ライフ・リントナーCEOインタビュー
開幕目前。世界最大級のエレクトロニクスショー「IFA 2024」、主催者が語る見どころ
世界最大規模のエレクトロニクスショー「IFA」が、今年は9月6日から10日までの5日間にドイツの首都・ベルリンで開催される。主催するIFA Management社のCEO、ライフ・リントナー氏に100周年を迎えるIFAのテーマと見どころを聞いた。
世界各国・地域の展示会イベントと同様に、IFAもコロナ禍の間は従来のように来場者を会場に集めて対面形式による開催ができなかった。本格的なリアル開催を再始動した2023年から、メッセ・ベルリン社を引き継ぐ形でIFA Management社がIFAを主催することになった。そして2024年のIFAはリントナー氏が初めてCEOとしてタクトを振るイベントだ。
筆者も2023年のIFAを現地で取材した。2019年までIFAに毎年出展していたエレクロトニクスメーカーのフィリップス、ドイツ公共放送連盟(ARD)、通信事業者のTモバイルなど、地元で人気の企業が不参加だったこともあり、例年に比べると大規模なブースの数は減っている印象を受けた。でもその代わりに、欧州各地からIFAに参加した中小規模のメーカーやスタートアップの熱気がIFAの会場を包み込んでいた。
韓国のサムスン、LGエレクトロニクスのブースも見どころが多かった。今年は日本の企業もIFAで脚光を浴びてほしい。昨年はBtoB向けの出展をメインとしていたパナソニックが、今年はBtoC向けの展示も復活させるというから楽しみだ。
「今年はさらにIFAが大きく、華やかなイベントになるだろう」と、リントナー氏はIFA2024をより大きなイベントに成長させることに前向きな姿勢を顕わにした。
IFAの成功はイベントに出展する企業や来場者の数だけで計ることが難しい。なぜならIFAはエレクトロニクス市場における世界最大規模のビジネストレードショーでもあるからだ。
2023年にIFAを訪れた約18.2万人のうち、約67%に上る12万人前後の来場者はトレードビジターだった。リントナー氏は、イベントに集まるトレードビジターの多様化が2023年には顕著に見られたと振り返る。そして今年はその勢いを加速させたいと意気込む。
リントナー氏によると、従来のIFAがカバーする黒物・白物のコンシューマーエレクトロニクス、IT・通信、デジタルガジェットの枠外からも多くのトレードビジターがIFAに参加を表明しているという。
「今年のIFAは理美容系のビューティーテック、デジタルヘルス関連の出展が拡大すると見込んでいます。それぞれの領域に強い欧州の有力なリテーラーがIFAに強い関心を寄せていることからも、今年は従来のコンシューマーエレクトロニクスの領域の外にIFAが力強く拡大する機運を感じています」(リントナー氏)
2023年のIFAではエレクトロニクス業界の「サステナビリティ」に対する取り組みにスポットライトが当たった。製品やサービスの持続可能性を高めるための技術革新に力を入れる出展社もあったが、来場者の関心の目は「地球と家計の両方にやさしい製品」に向いていた。
今年もサステナビリティはIFAに集まる来場者の大きな関心事のひとつになることは間違いないだろう。リントナー氏は欧州で一般のコンシューマーが家電製品を「修理する権利」が認められ、法制化に向けた動きが加速しつつあると語る。
今後はプロダクトに使う素材や製造過程における環境負荷を積極的に削減しながら、ユーザーに「修理しながら長く使える魅力」を提案できるエレクトロニクスメーカーの製品やサービスに注目が集まりそうだ。
欧州で人気の大手エレクトロニクスメーカーやスタートアップは、「AI(人工知能)」のアピールにも力を入れるだろう。リントナー氏は「いま人々にAIとは何かについて、あるいはAIがエレクトロニクスの領域にもたらすメリットとデメリットについて正しく伝えることが大切」であると語った。
