ニーズに合わせ機能を選定
マランツ、HDMI5入力搭載の新コンセプトHiFiアンプ「NR1200」
マランツは、最新のHDMI入力を5系統搭載しながら、搭載するアンプを2chとし、ハイファイ音質を両立させたアンプ「NR1200」を10月中旬に発売する。本体色はシルバーゴールドで、価格は78,000円(税抜)。先日サービス開始されたハイレゾ/ロスレス音楽配信サービス「Amazon Music HD」にも対応している。
筐体は同社のAVアンプ「NR1710」を踏襲しているが、NR1710が7.1chのアンプを搭載しているのに対して、「NR1200」は2chアンプのみ搭載という仕様になっている。つまり、ハイファイアンプでありながら多くのHDMI端子を搭載し、HDMIセレクターとしても使えるという、異色のコンセプトの商品だ。フロントサラウンドなどの機能も搭載していない、硬派な仕様となっている。
このような仕様を採用したのは、同社がNRシリーズのユーザーを調査したところ、2chで使用しているユーザーが26%を占めたことも大きかったという。
この26%という数字は、同社で把握している他社アンプの2ch使用率よりはるかに高い。マランツの高山健一氏は「ここに潜在的なニーズがあると考えた」と紹介する。
もうひとつ、本機が企画された背景として大きいのは音のソースの多様化だという。高山氏は「ソース別使用率を尋ねたところ、直近ではテレビが一番上に来ていました。5年前はブルーレイが多かったですし、最近ではストリーミング映像配信やストリーミング音楽配信も人気を得ています。さらに、YouTubeの音を聴きたい、という声は実に多く、ソースがますます多様化しています」と語り、アンプの使われ方が変わっていることを実例を交えて説明した。
そういった状況の中、ユーザー側も商品選びに悩んでいるのではないか、と高山氏は続ける。「2chアンプで接続性の高いものはあまり見当たらないのが現状。一方、ハイファイアンプをお探しの方がAVコーナーに来ていただけるかというと、それも難しい状況です」とし、「ハイファイアンプとAVアンプの橋渡しとなるような、接続性が高く、かつ音の良いものをご提供しようというのがNR1200のバックボーン」と紹介した。
この思想は初期設定にも及ぶ。HDMI搭載というと難しく感じるハイファイオーディオファンもいるかもしれないが、本機では初期設定時にテレビ(ディスプレイ)の「あり/なし」を選択可能。「なし」を選ぶと、本体だけでかんたんに初期設定が可能となっている。一方でディスプレイ「あり」では、テレビなどを使ってAVアンプと同様のかんたんセットアップが可能だ。
■最新HDMI端子を搭載、5入力1出力
さて、本機の特徴をもう少しくわしく紹介していこう。まず接続性の面だが、搭載されたHDMI端子は最新のもので、5入力1出力。音声信号については、2chのリニアPCM、192kHz/24bitまでの対応となる。DSDは再生できない。
HDMIはもちろんARCやHDMI CECにも対応しており、4K 60p 4:4:4 24bit / 3D / HDR10 / HLG / BT.2020のパススルーが可能なほか、HDCP 2.3にもそれぞれ対応している。
またHDMIでは、HDMI 2.1の新機能「ALLM(Auto Low Latency Mode)」に対応。ALLMに対応したプレーヤーやテレビと接続すると、ゲームプレイ時にAVアンプとテレビが自動的に低遅延モードに変わり、遅延を抑えるという機能だ。
高山氏は「ここまで充実したHDMI端子を搭載できたのは、デノンブランドを含めてグループ全体のAVアンプのシェアが非常に高く、その力が背景にあることが大きい」と胸を張る。
HDMIのほかにも、ネットワークオーディオ機能は充実している。HEOS Technologyを搭載しており、NASやPCに接続してのネットワークオーディオ再生に対応。DSDファイルは5.6MHzまで、PCM系ファイルは192kHz/24bitまで再生可能。さらに、DSD、WAV、FLAC、Apple Losslessファイルのギャップレス再生にも対応している。
またAirPlay2にも対応しているほか、Amazon Music HDをはじめSpotify、AWA、SoundCloud、TuneInなどを単体でストリーミング再生することも可能。さらに、Amazon Alexa搭載デバイスからの操作にも対応。Alexa に話しかけるたことで、再生や停止、スキップなどの基本操作や、Amazon Musicの楽曲を声で指示して再生することが可能だ。Wi-FiはIEEE 802.11 a/b/g/nに対応し、2.4/5GHzのデュアルバンド対応となる。
