オーディオ銘機賞2021 受賞インタビュー
エソテリック、注力モデルが強力に進化。こだわりのものづくりで国内・海外を魅了
オーディオ銘機賞2021
受賞インタビュー:エソテリック
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる “真の銘機” を選定する一大アワード「オーディオ銘機賞」において、金賞および特別大賞の2冠を達成したエソテリック。同社社長の大島洋氏が、受賞製品の手応えと今後の展開を語った。
エソテリック株式会社 代表取締役社長 大島洋氏
インタビュアー 徳田ゆかり(ファイルウェブビジネス担当)
■SACDプレーヤーはエソテリックの「顔」、最重要ゾーンに上位技術を注いだ「K-01XD」
ーー このたびはオーディオ銘機賞における金賞および特別大賞の受賞、誠におめでとうございます。まず、金賞を獲得したSACD/CDプレーヤー「K-01XD」のポイントについてお聞かせいただけますか。
大島素晴らしい賞を頂戴しまして誠に有難うございます。エソテリックのハイファイオーディオはハイエンドのGrandiosoを筆頭に、01、03、05、07といったシリーズ展開をしております。このたび金賞を頂戴しましたSACD/CDプレーヤー K-01XDおよび同時発売の「K-03XD」のシリーズは特に、ハイエンドにおける定番商品としての重要な位置付けとなります。
SACDプレーヤーはエソテリックの顔として、一切の妥協をしない信念で製品作りに取り組んでおります。このクラスの初代のSACDプレーヤー「K-01」は2010年に登場し、第二世代の「K-01X」が2014年、第3世代の「K-01Xs」が2018年で、今年のK-01XDは第四世代機。前モデルからかなりの進化を遂げた、高い完成度の仕上がりです。
昨年発売した「Grandioso K1X」では、ハイエンドにおける一体型SACDプレーヤーとして技術の粋を極め、新しい方向性を打ち出しました。K-01XDでは、この極められた技術の粋をより多くのお客様に楽しんでいただける価格帯に落とし込んでいます。
その1つは、Grandioso K1Xで採用した完全自社設計のディスクリートDAC「Master Sound Discrete DAC」の踏襲です。すべての処理を自社製のアルゴリズムで行い、汎用のDACやICを使わずにディスクリート回路設計で完成させており、エソテリックの粋を凝らしたものです。これを最も人気のある定番商品に落とし込むのは我々にとって初めての試みでした。
同様に、Grandioso K1Xから取り組んだ、ブランド設立以来のこだわりであるディスクトランスポート・メカニズムの基幹技術VRDSテクノロジーのSACD対応初代メカニズムVRDS-NEOに次ぐ2世代目となる新機構、VRDS-ATLASをK-01XDにも搭載しております。ディスクやメカニズムの不要振動を徹底排除し、ディスクの読み取りエラーを大幅に減少して優れた音質を実現するVRDSを設計から見直し、より高いレベルに昇華させたものです。
こうしたGrandiosoを受け継ぐ高いレベルの技術が注ぎ込まれており、そのためある意味でK-01XDは、Grandioso以上に工夫を凝らした製品と言えます。また直近では、12月25日に新製品としてKシリーズ10周年記念、K-01XDとK-03XDのブラックバージョンを限定で発売致します。全世界でそれぞれの製品が各50台ということで受注生産となります。黒のコンポーネントのニーズにもお応えするかたちです。
■技術の粋を惜しみなく注ぎ込んだハイエンドGrandiosoの新プリアンプC1X
ーー もうひとつ、ハイエンドのプリアンプ「Grandioso C1X」が特別大賞を受賞しました。
大島 誠にありがとうございます。Grandioso C1Xには、あり得ないレベルの技術の数々が投入されています。筆頭がウルトラ・フィデリティ・アッテネーター・システム。従来の「Grandioso C1」での0.5dB/100ステップを、0.1dB/1120ステップにまで高めて、非常になめらかなコントロールカーブでボリュームを切り替えられる。また新開発のディスクリート・アンプモジュールを採用し、基幹パーツに至るまで既製品ではなく、自社設計にこだわりました。
