- 本当の貢献は、お一人ひとりに対するもの
心の豊かさを求める企業活動を推進する
- ジェネラル・イメージング・ジャパン(株)
- 代表取締役社長
- 小宮 弘氏
Hiroshi Komiya
日本国内でGEブランドのデジタルカメラを展開して3年余り。ジェネラル・イメージング・ジャパンが新たに、ドイツブランドAgfaPhotoのデジタルカメラを手掛けることとなった。「生涯映育」の考え方を根底に、心豊かな生活への貢献を追求する同社の精力的な取り組みを、代表取締役社長の小宮氏に聞く。
GEとAGFAPHOTOの展開は
棲み分けでしっかりと良さを出す
新たなるブランド
AgfaPhotoの展開
── このたび御社では、従来のGEブランドに加え、新たにドイツのブランドであるAGFAPHOTOを展開されることになりました。その経緯をお話しいただけますか。
小宮 GEで展開しているものづくりの部分での私どものパートナーが、AGFAPHOTOの中南米や東南アジアで展開するカメラを取り扱うこととなり、そこから全世界へ拡げる際のやりとりを私がさせていただくこととなりました。それがきっかけで、AGFAPHOTOのCEO始め幹部の方々に、私どもでかねてから注力している「生涯映育(Life
time A-iQ)」の話をしたところ、非常に共感されたのです。
人生が始まったその生誕日に、両親が「映育」のカメラを買って、2年間本人の記録を残す。その期間を10倍速で考えると、子どもは満2歳で20歳の成人式=Bそこからは自らそのカメラを手にして人生を歩み、カメラを通じて現実を直視し、真実を見出し、一生の千年間≠ナ真理を探究する(*)。これが「生涯映育」の考え方です。
こうした映育の概念は、私どもがGEで展開してきた3年間に日本を皮切りに始めましたが、「A-iQ」という表記で海外に向けてもアピールしてきたものです。AGFAPHOTOは140年の歴史のあるブランドですが、ハード以上にソフトの部分、特に人間の想いを写真に出していくような取り組みをしたいという願望が強くありました。そこで、我々とライセンス契約をして日本でAGFAブランドのカメラを展開するとともに、世界に向けてA-iQモデルを出していくということになったのです。
私としては、本当に生涯映育の思想を理解し強い想いで恒常的に展開できるかが大切なポイントでしたが、先方でも単にライセンス契約で5年、10年といった短いスパンでやるというのではなく、正に千年の契約でA-iQを徹底的にやるという考え方を持ってくれました。日本で展開している我々の活動が評価されたとともに、深い思想の部分で深く分かり合えたと思っております。
「成長、繁栄の時代」から「共生、共存の時代」となり、新化、進化よりも深化、心化が大切になってきたと思います。お一人ひとりの心豊かな生活に貢献できるよう、さらに生涯映育を提唱していきたいと考えてくれています。
こちらがライセンシーの場合、ライセンサーの同意を得られないことはできないことがありますが、AGFAPHOTOとの展開はブランドパートナーとなります。それが一番大きいことなのです。140年の歴史を持つブランドですが、その歴史を踏まえながらも新たな取り組み、即ち「ニュー・アグファ」を創造、実現していきたいということです。
さらに日本での展開から、この春から夏頃にはぜひともヨーロッパでも映育を提唱していきたいと言うのです。PHOTOの世界で心の深いところを感じ合えたというか、ブランドパートナーであると同時に、ビジネスパートナーとして深いつながりを感じています。
一方でGEとの関係は変わることなく、こちらも大いに推進していきます。GEブランドはValue for money、AGFAブランドはValue
for Valueという考え方でしっかり棲み分けをして、生涯映育の具体的推進を図って参ります。
── AGFAPHOTOの第一弾となる商品は。
小宮 CP+で出させていただきましたAP15で、この春発売予定です。AGFAPHOTOのカメラは「鮮やかなモノクローム」と表現していますが、モノクロームの写真の深味のある美しさを現出して、心に響く良い写真を撮っていくというValue
for Valueの最上級コンパクトカメラと自負しています。「A-iQ」モデルもすでに企画しており、夏か秋にかけてご案内できると思っています。
私どもの商品は、特優の価値(グレートバリュー)、独特の価値(ユニークバリュー)、現実の価値(リアルバリュー)と3つのカテゴリーで展開しています。1万5000円以下に位置するところがリアルバリューであり、そこは基本的にGEで展開する。ユニークバリューはプロジェクター機能を搭載したPJ1やムービーの撮れるDV1などがありますが、ここはGEとAGFAブランドの両方で展開します。そしてグレートバリューは基本的にAGFAブランドでいきたいと考えております。そういう棲み分けを明確にして、GEブランドはValue
for money、そしてAGFAブランドはValue for Valueで商品開発、展開をして参ります。
「生涯映育」を本格的に推進
本物の価値を追求していく
── コンパクトデジカメは差別化が難しいとされていますが、2つのブランドにより追求すべき価値の差別化ができますね。
小宮 今まではブランド認知度の低さはハンディだったかも知れませんが、私はそうではないと思います。昨今ではブランドよりも真の価値があるかが大切になってきたと思います。ブランド以上に本物であることが評価されていく時代になったのではないでしょうか。千年の生涯映育の実現に向けて、0歳から百歳までいろいろな世代の方にとって、価値の創造と実現のできるデジタルカメラをご提供していきたいと念じています。
