VGP2022 SUMMER受賞インタビュー:Aladdin X ジェファーズ ローレンス氏
新会社「Aladdin X」始動。唯一無二の価値にXGIMIのパワーを加え、プロジェクター市場シェア50%を目指す
VGP2022 SUMMER
受賞インタビュー:Aladdin X(旧popIn)
VGP2022 SUMMERで「popIn Aladdin 2 Plus」と「Aladdin Vase」がともに企画賞&金賞のダブル受賞となったAladdin X(旧popIn)。プロジェクターの新たな価値を啓発するその取り組みは、XGIMIとのタッグを実現した新会社でさらに勢いを加速。市場創造への意気込みをジェファーズ ローレンス氏に聞く。
Aladdin X株式会社
営業部 Sales Director
ジェファーズ ローレンス氏
プロフィール/1979年9月24日生まれ。東京都出身。リーハイ大学卒業後、UBS証券株式会社、ソフトバンクメディアホールディングス株式会社、ユニバーサルミュージック合同会社を経て、popIn株式会社入社。趣味はラップと子供と遊ぶこと。座右の銘は「Stay Hungry Stay Foolish」。
―― プロジェクターへの注目度が着実に高まりつつありますが、その流れが、御社のポップイン アラジンのご提案と軌を一にしているように思えてなりません。今のプロジェクター市場をどのようにご覧になられていますか。
ローレンス 年間の出荷台数で比べてみてもテレビとは一桁違いますし、まだまだメジャーな商品とは言い切れないと思います。しかし、数多くの家電が成熟期を迎えて伸び悩むなか、プロジェクターは年々成長し、技術やスペックが大きく進化を遂げています。高額ですがテレビを完全にリプレイスできるような商品も出てきています。
われわれの世代は生まれた時からリビングにブラウン管テレビがある光景が当たり前で、そこに何も疑いを持ちません。しかし、100年前にはなかったテレビが今こうしてあるように、この常識も恐らく変わっていきます。エンターテインメントは欠かせませんが、スイッチを切れば単なる邪魔な大きな黒い物体です。コンテンツの中身はYouTubeやNetflixなどの動画配信に移り変わり、楽しむという行為そのものは変わらないものの、生活のなかでのディスプレイに対する見方、考え方は変わっていくと確信しています。
プロジェクターの最大の売りは“場所をとらない”ことだと言い続けています。ポップイン アラジンは、天井から大画面を投影することでテレビ台も不要となり、リビングの環境をガラリと変えてしまいます。据置型プロジェクターでも置き方によっては場所をとりません。われわれは“場所を取らない体験を提供する”先駆者であると自負しています。
若者世代ではテレビがスマホに置き換わりました。しかし、大好きなコンテンツを大画面で見たいのは誰しもが持つ欲求です。われわれが始めた3in1の天井照明型プロジェクターは、単にコンテンツを楽しむスタイルを変えただけではなく、これからの人々の生活に対する考え方を変えていきます。20年後、30年後のリビングやモデルルームには、もしかしたらテレビはなくなっているかもしれません。
―― VGP2022 SUMMER審査会では、コンテンツも含めた御社の取り組みが高く評価されました。OSを自ら手掛けられていることも大きな強みですね。
ローレンス OSは我々の魂です。スペックや機能の強化ももちろん大事ですが、他社のプロジェクターとの最大の違いがコンテンツ。自社OSにより、そこへ命が注ぎ込まれていくイメージです。その点をご評価していただけたのは大変うれしいですね。
―― コンテンツでは、打ち上げ花火映像を配信する「おうち花火大会」が今年の夏も大盛況だったとお聞きしました。
ローレンス 初めての開催となった昨年夏は、コロナ禍で行動制限もあり、夏休みも思うように外に出られないジレンマのなかで大きな盛り上がりを見せました。今年は3年ぶりに行動制限のない夏でしたが、「毎年開催してほしい」という声を本当に数多くの方からいただき、その声にお応えして8月27日(土)に開催しました。累計で約20万台出荷しているのですが、昨年とほぼ同じ約1万超の世帯に視聴いただきました。
―― もの凄く高い参加率ですね。
ローレンス お客様の期待を超えていかなければとディスカッションを重ね、今年、大きくアップデートしたのが音響です。3D音響で有名なベンチャー企業のクレプシードラさんに技術提供をいただき、花火の臨場感をより感じられる音響にブラッシュアップしました。「音が凄くなって感激した」など喜びの声がツイートでも数多く寄せられました。