Grandiosoでは他にも、昨年出した一体型プレーヤーのK1Xとの組み合わせを想定した強化電源の「PS1」を出しました。K1Xを購入されたかなりの方がPS1を購入されており大変好評です。従来の「P-02X」と「D-02X」というトランスポート+ステレオDAコンバーターの組み合わせから、一体型プレーヤー+強化電源の形に変えて2筐体のニーズのお客様を取り込んだということです。K1XにPS1を追加すると一聴して解像度の広がりがわかりやすく、アピールポイントになったと思います。
プリアンプのフラグシップモデルであるGrandioso C1Xに対して、パワー・アンプは今回の銘機賞には間に合いませんでしたが、次の春にあっと驚く内容でご案内したいと思っております。そしてGrandioso C1Xのこうした技術を起点とした下のクラスやプリメインへの展開も、長期的な計画で進めていきます。
■コロナ禍以降の回復の速さで国内・海外ともに高まるハイファイオーディオ需要
ーー 昨今のオーディオの市況はいかがでしょうか。
大島 新型コロナウイルスの影響で巣篭もり需要が伸びており、ある面でオーディオの市場もその恩恵を受けています。地域や価格帯で変化はありますが、国内の高価格帯の商品の今年度10月までの7ヶ月間実績では、だいたい昨年と同水準です。ただ今年度はコロナ禍により4月〜5月にほとんど実績がありませんでしたので、今年度の5ヶ月間で昨年度の7ヶ月間並みの実績を上げたということなのです。コロナ禍の落ち込み以降の回復のスピードがかなり早い。
ただ状況は地域によってかなり違い、コロナ禍の影響はいろいろな要素が相反しています。従来旅行や外食に使われていたお金が、ステイホームとなり一部オーディオにまわったと思われ、特に既存のお客様の買い替え要素の後押しになっています。一方で今年は各地域のご販売店様主体の展示即売会が軒並み中止となりました。これは新製品のプロモーションや、新規のお客様へのアプローチに対して大きなマイナスです。
そうしたことを含め、3月〜4月に自粛していた頃の影響が6月以降に徐々に出てきたような様相です。新規のお客様はそれほど多くは感じませんが、既存のお客様の買い替えが増えている。そして11月以降はご販売店様での試聴会が徐々に始まっています。お客様もこれまで我慢し非常に楽しみにされていると思いますので、いい結果をもたらすと思われます。
ただ供給に関しては、4月にロックダウンを懸念して生産を絞った影響で、需要が上回る状況が続いており、年明け以降にバランスがとれてくるかとみておりますが、ここに来て海外も急速に伸びておりますので、やはりしばらくは悩まされることになりそうです。
海外でも4月〜5月はロックダウンでまったく動きませんでしたが、5月から輸出が再開し、そこからどの地域ともいいかたちで伸長しています。強い地域はヨーロッパ、アメリカ。中国、香港は我々にとっても大きな市場ですが、今のところ昨年比で微増。勢いを見れば特に中国がすごいです。
中華圏では台湾のハイエンドオーディオショーが9月に開催されました。今年のコロナ禍の中でこうしたイベントの開催は世界の中でも初めてです。また先日も上海でショーが開催され、我々は現地へはいけませんでしたが、新製品は出展させていただきました。中国市場向けの新製品で、そこの引き合いも非常に強い。この先年末から年明け、中国の旧正月にかけては、香港、中国、台湾の市況はかなり去年を上回ることになると見ています。香港は昨年はデモでお客様がお店に近づけない状況でしたが、今年は正常化しています。
ーー ディスクプレーヤーは国内のみならず、各地域で受け入れられているのですか。
大島 ヨーロッパではディスクについて否定的な表現をする評論家もいますが、お客様からは未だ強く支持されているのが実態です。我々のブランドだけでなく他のブランドさんもディスクプレーヤーを展開している中で、絶え間ない進化を続けるエソテリックブランドは、そんな海外のお客様にとっても輝いて見えるわけで、おかげさまで注目度がますます高まっている状況です。我々の長年の歩みを知って、ディスクプレーヤーからしばらく遠ざかっていたお客様もまた購入してみようかというアクションを起こしているのですね。
