「過渡応答性」が審査項目に新たに追加

新設のアニソンコースが大盛況。「第10回 ヨーロピアンカーオーディオコンテスト」レポート

公開日 2023/07/13 11:33 ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
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6月10日(日)に、石川県小松市の小松ドームにて、「第10回ヨーロピアンカーオーディオコンテスト」(以下:ユーロコン)が開催された。記念すべき10回目となるこのコンテストの模様をレポートしよう。

4年ぶりに帰ってきたこまつドームでの「ヨーロピアンカーオーディオコンテスト」

ユーロコンは、ヨーロッパのカーオーディオ製品を輸入する商社5社が共同で主催するカーオーディオコンテスト。ジャンライン&パートナーズ(モレル他)、トライム(ブラム他)、佐藤商事(ディナウディオ他)、エムズライン(ブラックス、イートン他)、フェリースソニード(クアトロリゴほか)が主催に参加しているほか、メーカーとしてサエクコマースとF2 Musicもデモカーを準備しコンテストを盛り上げている。

今年のユーロコンは、2019年以来4年ぶりに“全国規模”での開催となり、140を超える台数が全国から集まった。過去2回は東西に分かれて比較的小規模な開催となっただけに、久しぶりの全国大会にショップディーラー、エントラントもみな入念に準備をしてコンテストに挑んでいることが伺えた。

今回の審査員。左から土方久明氏、小原由夫氏、模擬審査に参加の飯田有沙氏、審査委員長の山之内 正氏、生方三郎氏、炭山アキラ氏、峯岸良行氏

さらに、今回初の試みとして「アニソンコース」を新設。10回記念の特別コース…のはずが、想像以上に参加者からの反響が大きく、「アニソンコース狙いで参加しました!」というエントラントも多数。審査員を務める評論家の土方久明氏も「若いユーザーなど、カーオーディオのファンを増やしていきたい」と気合十分。

新設のアニソンコースは予想以上の盛り上がり!土方氏のジャッジにも力が入る

今回も、ディーラープロコース、価格ごとに4コースに分けられたユーザープロコース、主催商社5社の製品を使っていることが条件となるエキスパートの5コース。それに上記の「アニソンコース」(価格帯ごとにA/Bの2コース)が加わる全12コースが用意された。なお、エキスパートコースとプロコースはWエントリー可能。さらにアニソンも加えたトリプルエントリーもできる。

審査後はエントラントに対し丁寧にコメントしていく

ユーザープロコースの審査の様子

プロコースの課題曲は、ヤニック・ネゼ=セガン&ヨーロッパ室内管弦楽団の「ベートーヴェン:交響曲全集」から「第九」の第二楽章。それに、マイケル・ジャクソンをテーマにしたミュージカル「MJ the Musical」からTr.1の「Beat It」という2曲が選ばれた。

ヤニック・ネゼ=セガン&ヨーロッパ室内管弦楽団「ベートーヴェン:交響曲第9番」から第二楽章

MJ the Musical「Beat It」

この「第九」の録音のポイントは、“軽やかさ”、重々しくなりすぎずリズムやテンポを忠実に再現することに課題があるという。一方の「Beat It」はある種の性急さ、ギターの歪みまで含めたエネルギッシュなパワー感がポイントで、今回も全く違う方向性の2曲が選ばれている。これらを両立させる音作りがコンテストでの課題となる。

今回も、基準車が5台用意され、各審査員らのジャッジ点数並びにコメントが公開されている。昨年からの変更点としては、新たに「過渡応答性」、いわば音の「立ち上がり」に関する項目が追加されている。この項目をどう攻略するかは今回のコンテストのひとつの鍵とも言える。

5台の基準車については、審査員によるジャッジの点数とコメントが公表されている

いくつか注目の車両を紹介しよう。ジャンライン&パートナーズはモレルのスピーカーを取り付けた三菱アウトランダーを基準車として提供。広い車内空間を活用し、上方向に自然に広がっていく弦楽器の伸びやかさや低域のしっかりとした下支えも印象的。Beat Itは思いっきりボリュームをあげたくなるような骨太なパッセージに心が躍る。

