この1年間の音質への取り組みの総決算
審査員の大幅変更や新コース登場も。「第8回ハイエンドカーオーディオコンテスト」レポート
第8回「ハイエンドカーオーディオコンテスト」が、9月16日(土)と17日(日)の2日間、静岡県掛川市のつま恋リゾート彩の郷にて開催された。昨年に続き、このコンテストの模様をレポートしよう。
今年は新たに5人の審査員が加わり、フレッシュな雰囲気でコンテストがスタート。審査員は昨年から引き続いての山之内 正氏、小原由夫氏、土方久明氏の3名に加え、ユーロコン等でも審査員を務める峯岸良行氏と生形三郎氏、VGP審査員の岩井 喬氏と折原一也氏、それに秋山 真氏という8名。年齢も大きく若返り、新しい次代に向けたカーオーディオの世界を盛り上げていこうという意気込みも伝わってくる。
審査員が大きく変わったことで、「今年はどうコンテストを攻略するべきか」は皆を悩ませた様子。オールラウンダー的に攻めるか、自分の得意とする音はこうだ、と積極的に提示しにいくか、カーオーディオへの向き合い方そのものを問われるコンテストでもあったようだ。
ディーラーデモカー部門、ユーザーが参加するハイレゾ・エキスパートコースに加え、今年は新たに「チャレンジコース」が設けられた。こちらは課題曲のほかにユーザー自身のフェイバリット楽曲1曲を選んで挑むコースで、コンセプトシートと合わせて楽曲をどう再生するか、ユーザーのアイデアとセンスも大いに問われるコースとなる。
ディーラーコースの課題曲は、女性ヴォーカルとクラシックの2曲。ダイアナ・パントンのしっとりした歌声が魅力の「イエスタデイ」と、ドゥダメル指揮/ロサンゼルス・フィルによる「ドヴォルザーク:交響曲第9番」、大編成のオーケストラと傾向の異なる2曲が選定された。
ダイアナ・パントンでは、アコースティック楽器の質感をどう表現するか、またクラシックでは、さまざまな楽器の入り乱れるオーケストラのステージングをいかに正確に再現するか、などなど多くのオーディオ的な課題が込められた楽曲が選定されている。
初日はディーラーデモカーコースとチャレンジコース、2日目はハイレゾ・エキスパートコース(価格帯ごとにA/B/Cの3コースに分かれる)の審査が行われた。
ディーラーデモカーコースは、全国から21車両が参加。これまで1年間の音質に関する取り組みの総決算の場でもあるということで、緊張感ありながらも和気あいあいと審査が進められていった。
映えあるディーラーコースの第1位に選ばれたのは、AV Kansai天王寺店のBMW「M3」。代表の岩元さんもこの車は自信作でもあったようで、特にクラシックの解像力、サウンドステージの構築力は圧巻のひとこと。リッチなハーモニーはユニット間のつながりの良さも感じさせてくれる。
また、今回大躍進を果たしたのは大阪のカーオーディオクラブ。2位にベンツの「E350」、6位にアウディの「Q3」とエントリーした2台両方を入賞に送り込んだ。代表の高橋祐人さんも、「実はハイコンで表彰台に立つのは初めてなんです!本当に嬉しいです!」と喜びを炸裂させる。
3位は石川県のアンティフォン。アーティストとの距離感の近い熱気あるサウンドが特徴で、アナログ的とも言える色彩の濃さにハッとさせられる。4位のイングラフはオーケストラの楽器の精緻な描き分けが秀逸。8位に入賞したジパングは、ダイナミックレンジの広さと、立体的に広がるサウンドステージで、客観的な再現性を実現する高度なチューニング力を感じさせてくれた。
上位入賞カーのサウンドには、解像度やS/Nといったオーディオ的な指標を高度にクリアしていることに加え、なにか心に余韻を残すような、納得させられるだけの説得力があるように感じられた。
チャレンジコースは、AV Kansai宝塚店の竹松さんのベンツ「CLA45S」が優勝をさらった。5月に開催されたDSP勉強会の成果もしっかり現れたようで、情報量の多さ、密度感そして純度の高さも印象的で、良質なアンプから引き出される上質な楽器の質感表現はさすがの一言。
審査を担当した岩井 喬氏は講評において、「自由曲からは皆さんの熱い想いが伝わってきました。ですが、やはり課題曲と自由曲の両方をきちんと表現できたものが上位に来ました。こだわりだけではなく、全体のバランスを見て音を追求してほしいです」とコメントした。
