8Kモニターを4月発売、約148万円
「8K」液晶は欧州で受け入れられる? 「超高画質」でシェア拡大ねらうシャープの戦略
日本で昨年12月に発売された業務用8Kカムコーダー(関連ニュース)も、欧州でローンチを控えている。シャープの藤根氏は、「モニターとカメラが揃うことで、BtoB市場にもシャープの8Kエコシステムを広げていきたい」と述べている。IFA2017に出展したことで、欧州でシャープの映像機器に対する注目が再び高まっていると藤根氏も感じているようだ。
Lange氏もまた「近年、大画面テレビの先端技術とされてきた3Dやカーブドディスプレイは、欧州でも根付かなかった。これからはテレビの本質である “画質” が、4K/8Kへとステップアップしていく。本当のうねりが生みだせるのでは」と、欧州でのAQUOSの高画質戦略に期待を寄せた。
フランス・テレビジョンのBernard Fontaine氏は、昨年シャープのブースに出展されていた8Kモニターのファーストインプレッションを次のように語っている。「まるで3D映像を見ているような没入感に圧倒された。説明を受けるまでは試作機だろうと思って視聴していたが、欧州で商品化を予定している8Kモニターであるということを知り、急いでパートナーシップを組むことを決めた」。
5月21日から6月9日まで開催されるテニス全仏オープン「ローラン・ギャロス」をシャープの業務用8Kカムコーダーで撮影し、「LV-70X500E」で視聴する8K実証実験の詳細について、Fontaine氏に聞いた。スタジアムには2種類の視聴環境が組まれるという。ひとつはカメラで撮影した映像をアストロデザインの8Kクロスコンバーターに通し、スタジアム内に設置した1台の8Kモニターと有線でつないでリアルタイム表示。4K/2Kへのダウンコンバート制作を含むポテンシャルを検証するというものだ。
もうひとつのパターンは、ポストプロダクションを経て録画ファイルを作成し、VIP関係者を集めた2箇所に置いた8Kモニターで視聴を行う。グラスバレーの8K対応ビデオ編集ワークステーションを介して、HDDに録画したコンテンツを8Kモニターに映す。本プロジェクトではドイツのSpin Digital社が提供するビデオコーデックエンジンによって、HEVC/H.265方式で圧縮した映像素材が使われる予定だ。
なお放送環境を想定した無線伝送の技術についても、フランスの大手キャリアであるオレンジと協業し、今回の全仏オープンでの実施を目指して検証を重ねてきたが、残念ながら合わなかったという。Fontaine氏は「これから次世代高速通信5Gの技術が2019年の商用化に向け一段と成熟するはずなので、機会をあらためて年内にでも、また挑戦したい」と意気込んでいる。
フランス・テレビジョンでは全仏オープンの4K映像制作を2013年から始め、現在は商用のコンテンツとしてフランスのテニス連盟を通じて提供している。その実績を踏まえながらFontaine氏は「4K対応の編集機材も充実してきたことから、欧州の映像プロダクションでもいまスポーツやドキュメンタリーを中心に4K画質のマスター制作が盛んになりつつある。当社もこれから8Kの高精細なマスターをダウンコンバートし、4K/2K画質のコンテンツとして提供するためのビジネスモデルについても¥検証を進めたいと考えている。あくまで私見だが、2030年ぐらいには8K画質の映像アーカイブ制作が業界の標準になるものと期待している。シャープが発売する8Kモニターは、デジタルテレビの歴史における新たな第一歩だ」と述べていた。
(山本 敦)