コアレス・ストレートフラックス型カートリッジ「青龍」の上位モデル
トップウイング代表取締役 佐々木原幸一氏インタビュー。注目のカートリッジ「朱雀」に秘められた挑戦を訊く
毎年、ミュンヘンのHIGH ENDへ行く度に思うのは、アナログ関連機器の多さだ。日本でもお馴染みのブランドから見たことのないようなブランドまで、実に多数の製品を目にすることができる。しかし、話題を集める製品となるとその数は極めて限られる。トップウイングが満を持して市場へ投入したカートリッジ「青龍」と、前項でもご紹介した最新モデル「朱雀」は、まさにそんな貴重な製品といっていいだろう。本稿では、最新モデルとなる朱雀の誕生の背景にはどのような物語があり、その先にはどのような“野望”があるのか。同社を牽引する佐々木原幸一氏のお話から紐解いてみたい。
■青龍のポリシーを引き継ぎ軽量化を実現した
トップウイングのカートリッジがいま、世界のアナログファンの話題を席巻している。ここまでの評価を集めた理由を探れば、コアレス・ストレートフラックスという世界初の構造を採用したこともさることながら、やはり日本の最先端のエンジニアリング技術を駆使して辿り着いたそのサウンドにあるのだろう。
「青龍」については度々本誌でもご紹介してきたが、その上位モデルとして登場したのが、「朱雀」。朱雀の誕生にはちょっとした物語がある。
「青龍を発表した時からお話させていただいていることが、音場、サウンドイメージについて。海外の方はそれを『3ディメンション』と表現してくれて、それが素晴らしいとおっしゃってくれるんです。ただ、再生するLPそのものの中には、この3ディメンションを意図して作っていない盤もあるんですね。音場よりも『前に出てくる音が良い音だ』と言われている時代もあったくらいです。ただこの流れが変わったのは、個人的にはB&Wの登場からだと思っています。B&Wは位相がものすごくしっかりしているので、3ディメンションを大切にして制作された音源では非常にきれいに奥行きを出してくれるんです。やがてCDの時代になって、同じマスターから制作したCDとLPを比べた時に『音色はLPが良いけど、音場定位に関してはCDの方が良いよね』ということが度々ありました。『でもそれは、もしかしたらカートリッジのせいかもしれないぞ』と考えたんです」(佐々木原氏)
佐々木原氏は、アナログとデジタルの良さを兼ね備えたカートリッジを生み出すことを決意した。そのためにはアナログ再生に密接に関係する振動対策が重要だと考えた。青龍は徹底的に鳴きを排除して、針先だけの振動を伝えるための構造/素材を徹底的に追求したそうだ。その数あるアプローチのひとつが、超々ジュラルミン削り出しの筐体だったわけだ。
「青龍は、元ナカミチの目黒弘が考案した発電方式自体が非常に優秀だったことに加え、振動に対しても非常に優れた特性を持っていたので、このサウンドにすることができたんだと思います。『良いのができた!』と喜んで色々なところに持っていったんですけど、まず一番最初に指摘されたのが、重すぎるということ。確かに音は良いけど、取りつけられるアームに限りがあるじゃないか、ということですね。『質量の軽い青龍』が求められることになって、自ずと朱雀のポリシーが決まりました」(佐々木原氏)
しかしここでいう設計ポリシーは、振動対策が肝だった青龍の根本的な部分を、まったく逆のアプローチで実現するということを意味していた。佐々木原氏は、青龍の筐体設計を担当したファーストメカニカルデザインと相談を重ねた。
■青龍のポリシーを引き継ぎ軽量化を実現した
トップウイングのカートリッジがいま、世界のアナログファンの話題を席巻している。ここまでの評価を集めた理由を探れば、コアレス・ストレートフラックスという世界初の構造を採用したこともさることながら、やはり日本の最先端のエンジニアリング技術を駆使して辿り着いたそのサウンドにあるのだろう。
「青龍」については度々本誌でもご紹介してきたが、その上位モデルとして登場したのが、「朱雀」。朱雀の誕生にはちょっとした物語がある。
「青龍を発表した時からお話させていただいていることが、音場、サウンドイメージについて。海外の方はそれを『3ディメンション』と表現してくれて、それが素晴らしいとおっしゃってくれるんです。ただ、再生するLPそのものの中には、この3ディメンションを意図して作っていない盤もあるんですね。音場よりも『前に出てくる音が良い音だ』と言われている時代もあったくらいです。ただこの流れが変わったのは、個人的にはB&Wの登場からだと思っています。B&Wは位相がものすごくしっかりしているので、3ディメンションを大切にして制作された音源では非常にきれいに奥行きを出してくれるんです。やがてCDの時代になって、同じマスターから制作したCDとLPを比べた時に『音色はLPが良いけど、音場定位に関してはCDの方が良いよね』ということが度々ありました。『でもそれは、もしかしたらカートリッジのせいかもしれないぞ』と考えたんです」(佐々木原氏)
佐々木原氏は、アナログとデジタルの良さを兼ね備えたカートリッジを生み出すことを決意した。そのためにはアナログ再生に密接に関係する振動対策が重要だと考えた。青龍は徹底的に鳴きを排除して、針先だけの振動を伝えるための構造/素材を徹底的に追求したそうだ。その数あるアプローチのひとつが、超々ジュラルミン削り出しの筐体だったわけだ。
「青龍は、元ナカミチの目黒弘が考案した発電方式自体が非常に優秀だったことに加え、振動に対しても非常に優れた特性を持っていたので、このサウンドにすることができたんだと思います。『良いのができた!』と喜んで色々なところに持っていったんですけど、まず一番最初に指摘されたのが、重すぎるということ。確かに音は良いけど、取りつけられるアームに限りがあるじゃないか、ということですね。『質量の軽い青龍』が求められることになって、自ずと朱雀のポリシーが決まりました」(佐々木原氏)
しかしここでいう設計ポリシーは、振動対策が肝だった青龍の根本的な部分を、まったく逆のアプローチで実現するということを意味していた。佐々木原氏は、青龍の筐体設計を担当したファーストメカニカルデザインと相談を重ねた。