―― コンテンツのさらなる充実も注目されます。
ローレンス 話題を集めているカラオケは、奄美大島の小学生が「おうちでカラオケを大画面でやりたい」と社長(当時)の程に直々に手紙を送ったことがきっかけになり開発されたものです。ユーザーの声はとても大切にしています。年内にも、アートを楽しめる新しいコンテンツや既存のアプリをさらに進化させたものなど、発表を控えるものがいくつかありますので、どうぞ楽しみにしていてください。
―― VGP2022 SUMMERでは「ポップイン アラジン2プラス」が「企画賞」と「金賞」をダブル受賞しました。明るさや解像感など堅実な進化が審査員からも高く評価され、4Kをアラジンで楽しめるようになるのもすぐそこではないかと、大きな可能性を感じさせてくれる商品です。
ローレンス ポップイン アラジン2プラスでは、大きく6つのアップデートを行いました。アラジンは寝室での使用を推奨していますが、実際には5割の方がリビングで使われています。私も家ではリビングにつけているのですが、日中の外光が明るい時には、どうしても投影面が暗く感じてしまうことがあります。お客様からの要望でも一番多いのが明るさについてです。そこで、明るさを900ANSIルーメンへアップして、明るい日中のリビングでもかなり見やすくなっています。
スピーカーはドルビーオーディオ対応となり、より臨場感あふれる音がお楽しみいただけます。Bluetooth 5.0、WiFi6対応でつながりやすくかつ低遅延に。これまでは電源を入れてから20秒近くかかっていた起動時間も約7秒に短縮しました。テレビライクなストレスのない使い勝手をこれからもさらに向上させていきます。コンテンツもさらに拡充して参りますので、ストレージも32GBまで増量しました。
―― 「アラジン ベース」も同じく「企画賞」と「金賞」のダブル受賞です。
ローレンス そもそもこの商品が開発の俎上に上がり、実際に製品化すると決まったときの衝撃は今でも忘れられません。こんな色といびつな形で、上にライトがついています。従来あるプロジェクターとは完全に一線を画していますが、それは目的が違うから。プロジェクターは何かを投影するもの。しかし、アラジンは生活に溶け込むことを一番に考えています。アラジン ベースはそれをさらに突き詰めました。
スペック云々ではなく、インテリアとしても受け入れていただけるものを目指し、開発がスタートしています。マーケティング、ターゲティングは女性に絞り、実際の購入者も約7割を女性が占めます。そもそもプロジェクターという商品は、ガジェットやホームシアターが好きな男性が大半を占めているものですから、ふつうのプロジェクター然としたデザインや黒い色では女性からの支持は得られなかったでしょう。
もちろんアラジンの真骨頂であるコンテンツも大事。壁時計や美風景など、動画を見るデバイスというよりは、生活空間にひとつの楽しみをアドオンするデバイスです。生活に溶け込む、これまでとは違う“何か”を感じていただけたからこそ、購入してくださったのだと思います。この先、生活を豊かにする、感動を与えるデバイスとして、口コミが拡がっていくとうれしいですね。
―― アラジン ベースが備えるこれまでにない新しい価値を伝えるため、アプローチにおいて工夫された点などございますか。
ローレンス 渋谷に「パンとエスプレッソとまちあわせ」という人気のカフェがあります。お客様の大半が10代から30代の女性です。そこにアラジンベースを置いて、実際に見ていただくことができました。色とデザインがカフェの内装にも結構しっくりときていて、「これなんだろう」と注目していただくことができました。
また、若い方を対象にした旅のサブスクサービス「HafH(ハフ)」では、全国に提携するホテルや旅館で、宿泊者にアラジンベースを無料でお貸し出しして、客室で実際に使っていただきました。従来とは少し違った角度からトライをしており、そうしたところで初めて見て、興味持ったという例も少なくありません。いろいろなところが接点になるんだなと実感しています。
―― アラジンの提案する新しい価値を発信するために、家電量販店の売り場のディスプレイなど店頭施策についてはどのようにお考えですか。
