李 仁奎

■受賞インタビュー LG
有機ELテレビで市場創造に貢献
新価値提案でご販売店を元気に
LGエレクトロニクス・ジャパン株式会社
代表取締役社長
李 仁奎

日本市場でいち早く有機ELテレビを投入し、啓蒙に取り組んできたLGエレクトロニクス・ジャパン。今年は新たなフラグシップ投入、壁掛け提案でさらなる価値訴求を推進する。有機ELテレビの浸透へギアを上げていく今年、展開に向けた意気込みを李社長が語る。

自然な色再現性に加えて
デザイン性も魅力の新モデル

── 有機ELテレビ、W7Pシリーズが審査員特別賞を受賞されました。

当社は日本国内で有機ELを展開して3年目になります。昨年に続いて今年も有機ELテレビで大きな賞を頂戴し、当社のテレビが認知された思いで大変ありがたいと思っております。今年は複数のメーカーさんが有機ELテレビを投入されていますから、これからのフラグシップテレビの主役は有機ELになるでしょう。

ディスプレイは究極的に、対象が目の前にあるかのような表現力が求められるものだと思います。有機ELは人の目が見る自然の色に近い表現ができます。ブラウン管のアナログ表現から2K、4Kになり、これからは8Kになっていくかもしれませんが、黒は黒、白は白としてのより自然な表現が我々の目指すところです。

当社は2015年、4Kの時代が始まるタイミングの中で日本に有機ELテレビを投入し、バックライトのない薄いパネル、漆黒表現と鮮やかな色表現の素晴らしさをご提案しました。昨年はさらに、ディスプレイを1枚のガラスに張り付けたような薄型モデルで、デザイン性を高めたご提案をしました。3年目の今年は一歩踏み込んだ設置のしやすさをアピールしています。

審査員特別賞を頂戴したW7Pシリーズは、専用のブラケットを使えば本当に壁かけの状態になり、配線を工夫すれば絵が浮いているように見えます。日本の住居は狭いと言われますが、壁掛けは省スペースの提案にもなり、ご家庭により設置しやすくなると思います。

また音の部分でも進化しています。薄型テレビはかつてスピーカーが前面の左右にありましたが、今はほとんど画面の下に下向きに配置されて音が前に出にくい傾向がありますが、W7Pシリーズはディスプレイからスピーカーを切り離し、デザイン性も高めて提案をしています。ドルビーアトモス規格を採用し、映画館のようなリアルな立体音場を楽しんでいただけます。

このように当社は2年間をかけて、有機ELならではの魅力を示すことができたと思います。量販店様でも今、お客様をひきつける目玉商品として有機ELテレビに注目していただいています。ハイエンド中心の展開ですが、価格はお客様の手の届く範囲になってきました。また国内メーカーさんが商品を出されたことで、さらに認知度が高まるでしょう。今年の下半期から来年はスマートフォンにも有機ELが拡がり、さらに身近な存在になると考えます。

有機ELテレビは
日本の市場を変える

── 日本のテレビ市場をどうご覧になりますか。

市場は成熟状態にあると思います。今2Kから4Kへの転換期ですが、日本のお客様は変化に対して慎重だと感じます。ほんの数年前のボリュームゾーンは32インチ、今は42インチになりましたが、55インチになると抵抗感があるようですね。

店頭で見ていただくと以前の32インチと今の45インチでは外形にはほとんど差がありませんし、55インチでも家に設置すればほぼ違和感はないと思われます。4Kは2Kよりずっと自然に近い再現性、画面が大きくなるほどそれが顕著に体感できますから、ぜひ大画面化を推奨していきたいです。

台数ベースでは少し落ちていますが、金額ベースでは一定の水準を保ち、価値の高いものが受け入れられてきている状態です。大きなポイントとなるのが買い替えの促進ですが、画質やデザインの進化をしっかりと訴求することで推進できると考えます。停滞気味のテレビ販売にとって、有機ELはいい促進剤になるのではないでしょうか。新しい存在として単価アップにもつながります。

有機ELでテレビの新しい市場を創る、ご販売店様もそこに大きく期待されていますが、当社はご販売店様と一緒にそれを実現させていただきたいと思います。お店の中で、やはりテレビの存在は大きい。広い郊外店様のフロアで一番目立つのはディスプレイです。きれいな画を見せるディスプレイはお店の華であり主役、そしてお店を元気にするビタミンのような存在。フラグシップは格別で、さらに有機ELテレビはお客様の目をひく特別な存在になります。

