- オーディオの市場はまだまだ活性化できる
業界挙げての取り組みに、全力で貢献したい
- ハーマンインターナショナル株式会社
代表取締役社長
- 仲井 一雄
Kazuo Nakai
JBL、マークレビンソン、ハーマンカードン、AKGなど数多くのブランドを擁し、ハイファイとポータブルの2極化したカテゴリーでオーディオビジネスを展開するハーマンインターナショナル。活発な取り組みでオーディオの高価値を訴求、市場の活性化を推進する。その近況を、仲井社長が語る。
ラグジュアリーオーディオは我々の原点
シェアで負けるわけにはいきません
ポータブルが大きく伸長
さらにラグジュアリーも
── 現職にご就任されて3年ほどが経過しました。その後今日までのお取り組みと手応えはいかがですか。
仲井当社で取り扱っているオーディオ商品は、イヤホン・ヘッドホンやブルートゥーススピーカーなどのポータブルオーディオ、そしてハイファイのラグジュアリーオーディオと、価格帯の上で2極化しています。どちらのカテゴリーでも良い音を全面にアピールしながら、ブランドの認知度を上げ、カテゴリーでのシェアを高めていくということが以前お話しさせていただいた命題でした。
私が就任してからここまでの3年間は、おもにインフラの整備に重点を置いてきました。商流、営業体制、カスタマーサービス、コールセンター、物流業務、等、多くの機能を見直しました。その結果、3年前と比べて品質やリードタイムも大きく向上して、ようやくオペレーションの土台ができたというところです。これからその土台を有効活用してしっかりと商売を構築し、実りを得て参ります。オンラインショップやダイレクトショップも構築し、CRMにも取り組んでいます。ディストリビューションについても体制を整え、パートナー様とともにしっかり展開して参ります。
── 御社でのオーディオのカテゴリーの構成比は。
仲井現在は、ラグジュアリーとポータブルが金額ベースで1対2の構成となっています。私が就任する以前はこれが1対1でした。マーケット自体はグローバルでもポータブルが圧倒的に伸びている状況ですから、我々もそれに合わせた活動をしてきたわけです。その結果、ブルートゥーススピーカーの売上げが大きく伸びております。ここは毎年前年比4割〜5割の成長を遂げ、マーケットシェアも10%を獲得し、おかげさまでいいビジネスができていると思います。ヘッドホンでもいい商品を次々にご提案できてアイテムが着実に増え、売上げ自体は前年比3割〜4割と伸長しています。しかしマーケットシェアや認知度としてはまだまだ十分とは言えない状況で、引き続き取り組みを強化して参ります。
一方でラグジュアリーオーディオについては、我々の原点であると認識しています。ここ何年もの間マーケットの成長が鈍化し、減少する傾向にありますが、これを活性化することが何よりも重要です。そして我々としてもシェアで負けるわけにはいきません。売上げとしては今前年並みをキープしていますが、このカテゴリーはまだまだ伸長の余地がありますし、我々としても全力で取り組みたいと思います。そういう意味でも今後、オーディオ専門店様の存在はますます重要になって参ります。
専門店営業体制を強化し
体感の場をさらに広げる
── 今後のお取り組みについてはかがですか。
仲井今年はJBLがブランド創立70周年となりますから、アニバーサリーイヤーとしての活動を、特に今年の後半から年末に向けて集中的に展開する予定です。JBLではハイファイのスピーカーやスタジオモニターに加え、ヘッドホンやアクティブスピーカーなどポータブルカテゴリーでも精力的に商品を展開していますが、こちらのお客様へのブランド認知度はまだまだ低い。そこで70周年を迎えるにあたり、若い方々を始め多くのお客様にこれまで培ってきたJBLのオーディオの歴史をしっかりとアピールし、確かな実力を認知していただき信頼につなげて参りたいと考えます。
昨年末には映画館で“シネマ広告”を展開しました。JBLは全世界の約75%の映画館、THXシアターでは約85%にスピーカーなどの音響設備を導入しています。音は映画で感動を味わう大事な要素、それを支えているのがJBLであり、音のよさやコンセプトをコンシューマー用のあらゆる製品につぎ込んでいるという訴求です。このように社内のあらゆるカテゴリーを通じてシナジーを高める活動は、今後も全社で全方位的に行いたいと思います。
── 店頭やイベントで試聴の場を増やしていくなど、お客様の体験の機会を高める活動も大切です。
仲井特にラグジュアリーオーディオについては、お客様を集めての定期的な試聴会をオーディオ専門店様で毎週のように開催させていただいていますし、店頭でも随時商品を体感できる場はお店様と一緒に整えております。ポータブルオーディオのカテゴリーでは、イヤホン・ヘッドホン専門店様の大きなイベントに精力的に参加していますし、量販店様の店頭でも商品展示の場を広げ、デモのできる体制を整えています。