我々の長期経営プランの中では、CDプレーヤーの需要は時間をかけて徐々に減っていくだろうと想定しておりましたが、現状はその想定をまったく覆す現象が起きています。今年は新型コロナウイルスの感染拡大の中で巣篭もり需要が高まったという背景はありますが、それを差し引いても、我々のディスクプレーヤーに対する注目度や引き合いはかなりの伸びとなっているのです。
特に我々がMaster Sound Discrete DACを採用して以来、評価が非常に高まりました。アメリカなどでは、これまでどちらかというと既存のエソテリックのお客様からの買い替え需要が中心でしたが、昨今は新規のお客様が非常に増えています。Master Sound Discrete DACのオリジナリティーや音色の素晴らしさがこれを後押ししているのですね。
海外ではディスクよりストリーミング、と言われてはいます。しかし我々が新製品を出しますと、新しいファンをどんどん獲得しているのが実情なのです。実は我々自身も想像していなかったこと。我々の製品を体感して、オーディオ製品としての作り込みの良さは敬服に値すると高いご評価をいただいています。商品の魅力があれば、お客様に選んでいただける。まだまだ我々のビジネスは伸びていくと思っております。
■本質はいい音をお届けすること、変わらぬ姿勢でコミュニケーションに工夫を凝らす
ーー 昨今のコロナ禍の中で、エンドユーザーや販売店さんへの対応はどのようになさっていますか。
大島 コミュニケーションの方法も、リアルからデジタルに様変わりしていますね。お客様に対しては試聴会中心、体験中心のアプローチから、いかにデジタルでつながるかを日々試行錯誤しながらやっている状況です。SNSは活用を強化して、Facebookはエソテリックのアカウントも海外同様に国内で注力展開していますし、連動でYoutubeに動画も上げています。Twitterやインスタグラムのアカウントも新たに始めました。コロナ禍の中でとにかく急いで展開致しました。
ディーラー様に対して、海外にはウェビナーでトレーディングを実施しています。国内では年に1〜2回こちらにお呼びして研修会を開催していましたが、これもオンラインで実施します。テクニカルセミナーということで今月からスタートしています。
11月からは、徐々に国内のご販売店様での試聴会も始まっています。ある試聴会では少人数のお客様限定で3セッションが行われましたが、我々の開発メンバーも参加させていただき、お客様とのいい雰囲気の中でデモをさせていただけたと思います。こういう状況だからこそお客様はゆっくり音楽を聴きたい、本物の音を聴きたい、と思われ市況は活性化している。ステイホームの期間は、生活のあり方を見直す、家の中に目を向けるいい機会になったと思います。我々の業界にとってそれはやはり追い風になったと言えますね。
いずれにしても、いい音をお届けするという本質は変わりません。ただアプローチの方法は変わらざるを得ない環境にありますね。今後も様々に工夫しながらやっていきたいと思います。
ーー ティアックブランドも含めた、今後の展開をどのようにお考えですか。
大島 我々はティアック、エソテリックと2つのハイファイオーディオブランドをもっていますが、製品の位置づけもお客様も全く違い、これらが融合することはありません。ただ技術的要素は同一方向を目指しつつ、ティアックもエソテリックもそれぞれの個性を持って同様に成功させる、強い意志で展開していきます。
そして忘れてはならないのは、エソテリックも、ティアックを原点にスタートしたということです。VRDS1号機は1987年、私が入社して間もないころに国内はESOTERIC 「P-1」「D-1」として、海外はTEACブランドで出した技術です。メカトロニクスに強いティアックは、オーディオ事業と並行してコンピューターの周辺機器事業で強くなりました。それがVRDSのような重要な基幹技術に活かされている。すぐれた技術が我々のDNAであり、それぞれのブランドによりよく活かしていきたいと思っております。