そのため、IFA 2024の開催期間中にはAIを題材にした数多くの講演会が開催される予定だ。AIをプロダクトやサービスに取り込むドイツ、欧州の著名ブランドのキーパーソン、スタートアップのエンジニア、知識人が登壇するカンファレンスがメッセ・ベルリンの会場で毎日開催される。登壇者やカンファレンスの日程はIFAのオフィシャルサイトに公開された。
なお、IFA 2024に出展する企業のリストも7月中旬にほぼ全容が出揃った。確定している企業の名前にはパナソニック、シャープ、ボッシュ、サムスン、LGエレクトロニクス、グーグル、Honor、SharkNINJA、Mieleなどが挙がっている。今後もIFAの開催直前までオフィシャルサイトの出展社リストはアップデートされる。
欧州を中心に世界中のスタートアップが集まるIFA NEXTの展示も今年は規模がさらに拡大しそうだ。IFA NEXTの2024年オフィシャルパートナー国である韓国からは、エレクトロニクスに関わる様々なスタートアップが集まるだろう。
そして、IFA NEXTには東京都が主催するアジア最大規模のスタートアップイベント「SusHi Tech」が参加する。日本から10社前後、日本のスタートアップが最先端のテクノロジーをベルリンで披露する。展示の内容が今からとても楽しみだ。
IFAの開催期間中、メッセ・ベルリンの会場内に新しい特設エリアとなる「IFA Contents Creators Hub」が立ち上がる。例えばオーディオ・ビジュアルのイノベーションを語るうえで、コンテンツを制作するクリエイターを取り巻く環境がどのように進化しているのか、一般のコンシューマーにも興味深い展示が並ぶことになりそうだ。
メッセ・ベルリン会場中心のイベントスペースであるサマーガーデンでは、IFAの開幕前夜の5日に、世界的なシンガーソングライターであるブライアン・アダムスのコンサートが開催される。コンサートのチケットが翌日6日に始まるIFAの入場券にもなるという。
リントナー氏は「IFAに若い来場者を集めて、エレクトロニクスのイノベーションが刺激に満ちていることを伝える」のも自身の使命なのだと語っている。IFAが力強くリブートを遂げるイベントになることを期待したい。
■エレクトロニクスの大手ブランドやスタートアップがIFAに集結
世界各国・地域の展示会イベントと同様に、IFAもコロナ禍の間は従来のように来場者を会場に集めて対面形式による開催ができなかった。本格的なリアル開催を再始動した2023年から、メッセ・ベルリン社を引き継ぐ形でIFA Management社がIFAを主催することになった。そして2024年のIFAはリントナー氏が初めてCEOとしてタクトを振るイベントだ。
筆者も2023年のIFAを現地で取材した。2019年までIFAに毎年出展していたエレクロトニクスメーカーのフィリップス、ドイツ公共放送連盟(ARD)、通信事業者のTモバイルなど、地元で人気の企業が不参加だったこともあり、例年に比べると大規模なブースの数は減っている印象を受けた。でもその代わりに、欧州各地からIFAに参加した中小規模のメーカーやスタートアップの熱気がIFAの会場を包み込んでいた。
韓国のサムスン、LGエレクトロニクスのブースも見どころが多かった。今年は日本の企業もIFAで脚光を浴びてほしい。昨年はBtoB向けの出展をメインとしていたパナソニックが、今年はBtoC向けの展示も復活させるというから楽しみだ。
「今年はさらにIFAが大きく、華やかなイベントになるだろう」と、リントナー氏はIFA2024をより大きなイベントに成長させることに前向きな姿勢を顕わにした。
IFAの成功はイベントに出展する企業や来場者の数だけで計ることが難しい。なぜならIFAはエレクトロニクス市場における世界最大規模のビジネストレードショーでもあるからだ。
2023年にIFAを訪れた約18.2万人のうち、約67%に上る12万人前後の来場者はトレードビジターだった。リントナー氏は、イベントに集まるトレードビジターの多様化が2023年には顕著に見られたと振り返る。そして今年はその勢いを加速させたいと意気込む。
