巻頭言 復活、パイオニア 和田光征 ── 業界人としてここ数年における名門パイオニアの凋落ほどかなしいものはありませんでした。 小谷さんが社長になられたとき、或いはなられる前からお会いしていた中で感じていたのは、まさに哲学があり楽観主義者で達観されている、そしてまた公明正大な人であるということであり、大いに期待をさせていただいておりました。その手腕においては昨今の報道の通りであり、また改革の真髄はインタビューで語られている通りであります。そして見事に、期待どおりの結果となりました。 多くの人が社を去る苦悩、まだまだ本来の名門パイオニアとは程遠いと小谷さんは言われました。しかし2010年3月期までに構造改革が終わり、2013年3月に向けての成長戦略にしっかりと取り組んでいる今、必ず成就するという決意を述べておられましたが、「完全復活パイオニア」を来年の春にはこの欄で高らかに宣言したいと思います。 右は、2010年8月号の本欄の一文ですが、その号ではパイオニアの代表取締役社長でおられる小谷進さんの社長就任1年半目のインタビューも掲載し、好評を博しました。「就任して最初に、この会社に必要なのは経営の意思決定のスピード、そして強いリーダーシップによるマネジメントであり、この2つに取り組む」と全社員に話し、小谷体制はスタートを切りました。大きな痛みを伴う構造改革から始まり、世間はその手腕に固唾を飲んで見守っていたことは言うまでもありません。 そして1年半で体制の基礎が確立し、2015年3月期を最終年度とする企業ビジョン「2015ビジョン 街でも車でも笑顔と夢中が響き合う」が立案発表され、パイオニア創業の精神を踏襲した経営による成長戦略がスタートしたのでした。 そして2011年3月期、パイオニアは計画通り黒字転換したのでした。小谷さんが社長就任から2年という時間の中でこれを達成されたことは、まさに経営者の強いリーダーシップ、スピードの具現そのもので、賞賛に値する快挙でもあります。業界にとりましても朗報であり、心から祝意を表したいと思います。 この間、リーマン・ショック、世界同時不況にも直撃され、また急激な円高に見舞われましたが、小谷さん長は泰然と構造改革を押し進め、逆にリーマン・ショックを最後の復活のチャンスと捉え、経営陣含め全社員が危機感をほんとうに抱くことになったと述べておられます。 私は小谷さんとお会いする度にチャーチルの言葉を脳裏に描いておりました。「悲観主義者はすべて困難の中に困難を見つけるが、楽観主義者は全ての困難に好機を見出す」、そうです、小谷さんの楽観主義を強く感じていたのでした。そして「将来何が起きるのかを予言する能力」を強く意識し、この改革の成功を確信していたのでした。 しかしながら、企業経営は果てしのない歩みでもあります。むしろ完全復活への第一歩が踏み出されたのだと思います。小谷社長のリーダーシップにさらなる期待を込め、エールを贈り続けたいと思います。 |