2日目はユーザーのメインとなる「ハイレゾ・エキスパートコース」。全部で156台のエントリー車両が参加し、価格帯ごとにA/B/Cに分けられた3コースでそれぞれ音質を競う。課題曲はディーラーコースと同じ「イエスタデイ」と「ドヴォルザーク」の2曲。
当日に抽選で決められた番号にしたがって審査がスタート。この日も、9月半ばとは思えない30度を超える猛暑の中で、熱中症対策にも気をつけながらコンテストが進行された。
前日のディーラーデモカーコースで上位5位までに入賞した車は自由に試聴できるようになっているため、コンテスト参加者は審査の待ち時間の間を見計らって、音作りのヒントを得るべく熱心に試聴におとずれていた。
また、カーオーディオ関連のユニットやアンプ、ケーブルやアクセサリー類を展開するメーカーブースと試聴用デモカーも用意されており、新製品もいち早くチェックできるようになっている。
トライムは、新製品となるaudisonの8chDSPアンプ「FORZA AF M8.14bit」を搭載したフォルクスワーゲンの「ゴルフ」をデモカーとして展示。今回のコンテストの基準車として選ばれた車でもあり、ユニットの繋がり感の自然さが素晴らしく、誇張のないサウンドステージの構築がなされている。実は車の背面に補正用の小型スピーカーユニットを左右に取り付けており、担当の石井さんによると「奥行き感の表現に違いが出ます」とのこと。
ディナウディオからは、新たに「ESOTAN MF171 MKII」というミッドウーファーユニットを先行で展示。サエクコマースはカーオーディオ専用の電源ケーブル、KOJO TECHNOLOGYはカーオーディオ専用仮想アース、M&M DESIGNはUSB/RCAケーブル等、ホームオーディオとカーオーディオの垣根を超えて活動するブランドも増えており、各社のデモカーでその音質を確認することもできる。
また、イース・コーポレーションは新たにaune audioのカーオーディオ用プレーヤー「GTS1」&クロックジェネレーター「AC2」を初展示。プレーヤーは、背面のUSB端子にストレージを差し込んで再生することができるもので、今年後半の発売を予定しているという。カーオーディオ向けのクロックジェネレーターも今後注目のアイテムになりそうだ。
今年のAコースは激戦区だったようで、審査員の小原氏も山之内氏も「特に上位グレードの車は非常にレベルの高い戦いになっている」と口を揃える。
今年のAコースの優勝は、昨年に引き続き須田山徹雄さんのBMW「X6」。イングラフはディーラーデモカーコースは惜しくも4位と表彰台を逃したが、Aコースの6位までに5台を送り込むという大健闘を見せた。「X6」は情報量や質感の豊かさ、上下左右奥行きまで自在に広がるステージング、それらを高度にまとめ上げる密度感高いサウンドで、ホームオーディオも凌駕するような世界観を提供する。
ダイハツのテリオスキッドで参戦する常連の堀田雅雄さん(ショップ:M.E.I)は7位に入賞。試聴するたびにアッと驚く音作りをしてくる堀田さんだが、今回もまた目の前で歌っているような生々しさや臨場感には、思わず時間を忘れて聴き惚れてしまう。
Bコースにおいても、価格以上の実力を発揮した車がいくつも見られた。3位に入賞した澤井孝行さんのBMW「X2」(ショップ:サウンドフリークス)は、ダイアナ・パントンの声の伸びやかさが、車の天井を超えてさらに上へ上と広がっていく印象。10位入賞の江口藍里さん(ショップ:カーオーディオクラブ)は、ダッシュボード上でのステージングの構築力には目を見張るものがあった。
小原氏は講評において、「今回のAコースの音は、上位の車と下位の車の差が大きくあったように思います。上位入賞の車は、アベレージ以上の忠実さを実現した上で、“聴かせどころ”を巧みに作っており、時間を忘れて聴いていたいと思いました」と振り返る。
カーオーディオの楽しさをさらに広げる車が多く登場したことは、今年後半にも各地で開催されるカーオーディオコンテストに向けた、さらなる飛躍発展に期待ができそうだ。
今年は新たに5人の審査員が加わり、フレッシュな雰囲気でコンテストがスタート。審査員は昨年から引き続いての山之内 正氏、小原由夫氏、土方久明氏の3名に加え、ユーロコン等でも審査員を務める峯岸良行氏と生形三郎氏、VGP審査員の岩井 喬氏と折原一也氏、それに秋山 真氏という8名。年齢も大きく若返り、新しい次代に向けたカーオーディオの世界を盛り上げていこうという意気込みも伝わってくる。