店頭ではこれから、有機ELテレビは大きく展開されていくと思います。メーカー別、インチ別の展示とは別に、有機ELとして展開されていくと、お客様に対する大きなアピールとなり、認知度が向上するでしょう。市場拡大につながり、販売の単価アップにつながっていくと考えます。

テレビの新しい存在として、有機ELのインパクトは強いですね。値段も徐々にこなれてくると考えられますから、年末頃から有機ELテレビの占有率は高まるのではないでしょうか。来年になれば新しい製品も出て、旧モデルにプラスオンされラインナップも増えます。市場がさらに大きくなり、活発になるでしょう。パイを取り合うのでなく一緒に市場を拡大する。

── テレビ市場が元気になれば販売店も元気になれます。有機ELの存在がそのフックになりますね。

欧米や韓国では日本よりもっと有機ELテレビの普及が進んで認知度も高く、市場での占有率が高い。2016年の4Qの当社の実績では、2000ドル以上の市場でLGのテレビの占有率は20%、3000ドル以上では27%、米国では有機ELテレビが週に1000台以上のペースで売れているのです。しかし、日本市場も早いうちにそうなると私は思っています。

有機ELパネルはLGがつくって供給している背景もありますが、それ以上に、日本で一緒に市場を創ることは非常に重要だと思っています。有機ELテレビはご販売店様にとっても目玉になる存在ですし、新たな市場創造が望まれていますが、LGだけでは市場は創れません。やはり複数のメーカーさんが参入されることがずっと期待されてきました。

日本の市場では当社がこれまで2年間、有機ELの認知度を高めるためのいろいろな工夫を致しました。量販店様で勉強会をさせていただき、有機ELとは何かからご説明し、啓蒙活動を行ってきました。有機EL元年と言われていますが、その前に販売店様やエンドユーザー様に啓蒙活動を我々が行ってきた下地があるからこそ、スムーズに市場拡大へつながると自負しています。

そして今、一緒に市場を創っていく状況になりました。有機ELで他のメーカーさんが参加され、日本のテレビ市場は大きく活気づくでしょう。その中でLGが活躍して日本市場の活性化に貢献できれば、これ以上のことはないと思っています。テレビの市場はもっともっと盛り上げていけると思います。

これから複数のメーカーでパイを取り合うのではなく、互いに大きくしていき、市場全体がさらに大きくなることを我々は願っています。単に日本の市場でテレビを売るということでなく、新しい価値を一緒に創造し、一緒に活躍することを我々は常に考えています。そこでどんな価値を提案するかですね。

LGは今年、賞を頂戴したハイエンドモデルのW7Pシリーズ、プレミアムモデルのE7Pシリーズ、そして普及型モデルのC7Pシリーズを縦軸展開、さらにスタンドタイプと壁掛けタイプで横軸も展開し、複合的な価値訴求で有機ELテレビを推進します。さらに夏商戦に向けて、いよいよ新しい77インチモデルも加わります。魅力的な商品を推進して、テレビの新しい市場づくりにまい進したいと思います。

店頭では、当社のテレビのコーナーにスローガンを掲げています。「全ての有機ELテレビは、LGから始まる」。それをちょっとだけ強調させていただきたいですね。我々は一生懸命道をつくってきましたから。その道に皆でバスを走らせればいいと思っています。1つのバスを取り合うのでなくて、バスを何台にも増やしていく。するともっとたくさんの人が乗っていけます。それぞれたくさんの人を乗せたバスで、一緒に走っていきたいと思っています。

◆PROFILE◆

李 仁奎氏
1991年 LG 電子(現LGエレクトロニクス)入社。1998年 LG 電子ジャパン(現LGエレクトロニクス・ジャパン)開発支援チーム、Sourcing & Alliance グループに配属となり6年間日本に赴任。2004年本社へ帰任、Display 本部の経営戦略グループ長などを経て、2013年 TV 事業部長/常務。2014年 TV/Monitor 事業部長/専務。2016年 LG Electronics Japan 社長/専務に就任。

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