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オーディオ銘機賞2021 受賞インタビュー

ラックスマン、受賞モデルは伝統と革新の融合。節目の95周年を経てさらなるチャレンジを重ねる

公開日 2020/11/26 12:00 PHILEWEBビジネス 徳田ゆかり
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オーディオ銘機賞2021
受賞インタビュー:ラックスマン



国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる “真の銘機” を選定する一大アワード「オーディオ銘機賞」。今年金賞および特別大賞の2冠を達成したラックスマンにて、新社長 末吉達哉氏が受賞の栄誉とともに大いなる抱負を語った。


ラックスマン株式会社 代表取締役社長 末吉達哉氏

インタビュアー 徳田ゆかり(ファイルウェブビジネス担当)

■DACもメカもアナログ回路も一新のフラグシップモデル、SACDプレーヤー 「D-10X」


ーー このたびのオーディオ銘機賞2021において、御社のSACD/CDプレーヤー D-10Xが金賞を、さらにプリメインアンプ「L-595A LIMITED」が特別大賞を受賞されました。誠におめでとうございます。

末吉 有難うございます。栄誉ある賞を頂戴しまして大変有り難く、御礼申し上げます。

ーー 末吉さんの社長ご就任もあらためまして誠におめでとうございます。

末吉 今年の3月16日に代表取締役社長に就任致しました。新型コロナウイルスの感染が広がった時期に重なりまして、本来ならば全国のご販売店様始め関係各所にご挨拶をさせていただくはずだったのですが、残念ながらそれが叶いませんでした。地域ごとにいろいろな制限が出て、市場環境も一体どうなってしまうのかと、就任直後は大変不安な時期を過ごしておりました。

そんな頃、D-10Xが4月に発売となりました。昨年暮れの発売予定が遅れてしまいまして。今回銅賞を頂戴したCDプレーヤー「D-03X」も2月に発売しており、これらの新製品によっておかげさまで業績がぐっと上がり、一息つくことができました。D-10Xは私自身が現職に就く前に企画担当しましたが、本当に感慨深いモデルになりました。あらためて皆様に感謝を申し上げます。

ーー D-10Xは、オーディオ銘機賞の審査会でも大変高い評価を獲得しています。

末吉 D-10Xは、ラ ックスマンブランドにおけるSACD/CDプレーヤーのトップエンドモデル。従来の「D-08U」の後継機としてデザインを一部踏襲しましたが、DACもメカもアナログ回路もほぼすべて一新した渾身の1台です。

今回弊社で初めて、新たにローム社のDACを採用しています。企画段階でロームさんの評価ボードを聴く機会があって、低域の力強さ、空間の広さなど表現力が素晴らしかった。ロームさんにとっても初の高級オーディオ専用DACで調整に時間がかかってしまいましたが、結果として素晴らしい効果をもたらしています。

また、8mm厚のアルミサイドフレームと5mm厚のスチールトッププレートのボックス構造でメカ全体を覆うオリジナル設計のメカニズムLxDTMで、メカをフレームに直に固定する一体化構造に進化させたLxDTM-iを採用しています。そしてアナログ回路には、弊社の基幹技術ODNFの最終進化バージョンとなるODNF-uをフルバランス構成で搭載しています。

ーー 発売から半年が経過しましたが、手応えは。

おかげさまで上々です。今SACDプレーヤーは市場でも大変注目を集めていると実感します。他社様もこの価格帯に出されていますから、D-10Xもそこで存在感を示し、市場の盛り上がりに貢献できたかと思います。このたびのオーディオ銘機賞では、ラックスマンならではの音楽の表現力や、製品のたたずまいといった強い個性を高くご評価いただけて大変有り難く思っております。

海外でも評価が高く、製品の供給が追いつかずに米国・欧州・中国でお待ちいただいている状況で、海外でのSACDのニーズを再確認した思いです。このご時世で現地に行けていないので、販売代理店様とはZoomでミーティングしていますが、思いの外深いコミュニケーションができている気がしますね。

