アナロググランプリ2021 受賞インタビュー
ラックスマン 末吉社長に訊く:こだわりの95周年モデルに大きな手応え。次なる展開に向け飛躍を期す
アナロググランプリ2021 Gold Award
受賞インタビュー:ラックスマン
「アナログ感覚が感じられ、オーディオファンに推薦するにふさわしいアナログ再生に欠かせない機器」を選出し、13年目を迎えたアワード「アナロググランプリ2021」。Gold Awardを受賞したラックスマンの社長 末吉達哉氏が、受賞の栄誉と手応えを語った。
ラックスマン株式会社 代表取締役社長 末吉達哉氏
インタビュアー 徳田ゆかり(ファイルウェブビジネス担当)
■最新技術と伝統のデザインを融合した純A級プリメイン L-595A LIMITED、国内・海外で大好評
ーー 「アナロググランプリ2021」において、御社のプリメインアンプ「L-595A LIMITED」がGold Awardを受賞されました。昨年のオーディオ銘機賞2021での特別大賞受賞に続く快挙ですね。誠におめでとうございます。
末吉 誠に有難うございます。大変光栄です。L-595A LIMITED は、ラックスマンの95周年記念のモデルです。我々が1989年に出した純A級のプリメインアンプ「L-570」をデザインのモチーフとして、そこに最新の技術を組み合わせ、節目にふさわしく、新たなラックスマンの音を目指したものです。こうした大きな賞のお力添えもあっておかげさまで大変ご好評をいただいております。
先の受賞インタビューでも申し上げたように、95周年記念モデルを企画する段階で私は企画担当として関わりました。モチーフとしたL-570 は発売当時に私自身が営業として販売に携わりすばらしいモデルだと自負していましたから、L-595A LIMITED への思い入れもひとしおです。こうして受賞させていただくことで、さらに励みになります。
ーー 受賞モデルは昨年10月の発売で、コロナ禍の中、これまでとは違う訴求を余儀なくされたと思います。手応えはいかがでしょうか。
末吉 そういう意味で、発売にあたっての懸念も確かにありました。お客様に対しての訴求は動画配信と、オーディオアクセサリー誌やアナログ誌などの専門雑誌を通じて、という限られた手段となってしまいましたが、製品の外観が特徴的であり、音質にもインパクトがあって、製品そのものがお客様に訴えるものが大きかったと思います。
また、人数を限っての試聴会など販売店様のご協力もありました。おかげさまで結果的にはセールスに悪影響はなかったと実感しております。お店に来ていただける方もたくさんいらっしゃいましたし、お電話でのお問い合わせも数多くいただきました。
ーー 限られた試聴会に来ていただけるのは、本当の意味で購入に前向きな意思をもった方ということになりますね。
末吉 お客様の旺盛な意欲を感じます。従来のオーディオファンの方々の買い替えがメインですが、こういう世の中になって、住居を都心から郊外へ移す、終の住処を構えるといった動きが多く、そこでオーディオを新たに求められる向きも着実に増えていますね。たとえばそういう方々は、毎年行かれていた海外旅行ができなくなり、そこでのご予算をオーディオにまわす、といったこともあるようです。
ここまで巣ごもりの需要が高まり、継続するとは正直予想していませんでした。給付金の後押しもありましたが、家の中のものを充実させたいというお客様の気持ちはまだまだ続いていると感じます。それは国内のみならず、世界的にもです。
ただ、いずれ巣ごもりの状況がなくなれば、お客様が旅行やレジャーなどいろいろなご趣味にお金を投入することになってくるかと思います。そこでオーディオがどのように影響を受けるかはわかりません。それに備えて、我々もプロモーションを継続していかなくてはと考えています。
5月からいよいよ海外モデルも出荷されました。海外モデルは国内モデルとは異なるアルミのボンネット仕様ですが、おかげさまでこちらもすでにたくさんの受注をいただいています。L-595A LIMITED はプリメインアンプとしては高額ではありますが、このタイミングで他社様も同様の価格帯に製品を展開され、結果的に新しいゾーンが構築されました。業界としても喜ばしいことだと思います。
