Fanoble Meng氏が来日
新鋭DAPブランド “HiBy” が語る最新モデル「R5」。高い技術力ベースに音楽性を追求
■新鋭ブランド HiByが高い技術力を有する理由
ポータブルオーディオ業界は今、中国に拠点を置く数々の新興ブランドが席捲している。彼らはいずれも高い技術力とスピード感のある開発力を持ち、最新スペックを備えたDAPやイヤホンを手頃な価格で続々と投入。そのサウンドも日本のポータブルファンを唸らせている。
中国・東莞(とうかん)に拠点を置くHiByもそうしたブランドのひとつで、「R6 Pro」や「R3」といったモデルがここ日本でも人気を得ている。今回、このHiByのゼネラル・マネージャーで、製品開発も手がけるFanoble Meng氏が来日。同ブランドの最新DAP「R5」の詳細、HiByブランドの歴史について説明してくれた。
まずはHiByがどのような経緯で設立されたブランドなのか、なぜ短期間でここまでの開発力を得ることができたのかMeng氏に聞いてみた。
Meng氏はもともと、デジタルカメラやオーディオ機器などのコンシューマー製品の設計やODMを行う企業に勤めていたが、今から8年前の2011年、DAPなどオーディオ関連のコンシューマー向け製品の設計を行う会社を起業した。起業前からMP3プレーヤーなどDAPの研究・開発を行っていたこともあり、2014年からはDAP向けのソフトウェアの開発・提供を開始。そして2017年に自身のブランドとしてHiByを立ち上げた。
ブランド第一弾の製品となったDAP「R6」は、当初はクラウドファンディングによって出資が募られたが、その完成度の高さが世界のポータブルユーザーに支持され、大きな成功を収めた(PHILE WEB編集部にも、このR6をクラウドファンディングで購入した編集部員がいた)。その後、日本では飯田ピアノが総販売代理権を得て、「R6」やこれに続く「R3」や「R6 Pro」といった製品が日本でも発売。価格を超えるスペックと日本のユーザーにもマッチしたサウンドで、高い評価を獲得。現在の日本における中国発DAPの躍進の一角を担うに至っている。
HiByというと、他社製品でも長く採用されていた再生アプリ「HiBy Music」に象徴されるようなソフトウェア開発に強みを持つイメージがあるが、一方で「R6 Pro」をはじめたDAPのハードウェアについても、価格帯を超える高い完成度を誇っている。Meng氏は「他社製品のODMなど長年にわたってハードウェアの設計を手がけてきたので、HiByはハードウェアについての設計ノウハウも豊富に備えています。また、グループ内には高い製造力を備える関連企業があることも、優れたDAP製品を実現することができる理由のひとつです」と説明する。
■「R5」の詳細
最新DAP「R5」の詳細についても聞くことができた。これまでHiByのDAPはESS Technology製のDACを搭載してきたが、「R5」ではシーラス・ロジック製の「CS43198」をデュアル搭載している。
Meng氏は「このDACチップの特徴は、解像度の高さだけでなく、豊かな音楽性や温かみを備えていることだと思います。これまでの製品はポータブルオーディオファンに向けて、高解像度を追求してきました。R5は音楽ファンにも親しんでもらえるモデルにしたいと考え、音楽性や温度感の追求に主眼を置いています」と語る。なお、CS43198の前モデルであるCS4398は定番のDACチップであり、これまでも度々使っていたことから特性もよく知っており、その後継DACチップの使いこなしにも自信があったという。
R5はAndroid 8.1を搭載し、なおかつGoogle Playストアからのアプリ追加にも対応している。Android 9.1未満のDAPではGoogleのセキュリティー認証の関係で「Google Playストア」アプリを使えないと一般的に言われているが(実際に他社のAndroid 9.1未満のDAPではGoogle Playストアアプリが入っていない製品がほとんど)、R5はGoogle Playストアを公式に搭載している。これはなぜなのか。
Meng氏によれば、GoogleがAndroid 9.1未満を搭載した端末におけるGoogle Playストアのサポートを終了する前に、R5についてはその認証を通過させていたのだという。このあたりもソフトウェアに強いHiByの製品ならではといえ、各ストリーミングサービスのアプリも公式にインストールし、手軽に楽しめる点もR5の強みだ。
HiByのDAPというと、Android OSが実装しているサンプリングレートコンバーター(SRC)を回避してビットパーフェクト出力が行える独自アーキテクチャ「ダイレクトトランスポートオーディオ(DTA)」が有名だ。もちろんR5もこのDTAに対応している。
