クアルコム「aptX Adaptive」の詳細を聞く
Bluetoothの「音切れ無し」と「高音質」を両立させる新技術が登場、その仕組みとは?
さらにQualcomm社はSnapdragonチップでお馴染みの通り、多くのスマートフォンで採用され、電波状況の把握はお手のもの。スケーリングは、実際にレシーバー側で音途切れを検知してフィードバックを受けてから動作するのではなく、周囲の電波環境の変化を常に監視し、音途切れが発生しそうになると先回りしてビットレートを縮小する。同社ならではのアドバンテージだ。
なお、実際のスマートフォンで、どの程度の素早さ、どの程度のステップでビットレートを変更するのかは、セットメーカー次第という。因みに電波の監視頻度は非公開ながら、筆者が聞き出した数値は非常に高速でほぼリアルタイムといえるレベル。ビットレートのステップは最大140段階(1kbps)での設定が可能とのこと。
途切れにくく、また出来る限り最高音質を維持するのは、セットメーカーのアルゴリズムが大きく左右することになりそうだ。
■aptX Adaptiveを評価ボードで実際に体験、試聴した
今回はMcClintock氏が同社Belfast(英・北アイルランド)の研究所から持ち込んだ評価ボードと、デモ用アプリをインストールしたSnapdragon評価用スマートフォンを用い、aptX Adaptiveを体感した。
評価ボードはアンテナを取り外して受信感度を意図的に低下させることができ、スマートフォンを近づけたり遠ざけることで、擬似的に通信環境をシミュレーションできる。評価ボードからはS/PDIF(光デジタル)で音声データを取り出し、デノンのDAC/ヘッドホンアンプ「DA-310USB」に接続し、ヘッドホンで確認した。
スマートフォンを評価ボードから遠ざけると、アプリ画面で電波の受信強度を示すRSSI値(大きい程通信状態が悪い)が増し、それに応じてビットレートが435kbps→345kbps→290kbpsの3段階で変化するデモを体感。ビットレートが切り替わる際にグリッチ音(「ブチッ」というノイズ音)は一切発生せず、聴感上は切り替わりポイントの判別ができなかった。また290kbps時の音質も良好で音楽リスニングを充分に楽しめるレベルだった。
ちなみに290kbps (aptX Adaptive の最小は279kbps)という値は、SBCで接続性を最優先した設定(192kbps)よりも大きいが、近年は高音質化の流れを受けて実際のオーディオ製品ではSBCも328kbps (ビットプール53)で伝送されているケースが多い。またAACも300kbps程度で接続していることが多い。つまり、SBCやAACより小さいビットレートでCD品質の音質が確保できるのだから、aptX Adaptiveの利用価値は大きいと感じた。
■Android OSは12月にリリース予定「9.0 Pie」からサポート予定
aptX Adaptiveのアドバンテージは理解できたが、実際のところ、我々ユーザーは、いつ、どのように利用可能なのだろうか?
McClintock氏によると、aptX Adaptive自体の負荷はそれほど大きくなく、エンコーダー側(スマホ)が対応するのに大きな障害はないという。また、同アルゴリズムはAOSP(Android Open Source Project)に準じたもので、Snapdragonシリーズ以外の他社製SoCでも利用できる予定だ(ただしレイテンシーは80〜100msecになる見込み)。
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