法月利彦氏

強力新商品投入で
ハイファイの基盤を固め
デジタルやヘッドホンも果敢に展開する
CAVジャパン(株)
代表取締役社長
法月利彦氏
Toshihiko Norizuki

音を追求するブランドとしての地位を不動のものとする、ハイファイオーディオの強力新商品を投入したCAVジャパン。一方で新規ビジネスとしてヘッドホン・イヤホンも展開していく。さらに多方面で新規カテゴリーへの進出を計画し、精力的に前進し続ける同社。その直近の動向を、法月社長に聞く。

 

我々にない技術を他社との提携で入手
複合商品をつくる可能性を模索していく

ハイファイオーディオに
ハイエンドモデルを投入

── 2011年度も精力的な活動を続けておられます。特にこの秋は、今年度の注力カテゴリーであるハイファイオーディオビジネスの分野に強力な新商品を投入されました。

法月 新商品はまず、これぞCAVのハイファイオーディオ決定版とも言えるハイエンドモデルのフロア型スピーカーを2機種投入しました。ペアで280万円の「DX-8」と、150万円の「MD-Y」です。さらに真空管ステレオプリメインアンプのフラグシップ「T-50」も加わりました。

これらは11月中旬の発売に向け、「オーディオ&ホームシアター展TOKYO2011」に出展して一般のお客様にご体感いただきます。今専門店様を中心に店頭展示も進めているところです。余談ではありますが、当社は来年3月に麹町への移転を計画しており、ショールームと試聴室を完備することになりました。これまでの環境では自社内で製品をお聴かせすることができませんでしたが、ようやくもっとフレキシブルにご関係の皆様に体感していただくことができるようになります。今後はこうした自社スペースも活用して、試聴・体感の機会を設けていきたいと思います。

ハイファイオーディオビジネスでは、CAVブランドとともにドイツのカントンブランドを国内代理店として展開しておりますが、こちらではVENTシリーズのモデルチェンジがあり、新商品は11月1日から国内で発売されることになります。

また、こうしたハイエンドクラスではなく、普及価格帯に向けたハイファイオーディオの企画も進行しています。今市場で非常に注目を集めているネットワークプレーヤーに関連するもので、日本だけでなく、グローバル展開も視野に入れた商品づくりを進めております。まず中国のCAVが本国で現地に合わせたマーケティングを行い、香港、シンガポールでも現地法人でマーケティングを行います。さらに北米やヨーロッパについては、現地法人との合弁会社として、CAVオーディオ、CAVジャパンのマーケティング会社を新たに設立する方向で考えております。

オーディオの枠を拡大
いよいよヘッドホンに着手

── ハイエンドモデルの登場で、音のブランドであるCAVのイメージが確固たるものとなりますね。さらに新規ビジネスとして、いよいよヘッドホン・イヤホンの分野に着手されたと聞きました。

法月 私どもはこの10月30日で創業丸五年を迎えますが、決算期では2011年3月で第5期が終わったところです。売上げが連結で100億円、CAVジャパン単独で60億円という結果でした。4年半でそこまでいったということは、よくやった方かとも思いますが、私自身としては早く単独で100億円に到達したいというところです。

振り返ってみると、チャネル開発、エリア開発も手を打ってきて、100億円に到達するためにあとは商品そのものを増やさなくてはならないと考えます。我々の本業は音ですが、その分野だけで到達をさせるには、カーオーディオにも進出する必要があるかと考えました。しかし今車の販売台数は減っており、さらに若者層が車を買わず、その傾向は拡がるでしょう。しかもカーオーディオは純正比率が高まり、アフターマーケットは既存メーカーの寡占化が進んでいます。

そこでホームオーディオの可能性をさぐるとすると、ヘッドホンです。ハイファイのスピーカーと向き合って音楽を聴くということだけでなく、どこにいても音楽を聴けるというスタイル。私の若い頃よりもずっと、音楽は生活になくてはならないものになっています。ただ聴き方が変わってきているのであり、それを進めたのがヘッドホンです。

今回はアメリカのブランドの日本代理店として契約を結びました。ブランド名に入っているリュダクリスというのは、グラミー賞を受賞した世界でトップクラスのラッパーの名前です。彼がプロデュースしている製品であり、ヒップホップ系の音づくりがなされているのです。普及モデルからノイズキャンセリングモデルも併せてヘッドホンが3機種、イヤホンが2機種、1万円超?3万円といった高級機の価格帯に展開していきます。これは量販店様中心に広く展開していきますが、楽器のチャネルも考えており、DJ、ラッパーの世界に訴求していきます。

法月利彦氏海外ビジネスも積極展開
現地マーケティングで商品づくり

── 御社のビジネスの柱であるホームシアタービジネスでは、地デジ化が終了した今どのような展開になるのでしょうか。

法月 完全地デジ化に関して7月24日の直前はもの凄い勢いでテレビが売れ、おかげさまで私どものシアターラックもその恩恵を受けました。もの凄い数のオーダーが来まして、生産を担っている広州で24時間工場を稼働させ、でき次第毎日送るという体制で相当量をつくりました。