ローレンス ポップイン事業を立ち上げた当初は、元々がソフトウェアの会社でハードウェアのノウハウが十分ではなかったこともあり、まずは商品を見て体験していただこうと家電量販店の店頭対策を重視しました。トラフィックが一番多いテレビコーナーで勝負すべく、主要店舗の一番いい場所にベッド型の什器を設置して体験型の展示を展開しました。
しかし、お客様は4Kや8Kのテレビを目的に足を運ばれており、しかも最初のモデルは明るさが700ANSIルーメンしかなく、ミスマッチの感は否めません。一方、オンラインでの販売実績が上がってきたこともあり、限られたスタッフでは丁寧に量販店回りもできないことから、オンライン重視へと切り替えた経緯があります。
ところが、ここに来てプロジェクターが売れ始めてきていて、量販店がプロジェクターコーナーづくりに力を入れ始めました。そこでこのタイミングを逃すまいと、体験ができる店舗やスペースの強化を進めているところです。XGIMIの商品も一緒に並べることで一気に幅が拡がり、シナジーも期待しています。
これまでメーカーは、量販店のトラフィックを期待して店頭へ展示展開してきましたが、わたしたちのサイトにも一定のトラフィックがあり、それを量販店に送客して寄与することもできます。WIN-WINの新しいカタチを創造していくことができればと考えています。
―― 新会社「Aladdin X」としてスタートを切られました。市場からも大きな注目を集めています。
ローレンス われわれは元々がソフトウェアの会社で、ビジネスモデルも一般のハードウェアの会社とは異なり、コンテンツの収益化が主なビジネスモデルです。そこではハードはほぼ原価に近しい価格で販売していますが、やはりある程度の台数が出ないとソフトで収益を上げるのは難しくなります。
累計出荷台数も20万台を突破し、新たなフェーズを迎えるタイミングに、今回の新会社設立となりました。われわれのプロジェクターはXGIMIで製造していただいていましたから、これまでもやりとりはありました。XGIMIはグローバルで100ヶ国以上に展開し、500万人以上のユーザーを有する、中国で第1位、世界でも間違いなくトップクラスのプロジェクターメーカーですが、日本での展開は緒に就いたばかりですから、そこへトップシェアを誇るわれわれのノウハウや知見を活かすことで成長のスピードを加速することができるし、われわれもハードウエアの開発に大きな進化が期待できます。
―― ポップイン アラジンの海外への展開も注目されます。
ローレンス XGIMIが8月に中国国内で発表会を行い、ポップイン アラジンを中国版にした製品を「マジックランプ」の名称で展開していくことを正式に発表しています。そのプロダクトを先頃ベルリンで開催されたIFA2022において、XGIMIのブースで展示を行いました。もの凄い反響で多くのメディアに取り上げられ、今後のグローバルな展開が本当に楽しみです。海外には日本の引掛けシーリングはありませんから、そこはひとつアイデアが必要となりそうです。
―― ポップイン アラジンとXGIMIをトータルで見せられることは大きな強みとなりますね。
ローレンス いままではポップイン アラジン1商品、アラジン ベースを含めても2商品です。昨年のAmazonさんのサイバーマンデーでは、全商品のなかで一番売れたSKUとなり大きな自信にもなりました。1商品の爆発力としてはすでに大きなものがありますが、メーカー単位やショップ単位にするとまだまだこれから。そこをXGIMIと組むことで、一気に幅が拡がります。これまではぶれることなくファミリーにフォーカスし続けてきましたが、マスに訴えかけるXGIMIが加わり、お互いへの送客も可能となり、本当に期待しかありません。
―― プロジェクター市場のさらなる成長へ向け、新生アラジンの意気込みをお願いします。
ローレンス 私はアラジン事業の立ち上げから携わっていますが、立ち上げ時には独身で、その後結婚をして、今は子どももいます。人生のいろいろなフェーズでアラジンを実体験してきていますが、どのフェーズにおいても間違いなく、本当に感動を提供してくれる商品だと自信を持って言うことができます。
いちユーザーとして得た感動体験を、一人でも多くの人に提供していきたい。われわれは単なるハードウエアメーカーではなく、「大切な人と楽しい世界観を共有してもらいたい」という思いのもとに常に取り組んでいます。XGIMIと一緒になった今、そのシナジーを存分に活かすことで、アラジン、XGIMIそれぞれのシェアを高め、目標として合わせて50%以上にしていきたい。感動を一人でも多くの人にお伝えしていきます。
