認証プログラム発表を受けた次の動きは?
「8K時代のHDMIケーブル」に求められるものとは? エイム電子 中山社長に訊く
HDMI 2.1規格で規定されている48Gpbs/8K映像伝送の基準を満たす、「Ultra High Speed HDMI」の認証プログラムがHDMI Forumより発表された。これにいち早く呼応するかのように、米国ラスベガスで開催されたCESではエイム電子が48Gbps伝送可能な8K対応のHDMIケーブルを出展し、その後には日本での発売を正式発表。こうした、48Gpbs/8K映像時代のHDMIケーブル開発について、エイム電子代表取締役社長の中山栄志氏に話を訊いた。
―― CES2020で「Ultra High Speed HDMI」のケーブル認証プログラムが発表されました。これを受けて、今後すぐに8K映像伝送に対応したケーブルが各社から登場してくるということなのでしょうか。
いえ、もう少し時間がかかりそうです。認証プログラムは発表されましたが、テストが正式にスタートしていない為に、我々メーカーとしては「HDMI 2.1対応」「Ultra High SpeedHDMI対応」といった表現は正式には使えない状態なんです。
―― たしかに、御社が先日発表した「レーザーケーブルIII」もそうした表現は使っていませんでしたね。48Gbps伝送と8Kへの対応という表現になっていました。
ケーブルテストの環境構築が遅れている中で、テレビなどがVer2.1として対応し始めそうな状況から、我々は独自に各テレビや伝送装置等との接続検証を終えた製品としてレーザーケーブルIIIの販売を開始することとしました。
なお、製品出荷検査では、アイパターン波形を測定するオシロスコープのような測定器ではなく、市販もしくは産業向けに開発された機器のHDMIインターフェースから出力される48Gbps信号を伝送することで、出荷前の検査、動作確認を行う予定です。
―― ちなみに、その認証テストはいつごろ出来る見込みなのですか?
8K対応対応を謳っている「PS5」が2020年の年末商戦に登場予定であることを考えると、(8K対応認証取得済みの)HDMIケーブル量産のためには、夏くらいには測定機器ができていないと間に合いません。そこに間に合えば、という期待はあります。
―― 48Gbps/8K対応では、ケーブル設計の難易度はどれほど変わるのでしょうか。
カッパー(銅)のケーブルでは、導線の品質、および導線を束ねる設計の要求レベルが上がり、本当に物理の限界に近いレベルまで難易度が上がっています。品質といっても設計品質、製造品質とありますが、従来は設計品質さえ良ければある程度の性能は出せました。しかし、48Gbps/8K対応ではそうした基準が成り立たなくなります。
例えば、HDMIケーブルには19本の信号線があり、一本一本のケーブルが皮膜を被っていて、それを束ねてある構造です。その1本の信号線の中心に正確に銅線が配置されていないといけません。その偏心率がコンマ何ミリでズレるだけでちゃんとした特性がでなくなる、そういう難易度です。製造工程の途中でマイクロスコープで確認していないと品質が保てないレベルにまで来ています。
―― エイム電子もCESで光ファイバーのHDMIケーブルを展示していました。48Gbps/8K対応のHDMIケーブルでは光デジタルケーブルが主流になるのでしょうか。
48Gbpsという伝送レートを考えるとそうなっていくと思いますね。私は“カッパーの壁”と呼んでいるのですが、先ほども申し上げたように、銅線による伝送の物理的な限界がもう目の前にきているんです。元々、弊社は通信業界でやってきてLANケーブルも手掛けているので、銅の素材としての物理的な限界も分かっています。どのタイミングで光ファイバーが主流になるのかは分かっていましたので、その段階に来たということですね。
―― 「Ultra High Speed HDMI」では、EMI要件(ElectroMagnetic Interference/電磁波ノイズへの対策基準)の適合も定められました。現代社会ではBluetotohやWi-Fi等様々な電波が家庭でも飛び交っていますが、どの程度の影響があるのですか?
