巻頭言
ハイレゾ元年とハイコンポ
和田光征
WADA KOHSEI
本誌を通じて提唱している現代の「ハイコンポ」の提案に、各方面からご賛同をいただいている。そしてソニーがついに立ち上がり、“ハイレゾ”という切り口でオーディオ製品を力強く展開する宣言をしたことは、大きな勢いでハイコンポ推進の流れを後押しする力強い動きとなろう。JVCケンウッドやヤマハ、パナソニックも団塊世代や団塊ジュニア世代といった大人にふさわしい新時代のハイコンポ製品を提案しており、他メーカーの追随も予想される。この流れはいよいよ本流となって、年末商戦を皮切りに業界に大きなうねりを起こすものと確信する。
私はかつて90年代にハイコンポの市場創造を提唱した。その当時の本誌の巻頭言には、こう綴られている。
――(オーディオは)過去、シスコン、ミニコン、ミニミニコンと生み出されてきた時の市場創造魂が88年の夢を求めて弱体化していったといわざるを得ません。CDによってライフサイクルが延命されたことに気づいていながら、逆に効率を求め、ユーザーの遊離減少を加速していったといえましょう。「だから今、厳しいのだ」と私は訴えました。そして「数年後、また繁栄するためにミニコン、ミニミニコンに次ぐ新しい商品ジャンルの市場創造をしよう。一千億市場を創ろう」と提案したのがハイコンポでした。( 98年11月号)
―― ハイコンポの出現は当然のことである。私は6、7年前に「メーカーズシステム」の提案をしたが、ハイコンポはその提案の延長線上にあり、ユーザーが求めるオーディオのひとつの間違いのない姿である。ミニコンやミニミニコンがヤングマーケットへシフトしており、どちらかといえば機能・価格競争の産物と化してしるのに対し、ハイコンポはヤングはもとよりアダルトをもターゲットにおける極めて幅広い層を狙える商品である。
そして、ハイコンポのマーケットの構築によって単品コンポーネントの市場が再び脚光を浴びてくる筈であり、オーディオ業界のあるべき姿、ユーザーに貢献できる理想の姿が創出されると確信する。ハイコンポはハイフィデリティの追求はもとより、コンパクトでハイデザインを実現、いわゆるシンプルイズベストを具現化しており、自ずと機能重視的傾向が見られる既存システムをも変貌させていくのではないだろうか。
ある年配の方が「静かに音楽を聴きたくて店に行ったのだが、買いたいと思うものがない。ミニミニ、ミニコンじゃどうも嫌だし、かと言って単品を狭い部屋に持ち込みたいとは思わない。ハイコンポだったらすぐにでも欲しい」。省スペースでなおかつデザインも良くシンプル、そして単品同等の音質は潜在的にユーザーが求め続けたものであり、ハイコンポは増加する60歳以上人口をも動かす商品になりそうである。( 93年10月号)
市場がもつ危機感、新ジャンルを待望する気運は今も20年前と同様ではあるまいか。そして今はそこに、“ハイレゾ”という新たな局面が加わり、配信コンテンツも巻き込み、CDもアナログも楽しむ市場が活気づこうとしている。この年末に、大きく期待する。