DDFAを手がけるCSR開発陣も登場
【独HIGH END】デノンの商品企画担当に聞いた「DCD-50」の詳細と欧州展開
5月14日から17日まで独ミュンヘンで開催された欧州最大のオーディオショウ「HIGH END」。今年も本イベントに参加したに出展したデノンは大規模なブースを構え、6月上旬発売予定の小型CDプレーヤー「DCD-50」をはじめとした同社製品を披露した。
デノンブースには同社が欧州で展開するHi-Fiオーディオ製品、AV関連製品、ヘッドホン関連製品などが一斉展示された。今回の展示の概要、そしてデノンのヨーロッパ展開について、ディーアンドエムホールディングスのプログラム・マネジメント・オフィスマネージャーである伊藤昭彦氏に伺った。
今回の展示で最も強くアピールされた製品のひとつであるUSB-DAC/プリメインアンプ「PMA-50」のデジタルアンプ部であるDDFAテクノロジーを手がけたCSR社のメンバーも会場に登場。一緒にお話を伺うことができた。
■PMA-50にベストマッチングなCDプレーヤー「DCD-50」
デノンが“デジタライゼーションシリーズ”と位置づけるコンポーネント群は、これまでデノンが気づいてきたHi-Fiオーディオのサウンドと、現代の生活環境にマッチするデザインや使い勝手を両立させている。特に今年1月に登場したプリメインアンプ「PMA-50」は、CSR社の手がけるデジタルアンプ「DDFA」を搭載し、コンパクトな筐体で高音質を実現したことで日本市場でも大きな反響を得た。そして欧州においてもPMA-50は大きな注目を集めているという。
伊藤氏は「デノンというと老舗のオーディオブランドというイメージが強いでしょうが、昨今のリスニング環境や音楽ソースの変化に答える製品も開発していく必要がありました。さらに、これまでデノンに親しんできていただいたユーザーに加えて、若い世代やもっとカジュアルに音楽を楽しみたいという方に向けて、デジタライゼーションシリーズを世に送り出したのです」と語る。
このイベントで欧州初披露されたDCD-50についても話を聞いた。DCD-50はPMA-50との組み合わせを前提に開発されている。サイズもまったく同一であり、やはり省スペースでの楽しみ方を提案するために「縦置き」にも対応している。アナログ出力も搭載しているのでPMA-50以外の製品との組み合わせも可能だ。
「特徴はなんといってもそのサウンドです」とは伊藤氏。PMA-50とデジタル接続を行えば、PMA-50に搭載されたアナログ波形再現技術「Advanced AL32 Processing」を使って、CD音源もハイレゾ相当のアナログ波形に拡張して再生できる。さらにPMA-50搭載の「DDFA」は、このビット拡張されたデジタル信号を直接入力して高品位に再生することができる。伊藤氏は「DCD-50はもちろん他の製品と組み合わせできますが、その性能を最大限に発揮できるのはやはりPMA-50との組み合わせです」と自信を見せた。CSR社の開発メンバーも、DCD-50のような妥協のないソースコンポーネントがあれば、DDFAのアンプ能力が最大限活かせると太鼓判を押していた。
サウンドと主にこだわったのが、使用する環境や状況にかなった使い勝手を実現することだったという。DCD-50はスロットイン型のドライブを採用するが、「デスクトップ用途」を想定してショックプルーフ(音飛び防止)機能を強化した。
「DCD-50はデスクトップで使うことも考慮していますが、狭いスペースではCD再生中に手がぶつかったり、設置したデスクに大きな振動が加わることもあります。そういった状況でも音飛びが起きないように配慮しました。一方で、必要以上のメモリ蓄積は行わないようにして、音質を損なうこともないようにしています。どちらかというと付帯機能ですが、ライフスタイルを考慮した場合、こうした機能は重要になってくるのです」(伊藤氏)。ドライブの静音性にもこだわり、動作時の機械音やCDの回転音を小さく抑えた。これも省スペースリスニングを考慮した結果だという。このあたりは長年ディスクプレーヤーを手がけてきたデノンだからこそ実現できることだ。
DCD-50の開発はいつ頃から構想があったのだろうか。「PMA-50開発時から、対になるCDプレーヤーも実現させたいと考えていました。さらにPMA-50発売直後から“コンビのCDプレーヤーが欲しい”という声をいただいていましたので、DCD-50を早く発売したいと考えていました。PMA-50が非常に好評で、品切れでユーザーの皆様にご迷惑をかけてしまったこともありましたが、今後はDCD-50とのセットで改めてご提案していきたいと思います」と伊藤氏は語ってくれた。
