巻頭言

2016年正月の美酒

和田光征
WADA KOHSEI

私はターゲットマーケティングを提唱している。オーディオビジュアルの復活を祈念する強い思いからだ。オーディオビジュアルの市場は終ったかの如く言われているが「人類の感性への賜物」である視覚、聴覚そして脳の活性の極として音楽や映像の存在は永遠であり、その終りは人類の終幕を意味するといえよう。故にそういうことは有り得ないのである。しかし業界がマーケットの実態をしっかりと捉え、お客様が求めているオーディオビジュアル商品を創っていかない限り、また、販売店の店頭で商品を見て、触れて体験する場がない限り市場の浮揚はないだろう。

どこに市場があり、誰に楽しんで頂くのか、今こそターゲットを決め込んだマーケティングが重要となるタイミングはない。若者達はスマホ、モバイルを使いこなし、通信費で可処分所得は消えていく。従って関連商品、例えばヘッドホン、ネットワーク系は伸長するだろうが、業界をしっかりと下支えするオーディオビジュアルのいわゆるハコ物商品はとりあえず期待できないと言っていいだろう。この層も未来に向けた潜在需要層として楽しみであることには変わりないが、当面はコモディティ商品ばかりが取りざたされ、業界の屋台骨を強化し、ひろがりを創り出すには消耗戦を強いられる。

業界を支え得る、お客様が待ち望んでいるしっかりとした商品を、ジャンルを形成し、創造していかない限り健全な業界の成長は望めない。そこで提唱したい。ターゲットユーザーの認識である。それは団塊世代、そしてその影響を受ける世代である。

「団塊世代」は65才を越えはじめているが何と言っても、映画、音楽で育った世代であり、大きなターゲットに成り得る人達である。

その影響を受けるのはまず「団塊ジュニア世代」。1971〜 74年生れでことし42〜 39才である。年200万人出生しており、第2次ベビーブーマー。団塊世代を両親にもち豊かな時代に育った世代だが、バブル崩壊後は就職氷河期を経験している。そして「真生団塊ジュニア世代」。これは1976〜1980年生れで今37〜 33才。多くが団塊世代を親に持ち、日本の失われた90年代に思春期をすごす。さらに「ポスト団塊ジュニア世代」。1976〜 85年で37才〜 28才。真生団塊ジュニア世代と重なるが、好景気や経済成長を感じることなく育った世代である。

彼らジュニア世代がターゲットとなるのは団塊世代の文化を家族として共有し、影響を受けているからだ。また、現在50才代の世代はいわゆるバブル経済の最中に青春時代を過ごした消費時代の申し子であり、当然ながらオーディオビジュアルはその消費の中心であった。

これら団塊世代、ジュニア世代こそ、業界の新しい提案を待っている層である。オーディオ業界ではハイエンドはジャンルがしっかり確立、市場形成されているが、ミドルクラスにおいてはジャンルが崩壊し、商品が各社それぞれの体を成しているが故に、お客様を満足させる業態になっていない。やはり業界あげてここにジャンルを創造、お客様が求める商品を近未来を見据えて提案し、流通も巻き込んで市場創造すべきタイミングに来ているといえよう。

今からこれをスタートさせて、2016年の正月、美酒を味わいたいものである。

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