ECLIPSEのタイムドメイン技術を活用
トヨタの純正オーディオは助手席も良い音、「ダブルツィーター」が実現した “同時定位” とは?
■トヨタからの提案に応えた “正確な音” を目指す設計
さて、試聴は神戸市内にあるデンソーテンの本社で、停止した状態と、その周辺を走行する2つのパターンで行った。ソースを再生してすぐにわかったのが、ダッシュボード中央に浮かび上がった明瞭なサウンドだ。
純正オーディオの多くがこれまでセンタースピーカーを併用することでこれを実現していたが、本システムは左右のスピーカーだけ。遅延音と直接音を巧みに組み合わせることで、見事なまでにサウンドステージがダッシュボード上に再現されていたのだ。
特に驚かされたのが、運転席/助手席のいずれでも走行音にほとんど影響を受けずに音楽を楽しめたことだ。これはサウンドステージがダッシュボード上に再現されているため、低周波が含まれるロードノイズの影響を受けにくくなったためと思われる。これによって音の輪郭がハッキリとしただけでなく、ボリュームをあまり上げなくても聴きたい音楽が楽しめるメリットももたらした。
「フロントステージ」「パノラマステージ」の2つのモードは、ハイレゾ音源のようにしっかり聴き込みたいなら前者が、BGM的に緩く聴くなら後者が適しているように感じた。残響成分も適度に再現されており、背後に再現される余韻が心地良くもあった。
さらに言えば、この音のコンセプトはデンソーテンが展開するホームオーディオ用スピーカー「ECLIPSE TD」にも通ずる。「タイムドメイン理論のコンセプトに基づく “正確な音” 作りを目指した設計を採用した」と話すのは、デンソーテン CI技術本部第四技術部第一技術チームリーダー、山本智則氏。
例えば、スピーカーユニットとエンクロージャーが直接接触しない「フローティング・コンストラクション」や、スピーカーユニットの高速前後運動を受け止める「グランドアンカー」などがそれに当たるという。
開発が始まったのは2年前で、「ダブルツィーターを活用することで、運転席でも助手席でも最適な音場を提供できるようにしたいと、トヨタから提案があった」(デンソーテン CI技術本部第四技術部 田中啓一郎氏)のだという。その提案をデンソーテンとしてどう実現させるか、となったわけだが、そこにホームオーディオの「ECLIPSE」で培ったタイムドメインの考え方が活用されたというわけだ。
ダッシュボード上にセットされたダブルツィーターの存在感も立派なものだ。そのデザインはピアノブラックと透明素材を使った素材感にもこだわったもので、これがオーディオ的な上質感も演出している。特にホーンツィーターにはネットを張ることもなく、トゥイーターとしての機能美をダイレクトに感じさせてくれている。
純正カーオーディオもついにここまで来たか! 「プレミアムダブルツィーターシステム」の音とその姿を体感すると、そんな思いにさせてくれるのは間違いない。
なお、「プレミアムダブルツィーターシステム」は、「T-Connectナビ」の10インチモデルと9インチモデルに対応。価格(税込み)は9万9,360円。全国のトヨタのお店でトヨタ車向けに注文することができる。
また本システムは、左右の乗員の音像定位が難しい車内オーディオ環境において、ダブルツィーターが果たす役割が評価され、公益財団法人日本デザイン振興会より「2018年度グッドデザイン賞」を受賞したことも付け加えておく。