■40年ぶりにリリース、進化したMCカートリッジLMC-5に期待
ーー 3月に発売されたMCカートリッジLMC-5が注目されており、次回のアナロググランプリでの活躍が期待されます。カートリッジは御社で40年ぶりということですね。
末吉 ラックスマンには、アナログプレーヤーがあり、フォノイコライザーがあり、アナログオーディオの再生系は揃っているのですが、おおもととなるカートリッジが長く存在しませんでした。お客様や販売店様からも、ラックスマンのプレーヤーにどのカートリッジを合わせればいいかとお問い合わせをよくいただいていたのです。
商品化の企画自体は以前からありましたが、大きく動き出したのは2年ほど前のあるイベントでの、カートリッジ製造に携わる方との出会いからです。それがきっかけで、我々の思いをお話しし、試作を始めることになったのです。当時私は企画を担当していましたから、その話を聞いてまずはやってみようと思いました。
カートリッジは、今はあまたの専業メーカー様がおられますし、そこに突然我々が出しても皆様には馴染みがありません。だからこそ、普通の音質ではだめだという思いがあったのですが、開発を始めた当初はなかなか思うような音質にはならずに苦労しました。
けれどもある時、ハウジングの共振が音に影響することをつきとめて、そこからは劇的に進化し、非常に豊かな表現力になりました。お好きなレコード盤を心ゆくまで堪能していただける表現力が実現した思いです。音質も形状も、ラックスマンらしい商品としてご提案できました。発売後は国内外でたくさんの受注をいただき、大変ご好評をいただいております。
■ラックスマンの強みを活かすアナログオーディオに注力
ーー アナログオーディオに対する御社のお考えをあらためてお聞かせいただけますか。
末吉 アナログはオーディオの原点で、ラックスマンにとっては設立当初から手がけてきたものでもあり、重要なカテゴリーです。真空管アンプを含めて多岐にわたる関連商品を展開しているのも強みです。ラックスマンの音質をアピールをしやすい存在としても非常に大事ですし、より充実させたいと思います。
我々は、ハイレゾやCDなどのデジタル音源も含めて、世の中に存在する音源にはすべて対応できるかたちをお客様にご提案しています。最先端の機器であっても、デザインとしてのアナログ的な温かみも大事にして、真空管アンプも、最先端のDACももっている稀有な存在と自負しております。L-595A LIMITEDのようにこだわりをもった高価格帯の商品にも、お客様が大きく反応してくださいましたので、今後も挑戦しがいがあります。
一方で、オーソドックスな505、D-03といった商品も重要な存在。この価格帯がご評価いただけるのも、高価格帯のモデルの存在があるからこそであり、両方の存在を大事にしていきます。
ーー 社長ご就任から1年が経過しました。この期間はまさにコロナ禍の中にあったと思いますが、いかがでしたでしょうか。
末吉 コロナの影響で、できることとできないことを取捨選択しなければならない面もありましたが、集中してものごとに当たる考え方になりましたし、経営的にも勉強ができました。多くのお客様に助けていただきましたが、お客様と直接お会いする機会が激減してしまったことは大きな課題です。当分の間はこの状況が継続すると見なければならないでしょう。ただ業界として比較的堅調に推移していますから、決して悲観してはいません。
弊社におきましても、国内、海外ともに順調に推移しており、その需要にお応えすべく“ものづくり”を強化していかなればならないと考えております。
半導体の供給不足などの問題もありますが、職人さんの技術を次世代に伝えていくことも課題です。L-595A LIMITEDなどは職人さんの技術の結晶であり、そういう方々の高い技術力が日本のものづくりを支えてきたということですよね。将来にわたって我々の商品づくりを担ってくださる方を、育成していくことも必要となります。ただそれは新しい出会いですから、楽しみでもあります。
さまざまな試練も会社が強くなるための課題で、乗り越えられればまた新たなラックスマンの姿になれると思います。100周年に向けて、着実に色々なところを強化していきます。今後は商品構成をより強くし、さまざまな商品を計画していますので、ぜひご期待いただければ幸いです。