■創業95周年記念、新しいラックスマンの音を示す純A級プリメインアンプ L-595A LIMITED


ーー 特別大賞を受賞されたL-595A LIMITEDは、御社の95周年記念モデルですね。

末吉 弊社は今年95周年を迎え、記念モデルを2機種発売しました。1 つは国内で限定100台のヘッドホンアンプ「P-750u LIMITED」ですが、おかげさまですでに在庫がなくなりました。そして特別大賞を頂戴したプリメインアンプL-595A LIMITEDはこの10月に発売されたばかりで、国内限定300台の展開です。90年代の純A級アンプ「L-570」をデザインモチーフとしまして、ODNF-uなどの最新技術と伝統のデザインを組み合わせ、新旧を織り交ぜ融合させた新しいラックスマンの音を目指したものです。

L-595A LIMITEDのモチーフとなったL-570は、私が入社当時ラックスマンで営業に配属され、販売研修を終えて本社でいよいよ活動が始まるという頃に発売されたものです。今でも覚えていますが、L-570を同僚と一緒に初めて箱から出した時、わぁカッコいいなあ、という高揚感を覚えたものです。実際に販売に携わって苦労もありましたが、非常に人気のあった製品で、私の原点でもあります。私自身、あの時の高揚感を再びという思いもあって、95周年記念のタイミングにL-595A LIMITEDを企画したのです。

この製品は海外でも300台限定で展開します。ただ海外では、安全規格をクリアするためにボンネットをアルミの仕様にせざるを得ませんで、L-570を踏襲したウッドの仕様の国内モデルとは異なるスタイルとなっています。しかしこれはこれで、いろいろな訴求の仕方ができると考えています。

■動画コンテンツ、限定試聴会、新たな方策で展開するコミュニケーション

ーー 素晴らしい製品が出揃い、いよいよ年末に向けたアピールのタイミングとなります。今年はコロナ禍の影響を大きく受けた1年となっていますが、いかがでしょうか。

末吉 昨今はコロナの影響による巣篭ごもり需要が顕著で、これまで以上に家のなかの暮らしを充実させたいというムードが高まっています。昨年日本では消費増税による市況の冷え込みが強かったので、今年はだいぶ雰囲気が変わりました。特別定額給付金も追い風でしたし。巣ごもり需要は日本だけでなく世界的にありますね。

ただご存知のとおり、今年は大型イベントがことごとく中止になりましたし、お客様に直接対峙してのプロモーションは難しい状況でした。しかし11月からようやく、各地の販売店様での試聴会が始まりました。参加人数を限定し、感染対策を万全にした上で、私どものメンバーがお邪魔して製品を体験していただくといった形になります。

こうした環境の中では、ある意味でより真剣味のある試聴会になるとも思います。私どもにとっても重要な製品を体感していただく貴重な機会であり、しっかりとお聴かせし、ご説明したい。お客様にとって親密感のある、集中できる試聴会にしたいと思っております。

また私どもでは初めての試みとなりましたが、動画コンテンツを使用したプロモーションを始めました。現在ラックスマンのホームページでは、D-03X、D-10X、L-595A LIMITEDそれぞれについてご紹介の動画をご覧いただけます。技術や音作りに関わるメンバーが出演し、我々自身で機材を揃えて撮影したものです。今後も対象モデルを広げてどんどん作成していく予定です。動画には私も出演させていただいていますが、なかなかセリフが覚えられず、姿勢や顔の向きなども苦労しました。

コロナによって、今後ももしかしたら以前のような状況に戻るのは難しいかもしれません。しかしどんな環境であっても、エンドユーザー様や販売店様とコミュニケーションを深めていくことに変わりはなく、動画の発信も含め新しいやり方へのチャレンジはますます必要だと考えています。

