【特別企画】キーパーソンが語る製品化の背景
ザッツの“長期保存用ディスク”「DVD-R for Archive」開発の狙い − キーパーソン対談
様々なデータを保存・管理する“アーカイブ”。子供の成長記録から公的文書の保存まで、そのニーズは非常に幅広い。そんななか、意気込みも新たに、商品名にズバリ“アーカイブ”を銘打った新商品「DVD-R for Archive」を携え、スタート・ラボが立ち上がった。強力タッグで商品化を実現した製造委託先「ザッツ福島」のキーパーソンの生の声を交え、新商品が身に付けた安定性・信頼性をここに明らかにする。
■未知の次元を制する数値化できない匠の技 |
ーー それでは、まず「DVD-R for Archive」の商品化の狙いについてお聞かせください。
揚 アーカイブ・ソリューションは永遠のテーマだと言い続けています。今、クラウドやHDD、フラッシュメモリーなど色々な選択肢が台頭してきましたが、オフラインでもフィジカルにアーカイブできる光ディスクの持つ優位性や安心感は、まだきちんと伝えられていません。
アーカイブの意義、そして、そこで光ディスクが担う大きな役割をご理解いただくために、その牽引役となる商品として今回企画したのが「DVD-R for Archive」です。
(株)スタート・ラボ 1970年のサッカーワールドカップ決勝戦の模様を納めた永久保存版のベータテープを手にする揚社長。すでにベータのビデオデッキはなく、視聴することができない。それをアーカイブしたのがもう一方の手にするDVD。「同じ思いを持つお客様はたくさんいるはず」とアーカイブニーズの喚起を強く訴えた |
ーー スタート・ラボからの提案に、製造を担うザッツ福島では、アーカイブを冠した商品に対し、どのような点がポイントになりましたか。
新井 CD-Rが登場したのが1988年です。当時の開発品が社内にもありますが、再生してもしっかりと音が出ますし、再生波形を確認しても劣化は認められません。24年以上経っても全く問題がないのです。
長期間の安定性能・保存性というテーマはこれまでもやり続けてきたことで、そこにあえて「アーカイブ」と銘打ち商品化するときに、何がテーマになるのか。
ドライブメーカーと初期設計段階からいろいろな合わせ込みを行うなどしていますから、基本設計には手を付けられません。つまり、初期段階ですでに商品としてのポテンシャルは決まっています。
となれば、工業製品である以上、商品性能はある範囲の中に収められていますから、そのバラツキをさらに高いレベルの中に抑え込むことがテーマとなります。
ーー 技術的にはどういった点にご苦労されたのでしょう。
濤川 メディアとして商品化されるまでには何十もの工程があります。その工程が後ろにいけばいくほど振れ幅は拡がり、狭くなることはありません。すなわち、最初にどれだけ安定的にバラツキがないものをつくれるか。スタートがもっとも大切になります。
そこで商品化に向けて、特性やスペックを定めた基準のハードルを一気に上げました。人間というのは、辛く、厳しくても、どうにか対応できる術を見つけ出せるもので、とことん議論して検証を進めていくうちに、ハードルを一つ、一つ、クリアしていくことができました。
ただしそこにはテクニックが必要で、しかも、(そのテクニックは)ものづくりをする人なら誰もが持っているというわけではないのです。それぞれの工程に長けた、数値化できないような職人技を持つ匠でなければできない。そうしたメンバーを“アーカイブをつくれる人”と認定して組み上げた工程が、商品化を実現させた根源になっています。
下西 メーカーならばどこでも、開発サイドと製造サイドの間に意見の相違が出てきます。しかし、そのすり合わせが非常にうまくいっていることも要因のひとつに挙げられると思います。その鍵は、ザッツ福島の工場設備が内製であることです。「機械をこうしないと生産性が上がらない」「こういう設計でないと目指す性能が出せないから、そのためにこういう設備にしたい」といったやりとりが、生産ラインをつくる前からできる環境にあるのです。
濤川 設計された材料、材料を使うためのプロセス、プロセスを自動化するためのマシン。まさに三位一体であることが大きな強みになります。色々な融通も利きますし、改良・改善にもスピード感があります。
ーー 大量生産、生産効率優先の時代の中にあって、こだわりの商品の実現へ向け、生産技術、製造技術に携わる人たちが、意識を改革して臨めたことは素晴らしいですね。
揚 「安心して長期保存が出来るメディアが欲しい」というお客様の声をきっかけとしてスタートした商品開発、随分と無理なお願いをさせて頂きましたが、製造サイドでの意識の切り換えができたからこそ、「DVD-R for Archive」を生み出すことができたと言えるのではないでしょうか。
■カタチになった思いをきちんと伝えていく |
ーー お客様に理解をいただくためには、乗り越えなくてはならないハードルもあります。
新井 HDDの信頼性も上がってきていますし、なおかつ容量に対する価格がぐんと下がっています。確かに光ディスクの価格は飛び抜けて安いのですが、他のメディアに比べると、焼くことを手間に感じる人もいらっしゃいます。
また、デジタルカメラでの撮影など、パーソナル・データの量が膨大になり過ぎて、本当に大事なもの、見たいものに容易にアクセスもできなくなっている人が少なくないのが実情です。だから、HDDがいっぱいになったらまた買い足しての繰り返しになります。使う側に、データを取捨選択する文化が根付いてないのですね。困った後では遅いのです。
揚 日本のものづくりの技術で商品化を実現してきた「トリプルガード」や「DVD-R for Archive」を、私たちは誇りを持って販売しています。海外製の商品が多く、安価なメディアもありますが、私共としては徹底的に『品質』にこだわり、日本製を武器としたもの作りに専念していきたいと思います。
前述のように「DVD-R for Archive」は「こんな商品が欲しい」というお客様の声をきっかけとして商品開発がスタートしました、開発・製造・販売する私共の強い思い入れをスパイスとして出来上がった商品という背景があります。撮り直しのきかない大切な記録や思い出を安心して後世に残せる商品であり、ご愛顧頂ければ幸甚です。