラなどのホスト機器を購入して初めて、カードのことを考えます。ですからカメラとは違い、最初から「このブランドを買いたい、使いたい」という意識は高くないのが実情です。そこでなにより大きいのは、お客様に商品をお薦めいただくご販売店において、弊社の技術力や製品の品質、安定供給の面などを高くご評価いただいているということです。すなわち、「サンディスクならどこよりも安心してお客様にお薦めできる」というわけです。。

製品開発に際しては、カメラメーカーとも綿密に連携をとりながら進めていきますから、それも、メモリーカードをご使用いただく上での大きな安心感につながっていると思います。お客様は確かに、ハードと同一ブランドのメディアを選ぶ傾向はありますが、同時に、追加購入するときには、同じブランドのものをまた購入するという傾向が高い割合で確認できます。ニコンさんやキヤノンさんなどは自社ブランドのメディアを持っていませんから、そこでは、サンディスクがニュートラルポジションにあることが逆に大きな強みになっています。

カードはどれも
同じではない

── 市場をリードされる立場から、2011年のメモリーカードの市場動向をどのように分析されていますか。

青柳 2010年の1つの大きなポイントは、デジタルカメラにおいてはコンパクトも一眼も、SDカードへのシフトがさらに一段と進んだことです。また、これまでは写真が中心だったカメラの使い方に変化が出てきて、フルHDによる動画撮影がひとつの機能として当たり前のようになってきました。1GBや2GBの容量では十分ではなく、大容量化へと拍車をかけています。

また、2011年の大きな注目の的であるスマートフォンは、これまでの携帯電話とは異なり、いろいろなアプリケーションで発展していくことができます。今後、マイクロSDが大きなひとつの柱に成長し、ビジネスが拡大していくと予想しています。

── 機器の性能を十分に引き出す上では、メモリーカードの性能も問われます。認知が十分でない中で、プロモーションにもかなり力を入れていらっしゃいます。

青柳 ハードウェアがどんどん高性能化することで、メモリーカードの果たせる役割も大きくなっています。とりわけ、02年にデジタルカメラの出荷台数がアナログカメラを抜いた頃から、恐ろしい速さでハードは進化しています。その物凄い能力を、適切でない<Jードを使用することで、十分に活かすことができないということは、本来あってはなりません。しかし、現にそういう例がいっぱいあるのです。カードの能力がハードの能力より同等以上になってはじめて、ハードはその能力を100%発揮させることができる。そのことを、きちんと認知していただかなければなりません。

サンディスクでは、「ユーザーの立場で見る」「ユーザーの考え方を理解する」ことを第一に、そのためのいろいろな調査を行うなど、ユーザーニーズに適う商品を率先して提供しています。シェアトップの座は、お客様に一番近い製品づくりができている証明であり、この1位のポジションをキープし続けていくことが、我々のポリシーともなります。

また、カメラメーカーとは、メモリーカードの市場投入へ向けて、常に連携をとっていますから、例えば、ドラスティックな変化を遂げた新しい商品がカメラメーカーから出てきたときにも、それに適うカードを同時に提供することができるわけです。カメラの性能を十分に発揮させる上でのメモリーカードの重要性や弊社との連携がどんなに大切かということも、十分にご理解いただいていると思います。

青柳マテウ氏── ワゴンの中の特売商品が必ずしもお得≠ニは限らない。お客様との接点となる店頭との温度差を、今後、どれだけ小さくしていくことができるかが課題ですね。

青柳 例えば、現在のテーマのひとつとして、先ほども述べた「フルHD動画」が挙げられます。2GBのメモリーカードでは、およそ15分しか撮影できませんから、動画撮影をされたいお客様には、もっと大きな容量のメモリーカードをお薦めしなければなりません。

このように、店頭ではカメラを買われたお客様がどのような使い方をされるのかをきちんとお聞きして、適切なメモリーカードをお薦めしなければなりません。それが、ユーザーの満足感につながり、お客様にまた来店いただくことができるわけです。

── メディアには、子供の成長など大切な映像記録を残していく重要な役割も担っています。クラウド環境の充実なども進んでいますが、メモリーカードのこれからについてどのようにお考えですか。

青柳 クラウドで一番の課題となるのはやはりセキュリティだと思います。全てがクラウドでというのは気持ちがどこか落ち着きませんし、ネットワークに常に接続できる環境の構築も容易ではありません。クラウドかメディアか、どちらか一方に集約されることはなく、併存していくと思います。

