「Home for talent」の在り方を聞く
Amazon Prime Videoが日本発コンテンツ制作を強化。責任者が語るクリエイター支援の形とは
Amazonは、映像配信サービス「Prime Video」の戦略を説明するイベント「PRIME VIDEO PRESENTS JAPAN」を3月30日に開催。ドラマ作品の『モダンラブ・東京』『僕の愛しい妖怪ガールフレンド』『エンジェルフライト』や、バラエティ作品『復活!風雲!たけし城(仮題)』の制作を発表し、日本発のオリジナルコンテンツ制作に力を入れていくことを表明した。
今はNetflixの『イカゲーム』が世界的に人気を博していたり、Apple TV+オリジナル映画『コーダ あいのうた』が第94回アカデミー賞作品賞に選ばれたりと、配信サービス発のコンテンツが台頭しつつある時代だ。そんな中、Amazonは日本でどのような作品作りを行なっていくのだろうか。アマゾンジャパン合同会社の日本オリジナルコンテンツ製作責任者である早川敬之氏に話を伺った。
■「一緒に仕事したい」と思われるようなクリエイター支援を目指す
AmazonではPrime Videoオリジナル作品の企画制作を行う「Amazonスタジオ」を、日本含む15ヶ国で展開中。同スタジオでは「Home for talent」を掲げ、グローバル戦略の一丁目一番地として、クリエイター支援を重要なものと位置付けている。
例えば今回発表された『モダンラブ・東京』は、黒沢清監督をはじめ錚々たるメンバーが集結した作品なのだが、こういったクリエイター陣とAmazonスタジオが一緒に組むことで、Amazonスタジオの持つ技術やリソースなどを提供し、高クオリティな作品作りを支援していくかたちだ。
クリエイター達がAmazonと組むことのメリットとして、早川氏は「再現性」を挙げる。
「我々の強みのひとつは、グローバルなチーム全体で素晴らしいテクノロジーとリソースを提供できることです。例えば作品を制作していると、さまざまな条件が重なって予期せぬカットが撮れることがありますが、同じカットを再び撮ろうとしても大抵の場合は難しいでしょう。しかし我々であれば、それを撮影するために必要なリソースや人材、機材、スタジオなどをグローバルなレベルで用意できるため、言わば “奇跡のワンカット” に必要な条件を揃えられるわけです。
また、従来の制作体制ですと、作品を作り終えたらチームは解散となるため、現場で蓄積されたノウハウが次に活かしづらい状況にあります。ですがAmazonスタジオにはそういったノウハウが蓄積され続けますので、他の現場にも共有することができます。
つまり我々はテクノロジーやリソース、ノウハウなど、トータルなかたちでクリエイターの方々へ技術を、ひいては “奇跡の再現性” を提供できますので、クリエイターの方々にとっても楽しい制作現場となるのではないでしょうか」(早川氏)
また、早川氏は今回のイベントにおいて「日本のクリエイター達が『一緒に仕事をしたい』と思えるPrime Videoにすることが私の使命です」と語っており、その例として「長期の撮影の合間には必ず休みを入れる」「(昨今の情勢を鑑みて)PCR検査を継続して行う」ことを挙げていた。こういった待遇改善も重要な課題だとしている。
「『Amazonスタジオとまた仕事したい』と思っていただくためには、クリエイターが “バットを本気で振り抜ける” 、つまり能力をフル活用できる環境が必要だと考えています。もしもチームの人間全員がバットを本気で振り抜ければ、ヒットだったものがツーベースヒット、あるいはホームランになるかもしれませんよね。
その環境を実現するためには、まずちゃんと休む。無茶なスケジュールでロケをしない。全員が健康で安心していただけるようにする。遠回りに聞こえるかもしれませんが、大事なことだと思っています」(早川氏)
■次の世代を見据えた長期的な体制作りを目指す
早川氏によれば、Amazonスタジオの日本発オリジナルコンテンツ強化の取り組みは始まったばかり。なおかつ、かなり長期的な視点での取り組みのようだ。
「我々は2、30年かけて、Amazonスタジオが日本オリジナルコンテンツを製作する体制を作っていくつもりでいます。もちろん我々にとってもビジネスなので、この作品はヒットしたな、この作品はあまり受けなかったなと一喜一憂することはありますが、何よりも長期でお客様に向けて作品を作っていきたいと考えています。
Amazon Prime Videoのユーザー層は老若男女と幅広く、求められるコンテンツもバラバラです。だから我々は、その要望の数だけお作りしたい。そのためには2、30年くらいは必要だと思っています。その頃には私はおそらく引退しているでしょうけど、次の世代に引き継いでいきたい。それだけ、日本で物作りすることへのAmazonスタジオの覚悟は並々ならぬものがあります」(早川氏)
今回のイベントではドラマやバラエティなどが発表されたが、アニメやスポーツなど、さまざまなジャンルのコンテンツを手がけていきたいとのこと。最後に、今回話題になった『復活!風雲!たけし城(仮題)』について伺った。
発表会でも早川氏や、登壇していたくりぃむしちゅー・上田晋也氏が『たけし城』の話題で熱く盛り上がっていたが、1991年生まれ30歳、『たけし城』をリアルタイムで知らない世代の記者は今ひとつ盛り上がれなかった。おそらく全国のご家庭で似たようなジェネレーションギャップが発生していると思うのだが、令和に復活する『たけし城』は、家族みんなで楽しめる番組になるだろうか。
「いい質問ですね(笑)。視聴者の皆さんはもちろんですが、まずはご出演いただく一般の方に楽しんでいただきたいです。そして制作スタッフも含め、全員で楽しめる番組にしたいです」(早川氏)