受賞インタビュー:Aladdin X(旧popIn)
VGP2022 SUMMERで「popIn Aladdin 2 Plus」と「Aladdin Vase」がともに企画賞&金賞のダブル受賞となったAladdin X(旧popIn)。プロジェクターの新たな価値を啓発するその取り組みは、XGIMIとのタッグを実現した新会社でさらに勢いを加速。市場創造への意気込みをジェファーズ ローレンス氏に聞く。
Aladdin X株式会社
営業部 Sales Director
ジェファーズ ローレンス氏
プロフィール/1979年9月24日生まれ。東京都出身。リーハイ大学卒業後、UBS証券株式会社、ソフトバンクメディアホールディングス株式会社、ユニバーサルミュージック合同会社を経て、popIn株式会社入社。趣味はラップと子供と遊ぶこと。座右の銘は「Stay Hungry Stay Foolish」。
■大きな強みはコンテンツ。「花火大会」は1万世帯超が視聴
―― プロジェクターへの注目度が着実に高まりつつありますが、その流れが、御社のポップイン アラジンのご提案と軌を一にしているように思えてなりません。今のプロジェクター市場をどのようにご覧になられていますか。
ローレンス 年間の出荷台数で比べてみてもテレビとは一桁違いますし、まだまだメジャーな商品とは言い切れないと思います。しかし、数多くの家電が成熟期を迎えて伸び悩むなか、プロジェクターは年々成長し、技術やスペックが大きく進化を遂げています。高額ですがテレビを完全にリプレイスできるような商品も出てきています。
われわれの世代は生まれた時からリビングにブラウン管テレビがある光景が当たり前で、そこに何も疑いを持ちません。しかし、100年前にはなかったテレビが今こうしてあるように、この常識も恐らく変わっていきます。エンターテインメントは欠かせませんが、スイッチを切れば単なる邪魔な大きな黒い物体です。コンテンツの中身はYouTubeやNetflixなどの動画配信に移り変わり、楽しむという行為そのものは変わらないものの、生活のなかでのディスプレイに対する見方、考え方は変わっていくと確信しています。
プロジェクターの最大の売りは“場所をとらない”ことだと言い続けています。ポップイン アラジンは、天井から大画面を投影することでテレビ台も不要となり、リビングの環境をガラリと変えてしまいます。据置型プロジェクターでも置き方によっては場所をとりません。われわれは“場所を取らない体験を提供する”先駆者であると自負しています。
若者世代ではテレビがスマホに置き換わりました。しかし、大好きなコンテンツを大画面で見たいのは誰しもが持つ欲求です。われわれが始めた3in1の天井照明型プロジェクターは、単にコンテンツを楽しむスタイルを変えただけではなく、これからの人々の生活に対する考え方を変えていきます。20年後、30年後のリビングやモデルルームには、もしかしたらテレビはなくなっているかもしれません。
―― VGP2022 SUMMER審査会では、コンテンツも含めた御社の取り組みが高く評価されました。OSを自ら手掛けられていることも大きな強みですね。
ローレンス OSは我々の魂です。スペックや機能の強化ももちろん大事ですが、他社のプロジェクターとの最大の違いがコンテンツ。自社OSにより、そこへ命が注ぎ込まれていくイメージです。その点をご評価していただけたのは大変うれしいですね。
―― コンテンツでは、打ち上げ花火映像を配信する「おうち花火大会」が今年の夏も大盛況だったとお聞きしました。
ローレンス 初めての開催となった昨年夏は、コロナ禍で行動制限もあり、夏休みも思うように外に出られないジレンマのなかで大きな盛り上がりを見せました。今年は3年ぶりに行動制限のない夏でしたが、「毎年開催してほしい」という声を本当に数多くの方からいただき、その声にお応えして8月27日(土)に開催しました。累計で約20万台出荷しているのですが、昨年とほぼ同じ約1万超の世帯に視聴いただきました。
―― もの凄く高い参加率ですね。
ローレンス お客様の期待を超えていかなければとディスカッションを重ね、今年、大きくアップデートしたのが音響です。3D音響で有名なベンチャー企業のクレプシードラさんに技術提供をいただき、花火の臨場感をより感じられる音響にブラッシュアップしました。「音が凄くなって感激した」など喜びの声がツイートでも数多く寄せられました。