メモリーカードには、常に手元にあるという安心感があります。また、これまでのストレージは、ハードディスクやDVDなどのメディアの形態がデータを残すために使用するハードの大きさを制限していましたが、フラッシュメモリーにはそれがありません。さらに、メモリーカードは同じ形態のままで、今後、容量もどんどん増やしていくことができます。省スペースでかつエコであり、これは恐ろしいメディアだと思いますね(笑)。

メモリーカードに
息吹を吹き込む

── デジタルカメラの映像を、そのままメモリーカードで保存している人は増えているのですか。

青柳 常に一定数量の方が存在します。今後、デジタルカメラでのフルHD動画撮影がもっと当たり前に行われてくるようになれば、大容量のデータを、時間をかけてパソコンに移すのではなく、そのままカードで残しておくという人は増えてくるのではないでしょうか。デジタルカメラに搭載されたフルHD動画撮影機能が市場を大きく変えていくと思います。

── これまでお話を伺ってきたメモリーカードの価値や様々な用途の啓発に、「使い方いろいろ!サンディスクのメモリーカード」「大きく、残そう。」「地球を記録に残したい。」など、様々なキャンペーンの展開にも力を入れていらっしゃいます。

青柳 毎年行っているユーザー調査で、「過去3カ月以内に購入したSDカードのメーカーはどこですか」(シングルアンサー)という質問を必ずするのですが、その結果シェアは実際のメーカーシェアとは一致しないことがあります。しかし今年初めてサンディスクが他社を引き離してトップになりました。これは、売上ベースでシェアトップであるという事実だけでなく、ユーザーが自分のデジタルカメラの中に入っているのは「サンディスク」というブランドであると、さらに多くの方に認知いただけるようになったからだと思います。

リーマンショック後には一時、メモリーカード市場も乱売状態に陥り、危機感を覚えました。bPメモリーカードメーカーの責務として、イメージング業界全体を盛り上げていかなければならないという強い思いもありました。

また、デジタル一眼を女性が持つのも当たり前になるほど裾野が大きく広がっています。そのような中で、店頭タグの容量を「○GB」と大きくわかりやすく表記したところ、我々だけなら目立ったのですが、どこも真似してきたために、メモリーカードコーナーが記号化してしまったという反省もありました。無味乾燥な売り場への反省から、動物や自然など、情緒的な、ワクワクするテーマを取り扱ったキャンペーンを企画したところ、ご販売店からもご賞讃いただきました。

メモリーカードは映像を記録するための単なる道具ではありません。それを使って何ができるのかをきちんと伝えていくことが大切なのです。

── メモリーカードの対応機種もさらに広がり、用途もますます拡大しています。テレビ販売が大きな岐路を迎える中で、店頭での付加価値化という取り組みテーマにおいても「メモリーカード」は重要な商材のひとつに位置付けられます。

青柳 ユーザー視点でものを見るために、メモリーカードに対する色々な調査を行うなど、「何が足りなのか」「何を望んでいるのか」ということに、これほどまでにフォーカスしているメーカーは他にありません。市場を開拓するためには、ユーザーのニーズをもっともっと理解していくことが必要なのです。そして、ハードメーカー、メディアメーカー、販売店が同じ見識を持つことが必要です。そのための営業のコミュニケーションにもさらに力を入れて参ります。ユーザーニーズに応える、活気あるメモリーカード市場の創造を力強くリードしていきたいと思います。

◆PROFILE◆

青柳マテウ氏 Matthew Aoyagi
1960年7月11日生まれ。米国出身。カリフォルニア州シリコンバレーの近くに生まれ育ち、カリフォルニア大学バークレー校を卒業後、1984年にアップルコンピュータに入社。翌1985年に日本へ赴任し、11年間日本法人の創立メンバーとして、日本向け製品の販売チャネル構築と営業展開に携わる。その後1995年にマイクロネットテクノロジー日本法人の代表取締役社長、1998年スリーコム社で営業本部長、2002年に米ロジテック社のバイス・プレジデント日本担当兼日本ロジクール社の代表取締役社長を歴任。07年、サンディスク入社、現在に至る。信念は「Good Decision comes from experience. Experience comes from bad decisions.」(正しい判断は経験から来る。苦い経験は往にして間違った判断が原因である)。大切にしているのは、家族や友人と過ごす時間。

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