ーー 有り難うございました。
受賞インタビュー:エソテリック
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる “真の銘機” を選定する一大アワード「オーディオ銘機賞」において、金賞および特別大賞の2冠を達成したエソテリック。同社社長の大島洋氏が、受賞製品の手応えと今後の展開を語った。
エソテリック株式会社 代表取締役社長 大島洋氏
インタビュアー 徳田ゆかり(ファイルウェブビジネス担当)
■SACDプレーヤーはエソテリックの「顔」、最重要ゾーンに上位技術を注いだ「K-01XD」
ーー このたびはオーディオ銘機賞における金賞および特別大賞の受賞、誠におめでとうございます。まず、金賞を獲得したSACD/CDプレーヤー「K-01XD」のポイントについてお聞かせいただけますか。
大島素晴らしい賞を頂戴しまして誠に有難うございます。エソテリックのハイファイオーディオはハイエンドのGrandiosoを筆頭に、01、03、05、07といったシリーズ展開をしております。このたび金賞を頂戴しましたSACD/CDプレーヤー K-01XDおよび同時発売の「K-03XD」のシリーズは特に、ハイエンドにおける定番商品としての重要な位置付けとなります。
SACDプレーヤーはエソテリックの顔として、一切の妥協をしない信念で製品作りに取り組んでおります。このクラスの初代のSACDプレーヤー「K-01」は2010年に登場し、第二世代の「K-01X」が2014年、第3世代の「K-01Xs」が2018年で、今年のK-01XDは第四世代機。前モデルからかなりの進化を遂げた、高い完成度の仕上がりです。
昨年発売した「Grandioso K1X」では、ハイエンドにおける一体型SACDプレーヤーとして技術の粋を極め、新しい方向性を打ち出しました。K-01XDでは、この極められた技術の粋をより多くのお客様に楽しんでいただける価格帯に落とし込んでいます。
その1つは、Grandioso K1Xで採用した完全自社設計のディスクリートDAC「Master Sound Discrete DAC」の踏襲です。すべての処理を自社製のアルゴリズムで行い、汎用のDACやICを使わずにディスクリート回路設計で完成させており、エソテリックの粋を凝らしたものです。これを最も人気のある定番商品に落とし込むのは我々にとって初めての試みでした。
同様に、Grandioso K1Xから取り組んだ、ブランド設立以来のこだわりであるディスクトランスポート・メカニズムの基幹技術VRDSテクノロジーのSACD対応初代メカニズムVRDS-NEOに次ぐ2世代目となる新機構、VRDS-ATLASをK-01XDにも搭載しております。ディスクやメカニズムの不要振動を徹底排除し、ディスクの読み取りエラーを大幅に減少して優れた音質を実現するVRDSを設計から見直し、より高いレベルに昇華させたものです。
こうしたGrandiosoを受け継ぐ高いレベルの技術が注ぎ込まれており、そのためある意味でK-01XDは、Grandioso以上に工夫を凝らした製品と言えます。また直近では、12月25日に新製品としてKシリーズ10周年記念、K-01XDとK-03XDのブラックバージョンを限定で発売致します。全世界でそれぞれの製品が各50台ということで受注生産となります。黒のコンポーネントのニーズにもお応えするかたちです。
■技術の粋を惜しみなく注ぎ込んだハイエンドGrandiosoの新プリアンプC1X
ーー もうひとつ、ハイエンドのプリアンプ「Grandioso C1X」が特別大賞を受賞しました。
大島 誠にありがとうございます。Grandioso C1Xには、あり得ないレベルの技術の数々が投入されています。筆頭がウルトラ・フィデリティ・アッテネーター・システム。従来の「Grandioso C1」での0.5dB/100ステップを、0.1dB/1120ステップにまで高めて、非常になめらかなコントロールカーブでボリュームを切り替えられる。また新開発のディスクリート・アンプモジュールを採用し、基幹パーツに至るまで既製品ではなく、自社設計にこだわりました。
