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<山本敦のAV進化論 第166回>

<IFA>ソニーの有機ELスマホ「Xperia XZ3」は“ブラビア”の画づくり+シリーズ最高音質を搭載。その誕生秘話を開発者に訊いた

公開日 2018/09/02 08:24 山本 敦
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曲線を操作性向上に結びつけた洗練されたデザイン

Xperia XZ3は本体の側面に最薄部がわずか3mmというアルミフレームを採用。3D曲面ガラスを本体の前面だけでなく、背面にも配置して全体に滑らかにつながるフォルムとした。「有機ELを初めて採用したXperiaなので、その魅力を引き立てるデザインにしたかった」と大谷氏が語っている。フロントベゼルの色が4色のカラーバリエーションのどのモデルも「ブラック」に統一されているので、映画を見るときなど没入感が損なわれない。細かなところにソニーらしい気配りが垣間見える。

XZ3に搭載されている有機ELパネルのモジュール。横から見ると薄さがわかる

有機ELパネルをガラスに貼り合わせるとこのようになる

さらに本体のホールド感を高めるための工夫は4つのコーナーにまで徹底追求されている。「強化ガラスを丁寧に曲げながら成形して、四隅も柔らかな丸みを持たせています。本体を横に構えながらカメラで写真を撮ったり、映像を楽しむ時に手の中に心地よく収まる感触を味わっていただけるのではないでしょうか」と語るのは機構設計担当の柏木氏だ。

本体のサイドフレームに使われているアルミ素材のブロック。左側の光沢感が強い新規開発の「7000番」のアルミがXZ3に使われている。右側はXZ2に採用されているアルミの無垢材

フレームに成形したパーツの比較。左側がXZ3、右側がXZ2

現行モデルのXperia XZ2は背面全体がかまぼこ型に緩やかにカーブしたデザインとしているが、XZ3はよりフラットな形状になっている。最厚部を比較するとXZ2は11.1mm、XZ3は9.9mmになる。本体を薄型化できた理由を柏木氏に訊ねた。

XZ3の基板。トップから両サイドにも基板を設けることによってフレキシブル基板をバッテリーセルの裏側に這わせる必要がなくなる。本体の薄型化やバッテリーセルのサイズアップに貢献している

「XZ3では本体を縦に構えた時に上側の位置に基板を配置していますが、両サイドにも基板の領域を設けたことで、本体の厚みに影響していくるフレキシブル基板を使う割合をXZ2よりも減らすことができました。そして有機ELはバックライトモジュールが要らないので、その点でも0.3mmほど薄型化ができています。内部容積を稼いだ分をバッテリーセルの容量アップ(XZ2の3,180mAhからXZ3は3,300mAhに変更)に当てることもできました」(柏木氏)

フラットな強化ガラスを上下左右、コーナーまで丁寧に曲げてからプラスチックOLEDを貼り合わせる。裏側も板ガラスから曲げ加工を行ったあと、最初に錫を蒸着。そこから徐々に塗装を重ねることで深みのある色を再現する。

XZ3を構成するパーツの分解イメージ

XZ3のカラバリはブラックにホワイト、フォレストグリーンとボルドーレッドの全4色。コンセプトは「Inclusion of Light=光を内包する」というイメージ。特にボルドーレッドは光が反射すると複雑で立体的な色の深みが感じられる。カメラユニットは単眼として、その直下の場所に指紋センサーを乗せた。

背面パネルの加色の工程。うすいあめ色になっているパーツはガラスに錫を蒸着した段階のもの。この上にさらに塗装を施して立体感のある色合いに仕上げている

AIがXperiaの快適な操作感を引き出す「Side Sense」

本機もクアルコムのモバイル向けプラットフォームのハイエンドSoC「Snapdragon 845」を搭載している。メインメモリは4GBとし、機敏な操作感を実現。欧州モデルとして発表された端末はストレージ容量が64GB。microSDカードスロットはSIMカードスロットと一体化されている。