さらにFAT16/32、NTFSでフォーマットしたUSBメモリー/HDDの再生機能も備える。
また、Bluetoothレシーバー機能を備えるのはもちろんのこと、後日ファームウェアアップデートでBluetoothの送信機能も追加される予定。これによりBluetoothヘッドホンやイヤホンで音楽を聴くことも可能になる。
■音質にも配慮。マランツ伝統のシンメトリカルレイアウト採用
音質については、先述のとおり「マランツブランドのハイファイオーディオアンプ」というイメージを崩さないようにこだわった、と紹介。様々なこだわりが込められている。
マランツ・サウンドマネージャーの尾形氏は、「NR1710の筐体構造を踏襲しながら、さらに剛性を高めるため、まずはヒートシンクを構造物とすることを考えました」と紹介。フルサイズのヒートシンクを筐体前方にがっしりと固定することで、剛性と大出力を両立できたという。
出力は75SW(8Ω)×2chで、ディスクリートパワーアンプを採用。さらにマランツのハイファイアンプの伝統である、シンメトリカル・レイアウト・パワーアンプを採用。これによりL/R ch間のクロストークを低減し、さらにL/R均一の品質を実現している。
トランスはNR1710に搭載したものをベースとしているが、二次巻線は回路ごとに独立させているなど、NR1200専用仕様とした大型のEIコアトランスを採用している。
そのほか、NR1200用に新開発した6800μFのカスタムブロックコンデンサーを2基搭載しているほか、Hi-Fi用高音質フィルムコンデンサーなども備えており、音質向上を図っている。
DACはAKMの「AK4458VN」を仕様。またDAC部では、「ダブル・ディファレンシャル」構成としたことを特筆したい。つまり差動駆動をダブルで行っているということで、DAC回路をL/Rでそれぞれ2ch、合計4ch分を搭載。これによりノイズを抑え、高いS/Nを実現したという。
そのほか、入力端子はアナログ×3、フォノ(MM対応)、同軸デジタル、光デジタルを搭載。出力端子は2.2chプリアウトのほか、ゾーンプリアウト、ヘッドホン端子も備えている。スピーカーターミナルは2系統で、金メッキ処理が施されている。A + B/ A or B切り替えにも対応する。
ピュアな再生を徹底するため、M-DAX、トーンコントロール、左右バランスの調整を行わず、入力信号に一切の加工を行わずそのまま増幅する「ダイレクトモード」、さらにノイズの発生源となる本体のディスプレイ回路を停止して再生音の純度を高める「ピュアダイレクトモード」を搭載。また、本体にBass/Treble/Balanceのコントロール用ツマミを備えているのもハイファイアンプらしい。
最大外形寸法は440Wx105Hx378Dmm、質量は7.9kgとなる。
■ハイファイ用チューニングならではの再現能力の高さ
マランツの試聴室で本機の音を確かめる機会を得た。デモは、ベース機となったNR1710と、今回発表になったNR1200の比較がメインだった。アナログ入力とデジタル入力、それぞれで確かめた。
NR1710は7.1chアンプが搭載されており、2chでの使用のみに特化したモデルではない。だから、この比較はそもそも(NR1710にとって)フェアではないのだが、それでも、その音質差には驚かされた。
駆動しているスピーカーがB&Wの「800D3」ということもあり、NR1710では音のディテールが潰れてしまい、全体に平板になってしまい、のっぺりとした音場が前方に張り付く印象が否めない。
NR1200に変えると、ステレオイメージが途端に明瞭になる。ここにピアノ、ここにギター、というように各楽器の位置が明確になり、さらにボーカルはぴったりと中央に定位しながら、音場の広がり感も両立できている。ギターの弦の張りもさらにリアルに伝わり、解像感とパワー感に優れていることも確認できた。
「NR1710と同じ筐体でも、ハイファイ用にチューニングするとここまで変わるのか。しかも78,000円という価格でこれを実現するのはすごい」というのが、一聴して抱いた感想だ。
実は記者の自宅リビングにもNRシリーズがあるのだが、駆動しているのは2chスピーカーのみ。マランツが調査した、26%のユーザーと同じ状況というわけだ。一方で、ハイファイアンプはHDMI端子が搭載されていないものばかりで、様々なストリーミング端末やゲーム機などが置かれている自宅のリビング環境には使えない、というジレンマを抱えていた。