■欧州でも注目を集めるデノンのヘッドホンやUSB-DAC
会場にはデノンのヘッドホンやUSB-DACも出展された。これらもPMA-50やDCD-50と同様に、新しいユーザーや変化する使用環境、デジタルファイルに対応するべく登場した製品である。昨年春に登場したUSB-DAC「DA-300USB」は発売から1年以上を経て、今でも安定して“売れ筋”とのこと。その後、ヘッドホンアンプ/USB-DACのDA-10も登場したが、こうしたラインナップをもっと増やして欲しいという要望も多いそうだ。「Hi-Fi的なクオリティを持ちながら届きやすい価格を実現している点が、みなさまに受けている理由だと思います。そこはデノンだからこそ実現できるポイントでもあります」と伊藤氏は分析する。
同社最新のヘッドホンラインナップである「AH-MM」シリーズも登場。デザインにも試行錯誤したという本機は、シックだけれでもカジュアルという絶妙なバランスが、オーディオライクなイメージを醸し出している。「ヘッドホンにおいてはユーザーの嗜好やユースケースの変化も激しく、デノンもサウンド、デザインの両面で様々なチャレンジを重ねてきました。AH-MMシリーズはその流れの集大成といえるヘッドホンです」(伊藤氏)。
ブース内にはポータブルBluetoothスピーカー「DSB-200」と「DSB-100」も展示されていた。両モデルはBluetooth対応モデルながらデノンらしいサウンドクオリティが評価され、欧州でも非常に好調なセールスを誇っているとのことだった。
■Hi-FiコンポーネントやAVアンプも勢揃い
デノンの新しい潮流を体現する製品の一方で、同社の王道たるHi-Fiコンポーネント、そしてAVアンプもしっかりとアピールされていた。Hi-Fiコンポーネントについては、欧州では日本でのDCD-1650RE/PMA-2000REにあたる製品がトップエンドにあたる(地域で異なる型番を採用している)。続いて、1500シリーズ、720シリーズ、520シリーズ(日本では未導入)。欧州では製品という意味では日本と同一のものが導入されているが、ラインナップ面では日本/欧州の地域性やブランドに対するニーズに合わせて、導入するモデルを選択しているとのことだ。
数ある製品の中で伊藤氏が注目モデルとして挙げたのはステレオオーディオシステム「RCD-M40DAB」(日本型番はD-M40)だ。日本でも6月から発売されるモデルである。初代から10代目を迎える本機は基本コンセプトを踏襲しつつ、音質の全体的な見直しが図られた。スピーカーシステムを練り直し、サウンドチューニングはヨーロッパに在籍する同社の音響スペシャリストと日本のメンバーがコラボして行ったという。
AVアンプについても モデルは日本と同様だが、ここでも投入する製品が差別化されている。日本では未導入の5000番台・3000番台のAVアンプも出展されていた。伊藤氏によると欧州において特徴的なのは「AVアンプとBDプレーヤーを同ブランドで揃える文化」だという。デザインや家具との調和にこだわる欧州ユーザーらしい発想だが、結果的にBDプレーヤーがAVアンプと共に多く出荷されている。世界的に見ても同ブランド・同ラインでAVアンプとBDプレーヤーが購入されるパターンは欧州が1番多いという。
■新しいリスニングスタイルにも積極的に取り組んで行く
伊藤氏が最後に紹介してくれたのは、欧米で展開されているマルチルーム対応のオーディオシステム「HEOS」シリーズ。Wi-Fiで各スピーカーやスマートフォンをつなぐことで、好きな音楽を家中どこでも良い音で楽しめるというものだ。
伊藤氏が「デノンが総力を挙げている新しい取り組み」と語るHEOS。ラインナップは3種類のマルチルームスピーカーをメインに、アンプ、プリアンプ、ワイヤレスエキスパンダーから構成されている。「HEOSはこれからのリスニングスタイルの提案です。これまでのコンポーネントとは異なり、ひとつのエリアで楽しむだけでなく、どのエリアでもいつでも同じ音楽を楽しめるというスタイルです。ストリーミングサービスが盛んな欧米においていち早く、こうしたリスニングスタイルを提案してきました。日本には残念ながら未導入ですが、様々なビジネスケースを検討しながら、国内導入も検討してきたいと考えております」(伊藤氏)。
欧州でも強いブランド力とコンポーネントの存在感を放っていたデノン。ブースには説明員に熱心に質問するファンが、後を絶えなかった。また、今回の展示内容からは、レガシーなHi-Fiオーディオに加えて、若い世代やストリーミングのような新しいスタイルで音楽を楽しんでいる方にも良い音を届けたいというデノンの姿勢が伝わってきた。DCD-50やD-M40をはじめ6月以降も強力な製品を投入するデノンに注目していきたい。