―― コンテンツのさらなる充実も注目されます。
ローレンス 話題を集めているカラオケは、奄美大島の小学生が「おうちでカラオケを大画面でやりたい」と社長(当時)の程に直々に手紙を送ったことがきっかけになり開発されたものです。ユーザーの声はとても大切にしています。年内にも、アートを楽しめる新しいコンテンツや既存のアプリをさらに進化させたものなど、発表を控えるものがいくつかありますので、どうぞ楽しみにしていてください。
■生活空間に新しい楽しみをアドオンする
―― VGP2022 SUMMERでは「ポップイン アラジン2プラス」が「企画賞」と「金賞」をダブル受賞しました。明るさや解像感など堅実な進化が審査員からも高く評価され、4Kをアラジンで楽しめるようになるのもすぐそこではないかと、大きな可能性を感じさせてくれる商品です。
ローレンス ポップイン アラジン2プラスでは、大きく6つのアップデートを行いました。アラジンは寝室での使用を推奨していますが、実際には5割の方がリビングで使われています。私も家ではリビングにつけているのですが、日中の外光が明るい時には、どうしても投影面が暗く感じてしまうことがあります。お客様からの要望でも一番多いのが明るさについてです。そこで、明るさを900ANSIルーメンへアップして、明るい日中のリビングでもかなり見やすくなっています。
スピーカーはドルビーオーディオ対応となり、より臨場感あふれる音がお楽しみいただけます。Bluetooth 5.0、WiFi6対応でつながりやすくかつ低遅延に。これまでは電源を入れてから20秒近くかかっていた起動時間も約7秒に短縮しました。テレビライクなストレスのない使い勝手をこれからもさらに向上させていきます。コンテンツもさらに拡充して参りますので、ストレージも32GBまで増量しました。
―― 「アラジン ベース」も同じく「企画賞」と「金賞」のダブル受賞です。
ローレンス そもそもこの商品が開発の俎上に上がり、実際に製品化すると決まったときの衝撃は今でも忘れられません。こんな色といびつな形で、上にライトがついています。従来あるプロジェクターとは完全に一線を画していますが、それは目的が違うから。プロジェクターは何かを投影するもの。しかし、アラジンは生活に溶け込むことを一番に考えています。アラジン ベースはそれをさらに突き詰めました。
スペック云々ではなく、インテリアとしても受け入れていただけるものを目指し、開発がスタートしています。マーケティング、ターゲティングは女性に絞り、実際の購入者も約7割を女性が占めます。そもそもプロジェクターという商品は、ガジェットやホームシアターが好きな男性が大半を占めているものですから、ふつうのプロジェクター然としたデザインや黒い色では女性からの支持は得られなかったでしょう。
もちろんアラジンの真骨頂であるコンテンツも大事。壁時計や美風景など、動画を見るデバイスというよりは、生活空間にひとつの楽しみをアドオンするデバイスです。生活に溶け込む、これまでとは違う“何か”を感じていただけたからこそ、購入してくださったのだと思います。この先、生活を豊かにする、感動を与えるデバイスとして、口コミが拡がっていくとうれしいですね。
―― アラジン ベースが備えるこれまでにない新しい価値を伝えるため、アプローチにおいて工夫された点などございますか。
ローレンス 渋谷に「パンとエスプレッソとまちあわせ」という人気のカフェがあります。お客様の大半が10代から30代の女性です。そこにアラジンベースを置いて、実際に見ていただくことができました。色とデザインがカフェの内装にも結構しっくりときていて、「これなんだろう」と注目していただくことができました。
また、若い方を対象にした旅のサブスクサービス「HafH(ハフ)」では、全国に提携するホテルや旅館で、宿泊者にアラジンベースを無料でお貸し出しして、客室で実際に使っていただきました。従来とは少し違った角度からトライをしており、そうしたところで初めて見て、興味持ったという例も少なくありません。いろいろなところが接点になるんだなと実感しています。
―― アラジンの提案する新しい価値を発信するために、家電量販店の売り場のディスプレイなど店頭施策についてはどのようにお考えですか。
ローレンス ポップイン事業を立ち上げた当初は、元々がソフトウェアの会社でハードウェアのノウハウが十分ではなかったこともあり、まずは商品を見て体験していただこうと家電量販店の店頭対策を重視しました。トラフィックが一番多いテレビコーナーで勝負すべく、主要店舗の一番いい場所にベッド型の什器を設置して体験型の展示を展開しました。