ーー 今年御社では、相模湖交流センターの多目的ホールに「ラックスマンホール」と命名されました。これはどのように活用されますか。

末吉 このホールは録音の聖地と言われていて、数々の著名な音楽家の方々が録音に使用されています。オクタヴィアレコードご出身の松田善彦さんが館長をやっておられて、ハイレゾコンサートを開催されていた時にお声がけいただきました。その時初めて多目的ホールを見ましたが、450人ほど収容でき、天井が高くて音がいい素晴らしい場所でした。

今年初めて命名権を募集されることとなり、応募しましたところ、幸いにして弊社を選んでいただき、4月1日から向こう5年間の契約を致しました。現在弊社HP上に特設ページを設けていますが、今後は動画などでもご紹介させていただく予定です。私どもとしては、そこで録音してオリジナルソフトを制作するとか、いずれオーディオコンサートを開催するとか、若いアーティストの方々のご支援などもできたらと考えています。また契約の更新が許されるとしたら、私どもの100周年にも記念コンサートができたらいいですね。

■95周年、そして次の時代へ。ピュアオーディオのラインナップ刷新

ーー 末吉さんご自身の経歴についてあらためてお聞かせいただけますか。

末吉 私は神戸で生まれ、大学卒業後に上京して1988年にアルプス電気に入社しました。同期1300人ほどの中から3名が選ばれ、ラックスマンに出向することになったのです。配属面接のときにオーディオが好きかと聞かれ、好きですと答えたことが運命の分かれ目になったのかもしれません。

オーディオが好きになるきっかけは、1980年、12歳の時にジョン・レノンが射殺されたニュースでビートルズの音楽を知り、いろんな友人宅のシステムでそれぞれが持っているレコードを聞き比べるようになってからです。音質がいいとワクワクするという事を始めて知りました。それから自分のシステムを手に入れ、FM放送をエアチェックしたり、レンタルレコード屋に通って、80年代の最新ヒットアルバムをカセットテープに録音したりして楽しみました。ちょうど同時期にサッカーを始め現在もプレーしていますが、オーディオとサッカーが、私の人生にこれほどまでに深くかかわるとは当時は思ってもみなかったことでした。

入社してからの32年間には会社にもいろいろなことがありました。アルプス電気の方々とは今もつきあいがありますが、彼らとはまた違ったいろいろな体験ができたと思っています。ラックスマンの創業一族である早川斉会長にも可愛がっていただき、一度ラックスマンからアルプス電気に戻ってアルパインに異動することになったのですが、その時に早川会長に残れと言っていただいて。それでアルパインの人事部長に手紙を書きましたら、発令を嫌だと言った奴は初めてだと言われました。結果的にラックスマン一筋となり、ずっと営業畑を担当して、ここ数年は商品企画も手がけてきました。新たに社長職を拝命しまして、あらためて身の引き締まる思いです。

ーー 95周年の節目を迎えて、今後に向けてどのように展開されますか。

末吉 今の時代、企業は変化せずに生き残ってはいけません。私どもはコアとなる伝統は大事にしながら、時代の変化に対応して着実に進化していきたいですし、新しいことにもチャレンジしていきたいです。ピュアオーディオの市場は以前のように大きく成長することはなく、ある一定の規模で残っていくことになるでしょう。そこで存在感を増していくためには、現状のラインナップをさらに充実させていくことが大切だと考えています。そのために、来年以降100周年に向けて、計画的に新製品を投入し、市場を盛り上げていくつもりです。銘機賞も毎年いただけるといいですね。

そして販売店様と手を取り合い、新しいお客様を見つけていかなければならないと思っています。地道な努力が必要ですね。動画での取り組みも、その一助になればと思います。日本では今後、人生や生活に少し余裕ができる 50代〜70代の方々の人口が増えていきます。コロナ禍を経験した今、日々の生活を豊かにしたいという流れはより一層強まり、まだまだチャンスがあると考えます。そのためにも、絶えずお客様目線で商品を磨き、精進していかなければならないと思っています。

ーー 100周年に向けて期待が高まります。有難うございました。

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