デノンブースには同社が欧州で展開するHi-Fiオーディオ製品、AV関連製品、ヘッドホン関連製品などが一斉展示された。今回の展示の概要、そしてデノンのヨーロッパ展開について、ディーアンドエムホールディングスのプログラム・マネジメント・オフィスマネージャーである伊藤昭彦氏に伺った。
今回の展示で最も強くアピールされた製品のひとつであるUSB-DAC/プリメインアンプ「PMA-50」のデジタルアンプ部であるDDFAテクノロジーを手がけたCSR社のメンバーも会場に登場。一緒にお話を伺うことができた。
■PMA-50にベストマッチングなCDプレーヤー「DCD-50」
デノンが“デジタライゼーションシリーズ”と位置づけるコンポーネント群は、これまでデノンが気づいてきたHi-Fiオーディオのサウンドと、現代の生活環境にマッチするデザインや使い勝手を両立させている。特に今年1月に登場したプリメインアンプ「PMA-50」は、CSR社の手がけるデジタルアンプ「DDFA」を搭載し、コンパクトな筐体で高音質を実現したことで日本市場でも大きな反響を得た。そして欧州においてもPMA-50は大きな注目を集めているという。
伊藤氏は「デノンというと老舗のオーディオブランドというイメージが強いでしょうが、昨今のリスニング環境や音楽ソースの変化に答える製品も開発していく必要がありました。さらに、これまでデノンに親しんできていただいたユーザーに加えて、若い世代やもっとカジュアルに音楽を楽しみたいという方に向けて、デジタライゼーションシリーズを世に送り出したのです」と語る。
このイベントで欧州初披露されたDCD-50についても話を聞いた。DCD-50はPMA-50との組み合わせを前提に開発されている。サイズもまったく同一であり、やはり省スペースでの楽しみ方を提案するために「縦置き」にも対応している。アナログ出力も搭載しているのでPMA-50以外の製品との組み合わせも可能だ。
「特徴はなんといってもそのサウンドです」とは伊藤氏。PMA-50とデジタル接続を行えば、PMA-50に搭載されたアナログ波形再現技術「Advanced AL32 Processing」を使って、CD音源もハイレゾ相当のアナログ波形に拡張して再生できる。さらにPMA-50搭載の「DDFA」は、このビット拡張されたデジタル信号を直接入力して高品位に再生することができる。伊藤氏は「DCD-50はもちろん他の製品と組み合わせできますが、その性能を最大限に発揮できるのはやはりPMA-50との組み合わせです」と自信を見せた。CSR社の開発メンバーも、DCD-50のような妥協のないソースコンポーネントがあれば、DDFAのアンプ能力が最大限活かせると太鼓判を押していた。
サウンドと主にこだわったのが、使用する環境や状況にかなった使い勝手を実現することだったという。DCD-50はスロットイン型のドライブを採用するが、「デスクトップ用途」を想定してショックプルーフ(音飛び防止)機能を強化した。
「DCD-50はデスクトップで使うことも考慮していますが、狭いスペースではCD再生中に手がぶつかったり、設置したデスクに大きな振動が加わることもあります。そういった状況でも音飛びが起きないように配慮しました。一方で、必要以上のメモリ蓄積は行わないようにして、音質を損なうこともないようにしています。どちらかというと付帯機能ですが、ライフスタイルを考慮した場合、こうした機能は重要になってくるのです」(伊藤氏)。ドライブの静音性にもこだわり、動作時の機械音やCDの回転音を小さく抑えた。これも省スペースリスニングを考慮した結果だという。このあたりは長年ディスクプレーヤーを手がけてきたデノンだからこそ実現できることだ。
DCD-50の開発はいつ頃から構想があったのだろうか。「PMA-50開発時から、対になるCDプレーヤーも実現させたいと考えていました。さらにPMA-50発売直後から“コンビのCDプレーヤーが欲しい”という声をいただいていましたので、DCD-50を早く発売したいと考えていました。PMA-50が非常に好評で、品切れでユーザーの皆様にご迷惑をかけてしまったこともありましたが、今後はDCD-50とのセットで改めてご提案していきたいと思います」と伊藤氏は語ってくれた。
■欧州でも注目を集めるデノンのヘッドホンやUSB-DAC