Meng氏は早い段階から、このSRCがAndroid OS搭載DAPにおけるボトルネックだと見抜き、Hi-Fiサウンドを実現するためにはこの部分の回避が不可欠だと考えていたとのこと。また、実際にSRCを回避できるのも、HiByの高度な技術があってこそと胸を張る。
R5の特徴である4.4mmバランス端子についても言及。端子部には品質に定評ある日本ディックス製のPentaconn端子を採用。この価格帯で4.4mmバランス出力の搭載を実現したことにも自信を見せる。
ちなみにこの4.4mm端子は、ライン出力も兼ねており、ヘッドホン出力とは独実したバランス構成のライン出力回路を備えている。据え置きシステムとのバランス接続を想定した4.4mm - XLRの変換ケーブルも今後ラインナップ予定だという。
内部のアンプについては、R6やとほぼ同じ構成を採用しつつ、R6Proの要素もフィードバックされているという。アンプICには「ADP8397」というDAPではよく用いられるICを使っているが、「多くのDAPはADP8397のポテンシャルを発揮しきれていない」とMeng氏。R5では独自のチューニングを行って、アンプの実力を最大限引き出しているとした。また、バランス回路における低ノイズ化も上級モデルに迫るレベルなのだという。
前述のように、R5がこれまでの同社のDAPと異なるのは、音楽ファンが音楽を楽しむために使うことをコンセプトに据えたことだが、Meng氏は「日本のJ-Popにも非常にマッチするチューニングだと思う」と語る。また、音楽ファン向けを想定して、サイズは可能な限りコンパクトにして、様々なイヤホンと組み合わせても音楽を活き活きと鳴らせるように、出力も大きくしたとのことだ。
■上級モデル「R8」やBluetooth周辺機器も予定
HiByの今後の取り組みについても聞いてみた。Meng氏は「詳細はまだ明かせないが、R8という、より上位のDAPを予定している」とコメント。さらにはBluetooth周辺機器も予定しているという。「今までのBluetooth製品の音は、正直よくなかった。HiByの技術を使えば、Bluetoothの音はもっと良くなる」と語ってくれた。
優れた技術力と旺盛な開発スピードで、ポータブルオーディオにおける注目ブランドとなったHiBy。最新の「R5」は同社の技術面での強みを、より多くのユーザーが享受できるモデルといえるだろう。
ポータブルオーディオ業界は今、中国に拠点を置く数々の新興ブランドが席捲している。彼らはいずれも高い技術力とスピード感のある開発力を持ち、最新スペックを備えたDAPやイヤホンを手頃な価格で続々と投入。そのサウンドも日本のポータブルファンを唸らせている。
中国・東莞(とうかん)に拠点を置くHiByもそうしたブランドのひとつで、「R6 Pro」や「R3」といったモデルがここ日本でも人気を得ている。今回、このHiByのゼネラル・マネージャーで、製品開発も手がけるFanoble Meng氏が来日。同ブランドの最新DAP「R5」の詳細、HiByブランドの歴史について説明してくれた。
まずはHiByがどのような経緯で設立されたブランドなのか、なぜ短期間でここまでの開発力を得ることができたのかMeng氏に聞いてみた。
Meng氏はもともと、デジタルカメラやオーディオ機器などのコンシューマー製品の設計やODMを行う企業に勤めていたが、今から8年前の2011年、DAPなどオーディオ関連のコンシューマー向け製品の設計を行う会社を起業した。起業前からMP3プレーヤーなどDAPの研究・開発を行っていたこともあり、2014年からはDAP向けのソフトウェアの開発・提供を開始。そして2017年に自身のブランドとしてHiByを立ち上げた。
ブランド第一弾の製品となったDAP「R6」は、当初はクラウドファンディングによって出資が募られたが、その完成度の高さが世界のポータブルユーザーに支持され、大きな成功を収めた(PHILE WEB編集部にも、このR6をクラウドファンディングで購入した編集部員がいた)。その後、日本では飯田ピアノが総販売代理権を得て、「R6」やこれに続く「R3」や「R6 Pro」といった製品が日本でも発売。価格を超えるスペックと日本のユーザーにもマッチしたサウンドで、高い評価を獲得。現在の日本における中国発DAPの躍進の一角を担うに至っている。
HiByというと、他社製品でも長く採用されていた再生アプリ「HiBy Music」に象徴されるようなソフトウェア開発に強みを持つイメージがあるが、一方で「R6 Pro」をはじめたDAPのハードウェアについても、価格帯を超える高い完成度を誇っている。Meng氏は「他社製品のODMなど長年にわたってハードウェアの設計を手がけてきたので、HiByはハードウェアについての設計ノウハウも豊富に備えています。また、グループ内には高い製造力を備える関連企業があることも、優れたDAP製品を実現することができる理由のひとつです」と説明する。
