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“アナログ感”を全面に押し出したLP盤『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』、その制作に込めた想いとは
―改めて『Pure2』のマスターの音を聴いた感想を教えてください。
下川氏 やっぱりすごい。アナログにこだわって録音したことが改めてこんなに成果がでるのかと。アナログ録音はコストのことを考えず簡単にできるのであればやりたいけれど、ちょっと手間と技術がいる。さすがに自社の録音チームだけでは扱いきれないですね。橋本さんにお願いすれば別だけど。敷居が高いなと。
トータルでアナログ感を目指して作った『Pure2』がアレンジの方向性を含めて橋本さんがはじめからプロデュースしている結果、音も良いということになっているから、打ち込み主体で作られたゲームに使うOP曲をアナログハーフで録ればそれがいいのかというと、それも違いますしね。打ち込みには打ち込みの良さがありますし、いい勉強になります。
橋本氏 AD変換をしていても問題なかったですね。トラックダウン段階までのアナログ感がしっかり感じ取れました。デジタル前提で作ってきたものとアナログで始めたものとの違い、その差は大きいということが明らかに出ていましたよ。改めてハーフの威力を思い知りましたね。
―レコーディングから7年経っていますが、その間に『Pure3』セッションや海外レコーディング&ミックス、マスタリングを行った『うたわれるもの 偽りの仮面&二人の白皇 歌集』と、録音的に大きなプロジェクトがいくつもありました。7年間の流れも踏まえて『Pure2』セッションのサウンドで感じることはありますか?
橋本氏 何年経って聴いても、“いい音で録ってたんだ”と気づかされましたし、手を抜いてはいけないと改めて思いましたね。残るだけのものを録っていて良かったなと。
下川氏 トータルの意味で、『Pure2』はジャズというアレンジの好き嫌いは別として、音の良さ、バランスは最も良いものだと思います。ロンドン、LA、ボブ・ラディックとの布陣でやったけれど、一貫して『Pure2』が優れていると改めて感じました
橋本氏 『Pure2』はアレンジも含めて“音がいい”と感じやすい素材にしていたことも要因ですね。『うたわれるもの 偽りの仮面&二人の白皇 歌集』のロンドンにおけるストリングスセッションも、音はすごく良いけれど、打ち込みのものと混ぜるから、ある程度音処理しないとまとまらない。でも『Pure2』は生のまま完結させているから、すごく音がいいと感じやすいわけです。
下川氏 それを含めて、色々やりきった後だから、分かるというね。素人的には最後は海外でやらないと無理じゃないかという思いがあったけれど、そんなことはないというのがよく分かりました。そして勉強になったのは、予算をかけるところはかけつつ、ちゃんと技術やセンスを持っていて分かっている人と組んで録音すれば、海外で無茶苦茶お金かけてやるのと変わらないところまで持っていけるということ。
回数を重ねるたびにコスパの良いやり方が見えてきているし、『うたわれるもの 偽りの仮面&二人の白皇 歌集』の時に予算をかけてやりきったから、どこが“費用対効果が高い”という具体的なパターンが見えてくるようになりましたね。
―昨今改めてレコードが見直され、プレーヤーも増えてきました。『Pure2』を改めてLPで聴く、良さやポイント、どういうところを聴いてほしいでしょうか。
橋本氏 いい装置で聴けば、レコードの方がマスターの音に近く感じます。デジタルには録音時のシステムと再生時のシステム間における相性とか、変なところに落とし穴があったりするんです。でもアナログ、レコードの世界は技術が確立されているから、ある程度良いものをチョイスして聴けば、マスターテープに近いサウンドを得ることができると思います。ジャケットアートを楽しむアイテムとしての要素も大事ですが、レコードは可能性を秘めたメディアです。いい音を出そうと思えば出すことができるというのが素晴らしい。MP3ではそれができませんからね。
下川氏 アナログに対する優劣はすごく難しいことです。どっちが優れているというのではなく、アナログの方が聴いていて好きですね。ながら聴きできる、ある種の“ゆるさ”みたいなところが良いんです。そうした点では反対の意味となるかもしれませんが、デジタルメディアは音楽を簡単にかけることができるけれど、アナログ、特にレコードだと聴くためにはプレーヤーの調整とか、盤面のクリーニングとか、音を出すために必要な手順が多いですよね。でもわざわざ作業するところに真剣に音楽に向き合う意味が生まれる。
その過程を経て音が出た時、聴く時の楽しさ、改めて音楽のことを考え、良さを実感できるのではないでしょうか。そういうところがアナログとしての面白さ、醍醐味ですよね。さらにファッションとしても、そしてジャケットも大きいからコレクター心もくすぐるという、モノとしての存在価値も大きいですから。
最近の製作した曲もレコードにしていますが、デジタル環境で録音したものをそのままレコード化しても、アナログ的なレコード感がしない。すごくCD的と言いますか、意外にそのままなんです。パチパチと鳴るノイズがなければ、CDを聴いているような感覚になります。そういう意味で言うと『Pure2』はレコード盤に最適。あらゆる面でアナログを目指してアナログで録っているから、とても相性が良い。すごい良さが際立つと思っていますよ。
―私もLP化された『Pure2』を聴くのが本当に楽しみです。お忙しいところ、ありがとうございました。
『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz』(アナログ盤)
●発売日:2018年4月27日
●品番:FIJA-007/008
●価格:¥5,000+税
●レコード仕様:33回転/重量盤 2枚組
●レコード収録曲
A面:キミガタメ(歌:Suara)/君をのせて/星想夜曲(歌:Suara)
B面:Brand-New Heart/届かない恋/トモシビ(歌:Suara)
C面:夢であるように(歌:Suara)/君のままで/Tears to Tiara -凱歌-(歌:Suara)
D面:旅立つ人へ(歌:Suara)/ガーネット/長瀬のテーマ
●発売元:フィックスレコード