また、カメラで写真を撮り、見るというだけではなく、ストレージして編集もできます。ハイビジョンテレビで見たり、フォトフレームで見たり、そしてプリントして見るということができます。生涯にわたる膨大な画像データが検索によって一発で探し当てられる、また編集することができる。時を刻んだ写真を見て、被写体の変化はもちろん、撮る技能や技術の進化にも気づくということもあるでしょう。
そうすると、何よりも精度の高いレンズできちんとした写真を撮ることが重要になります。撮るだけならスマートフォンでもできますが、本物の良い映像を得るためには、デジタルカメラの存在価値はますます高まると確信しています。
第二次大戦後の日本は、高度経済成長の中で、新化と進化が主体であったと思います。しかしこれからは、一人一人の生活の心深いところまで入り込んでいく心化と深化が大事になっていると思います。成長と繁栄を追い求めることではなく、共生と共存を大切にする時代になってきたと考えます。
── こうして何年かにわたって何度もお話を伺う中で、当初から映育という考え方が育まれて、だんだん「シンカ」して、実際の形になっていくところをつぶさに拝見してきました。いよいよこれから商品を「シンカ」させた展開が始まります。
小宮 私は今度、「千年のシンカ」を提唱しようと思っています。0歳からの10年間は新化、10代は進化、20代は深化、30代は真化、40代は信化、これをずっと支えているのが心化です。それぞれの10年間を10倍速で100年としますと、5回のシンカで500年、そして50代からふたたび同じ5回のシンカをする。それで100歳までに千年のシンカとなります。
私自身はあと2ヵ月で8回目の「百年」が始まります。「七百年間」に積み上げて来たものを完全にリセットして、初心に戻って原点から歩んでいく喜びを感じております。AGFAPHOTOも140年ならぬ千四百年を経て、新たに生まれかわることと機を一にしているように感じています。ゴルフの石川遼選手も、新化、進化の「二百年」を経て、深化の百年が始まったところかと思います。
ブリヂストンに勤めた時代、「最高の品質で社会に貢献」という社是がありましたが、最高の価値は貢献にあるように実感しております。この共生、共存の時代には3C(コネクト、コミュニケート、コントリビュート)が大切と考えます。コネクトは一人ひとりの絆、つながりの大切さ。コミュニケートはたんに情報を共有するということでなく、共感、共唱し合って互いに交流するということ。そしてコントリビュートは、社会全体に貢献するだけではなく、お一人ひとりに貢献していくということが一番大切なことだと思います。
戦後、日本は廃墟から立ち上がり成長してきました。正に新化と進化を実現してきました。しかし世の中が成熟し、爛熟していくと、深化と心化がより大切になってきたと思います。企業も規模と成長のみが社会への貢献ではなく、お一人ひとりに貢献していくことが求められているように思います。お一人ひとりが真の幸せを築いていくには、物の豊かさ以上に心の豊かさを追求していきたいと思います。
人生を「千年間」と考えると、貢献できる機会も10倍になるように思います。この千年間でデジタルカメラが果たす役割は本当に大きいと思っています。バリューの高いデジタルカメラを提供し、お一人ひとりに貢献するとともに、お一人ひとりがデジタルカメラを通して社会へ貢献するということにつながるのかと思っております。かつては最高の技術で新化、進化と回ってきましたが、これからは最高の価値を生み出し、お一人ひとりの心豊かな生活につながり、お互いに貢献し合い、心化をベースに深化、真化、信化する時代が来たと思います。
心の根底にあるもの
見えない部分に価値は拡がる
── 昨年はさまざまな価値を根底から揺るがすような、東日本大震災を始めさまざまな出来事が起こりました。企業が自らの存在を見つめ直さなくてはならないような状況になって、小宮社長は生まれ変わってまたやり直すとおっしゃっていますが、今我々はそういう機会を与えられているのかもしれませんね。
小宮 それをやれるのが日本人の国民性であり、力であると思います。
有史以来ずっと続いた陸の時代が、バスコ・ダ・ガマの喜望峰航海に始まり、15世紀から海の時代になり、500年続きました。20世紀には海から空の時代になり、これから500年は空の時代が続くのではないかと思います。
これまでは眼に見える「もの」に価値がありました。しかし空の時代が本格化すると、世界が大打撃を受けたリーマン・ショック、IT、金融の世界など眼に見えないものが世の中を動かしています。ものづくりの商品そのものは、どんどん精度が高まっており、それそのものでは優劣を競えないところにきています。むしろソフトウェアなど目に見えないところに価値が出てきました。原発問題にしても、我々をおびやかすのは目に見えない放射能です。一方では眼に見えない絆が重要視されています。そういう時代が来ていると思うのです。
日本のものづくりは文字通り形から造られてきましたが、むしろ、そうではない眼に見えないものの方が価値が高くなってきたのかもしれません。その価値を見極める力が必要とされているように思います。
── 生涯映育の考え方もまさに眼に見えないところ。それを写真という形で眼に見えるもので表現していくことで推進していくのですね。
小宮 映像には大きな力があります。それはその美しさそのものよりも、心をまでも写すとか、現実を直視し、真実を見出し、真理を探究する哲学とか、そういったものだと思います。商品づくりについても、そういう考え方で、心を込めて「シンカ」をさせていきたいと考えます。
創業から3年余り、会社もまた新たなスタートとして、生涯映育をやっていく体制が整ってきたと思っております。まず日本でしっかりと進め、それから世界に拡げて参ります。私自身も生涯映育でシンカができたと思っておりますが、お一人ひとりが生涯、6つの「シンカ」を続けられることに少しでも貢献できればと念じています。
(※)百歳は「10倍速」で考えると、百年を10回生きることになります。