会場にはデノンのヘッドホンやUSB-DACも出展された。これらもPMA-50やDCD-50と同様に、新しいユーザーや変化する使用環境、デジタルファイルに対応するべく登場した製品である。昨年春に登場したUSB-DAC「DA-300USB」は発売から1年以上を経て、今でも安定して“売れ筋”とのこと。その後、ヘッドホンアンプ/USB-DACのDA-10も登場したが、こうしたラインナップをもっと増やして欲しいという要望も多いそうだ。「Hi-Fi的なクオリティを持ちながら届きやすい価格を実現している点が、みなさまに受けている理由だと思います。そこはデノンだからこそ実現できるポイントでもあります」と伊藤氏は分析する。
同社最新のヘッドホンラインナップである「AH-MM」シリーズも登場。デザインにも試行錯誤したという本機は、シックだけれでもカジュアルという絶妙なバランスが、オーディオライクなイメージを醸し出している。「ヘッドホンにおいてはユーザーの嗜好やユースケースの変化も激しく、デノンもサウンド、デザインの両面で様々なチャレンジを重ねてきました。AH-MMシリーズはその流れの集大成といえるヘッドホンです」(伊藤氏)。
ブース内にはポータブルBluetoothスピーカー「DSB-200」と「DSB-100」も展示されていた。両モデルはBluetooth対応モデルながらデノンらしいサウンドクオリティが評価され、欧州でも非常に好調なセールスを誇っているとのことだった。
■Hi-FiコンポーネントやAVアンプも勢揃い
デノンの新しい潮流を体現する製品の一方で、同社の王道たるHi-Fiコンポーネント、そしてAVアンプもしっかりとアピールされていた。Hi-Fiコンポーネントについては、欧州では日本でのDCD-1650RE/PMA-2000REにあたる製品がトップエンドにあたる(地域で異なる型番を採用している)。続いて、1500シリーズ、720シリーズ、520シリーズ(日本では未導入)。欧州では製品という意味では日本と同一のものが導入されているが、ラインナップ面では日本/欧州の地域性やブランドに対するニーズに合わせて、導入するモデルを選択しているとのことだ。
数ある製品の中で伊藤氏が注目モデルとして挙げたのはステレオオーディオシステム「RCD-M40DAB」(日本型番はD-M40)だ。日本でも6月から発売されるモデルである。初代から10代目を迎える本機は基本コンセプトを踏襲しつつ、音質の全体的な見直しが図られた。スピーカーシステムを練り直し、サウンドチューニングはヨーロッパに在籍する同社の音響スペシャリストと日本のメンバーがコラボして行ったという。
AVアンプについても モデルは日本と同様だが、ここでも投入する製品が差別化されている。日本では未導入の5000番台・3000番台のAVアンプも出展されていた。伊藤氏によると欧州において特徴的なのは「AVアンプとBDプレーヤーを同ブランドで揃える文化」だという。デザインや家具との調和にこだわる欧州ユーザーらしい発想だが、結果的にBDプレーヤーがAVアンプと共に多く出荷されている。世界的に見ても同ブランド・同ラインでAVアンプとBDプレーヤーが購入されるパターンは欧州が1番多いという。
■新しいリスニングスタイルにも積極的に取り組んで行く
伊藤氏が最後に紹介してくれたのは、欧米で展開されているマルチルーム対応のオーディオシステム「HEOS」シリーズ。Wi-Fiで各スピーカーやスマートフォンをつなぐことで、好きな音楽を家中どこでも良い音で楽しめるというものだ。
伊藤氏が「デノンが総力を挙げている新しい取り組み」と語るHEOS。ラインナップは3種類のマルチルームスピーカーをメインに、アンプ、プリアンプ、ワイヤレスエキスパンダーから構成されている。「HEOSはこれからのリスニングスタイルの提案です。これまでのコンポーネントとは異なり、ひとつのエリアで楽しむだけでなく、どのエリアでもいつでも同じ音楽を楽しめるというスタイルです。ストリーミングサービスが盛んな欧米においていち早く、こうしたリスニングスタイルを提案してきました。日本には残念ながら未導入ですが、様々なビジネスケースを検討しながら、国内導入も検討してきたいと考えております」(伊藤氏)。
欧州でも強いブランド力とコンポーネントの存在感を放っていたデノン。ブースには説明員に熱心に質問するファンが、後を絶えなかった。また、今回の展示内容からは、レガシーなHi-Fiオーディオに加えて、若い世代やストリーミングのような新しいスタイルで音楽を楽しんでいる方にも良い音を届けたいというデノンの姿勢が伝わってきた。DCD-50やD-M40をはじめ6月以降も強力な製品を投入するデノンに注目していきたい。
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