- 大きなチャレンジで製品の独自性を高め
お客様の期待に応えるものづくりを実現
- 株式会社ディーアンドエムホールディングス
取締役
ジャパン・セールス&オペレーション プレジデント 兼 APAC CFO
- 中川圭史
Yoshifumi Nakagawa
B&Wの新フラグシップスピーカー、オリジナルDACを搭載したマランツのSACDプレーヤーが高評価を獲得した。市場に大きな話題をもたらす製品群を展開するディーアンドエム、市場導入の意気込みを中川氏が語る。
インタビュアー/徳田ゆかり Senka21編集長 写真/君嶋寛慶
圧倒的な存在感で登場した
フラグシップスピーカー
── B&Wの800 D3がオーディオ銘機賞 金賞を受賞されました。
中川B&W50周年記念のフラグシップモデルです。新たな“800シリーズ”、昨年のオーディオ銘機賞で金賞を頂戴した802 D3の上位モデルで、この10月からいよいよ発売を開始しております。802 D3と共通の部品を採用した部分もあり大きさもほとんど同じですが、800 D3は新たに低域に250oのエアロフォイルコーン・ウーファーを2基採用、磁気回路を改良しています。低音で発生するひずみが低減され、結果的に2次、3次高調波ひずみがなくなり、中域から上も非常にクリアになった結果、圧倒的に音が進化しています。
802 D3がおかげさまで好評を博していますが、800 D3はまったく別ものの価値観を持っています。B&W社が強い意気込みでチューニングに取り組み、一切妥協なく追い込んだ結果です。当初の予定より発売が遅くはなりましたが、想像を絶するすばらしい仕上がりで我々も驚き、金賞を頂戴してありがたく思っております。
日本では9月に実施した新製品内覧会でご販売店様に初めてご披露し、高くご評価いただきました。お客様に対しては10月の東京インターナショナルオーディオショウを皮切りに、全国ご販売店様のイベントや大阪ハイエンドショウなど順次試聴の機会を頂戴しています。
おかげさまでどの会場でも熱気を帯び、大きな手応えとなっています。ご販売店様ですでに多くのご予約もあり、いい流れでさらなる実績につなげたいと思います。こうした大型スピーカーの出現で、アンプやプレーヤーのビジネスの需要にもつながると期待しております。
── どんな方がターゲットでしょうか。
中川これまでB&Wのハイエンドスピーカーをご愛用いただいていた方が中心にはなりますが、新しいお客様も開拓したい。昨今のハイレゾ音源を再生するにあたって、最新モデルの再生能力をぜひ体感していただきたいと思います。年配層のお客様のみならず、新しい音源も聴かれる若い年齢層のお客様にもぜひ。そのためにも、試聴会には今後とも注力致します。
またたとえば、ドイツ車のBMW 7シリーズにB&Wのカースピーカーがオプションで入っていますから、そうした高級車を購入される方に対するアプローチもできるものと思います。BMWカーディーラー様のショールームにB&Wのスピーカーを置かせていただくなどといった取り組みも進めています。
── 800シリーズの全モデルが揃いましたね。
中川おかげさまで804、805など比較的お求めやすい価格帯のものは好調で、B&W全体としてもよく動いております。800シリーズの導入でB&W社は昨年製造設備に3億円以上の投資を行いましたが、800 D3はキャビネットを一新したこともあり、製造にかかるリードタイムが想定以上にかかるようです。今年さらに機械を追加導入して増産体制を補強しましたが、全体のキャパをまかなえるまでにはやはりある程度の時間がかかりそうです。できるだけ早い納期を実現できるよう、我々も努力致します。
オリジナルDAC搭載
渾身のSACDプレーヤー
── さらにマランツのSACDプレーヤーSA-10が、オーディオ銘機賞の開発特別大賞を受賞されています。
中川大変ありがたい思いです。開発陣が熱い思いを込め、精魂傾け、構想・企画から開発までに3年の期間を費やしたもの。音質の追求に対して妥協することなくチャレンジを続け、数々の課題を克服した結果です。
特筆すべきは、マランツのオリジナルのディスクリートDACである「Marantz Musical Mastering」を開発できたこと。汎用のデバイスを使わず、自社でデジタルフィルターのアルゴリズムとDSDへの信号変換のアルゴリズムを開発し、DAC自体も汎用のICではなくオリジナルのディスクリートDACを開発して採用したもの。量産モデルとしては画期的な取り組みです。独自のアルゴリズムのつくりこみの段階で、大変な苦労を重ねました。さまざまなジャンルのさまざまなコンテンツの試聴・評価・検証を妥協することなく繰り返し行い、ハイスペックのオーディオ性能とハイクオリティーサウンドを追求した、開発陣の渾身の作品です。
「10」がつけられたモデルはマランツにとって時代を代表するエポックメイキングな製品であり、過去60年の歴史の中で他に3モデルしかありません。その名を背負う意味での強いプレッシャーもありましたが、これからの10年を担うにふさわしいプレーヤーとなりました。
── 独自開発は大きなチャレンジ、思い切った決断ですね。
中川オーディオというカテゴリーがニッチになっていけばいくほど、独自性は差別化の重要なポイントになると考えます。量を追う観点でいますと、どうしても汎用品を使うことを考え、それがある意味自らの足かせとなるように思います。今回はまずそこから開放され、何ができるかと考えました。
現状の汎用部品のクオリティは、オーディオ製品にとって十分に満足のいくものではありません。しかしそうした状況を打破しなくては、オーディオメーカーとしての存在意義、価値観が薄れていく。そう考えた結果、今回あえてそこに挑戦したのですね。SACDのメカにしても我々は自社開発をしているほとんど唯一のメーカーであり、DAC、アナログに至るまですべてが独自のものになりました。
多くの技術的課題がありましたが、1つ1つをヨーロッパの開発陣とともにつぶしていった。技術陣は日本だけでなくヨーロッパにもアメリカにもいて、世界で戦えるグローバルな開発体制をもっていますから、そのいい成果が出たと思います。
一方で、その製品をごく一部の方だけが楽しめるものにするのでなく、できるだけ多くの方に楽しんでいただく努力を続けるのも我々の使命だと思っております。数百万円ではなく、60万円という価格の中にこの内容を収める。そういう意味でも非常に画期的なことでした。
── これからの展開をお聞かせください。
中川SA-10も800 D3と組み合わせて各地のオーディオイベントで聴いていただいており、前モデルとの比較なども行い進化をご体感いただいています。おかげさまで10月の段階で、非常にたくさんの実績を上げております。
年末商戦に向けては、デノンブランドの1600シリーズのアンプとSACDプレーヤーも目玉になってきます。10万円台の価格帯でもメイドインジャパンの高品質をお届けしております。技術革新を取り入れた商品、ボリュームゾーンの商品それぞれに注力し、ご販売店様と協力しながらユーザー様に体感の場を広げて参ります。