豊富なワイヤレス機能、そして最新のHDMI端子を備え、なおかつハイファイ仕様とした本機なら、記者がこれまで抱いていた不満を一掃することができそうだと期待している。
筐体は同社のAVアンプ「NR1710」を踏襲しているが、NR1710が7.1chのアンプを搭載しているのに対して、「NR1200」は2chアンプのみ搭載という仕様になっている。つまり、ハイファイアンプでありながら多くのHDMI端子を搭載し、HDMIセレクターとしても使えるという、異色のコンセプトの商品だ。フロントサラウンドなどの機能も搭載していない、硬派な仕様となっている。
このような仕様を採用したのは、同社がNRシリーズのユーザーを調査したところ、2chで使用しているユーザーが26%を占めたことも大きかったという。
この26%という数字は、同社で把握している他社アンプの2ch使用率よりはるかに高い。マランツの高山健一氏は「ここに潜在的なニーズがあると考えた」と紹介する。
もうひとつ、本機が企画された背景として大きいのは音のソースの多様化だという。高山氏は「ソース別使用率を尋ねたところ、直近ではテレビが一番上に来ていました。5年前はブルーレイが多かったですし、最近ではストリーミング映像配信やストリーミング音楽配信も人気を得ています。さらに、YouTubeの音を聴きたい、という声は実に多く、ソースがますます多様化しています」と語り、アンプの使われ方が変わっていることを実例を交えて説明した。
そういった状況の中、ユーザー側も商品選びに悩んでいるのではないか、と高山氏は続ける。「2chアンプで接続性の高いものはあまり見当たらないのが現状。一方、ハイファイアンプをお探しの方がAVコーナーに来ていただけるかというと、それも難しい状況です」とし、「ハイファイアンプとAVアンプの橋渡しとなるような、接続性が高く、かつ音の良いものをご提供しようというのがNR1200のバックボーン」と紹介した。
この思想は初期設定にも及ぶ。HDMI搭載というと難しく感じるハイファイオーディオファンもいるかもしれないが、本機では初期設定時にテレビ(ディスプレイ)の「あり/なし」を選択可能。「なし」を選ぶと、本体だけでかんたんに初期設定が可能となっている。一方でディスプレイ「あり」では、テレビなどを使ってAVアンプと同様のかんたんセットアップが可能だ。
■最新HDMI端子を搭載、5入力1出力
さて、本機の特徴をもう少しくわしく紹介していこう。まず接続性の面だが、搭載されたHDMI端子は最新のもので、5入力1出力。音声信号については、2chのリニアPCM、192kHz/24bitまでの対応となる。DSDは再生できない。
HDMIはもちろんARCやHDMI CECにも対応しており、4K 60p 4:4:4 24bit / 3D / HDR10 / HLG / BT.2020のパススルーが可能なほか、HDCP 2.3にもそれぞれ対応している。
またHDMIでは、HDMI 2.1の新機能「ALLM(Auto Low Latency Mode)」に対応。ALLMに対応したプレーヤーやテレビと接続すると、ゲームプレイ時にAVアンプとテレビが自動的に低遅延モードに変わり、遅延を抑えるという機能だ。
高山氏は「ここまで充実したHDMI端子を搭載できたのは、デノンブランドを含めてグループ全体のAVアンプのシェアが非常に高く、その力が背景にあることが大きい」と胸を張る。
HDMIのほかにも、ネットワークオーディオ機能は充実している。HEOS Technologyを搭載しており、NASやPCに接続してのネットワークオーディオ再生に対応。DSDファイルは5.6MHzまで、PCM系ファイルは192kHz/24bitまで再生可能。さらに、DSD、WAV、FLAC、Apple Losslessファイルのギャップレス再生にも対応している。
またAirPlay2にも対応しているほか、Amazon Music HDをはじめSpotify、AWA、SoundCloud、TuneInなどを単体でストリーミング再生することも可能。さらに、Amazon Alexa搭載デバイスからの操作にも対応。Alexa に話しかけるたことで、再生や停止、スキップなどの基本操作や、Amazon Musicの楽曲を声で指示して再生することが可能だ。Wi-FiはIEEE 802.11 a/b/g/nに対応し、2.4/5GHzのデュアルバンド対応となる。
さらにFAT16/32、NTFSでフォーマットしたUSBメモリー/HDDの再生機能も備える。