ーー ブランドのさらなる発展も楽しみです。有難うございました。
受賞インタビュー:ラックスマン
「アナログ感覚が感じられ、オーディオファンに推薦するにふさわしいアナログ再生に欠かせない機器」を選出し、13年目を迎えたアワード「アナロググランプリ2021」。Gold Awardを受賞したラックスマンの社長 末吉達哉氏が、受賞の栄誉と手応えを語った。
ラックスマン株式会社 代表取締役社長 末吉達哉氏
インタビュアー 徳田ゆかり(ファイルウェブビジネス担当)
■最新技術と伝統のデザインを融合した純A級プリメイン L-595A LIMITED、国内・海外で大好評
ーー 「アナロググランプリ2021」において、御社のプリメインアンプ「L-595A LIMITED」がGold Awardを受賞されました。昨年のオーディオ銘機賞2021での特別大賞受賞に続く快挙ですね。誠におめでとうございます。
末吉 誠に有難うございます。大変光栄です。L-595A LIMITED は、ラックスマンの95周年記念のモデルです。我々が1989年に出した純A級のプリメインアンプ「L-570」をデザインのモチーフとして、そこに最新の技術を組み合わせ、節目にふさわしく、新たなラックスマンの音を目指したものです。こうした大きな賞のお力添えもあっておかげさまで大変ご好評をいただいております。
先の受賞インタビューでも申し上げたように、95周年記念モデルを企画する段階で私は企画担当として関わりました。モチーフとしたL-570 は発売当時に私自身が営業として販売に携わりすばらしいモデルだと自負していましたから、L-595A LIMITED への思い入れもひとしおです。こうして受賞させていただくことで、さらに励みになります。
ーー 受賞モデルは昨年10月の発売で、コロナ禍の中、これまでとは違う訴求を余儀なくされたと思います。手応えはいかがでしょうか。
末吉 そういう意味で、発売にあたっての懸念も確かにありました。お客様に対しての訴求は動画配信と、オーディオアクセサリー誌やアナログ誌などの専門雑誌を通じて、という限られた手段となってしまいましたが、製品の外観が特徴的であり、音質にもインパクトがあって、製品そのものがお客様に訴えるものが大きかったと思います。
また、人数を限っての試聴会など販売店様のご協力もありました。おかげさまで結果的にはセールスに悪影響はなかったと実感しております。お店に来ていただける方もたくさんいらっしゃいましたし、お電話でのお問い合わせも数多くいただきました。
ーー 限られた試聴会に来ていただけるのは、本当の意味で購入に前向きな意思をもった方ということになりますね。
末吉 お客様の旺盛な意欲を感じます。従来のオーディオファンの方々の買い替えがメインですが、こういう世の中になって、住居を都心から郊外へ移す、終の住処を構えるといった動きが多く、そこでオーディオを新たに求められる向きも着実に増えていますね。たとえばそういう方々は、毎年行かれていた海外旅行ができなくなり、そこでのご予算をオーディオにまわす、といったこともあるようです。
ここまで巣ごもりの需要が高まり、継続するとは正直予想していませんでした。給付金の後押しもありましたが、家の中のものを充実させたいというお客様の気持ちはまだまだ続いていると感じます。それは国内のみならず、世界的にもです。
ただ、いずれ巣ごもりの状況がなくなれば、お客様が旅行やレジャーなどいろいろなご趣味にお金を投入することになってくるかと思います。そこでオーディオがどのように影響を受けるかはわかりません。それに備えて、我々もプロモーションを継続していかなくてはと考えています。
5月からいよいよ海外モデルも出荷されました。海外モデルは国内モデルとは異なるアルミのボンネット仕様ですが、おかげさまでこちらもすでにたくさんの受注をいただいています。L-595A LIMITED はプリメインアンプとしては高額ではありますが、このタイミングで他社様も同様の価格帯に製品を展開され、結果的に新しいゾーンが構築されました。業界としても喜ばしいことだと思います。
■40年ぶりにリリース、進化したMCカートリッジLMC-5に期待
