巻頭言
PWDMS
和田光征
WADA KOHSEI
私は1980年、当時の「オーディオフェア」会場でアンケート調査を実施、7000名から回答を得た。そのマーケティング調査の結果が、ミニコンポやハイコンポ誕生に多大な影響を及ぼしたと確信している。
シスコンが一巡して、業界が経産省から構造不況業種に認定されるほど厳しい環境だった。そこで私は「四つの提言」を世に問うたのである。
ニューマニア宣言
オーディオ着こなし論
ビジュアル三原則(リピート、クリエイティブ、ライブラリー)
デザイン革命
これを本誌で大展開した。その年の講演だけでも50回を超えた。まさにそれは停滞から次代への強力なメッセージであり、私はそのことをベースに「85年論」を提唱した。それは、1985年には新しい商品群が隆盛をもたらすであろうという確信に満ちた内容であった。そして実際、テープオーディオとCDを搭載したスリムなデザインのミニコンポの出現が市場を一変させたのである。
私は全オーディオメーカーの幹部の皆さんを対象として「フューチャーフォーラム(FF)」を発足した。私はその日午前9時半に出社して、午前中のうちに営業本部長の方々全員の了解を得て組織化したのである。1986年の春のことである。「利益ある商売」「市場創造」の旗のもとに、年間3回の勉強会と懇親会を開催し、オーディオ業界の礎として活動した。物品税の還付等さまざまな問題への対応もFFが主導した。そして業界絶頂期に活性を極め、1996年に終了した。
世の中はバブル経済崩壊後の厳しい環境下となり、ビジュアル機器やPCが台頭する時代へと変質していった。そして「ウィンドウズ95」の登場で世の中は一変。デジタル、インターネット時代へと突入するのである。
私はこの時インターネットが世の中を激変させる予感を強烈に感じ、情報収集と、識者との議論を繰り返した。そうしたことからスタートしたのが「ファイル・ウェブ」である。
ウェブを運営することによって、「特定の問題意識を持つ確信的ユーザー」をミーティングに参加させ議論させる。こうして感度の高い集団を誘引できることがまず分かった。そしてメーカーが企画した製品について議論させることによって、その商品企画を成功させることができるのである。さらにメーカーが売りたい商品をユーザーに体験させることによって確実に売りに結びつけるということも、高い精度で実現させられることが分かった。
私はこれをPWDMS、「ファイル・ウェブ・ダイレクト・マーケティング・システム」と命名した。現在これは着実に実を結んでいるが、いよいよ本格的に始動させるべきだと考えている。イベントには、関心をもつ客だけを確実に集められるし、そこで詳細なアンケート調査を行うこともできる。強いウェブサイトだからこそできるマーケティング・システムであり、その役割は製販ともに重要だと思う。
時代は変わっていく。ライフスタイルも変わる。獲物を現場に行って調達する「動物商法」でしか生き残る術はない。まさに現在は、天変地異と人災異変の時である。