Grandiosoでは他にも、昨年出した一体型プレーヤーのK1Xとの組み合わせを想定した強化電源の「PS1」を出しました。K1Xを購入されたかなりの方がPS1を購入されており大変好評です。従来の「P-02X」と「D-02X」というトランスポート+ステレオDAコンバーターの組み合わせから、一体型プレーヤー+強化電源の形に変えて2筐体のニーズのお客様を取り込んだということです。K1XにPS1を追加すると一聴して解像度の広がりがわかりやすく、アピールポイントになったと思います。
プリアンプのフラグシップモデルであるGrandioso C1Xに対して、パワー・アンプは今回の銘機賞には間に合いませんでしたが、次の春にあっと驚く内容でご案内したいと思っております。そしてGrandioso C1Xのこうした技術を起点とした下のクラスやプリメインへの展開も、長期的な計画で進めていきます。
■コロナ禍以降の回復の速さで国内・海外ともに高まるハイファイオーディオ需要
ーー 昨今のオーディオの市況はいかがでしょうか。
大島 新型コロナウイルスの影響で巣篭もり需要が伸びており、ある面でオーディオの市場もその恩恵を受けています。地域や価格帯で変化はありますが、国内の高価格帯の商品の今年度10月までの7ヶ月間実績では、だいたい昨年と同水準です。ただ今年度はコロナ禍により4月〜5月にほとんど実績がありませんでしたので、今年度の5ヶ月間で昨年度の7ヶ月間並みの実績を上げたということなのです。コロナ禍の落ち込み以降の回復のスピードがかなり早い。
ただ状況は地域によってかなり違い、コロナ禍の影響はいろいろな要素が相反しています。従来旅行や外食に使われていたお金が、ステイホームとなり一部オーディオにまわったと思われ、特に既存のお客様の買い替え要素の後押しになっています。一方で今年は各地域のご販売店様主体の展示即売会が軒並み中止となりました。これは新製品のプロモーションや、新規のお客様へのアプローチに対して大きなマイナスです。
そうしたことを含め、3月〜4月に自粛していた頃の影響が6月以降に徐々に出てきたような様相です。新規のお客様はそれほど多くは感じませんが、既存のお客様の買い替えが増えている。そして11月以降はご販売店様での試聴会が徐々に始まっています。お客様もこれまで我慢し非常に楽しみにされていると思いますので、いい結果をもたらすと思われます。
ただ供給に関しては、4月にロックダウンを懸念して生産を絞った影響で、需要が上回る状況が続いており、年明け以降にバランスがとれてくるかとみておりますが、ここに来て海外も急速に伸びておりますので、やはりしばらくは悩まされることになりそうです。
海外でも4月〜5月はロックダウンでまったく動きませんでしたが、5月から輸出が再開し、そこからどの地域ともいいかたちで伸長しています。強い地域はヨーロッパ、アメリカ。中国、香港は我々にとっても大きな市場ですが、今のところ昨年比で微増。勢いを見れば特に中国がすごいです。
中華圏では台湾のハイエンドオーディオショーが9月に開催されました。今年のコロナ禍の中でこうしたイベントの開催は世界の中でも初めてです。また先日も上海でショーが開催され、我々は現地へはいけませんでしたが、新製品は出展させていただきました。中国市場向けの新製品で、そこの引き合いも非常に強い。この先年末から年明け、中国の旧正月にかけては、香港、中国、台湾の市況はかなり去年を上回ることになると見ています。香港は昨年はデモでお客様がお店に近づけない状況でしたが、今年は正常化しています。
ーー ディスクプレーヤーは国内のみならず、各地域で受け入れられているのですか。
大島 ヨーロッパではディスクについて否定的な表現をする評論家もいますが、お客様からは未だ強く支持されているのが実態です。我々のブランドだけでなく他のブランドさんもディスクプレーヤーを展開している中で、絶え間ない進化を続けるエソテリックブランドは、そんな海外のお客様にとっても輝いて見えるわけで、おかげさまで注目度がますます高まっている状況です。我々の長年の歩みを知って、ディスクプレーヤーからしばらく遠ざかっていたお客様もまた購入してみようかというアクションを起こしているのですね。