ジャンライン&パートナーズのデモカー・三菱アウトランダー

エムズラインコース、ユーザープロB、アニソンコースとトリプルエントリーの江口さんはベンツ「GLA200d」で参戦。アニソンコースは「こういう企画を待ってました!」と気合十分。「土方先生に低域について指摘をいただくので、今年は特にその点を意識的にチューニングしました」とのこと。米津玄師の「KICK BACK」冒頭のうなる低域、「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」はみずみずしいヴォーカル表現にハッとさせられる。

トリプルエントリーの江口藍里さん

ディナウディオファンの澤井さんは車を買い替え、3月にカーオーディオを組み上げたばかり。気に入っていたスピーカーを前の車からそのまま継続し、サウンドフリークスに仕上げてもらったという。ディナウディオユニットの美点でもある密度感のある中域の艶感や華やかさを引き出すチューニングが魅力的。アニソンコースにもエントリーしており、KICK BACKの重い低音は、物語へのイマジネーションを広げてくれる。

カーオーディオを新調したばかりの澤井孝行さん

ダイハツのテリオスキッドで参戦する広島の堀田さん。「テリオス・キッドでやれることをとことんまで追求しよう」ということで、オリジナルのパッシブネットワークやアナログ的なチューニングにこだわって「音の鮮度と躍動感を大切に」音質を追い込んできたという。モレルの3ウェイから奏でられる音は、カーオーディオでここまでの鮮度感が引き出せるのか、という新鮮な驚きに満ちる。

テリオス・キッドで参戦の堀田雅雄さん

新潟のカーオーディオショップ・サウンドワクイからエントリーした板垣さんは、レクサス「CT200h」でエムズラインコースとプロコースSに参戦する。カーオーディオも始めて3年目くらいということで、ハイファイな音作りが面白くなってきたところだという。「自分が普段聴きたい音楽に合わせてチューニングしました」とのことで、RS AUDIOスピーカーの音色の手触り感が印象的。

新潟から参戦の板垣勇樹さんのレクサス

ショップデモカーではジパング・道祖尾さんのチューニングに感激。ベートーヴェンの「第九」における上下左右方向に自然に広がるサウンドステージは極上で、楽器それぞれの息の合った掛け合いを精緻に引き出している。課題曲を何度も聴き込み、どのような演奏/録音がなされているかきちんと分析した上で音作りを行っていることが感じられた。

ジパングのデモカー・BMW5シリーズツーリング

16時ごろには審査はおおむね終了し、集計ののちに表彰式が開催される。表彰式は12コースそれぞれごとに10位まで(エントリー台数が少ない場合は6位まで)が順に発表され、表彰状もしくはトロフィーが手渡される。

ユーザープロSコースの表彰式

上位入賞を仲間とともに喜びあえるのもまたカーオーディオコンテストの醍醐味。あるいは悔し涙を飲み、自身の音作りの課題を見つけるのもまたコンテストでしか得られない貴重な体験となる。

ディーラープロコースで優勝した「コール松本」のショップデモカーとエントラントの皆様

審査後の講評において、「アニソンコース」を審査した土方氏は「幅広いユーザーにカーオーディオを始めてほしいという思いでこのコースを始めました。楽しい音を出している車に高評価を与えたい、と思って審査していましたが、やはり“基本がちゃんとしている車”が上位に来ると感じました」とコメント。アニソンだから特別なスキルが必要になるわけではなく、タイムアラインメントやユニットのバランスなど、カーオーディオの基礎を固める重要性を改めて認識したと語る。

審査員長の山之内正氏は、ユーザープロSとAを審査。今回は過渡応答性という項目が加わったことで「音の立ち上がり、時間軸上の変化をいかに忠実に再現するか」が大きなテーマになったとコメント。全体的にレベルが上がっている中で、リズムやテンポをきちんと捉えた楽曲が総合点として上位に来た、と振り返った。

審査後の講評を述べる審査委員長の山之内 正氏

また、来年の審査員として、新たにクラシック音楽ファシリテーターの飯田有沙さんが加わることも発表された。ピアノコンクールの審査員などの経験も深い飯田さんが、どのようにカーオーディオの音質についてジャッジしてくれるのか、来年もまた楽しみが広がる。

そのほか、注目の車両とエントラントを写真でレポートしよう。

BLAMのスピーカーをグレードアップ、1週間前に完成したばかりだという沖野さん

奈良からレクサス「RX」で参戦した亀田さん


車載用のDiracを活用したチューニングを試してみたというアンティフォン

女性エントラントの常連、BMWで参加する小川真由美さん

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