■「R5」の詳細
最新DAP「R5」の詳細についても聞くことができた。これまでHiByのDAPはESS Technology製のDACを搭載してきたが、「R5」ではシーラス・ロジック製の「CS43198」をデュアル搭載している。
Meng氏は「このDACチップの特徴は、解像度の高さだけでなく、豊かな音楽性や温かみを備えていることだと思います。これまでの製品はポータブルオーディオファンに向けて、高解像度を追求してきました。R5は音楽ファンにも親しんでもらえるモデルにしたいと考え、音楽性や温度感の追求に主眼を置いています」と語る。なお、CS43198の前モデルであるCS4398は定番のDACチップであり、これまでも度々使っていたことから特性もよく知っており、その後継DACチップの使いこなしにも自信があったという。
R5はAndroid 8.1を搭載し、なおかつGoogle Playストアからのアプリ追加にも対応している。Android 9.1未満のDAPではGoogleのセキュリティー認証の関係で「Google Playストア」アプリを使えないと一般的に言われているが(実際に他社のAndroid 9.1未満のDAPではGoogle Playストアアプリが入っていない製品がほとんど)、R5はGoogle Playストアを公式に搭載している。これはなぜなのか。
Meng氏によれば、GoogleがAndroid 9.1未満を搭載した端末におけるGoogle Playストアのサポートを終了する前に、R5についてはその認証を通過させていたのだという。このあたりもソフトウェアに強いHiByの製品ならではといえ、各ストリーミングサービスのアプリも公式にインストールし、手軽に楽しめる点もR5の強みだ。
HiByのDAPというと、Android OSが実装しているサンプリングレートコンバーター(SRC)を回避してビットパーフェクト出力が行える独自アーキテクチャ「ダイレクトトランスポートオーディオ(DTA)」が有名だ。もちろんR5もこのDTAに対応している。
Meng氏は早い段階から、このSRCがAndroid OS搭載DAPにおけるボトルネックだと見抜き、Hi-Fiサウンドを実現するためにはこの部分の回避が不可欠だと考えていたとのこと。また、実際にSRCを回避できるのも、HiByの高度な技術があってこそと胸を張る。
R5の特徴である4.4mmバランス端子についても言及。端子部には品質に定評ある日本ディックス製のPentaconn端子を採用。この価格帯で4.4mmバランス出力の搭載を実現したことにも自信を見せる。
ちなみにこの4.4mm端子は、ライン出力も兼ねており、ヘッドホン出力とは独実したバランス構成のライン出力回路を備えている。据え置きシステムとのバランス接続を想定した4.4mm - XLRの変換ケーブルも今後ラインナップ予定だという。
内部のアンプについては、R6やとほぼ同じ構成を採用しつつ、R6Proの要素もフィードバックされているという。アンプICには「ADP8397」というDAPではよく用いられるICを使っているが、「多くのDAPはADP8397のポテンシャルを発揮しきれていない」とMeng氏。R5では独自のチューニングを行って、アンプの実力を最大限引き出しているとした。また、バランス回路における低ノイズ化も上級モデルに迫るレベルなのだという。
前述のように、R5がこれまでの同社のDAPと異なるのは、音楽ファンが音楽を楽しむために使うことをコンセプトに据えたことだが、Meng氏は「日本のJ-Popにも非常にマッチするチューニングだと思う」と語る。また、音楽ファン向けを想定して、サイズは可能な限りコンパクトにして、様々なイヤホンと組み合わせても音楽を活き活きと鳴らせるように、出力も大きくしたとのことだ。
■上級モデル「R8」やBluetooth周辺機器も予定
HiByの今後の取り組みについても聞いてみた。Meng氏は「詳細はまだ明かせないが、R8という、より上位のDAPを予定している」とコメント。さらにはBluetooth周辺機器も予定しているという。「今までのBluetooth製品の音は、正直よくなかった。HiByの技術を使えば、Bluetoothの音はもっと良くなる」と語ってくれた。
優れた技術力と旺盛な開発スピードで、ポータブルオーディオにおける注目ブランドとなったHiBy。最新の「R5」は同社の技術面での強みを、より多くのユーザーが享受できるモデルといえるだろう。