また、さらに幅広いお客様に向けてもっと身近に商品を体験いただける場としては、六本木のミッドタウンに我々の直営店「ハーマンストア」があり、こちらではハーマンインターナショナルが扱うコンシューマーオーディオ商品をすべて体験していただくことができます。開設して1年半ほど経過しましたが、若い方から昔ながらのJBLファンの方など多くの方にご来店いただいています。
ハーマンストアでは販売そのものよりも、オーディオを広く知っていただくことや、我々の全商品をより深く気軽に体感していただくための場としての役割を重視しております。店内の試聴室もご活用いただいていますし、良い音に触れる場づくりに貢献できているかと思います。またハーマンカードンなどデザイン志向の商品は、ミッドタウンにいらっしゃるお客様のし好とマッチして、販売でも着実な実績を挙げています。
── 販売店に向けた営業体制はどうされていますか。
仲井私が携わってからの3年間は、商流を徐々にシフトさせていきました。これまで代理店を経由していたものを、我々で直接ご販売店様に対応するべく方向転換し、特に専門店様については日本全国の地域にそれぞれ担当者を置きました。全部で7名ほどになります。ここ数年はこうした体制が定まらずにご心配をおかけする場面もありましたが、ご販売店様とその先のお客様に対しては、我々が自ら肌で感じられる商売の仕方をしっかりと構築し、万全の体制で臨みます。
オーディオ市場の拡大に
全力を挙げ貢献する
── 新製品も続々と登場しましたね。
仲井JBLではスタジオモニターの「4367WX」を昨年12月に発売致しました。プロ向けのスピーカーで採用されているD2デュアルドライバーと、新開発のXウェーブガイド・ホーン、最新の技術を採用した15インチ・ウーファーを搭載した2ウェイスピーカーで大変ご好評をいただいています。
マークレビンソンでは、昨年のCES2015に出展致しましたモノラルパワーアンプの「No536」を年末に発売致しました。続いて先日のCES2016で、ネットワーク対応ユニバーサルプレーヤー「No519」とDAC搭載デュアルモノラルプリアンプ「No526」をリリース致しました。こちらは今年夏以降の発売になるかと思います。
ポータブルオーディオでは、JBLの高音質・高機能を追求した最上位モデルとして、「EVERESTシリーズ」を投入致します。ブルートゥース対応のヘッドホンとイヤホンの6機種のラインナップとなりますが、先ずはその内3モデルが1月28日に発売されます。さらにAKGのフラグシップヘッドホンなど、今後もどんどんと出て参ります。
またCES2016において、我々は、優れたデザインやエンジニアリングを賞するコンペティションであるところのイノベーションアワードを、合わせて13個受賞致しました。オーディオの中でイノベーションができているとご評価いただけたものとして、大変うれしく感じておりますし、今後の励みとなります。
こうした良い商品をマーケットに出す。そして商品の良さや、そうしたものを使うことによって味わえる喜びや楽しさを、ご販売店様やお客様にきちんと理解していただくように努める。我々の役目として、しっかりとそこに注力して参りたいと思っております。そういう意味でも、今後は顧客管理(CRM)の部分をさらに強化しなくてはならないと認識しています。ラグジュアリーオーディオ、特にハイエンドモデルであるJBLのエベレストなど、日本全国のユーザー様の顧客情報を把握して、よりきめ細かな対応をしていかなくてはと痛感します。ご販売店様の協力もあおぎながら、鋭意取り組んで参りたいと思います。
── オーディオはいろいろな意味で転換期にあると思います。ラグジュアリーとポータブル、2極にあるカテゴリーを両方とも展開する御社の役割は大きいと感じます。
仲井今は音楽の聴き方として、イヤホン・ヘッドホンが主流の状態であるのは否めないと思います。ここは我々も引き続きしっかりと注力しなくてはなりません。ただブルートゥーススピーカーの伸長がめざましく、我々としてはこれを、音楽をスピーカーで聴くひとつのとりかかりにできると考えます。昨今はハイレゾ、またアナログが非常に話題となっています。いろいろなメディアがある中で、いい音を聴きたいニーズは必ず存在しており、そこに対して工夫の余地があると思います。
ハイレゾについてはおおいにアピールして業界の市場拡大に貢献していきたいですし、アナログではターンテーブルやトーンアームなどを有するSMEブランドの展開や、全ソースへの対応をうたうマークレビンソンの新しいプレーヤーなどで訴求したいと思っております。
オーディオの市場はまだまだ活性化できると考えます。それには我々一社だけでなく、業界挙げての取り組みが不可欠であると思います。我々もぜひ全力をあげて、そこに貢献して参りたいと思っております。