レッドオーシャンで「強み」を発揮するためのこだわり
Sonosは何故、今、ブランド初のヘッドホン「Ace」を開発したのか。本社幹部インタビュー
■ソノスのサウンドバー「Arc」とWi-Fi連係
Sonos Aceには、SonosによるDolby Atmos対応のプレミアムサウンドバー「Sonos Arc」と連係する、とても特徴的な機能がある。
2つある連係機能のうちの1つが、Arcが接続されているテレビのサウンドを、ワイヤレスでAceに飛ばして再生する機能だ。夜間のシアター再生にAceを役立てることを狙って、Sonosはこの機能を開発した。
Dolby Atmosを含むオーディオ信号のデコードとバイノーラルレンダリングはサウンドバーの側、つまりSonos Arcが引き受ける。ArcとAceの間はWi-Fi接続になるので、サラウンド信号を伝送しても音声の遅延やノイズの発生が抑えられる。
加えてAceに内蔵するモーションセンサーによりヘッドホンを装着しているユーザーの顔の向きを検知しながら、コンテンツのサウンドの定位を連動制御する「ダイナミックヘッドトラッキング」も備える。
■ArcのシアターサウンドをAceで「そのまま再現」できる
「Arc+Ace連係」のもうひとつの機能が「TrueCinema」だ。基本は上に紹介した、Sonosのサウンドバーを介してホームシアターのサウンドをヘッドホンで聴くための機能だが、その精度がTrueCinemaによってさらに高くなる。
鍵を握っているのが、Sonos Arcが対応するソノス独自のルームチューニング機能「Trueplay」だ。iOSデバイスのマイクを使って測定したユーザーのリスニングルームの音響特性データを自動取得。シアター再生の最適化を図りながら、ヘッドホンによるバイノーラルリスニングでArcの環境設定を完全に再現する機能だ。TrueplayのパラメータをSonos Aceによるリスニングにも適用して、Dolby Atmosにも対応する一段と精緻なイマーシブサウンドを実現する。
TrueCinemaの機能は2024年の後半、ソフトウェアアップデートにより加わる予定だ。ブヴァ=メルラン氏は「ヘッドホンによるイマーシブ体験の基準をスピーカーリスニングのルームセッティングに置いて、よりリアルな没入体験を探求したところにSonosらしさがある」として、この機能をSonos Arcの重要な差別化のファクターとして位置付けている。
Wi-Fiを使うワイヤレスオーディオ再生は、Bluetoothに比べるとバッテリーの消耗が大きくなる。Sonos Aceが内蔵する1060mAhの充電池は、ANCまたはアウェアモードを起動した状態で最長30時間の連続再生、または最長24時間の連続通話に対応する。これはモバイル端末やPCとBluetoothで接続した場合であり、Sonos Arcと連係するWi-Fiリスニングの際にはそれより短くなるものの、映画やドラマシリーズを連続視聴していても充電の心配はない程度には保つという。
「AceとArcの連係を使うシーンはホームリスニングを想定しているので、長時間の連続再生に対応することでユーザーの期待を十分に満たせると考えました。さらにAceには残量ゼロから、約3時間の連続再生を楽しむためのバッテリー残量を約3分間でスピードチャージできる機能もあります。おそらく不便を感じさせることはないはずです」(ブヴァ=メルラン氏)
Sonos Aceの発売時点では、ヘッドホン連係に対応するSonosのサウンドバーとして発表されている機種は Sonos Arcだけだ。ブヴァ=メルラン氏は、開発チームはコンパクトなサウンドバーであるSonos Rayの対応に向けて、現在もアクティブに動いているとしながら、「対応時期の発表は“Coming Very Soon”=もう間もなくです」とも答えている。多くのSonos製品のユーザーがそのメリットを享受できるようになる日が早く来てほしい。
価格が7万円台のANC搭載ワイヤレスヘッドホンは国内でも高額商品の部類だ。必ずしも“お手頃”とまでは言えないが、ほかのヘッドホンにはない精緻なシアター連係機能の魅力を前面に打ち出しながら、Sonosが独自のポジションを築くことができるのか、今後も注目したい。