また、Bluetoothレシーバー機能を備えるのはもちろんのこと、後日ファームウェアアップデートでBluetoothの送信機能も追加される予定。これによりBluetoothヘッドホンやイヤホンで音楽を聴くことも可能になる。
■音質にも配慮。マランツ伝統のシンメトリカルレイアウト採用
音質については、先述のとおり「マランツブランドのハイファイオーディオアンプ」というイメージを崩さないようにこだわった、と紹介。様々なこだわりが込められている。
マランツ・サウンドマネージャーの尾形氏は、「NR1710の筐体構造を踏襲しながら、さらに剛性を高めるため、まずはヒートシンクを構造物とすることを考えました」と紹介。フルサイズのヒートシンクを筐体前方にがっしりと固定することで、剛性と大出力を両立できたという。
出力は75SW(8Ω)×2chで、ディスクリートパワーアンプを採用。さらにマランツのハイファイアンプの伝統である、シンメトリカル・レイアウト・パワーアンプを採用。これによりL/R ch間のクロストークを低減し、さらにL/R均一の品質を実現している。
トランスはNR1710に搭載したものをベースとしているが、二次巻線は回路ごとに独立させているなど、NR1200専用仕様とした大型のEIコアトランスを採用している。
そのほか、NR1200用に新開発した6800μFのカスタムブロックコンデンサーを2基搭載しているほか、Hi-Fi用高音質フィルムコンデンサーなども備えており、音質向上を図っている。
DACはAKMの「AK4458VN」を仕様。またDAC部では、「ダブル・ディファレンシャル」構成としたことを特筆したい。つまり差動駆動をダブルで行っているということで、DAC回路をL/Rでそれぞれ2ch、合計4ch分を搭載。これによりノイズを抑え、高いS/Nを実現したという。
そのほか、入力端子はアナログ×3、フォノ(MM対応)、同軸デジタル、光デジタルを搭載。出力端子は2.2chプリアウトのほか、ゾーンプリアウト、ヘッドホン端子も備えている。スピーカーターミナルは2系統で、金メッキ処理が施されている。A + B/ A or B切り替えにも対応する。
ピュアな再生を徹底するため、M-DAX、トーンコントロール、左右バランスの調整を行わず、入力信号に一切の加工を行わずそのまま増幅する「ダイレクトモード」、さらにノイズの発生源となる本体のディスプレイ回路を停止して再生音の純度を高める「ピュアダイレクトモード」を搭載。また、本体にBass/Treble/Balanceのコントロール用ツマミを備えているのもハイファイアンプらしい。
最大外形寸法は440Wx105Hx378Dmm、質量は7.9kgとなる。
■ハイファイ用チューニングならではの再現能力の高さ
マランツの試聴室で本機の音を確かめる機会を得た。デモは、ベース機となったNR1710と、今回発表になったNR1200の比較がメインだった。アナログ入力とデジタル入力、それぞれで確かめた。
NR1710は7.1chアンプが搭載されており、2chでの使用のみに特化したモデルではない。だから、この比較はそもそも(NR1710にとって)フェアではないのだが、それでも、その音質差には驚かされた。
駆動しているスピーカーがB&Wの「800D3」ということもあり、NR1710では音のディテールが潰れてしまい、全体に平板になってしまい、のっぺりとした音場が前方に張り付く印象が否めない。
NR1200に変えると、ステレオイメージが途端に明瞭になる。ここにピアノ、ここにギター、というように各楽器の位置が明確になり、さらにボーカルはぴったりと中央に定位しながら、音場の広がり感も両立できている。ギターの弦の張りもさらにリアルに伝わり、解像感とパワー感に優れていることも確認できた。
「NR1710と同じ筐体でも、ハイファイ用にチューニングするとここまで変わるのか。しかも78,000円という価格でこれを実現するのはすごい」というのが、一聴して抱いた感想だ。
実は記者の自宅リビングにもNRシリーズがあるのだが、駆動しているのは2chスピーカーのみ。マランツが調査した、26%のユーザーと同じ状況というわけだ。一方で、ハイファイアンプはHDMI端子が搭載されていないものばかりで、様々なストリーミング端末やゲーム機などが置かれている自宅のリビング環境には使えない、というジレンマを抱えていた。
豊富なワイヤレス機能、そして最新のHDMI端子を備え、なおかつハイファイ仕様とした本機なら、記者がこれまで抱いていた不満を一掃することができそうだと期待している。
関連リンク
トピック