私どもでは7月の増産で貯金ができましたが、その後はテレビ自体の販売台数が激減しました。私どものお取り引き先であるディーラー様も全般的にそうした傾向にあり、市場全体が厳しい状況です。

やはりテレビは、家電販売店様でお客様をひきつける大きな要素です。これまではテレビを買うという目的があって多くのお客様が訪れ、ついでに様々なものをご覧になり買っていくという傾向でした。その大もとの目的がなくなって、お客様の数自体がそもそも減ってしまい、業界全体にとって大きな痛手となっています。しかし私どもはメーカーとして、シアターラックが売れないからといって手をこまねいているわけにはいきません。

今売れているテレビのサイズがどんどん小さくなるとともに、さらにテレビ自体が薄型になっています。ラックを使って設置するという置き方から壁掛けの比率が高まっており、そうしたものに合うような音響システムとして、サウンドバーの形式で商品づくりを進めております。さらに小型のテレビに対して場所を選ばず置きやすい音響システムを、OEMで展開しております。

── デジタルオーディオビジネスやビルトインビジネスでの昨今の状況はいかがですか。

法月  デジタルオーディオでは、ハローキティを中心に海外展開も積極的に行っております。現在香港を中心として台湾への展開も決まり、シンガポールを中心にマレーシア、そしてインドネシアへと広がっています。そしてデジタルオーディオビジネスについては、ソニーのウォークマン対応のドックスピーカーも展開しており、さらに今後はiPadの再生機や周辺機器なども準備しています。これからスマートフォンが爆発的に伸びて来ますが、非アップルの占有率はますます高まってくるでしょう。そういったことに対応した商品展開も考えております。

ビルトインビジネスでは、新たにスクリーンを手がけ、大々的に展開していきます。商品開発も金型までつくって、どこにも負けないものをという考えで進めております。ホームシアター用とビジネスユースと2通りですが、学校、官公庁に展開する、そして業務用のディストリビューターを通じて展開する、といったところです。

スクリーンに関連するところでは、プロジェクタービジネスも展開します。すでにルートは開拓し、始めるばかりという状況です。ホームシアター用を中心に、主に単焦点の商品で、小型のものを商品化していくということです。

そして埋め込みスピーカーと昇降機は改良を重ね、販路を拡げていくつもりです。

市場の可能性がある限り
ビジネスの幅を全方向へ拡げる

── 御社は現在ホームシアタービジネスが柱となっていますが、そのバランスは今後変わっていくかもしれませんね。

法月 そうです。さらに事業として水平展開ということを考えますと、オプティカルや映像、コンピューターなど、他社との提携により我々がもっていない技術を入手して、複合商品をつくるという考え方もあり、実際に多方面で可能性を模索しています。ただいずれにせよ、我々がどのような製品をつくるかということが肝心で、そのために必要な技術は何かという考え方でないと、技術ありきでそれを活かすというやり方ではなかなか難しい。

さらに私の考え方はファブレスということであり、工場はもたずに生産は外注する方向です。企画設計と品質管理は徹底して自社でやる。そういう考え方でやってきましたし、これからもそのつもりです。

── 人材の増強などもすすめているのですか。

法月 社員は現在40名程ですが、新たに企画に2名、営業に2名、貿易1名、経理に1名、カスタマーサービス1名と増強しようとしています。私が社内で常々言っているのは、どこででも通用する選手になれということです。三塁手をやっていたかと思えば、一塁手も二塁手もやるような。大企業なら業務を細分化してそこだけの仕事をやるという考え方もあるでしょうが、当社はそうではなく、いろいろな業務ができなくてはだめだということです。

CAVにしても、ハイファイのメーカーであるとはいえ、デジタルでもヘッドホンでも何でもやるということです。そういう力をつけないと通用しません。

── 業務の幅は、今後もこの勢いで拡げていかれるのでしょうか。

法月 なぜ我々が業務カテゴリーを拡げていくかというと、そこにマーケットがあるからです。今は音を基軸にしたビジネスが中心になっていますが、もともとCAVはアナログに強いブランドです。そこを我々CAVジャパンがデジタルオーディオの切り口でさらなる拡大を成し遂げました。

真空管アンプは、昔欲しくても買えなかった世代が欲しがるものであって、非常にニッチな市場です。量を求めるのであれば、やはりデジタルの商品展開を志向しなくてはなりません。そこでネットワークオーディオを考えていきます。しかし、本業としてのハイファイオーディオも継続して極めていきます。どこまでも幅広くユーザーニーズに応えていくのです。

◆PROFILE◆

法月利彦氏 Toshihiko Norizuki
1995年にパイオニア(株)国内営業部長に就任以来、2001年ビジネスシステム事業部事業部長、2003年パイオニアグループの中国拠点である先鋒電子(China)の董事長兼総経理を歴任。退任後2006年10月にCAVジャパン(株)を設立、同社代表取締役社長として現在に至る。

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