その部分については、高速信号になるほど微細なノイズに影響を受けやすくなることも起因しているかもしれません。ノイズに対するシールドのレベルもこれまではモノによって結構バラついていて、従来の規格上はそれで問題なかったんですよ。ですので、最終的な価格を抑えるためにその部分でコンマ何ドルというシビアなコストダウンが行われてもいました。しかし、今後はそういった製品では認証に通らないケーブルも出てくるでしょう。
―― 光ファイバーによる48Gbps/8K対応ケーブルの開発難易度はいかがでしょうか。
光ファイバーHDMIケーブル製造でクリアすべき問題としては、省電力性、熱の問題、そして通信帯域のレベル上がっていることに対するコントロールなどがあります。弊社は10年近く前、10.2Gbpsのときからオリジナル製品を展開していますが、元々、帯域が上がることを見越して設計をしていました。そのため、その後も通信速度のレベルを上げていくだけで基本設計を変えず開発・製造を続けられています。
―― なるほど。本日はありがとうございました。
―― CES2020で「Ultra High Speed HDMI」のケーブル認証プログラムが発表されました。これを受けて、今後すぐに8K映像伝送に対応したケーブルが各社から登場してくるということなのでしょうか。
いえ、もう少し時間がかかりそうです。認証プログラムは発表されましたが、テストが正式にスタートしていない為に、我々メーカーとしては「HDMI 2.1対応」「Ultra High SpeedHDMI対応」といった表現は正式には使えない状態なんです。
―― たしかに、御社が先日発表した「レーザーケーブルIII」もそうした表現は使っていませんでしたね。48Gbps伝送と8Kへの対応という表現になっていました。
ケーブルテストの環境構築が遅れている中で、テレビなどがVer2.1として対応し始めそうな状況から、我々は独自に各テレビや伝送装置等との接続検証を終えた製品としてレーザーケーブルIIIの販売を開始することとしました。
なお、製品出荷検査では、アイパターン波形を測定するオシロスコープのような測定器ではなく、市販もしくは産業向けに開発された機器のHDMIインターフェースから出力される48Gbps信号を伝送することで、出荷前の検査、動作確認を行う予定です。
―― ちなみに、その認証テストはいつごろ出来る見込みなのですか?
8K対応対応を謳っている「PS5」が2020年の年末商戦に登場予定であることを考えると、(8K対応認証取得済みの)HDMIケーブル量産のためには、夏くらいには測定機器ができていないと間に合いません。そこに間に合えば、という期待はあります。
―― 48Gbps/8K対応では、ケーブル設計の難易度はどれほど変わるのでしょうか。
カッパー(銅)のケーブルでは、導線の品質、および導線を束ねる設計の要求レベルが上がり、本当に物理の限界に近いレベルまで難易度が上がっています。品質といっても設計品質、製造品質とありますが、従来は設計品質さえ良ければある程度の性能は出せました。しかし、48Gbps/8K対応ではそうした基準が成り立たなくなります。
例えば、HDMIケーブルには19本の信号線があり、一本一本のケーブルが皮膜を被っていて、それを束ねてある構造です。その1本の信号線の中心に正確に銅線が配置されていないといけません。その偏心率がコンマ何ミリでズレるだけでちゃんとした特性がでなくなる、そういう難易度です。製造工程の途中でマイクロスコープで確認していないと品質が保てないレベルにまで来ています。
―― エイム電子もCESで光ファイバーのHDMIケーブルを展示していました。48Gbps/8K対応のHDMIケーブルでは光デジタルケーブルが主流になるのでしょうか。
48Gbpsという伝送レートを考えるとそうなっていくと思いますね。私は“カッパーの壁”と呼んでいるのですが、先ほども申し上げたように、銅線による伝送の物理的な限界がもう目の前にきているんです。元々、弊社は通信業界でやってきてLANケーブルも手掛けているので、銅の素材としての物理的な限界も分かっています。どのタイミングで光ファイバーが主流になるのかは分かっていましたので、その段階に来たということですね。
―― 「Ultra High Speed HDMI」では、EMI要件(ElectroMagnetic Interference/電磁波ノイズへの対策基準)の適合も定められました。現代社会ではBluetotohやWi-Fi等様々な電波が家庭でも飛び交っていますが、どの程度の影響があるのですか?
その部分については、高速信号になるほど微細なノイズに影響を受けやすくなることも起因しているかもしれません。ノイズに対するシールドのレベルもこれまではモノによって結構バラついていて、従来の規格上はそれで問題なかったんですよ。ですので、最終的な価格を抑えるためにその部分でコンマ何ドルというシビアなコストダウンが行われてもいました。しかし、今後はそういった製品では認証に通らないケーブルも出てくるでしょう。
―― 光ファイバーによる48Gbps/8K対応ケーブルの開発難易度はいかがでしょうか。
光ファイバーHDMIケーブル製造でクリアすべき問題としては、省電力性、熱の問題、そして通信帯域のレベル上がっていることに対するコントロールなどがあります。弊社は10年近く前、10.2Gbpsのときからオリジナル製品を展開していますが、元々、帯域が上がることを見越して設計をしていました。そのため、その後も通信速度のレベルを上げていくだけで基本設計を変えず開発・製造を続けられています。
―― なるほど。本日はありがとうございました。