巻頭言
あらたなはじまり
和田光征
WADA KOHSEI
2015年が終わり、美酒を頂けただろうか。2013年から2015年は奇数年で始まる陽の年であり、偶数年で始まる2010年から2012年までの陰の年の負を国家も企業も一掃し、2013年から始まった3年間に成長戦略を描いて経営したのである。その結果として、正月に美酒を飲む事ができたか、ということである。
2010年から2012年を見ると、東日本大震災があり、原発の大事故があり、「失われた20年」の極にあったと言えるだろう。またタイの大洪水や円高によって国内景気は低迷していたし、「失われた20年」は継続した。
いま、東芝の問題が大変な状況になっているが、ウェスチングハウスの買収の後の原発の事故で一気に負がのしかかり、これが問題の大きな要因になったと考えられそうだ。また円高に苦しむメーカーの製造部分は次々に海外へと移転し、国内景気は極めて厳しい状況におかれていた。貧乏の時代そのものであったと言えよう。
2013年から2015年はアベノミクスに始まり、国内景気は一気に成長戦略へと舵が切られ、いろいろな指標は上振れし、消費税8%の“逆噴射”はあったが、総じて日本経済は「失われた20年」から抜け出た感があり、海外へ出て行った製造業も回帰現象を起している。こうした好循環は雇用にも表れ、いい形になりつつあると言えよう。
美酒や如何にと質したいところであるが、どんな時代においても企業におけるプラスとマイナスはつきものである。好調と応えることができる企業が圧倒的に多いのが、陽の3年の特長であろう。まさに陽の効果である。
さて、新年を迎えて今一度、陰陽的に見てみよう。陰の3年間の始まりであるが、このような年は調整と攻めが混在するタイミングである。仕掛けてきたことが成果を上げ始めている時は、今一度状況を精査して、それでもYESと出れば更にプラス要因を加え、攻勢に出ればよい。逆の場合は縮小あるいは撤退を早期にやるべきだが、すべては時間の経過の中にある。プラスとマイナスの要素は本質が底流としてあるので、小手先での改革は却ってゼロへと向かう要素があり、要注意である。
そして、これから始まる陰の3年間が過ぎるとまた陽の3年間が始まる。2018年の終了において、2019年からの3年間へのビジョンをしっかりと構築し対応することが必須となるが、現段階で負を抱え込んだ状況から改革を試みても大きな成果を望む事は難しく、大胆な手を打つことは心理的にどうしても難しい。また人的にも資金的にも苦悩せざるを得ないだろう。
つまり、絶えず未来から考察する術を心得ていないと、今を正しく認識する事もできないし、正しい対応もできない。私の言う「明日の今日思想」しか、未来は描けないのである。そして、未来予測と検証を本質から考察し、やるべきことを見出さない限り、企業経営は迷走することとなる。
2016年の正月を迎え、今までとはまた違う意味の心構えを有した歩みを始めたいと思っているし、業界にも訴えたいのである。
あらたなはじまりである。