我々の長期経営プランの中では、CDプレーヤーの需要は時間をかけて徐々に減っていくだろうと想定しておりましたが、現状はその想定をまったく覆す現象が起きています。今年は新型コロナウイルスの感染拡大の中で巣篭もり需要が高まったという背景はありますが、それを差し引いても、我々のディスクプレーヤーに対する注目度や引き合いはかなりの伸びとなっているのです。
特に我々がMaster Sound Discrete DACを採用して以来、評価が非常に高まりました。アメリカなどでは、これまでどちらかというと既存のエソテリックのお客様からの買い替え需要が中心でしたが、昨今は新規のお客様が非常に増えています。Master Sound Discrete DACのオリジナリティーや音色の素晴らしさがこれを後押ししているのですね。
海外ではディスクよりストリーミング、と言われてはいます。しかし我々が新製品を出しますと、新しいファンをどんどん獲得しているのが実情なのです。実は我々自身も想像していなかったこと。我々の製品を体感して、オーディオ製品としての作り込みの良さは敬服に値すると高いご評価をいただいています。商品の魅力があれば、お客様に選んでいただける。まだまだ我々のビジネスは伸びていくと思っております。
■本質はいい音をお届けすること、変わらぬ姿勢でコミュニケーションに工夫を凝らす
ーー 昨今のコロナ禍の中で、エンドユーザーや販売店さんへの対応はどのようになさっていますか。
大島 コミュニケーションの方法も、リアルからデジタルに様変わりしていますね。お客様に対しては試聴会中心、体験中心のアプローチから、いかにデジタルでつながるかを日々試行錯誤しながらやっている状況です。SNSは活用を強化して、Facebookはエソテリックのアカウントも海外同様に国内で注力展開していますし、連動でYoutubeに動画も上げています。Twitterやインスタグラムのアカウントも新たに始めました。コロナ禍の中でとにかく急いで展開致しました。
ディーラー様に対して、海外にはウェビナーでトレーディングを実施しています。国内では年に1〜2回こちらにお呼びして研修会を開催していましたが、これもオンラインで実施します。テクニカルセミナーということで今月からスタートしています。
11月からは、徐々に国内のご販売店様での試聴会も始まっています。ある試聴会では少人数のお客様限定で3セッションが行われましたが、我々の開発メンバーも参加させていただき、お客様とのいい雰囲気の中でデモをさせていただけたと思います。こういう状況だからこそお客様はゆっくり音楽を聴きたい、本物の音を聴きたい、と思われ市況は活性化している。ステイホームの期間は、生活のあり方を見直す、家の中に目を向けるいい機会になったと思います。我々の業界にとってそれはやはり追い風になったと言えますね。
いずれにしても、いい音をお届けするという本質は変わりません。ただアプローチの方法は変わらざるを得ない環境にありますね。今後も様々に工夫しながらやっていきたいと思います。
ーー ティアックブランドも含めた、今後の展開をどのようにお考えですか。
大島 我々はティアック、エソテリックと2つのハイファイオーディオブランドをもっていますが、製品の位置づけもお客様も全く違い、これらが融合することはありません。ただ技術的要素は同一方向を目指しつつ、ティアックもエソテリックもそれぞれの個性を持って同様に成功させる、強い意志で展開していきます。
そして忘れてはならないのは、エソテリックも、ティアックを原点にスタートしたということです。VRDS1号機は1987年、私が入社して間もないころに国内はESOTERIC 「P-1」「D-1」として、海外はTEACブランドで出した技術です。メカトロニクスに強いティアックは、オーディオ事業と並行してコンピューターの周辺機器事業で強くなりました。それがVRDSのような重要な基幹技術に活かされている。すぐれた技術が我々のDNAであり、それぞれのブランドによりよく活かしていきたいと思っております。
ーー 有り難うございました。