◇
発表会の中で早川氏は「今後数週間、数ヶ月のうちに色々お伝えできる予定です」と語っていた。Amazon Prime Videoからどのような作品が登場するのか、楽しみに待ちたい。
今はNetflixの『イカゲーム』が世界的に人気を博していたり、Apple TV+オリジナル映画『コーダ あいのうた』が第94回アカデミー賞作品賞に選ばれたりと、配信サービス発のコンテンツが台頭しつつある時代だ。そんな中、Amazonは日本でどのような作品作りを行なっていくのだろうか。アマゾンジャパン合同会社の日本オリジナルコンテンツ製作責任者である早川敬之氏に話を伺った。
■「一緒に仕事したい」と思われるようなクリエイター支援を目指す
AmazonではPrime Videoオリジナル作品の企画制作を行う「Amazonスタジオ」を、日本含む15ヶ国で展開中。同スタジオでは「Home for talent」を掲げ、グローバル戦略の一丁目一番地として、クリエイター支援を重要なものと位置付けている。
例えば今回発表された『モダンラブ・東京』は、黒沢清監督をはじめ錚々たるメンバーが集結した作品なのだが、こういったクリエイター陣とAmazonスタジオが一緒に組むことで、Amazonスタジオの持つ技術やリソースなどを提供し、高クオリティな作品作りを支援していくかたちだ。
クリエイター達がAmazonと組むことのメリットとして、早川氏は「再現性」を挙げる。
「我々の強みのひとつは、グローバルなチーム全体で素晴らしいテクノロジーとリソースを提供できることです。例えば作品を制作していると、さまざまな条件が重なって予期せぬカットが撮れることがありますが、同じカットを再び撮ろうとしても大抵の場合は難しいでしょう。しかし我々であれば、それを撮影するために必要なリソースや人材、機材、スタジオなどをグローバルなレベルで用意できるため、言わば “奇跡のワンカット” に必要な条件を揃えられるわけです。
また、従来の制作体制ですと、作品を作り終えたらチームは解散となるため、現場で蓄積されたノウハウが次に活かしづらい状況にあります。ですがAmazonスタジオにはそういったノウハウが蓄積され続けますので、他の現場にも共有することができます。
つまり我々はテクノロジーやリソース、ノウハウなど、トータルなかたちでクリエイターの方々へ技術を、ひいては “奇跡の再現性” を提供できますので、クリエイターの方々にとっても楽しい制作現場となるのではないでしょうか」(早川氏)
また、早川氏は今回のイベントにおいて「日本のクリエイター達が『一緒に仕事をしたい』と思えるPrime Videoにすることが私の使命です」と語っており、その例として「長期の撮影の合間には必ず休みを入れる」「(昨今の情勢を鑑みて)PCR検査を継続して行う」ことを挙げていた。こういった待遇改善も重要な課題だとしている。
「『Amazonスタジオとまた仕事したい』と思っていただくためには、クリエイターが “バットを本気で振り抜ける” 、つまり能力をフル活用できる環境が必要だと考えています。もしもチームの人間全員がバットを本気で振り抜ければ、ヒットだったものがツーベースヒット、あるいはホームランになるかもしれませんよね。
その環境を実現するためには、まずちゃんと休む。無茶なスケジュールでロケをしない。全員が健康で安心していただけるようにする。遠回りに聞こえるかもしれませんが、大事なことだと思っています」(早川氏)
■次の世代を見据えた長期的な体制作りを目指す
早川氏によれば、Amazonスタジオの日本発オリジナルコンテンツ強化の取り組みは始まったばかり。なおかつ、かなり長期的な視点での取り組みのようだ。
「我々は2、30年かけて、Amazonスタジオが日本オリジナルコンテンツを製作する体制を作っていくつもりでいます。もちろん我々にとってもビジネスなので、この作品はヒットしたな、この作品はあまり受けなかったなと一喜一憂することはありますが、何よりも長期でお客様に向けて作品を作っていきたいと考えています。
Amazon Prime Videoのユーザー層は老若男女と幅広く、求められるコンテンツもバラバラです。だから我々は、その要望の数だけお作りしたい。そのためには2、30年くらいは必要だと思っています。その頃には私はおそらく引退しているでしょうけど、次の世代に引き継いでいきたい。それだけ、日本で物作りすることへのAmazonスタジオの覚悟は並々ならぬものがあります」(早川氏)
今回のイベントではドラマやバラエティなどが発表されたが、アニメやスポーツなど、さまざまなジャンルのコンテンツを手がけていきたいとのこと。最後に、今回話題になった『復活!風雲!たけし城(仮題)』について伺った。
発表会でも早川氏や、登壇していたくりぃむしちゅー・上田晋也氏が『たけし城』の話題で熱く盛り上がっていたが、1991年生まれ30歳、『たけし城』をリアルタイムで知らない世代の記者は今ひとつ盛り上がれなかった。おそらく全国のご家庭で似たようなジェネレーションギャップが発生していると思うのだが、令和に復活する『たけし城』は、家族みんなで楽しめる番組になるだろうか。
「いい質問ですね(笑)。視聴者の皆さんはもちろんですが、まずはご出演いただく一般の方に楽しんでいただきたいです。そして制作スタッフも含め、全員で楽しめる番組にしたいです」(早川氏)
発表会の中で早川氏は「今後数週間、数ヶ月のうちに色々お伝えできる予定です」と語っていた。Amazon Prime Videoからどのような作品が登場するのか、楽しみに待ちたい。