ーー 3月に発売されたMCカートリッジLMC-5が注目されており、次回のアナロググランプリでの活躍が期待されます。カートリッジは御社で40年ぶりということですね。
末吉 ラックスマンには、アナログプレーヤーがあり、フォノイコライザーがあり、アナログオーディオの再生系は揃っているのですが、おおもととなるカートリッジが長く存在しませんでした。お客様や販売店様からも、ラックスマンのプレーヤーにどのカートリッジを合わせればいいかとお問い合わせをよくいただいていたのです。
商品化の企画自体は以前からありましたが、大きく動き出したのは2年ほど前のあるイベントでの、カートリッジ製造に携わる方との出会いからです。それがきっかけで、我々の思いをお話しし、試作を始めることになったのです。当時私は企画を担当していましたから、その話を聞いてまずはやってみようと思いました。
カートリッジは、今はあまたの専業メーカー様がおられますし、そこに突然我々が出しても皆様には馴染みがありません。だからこそ、普通の音質ではだめだという思いがあったのですが、開発を始めた当初はなかなか思うような音質にはならずに苦労しました。
けれどもある時、ハウジングの共振が音に影響することをつきとめて、そこからは劇的に進化し、非常に豊かな表現力になりました。お好きなレコード盤を心ゆくまで堪能していただける表現力が実現した思いです。音質も形状も、ラックスマンらしい商品としてご提案できました。発売後は国内外でたくさんの受注をいただき、大変ご好評をいただいております。
■ラックスマンの強みを活かすアナログオーディオに注力
ーー アナログオーディオに対する御社のお考えをあらためてお聞かせいただけますか。
末吉 アナログはオーディオの原点で、ラックスマンにとっては設立当初から手がけてきたものでもあり、重要なカテゴリーです。真空管アンプを含めて多岐にわたる関連商品を展開しているのも強みです。ラックスマンの音質をアピールをしやすい存在としても非常に大事ですし、より充実させたいと思います。
我々は、ハイレゾやCDなどのデジタル音源も含めて、世の中に存在する音源にはすべて対応できるかたちをお客様にご提案しています。最先端の機器であっても、デザインとしてのアナログ的な温かみも大事にして、真空管アンプも、最先端のDACももっている稀有な存在と自負しております。L-595A LIMITEDのようにこだわりをもった高価格帯の商品にも、お客様が大きく反応してくださいましたので、今後も挑戦しがいがあります。
一方で、オーソドックスな505、D-03といった商品も重要な存在。この価格帯がご評価いただけるのも、高価格帯のモデルの存在があるからこそであり、両方の存在を大事にしていきます。
ーー 社長ご就任から1年が経過しました。この期間はまさにコロナ禍の中にあったと思いますが、いかがでしたでしょうか。
末吉 コロナの影響で、できることとできないことを取捨選択しなければならない面もありましたが、集中してものごとに当たる考え方になりましたし、経営的にも勉強ができました。多くのお客様に助けていただきましたが、お客様と直接お会いする機会が激減してしまったことは大きな課題です。当分の間はこの状況が継続すると見なければならないでしょう。ただ業界として比較的堅調に推移していますから、決して悲観してはいません。
弊社におきましても、国内、海外ともに順調に推移しており、その需要にお応えすべく“ものづくり”を強化していかなればならないと考えております。
半導体の供給不足などの問題もありますが、職人さんの技術を次世代に伝えていくことも課題です。L-595A LIMITEDなどは職人さんの技術の結晶であり、そういう方々の高い技術力が日本のものづくりを支えてきたということですよね。将来にわたって我々の商品づくりを担ってくださる方を、育成していくことも必要となります。ただそれは新しい出会いですから、楽しみでもあります。
さまざまな試練も会社が強くなるための課題で、乗り越えられればまた新たなラックスマンの姿になれると思います。100周年に向けて、着実に色々なところを強化していきます。今後は商品構成をより強くし、さまざまな商品を計画していますので、ぜひご期待いただければ幸いです。
ーー ブランドのさらなる発展も楽しみです。有難うございました。