リントナー氏によると、従来のIFAがカバーする黒物・白物のコンシューマーエレクトロニクス、IT・通信、デジタルガジェットの枠外からも多くのトレードビジターがIFAに参加を表明しているという。
「今年のIFAは理美容系のビューティーテック、デジタルヘルス関連の出展が拡大すると見込んでいます。それぞれの領域に強い欧州の有力なリテーラーがIFAに強い関心を寄せていることからも、今年は従来のコンシューマーエレクトロニクスの領域の外にIFAが力強く拡大する機運を感じています」(リントナー氏)
■ユーザーに歓迎されるAI、サステナビリティの在り方を問う
2023年のIFAではエレクトロニクス業界の「サステナビリティ」に対する取り組みにスポットライトが当たった。製品やサービスの持続可能性を高めるための技術革新に力を入れる出展社もあったが、来場者の関心の目は「地球と家計の両方にやさしい製品」に向いていた。
今年もサステナビリティはIFAに集まる来場者の大きな関心事のひとつになることは間違いないだろう。リントナー氏は欧州で一般のコンシューマーが家電製品を「修理する権利」が認められ、法制化に向けた動きが加速しつつあると語る。
今後はプロダクトに使う素材や製造過程における環境負荷を積極的に削減しながら、ユーザーに「修理しながら長く使える魅力」を提案できるエレクトロニクスメーカーの製品やサービスに注目が集まりそうだ。
欧州で人気の大手エレクトロニクスメーカーやスタートアップは、「AI(人工知能)」のアピールにも力を入れるだろう。リントナー氏は「いま人々にAIとは何かについて、あるいはAIがエレクトロニクスの領域にもたらすメリットとデメリットについて正しく伝えることが大切」であると語った。
そのため、IFA 2024の開催期間中にはAIを題材にした数多くの講演会が開催される予定だ。AIをプロダクトやサービスに取り込むドイツ、欧州の著名ブランドのキーパーソン、スタートアップのエンジニア、知識人が登壇するカンファレンスがメッセ・ベルリンの会場で毎日開催される。登壇者やカンファレンスの日程はIFAのオフィシャルサイトに公開された。
なお、IFA 2024に出展する企業のリストも7月中旬にほぼ全容が出揃った。確定している企業の名前にはパナソニック、シャープ、ボッシュ、サムスン、LGエレクトロニクス、グーグル、Honor、SharkNINJA、Mieleなどが挙がっている。今後もIFAの開催直前までオフィシャルサイトの出展社リストはアップデートされる。
■東京都のスタートアップがIFA NEXTに登場
欧州を中心に世界中のスタートアップが集まるIFA NEXTの展示も今年は規模がさらに拡大しそうだ。IFA NEXTの2024年オフィシャルパートナー国である韓国からは、エレクトロニクスに関わる様々なスタートアップが集まるだろう。
そして、IFA NEXTには東京都が主催するアジア最大規模のスタートアップイベント「SusHi Tech」が参加する。日本から10社前後、日本のスタートアップが最先端のテクノロジーをベルリンで披露する。展示の内容が今からとても楽しみだ。
IFAの開催期間中、メッセ・ベルリンの会場内に新しい特設エリアとなる「IFA Contents Creators Hub」が立ち上がる。例えばオーディオ・ビジュアルのイノベーションを語るうえで、コンテンツを制作するクリエイターを取り巻く環境がどのように進化しているのか、一般のコンシューマーにも興味深い展示が並ぶことになりそうだ。
メッセ・ベルリン会場中心のイベントスペースであるサマーガーデンでは、IFAの開幕前夜の5日に、世界的なシンガーソングライターであるブライアン・アダムスのコンサートが開催される。コンサートのチケットが翌日6日に始まるIFAの入場券にもなるという。
リントナー氏は「IFAに若い来場者を集めて、エレクトロニクスのイノベーションが刺激に満ちていることを伝える」のも自身の使命なのだと語っている。IFAが力強くリブートを遂げるイベントになることを期待したい。