しかし、お客様は4Kや8Kのテレビを目的に足を運ばれており、しかも最初のモデルは明るさが700ANSIルーメンしかなく、ミスマッチの感は否めません。一方、オンラインでの販売実績が上がってきたこともあり、限られたスタッフでは丁寧に量販店回りもできないことから、オンライン重視へと切り替えた経緯があります。
ところが、ここに来てプロジェクターが売れ始めてきていて、量販店がプロジェクターコーナーづくりに力を入れ始めました。そこでこのタイミングを逃すまいと、体験ができる店舗やスペースの強化を進めているところです。XGIMIの商品も一緒に並べることで一気に幅が拡がり、シナジーも期待しています。
これまでメーカーは、量販店のトラフィックを期待して店頭へ展示展開してきましたが、わたしたちのサイトにも一定のトラフィックがあり、それを量販店に送客して寄与することもできます。WIN-WINの新しいカタチを創造していくことができればと考えています。
■XGIMIとのシナジーでシェア50%を目指す
―― 新会社「Aladdin X」としてスタートを切られました。市場からも大きな注目を集めています。
ローレンス われわれは元々がソフトウェアの会社で、ビジネスモデルも一般のハードウェアの会社とは異なり、コンテンツの収益化が主なビジネスモデルです。そこではハードはほぼ原価に近しい価格で販売していますが、やはりある程度の台数が出ないとソフトで収益を上げるのは難しくなります。
累計出荷台数も20万台を突破し、新たなフェーズを迎えるタイミングに、今回の新会社設立となりました。われわれのプロジェクターはXGIMIで製造していただいていましたから、これまでもやりとりはありました。XGIMIはグローバルで100ヶ国以上に展開し、500万人以上のユーザーを有する、中国で第1位、世界でも間違いなくトップクラスのプロジェクターメーカーですが、日本での展開は緒に就いたばかりですから、そこへトップシェアを誇るわれわれのノウハウや知見を活かすことで成長のスピードを加速することができるし、われわれもハードウエアの開発に大きな進化が期待できます。
―― ポップイン アラジンの海外への展開も注目されます。
ローレンス XGIMIが8月に中国国内で発表会を行い、ポップイン アラジンを中国版にした製品を「マジックランプ」の名称で展開していくことを正式に発表しています。そのプロダクトを先頃ベルリンで開催されたIFA2022において、XGIMIのブースで展示を行いました。もの凄い反響で多くのメディアに取り上げられ、今後のグローバルな展開が本当に楽しみです。海外には日本の引掛けシーリングはありませんから、そこはひとつアイデアが必要となりそうです。
―― ポップイン アラジンとXGIMIをトータルで見せられることは大きな強みとなりますね。
ローレンス いままではポップイン アラジン1商品、アラジン ベースを含めても2商品です。昨年のAmazonさんのサイバーマンデーでは、全商品のなかで一番売れたSKUとなり大きな自信にもなりました。1商品の爆発力としてはすでに大きなものがありますが、メーカー単位やショップ単位にするとまだまだこれから。そこをXGIMIと組むことで、一気に幅が拡がります。これまではぶれることなくファミリーにフォーカスし続けてきましたが、マスに訴えかけるXGIMIが加わり、お互いへの送客も可能となり、本当に期待しかありません。
―― プロジェクター市場のさらなる成長へ向け、新生アラジンの意気込みをお願いします。
ローレンス 私はアラジン事業の立ち上げから携わっていますが、立ち上げ時には独身で、その後結婚をして、今は子どももいます。人生のいろいろなフェーズでアラジンを実体験してきていますが、どのフェーズにおいても間違いなく、本当に感動を提供してくれる商品だと自信を持って言うことができます。
いちユーザーとして得た感動体験を、一人でも多くの人に提供していきたい。われわれは単なるハードウエアメーカーではなく、「大切な人と楽しい世界観を共有してもらいたい」という思いのもとに常に取り組んでいます。XGIMIと一緒になった今、そのシナジーを存分に活かすことで、アラジン、XGIMIそれぞれのシェアを高め、目標として合わせて50%以上にしていきたい。感動を一人でも多くの人にお伝えしていきます。