トップの位置にmicroSD/SIMカードの一体型スロットが設けられている

Xperia XZ3には新しくAI(人工知能)とディープラーニングのテクノロジーを取り入れたユーザーインターフェース「Side Sense」が搭載された。左右ディスプレイのエッジを軽くダブルタップすると、その位置によく使うアプリや設定メニューへのショートカットを表示する。

新しいユーザーインターフェース「Side Sense」を搭載。設定からオン・オフが切り替えられる

よく使うアプリは全8件。最大7日間にユーザーが使用したアプリの履歴、曜日や時刻、場所に合わせた推定を行う。例えば「インスタグラムを見た後によくフェイスブックを立ち上げている」など、アプリを関連づけて頻度を解析。ベスト8のアイコンリストがSide Senseに表示される。

パネルのサイドをダブルタップするとSide SenseのUIが表示される。AIが識別した、ユーザーがよく使うアプリのアイコンやクイック設定のメニューが表示される

アプリの下にはWi-FiやBluetoothフラッシュライトなどユーザーの使用を予測して3件のクイック設定を表示する。Xperiaのクイック通知トレイに並ぶ項目は全てSide Senseに連動できる。ユーザーの行動に合わせて時間帯や場所に最適なクイック設定が現れる。

Side Senseのセンサーの感度を紹介するデモ。片手で深く握って複数の指や親指の腹が画面に触れてしまっても、グレーアウトしている部分はセンサーのタッチを無効にして、トップの親指の箇所だけで反応するようにチューニングされている

有機ELディスプレイのアドバンテージを活かして待機画面を有効に使えるAlways on Displayの機能が搭載された

例えば夕方によく足を運ぶカフェでパソコン仕事をする際にXperiaのテザリングを起ち上げていたら、Side Senseにもアイコンが並んでくるので、設定のオン・オフが素速くできるようになる。機能を設けた背景を矢部氏が次のように語っている。

「Side Senseはユーザーの皆様にXperiaを手軽に使っていただくための新機能です。AIの技術をむやみに誇示することが目的ではなく、むしろAIの存在を意識することなく、縦長画面のスマホでもアプリや設定が呼び出しやすい、操作がスムーズにできるといった体験を実感していただけたら嬉しいですね」(矢部氏)

IFAの会場に展示されたSide Senseの機能を紹介する巨大Xperia。家族連れに大好評だった

Xperia史上最高のスピーカー音質を実現

最後にXperia XZ3のオーディオのハイライトについても紹介しよう。ハイレゾ再生やBluetoothによるワイヤレス再生に目立った変更点はなかった。Xperia XZ2と同様にアナログイヤホンジャックは非搭載となり、USB Type-Cによるデジタル接続に一本化されている。

USB Type-C端子にイヤホンリスニングも統合。アナログイヤホン端子への変換アダプタが付属する

本体フロント側に開口部を設けるステレオスピーカーは音量をXperia XZ2比較で約20%アップしている。柏木氏は「縦に構えた時に上側に位置するスピーカーモジュールのサイズを大きくしています。ボトム側にはスピーカーボックスもあり、こちらの容積もアップしています。ふたつのスピーカーの音の出し方や指向性などチューニングを合わせこんで、自然なステレオ感を引き出すことにも腐心しました」と改良の経緯を振り返っている。そしてその成果は “Xperia史上最高のスピーカー音質” を実現したという。

本体トップ側のスピーカーユニット。サイズを大きくして音量アップを実現した

ボトム側のスピーカーボックスもサイズアップしている

さらにXZ2から採用がはじまった、入力された音声信号に合わせて本体が振動するダイナミックバイブレーションも引き続き搭載する。有機ELディスプレイと合わせて、没入感あふれる動画・ゲームコンテンツの再生が楽しめそうだ。

ソニーのXperiaを「画質」「音質」「デザイン」などクオリティ目線から支持していたファンには間違いなくおすすめできるプレミアムモデルが完成した。今からもう日本での発売が待ち遠しくなってくる。

(山本 敦)

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