審査員が大きく変わったことで、「今年はどうコンテストを攻略するべきか」は皆を悩ませた様子。オールラウンダー的に攻めるか、自分の得意とする音はこうだ、と積極的に提示しにいくか、カーオーディオへの向き合い方そのものを問われるコンテストでもあったようだ。
ディーラーデモカー部門、ユーザーが参加するハイレゾ・エキスパートコースに加え、今年は新たに「チャレンジコース」が設けられた。こちらは課題曲のほかにユーザー自身のフェイバリット楽曲1曲を選んで挑むコースで、コンセプトシートと合わせて楽曲をどう再生するか、ユーザーのアイデアとセンスも大いに問われるコースとなる。
ディーラーコースの課題曲は、女性ヴォーカルとクラシックの2曲。ダイアナ・パントンのしっとりした歌声が魅力の「イエスタデイ」と、ドゥダメル指揮/ロサンゼルス・フィルによる「ドヴォルザーク:交響曲第9番」、大編成のオーケストラと傾向の異なる2曲が選定された。
ダイアナ・パントンでは、アコースティック楽器の質感をどう表現するか、またクラシックでは、さまざまな楽器の入り乱れるオーケストラのステージングをいかに正確に再現するか、などなど多くのオーディオ的な課題が込められた楽曲が選定されている。
初日はディーラーデモカーコースとチャレンジコース、2日目はハイレゾ・エキスパートコース(価格帯ごとにA/B/Cの3コースに分かれる)の審査が行われた。
ディーラーデモカーコースは、全国から21車両が参加。これまで1年間の音質に関する取り組みの総決算の場でもあるということで、緊張感ありながらも和気あいあいと審査が進められていった。
映えあるディーラーコースの第1位に選ばれたのは、AV Kansai天王寺店のBMW「M3」。代表の岩元さんもこの車は自信作でもあったようで、特にクラシックの解像力、サウンドステージの構築力は圧巻のひとこと。リッチなハーモニーはユニット間のつながりの良さも感じさせてくれる。
また、今回大躍進を果たしたのは大阪のカーオーディオクラブ。2位にベンツの「E350」、6位にアウディの「Q3」とエントリーした2台両方を入賞に送り込んだ。代表の高橋祐人さんも、「実はハイコンで表彰台に立つのは初めてなんです!本当に嬉しいです!」と喜びを炸裂させる。
3位は石川県のアンティフォン。アーティストとの距離感の近い熱気あるサウンドが特徴で、アナログ的とも言える色彩の濃さにハッとさせられる。4位のイングラフはオーケストラの楽器の精緻な描き分けが秀逸。8位に入賞したジパングは、ダイナミックレンジの広さと、立体的に広がるサウンドステージで、客観的な再現性を実現する高度なチューニング力を感じさせてくれた。
上位入賞カーのサウンドには、解像度やS/Nといったオーディオ的な指標を高度にクリアしていることに加え、なにか心に余韻を残すような、納得させられるだけの説得力があるように感じられた。
チャレンジコースは、AV Kansai宝塚店の竹松さんのベンツ「CLA45S」が優勝をさらった。5月に開催されたDSP勉強会の成果もしっかり現れたようで、情報量の多さ、密度感そして純度の高さも印象的で、良質なアンプから引き出される上質な楽器の質感表現はさすがの一言。
審査を担当した岩井 喬氏は講評において、「自由曲からは皆さんの熱い想いが伝わってきました。ですが、やはり課題曲と自由曲の両方をきちんと表現できたものが上位に来ました。こだわりだけではなく、全体のバランスを見て音を追求してほしいです」とコメントした。
2日目はユーザーのメインとなる「ハイレゾ・エキスパートコース」。全部で156台のエントリー車両が参加し、価格帯ごとにA/B/Cに分けられた3コースでそれぞれ音質を競う。課題曲はディーラーコースと同じ「イエスタデイ」と「ドヴォルザーク」の2曲。
当日に抽選で決められた番号にしたがって審査がスタート。この日も、9月半ばとは思えない30度を超える猛暑の中で、熱中症対策にも気をつけながらコンテストが進行された。
前日のディーラーデモカーコースで上位5位までに入賞した車は自由に試聴できるようになっているため、コンテスト参加者は審査の待ち時間の間を見計らって、音作りのヒントを得るべく熱心に試聴におとずれていた。
また、カーオーディオ関連のユニットやアンプ、ケーブルやアクセサリー類を展開するメーカーブースと試聴用デモカーも用意されており、新製品もいち早くチェックできるようになっている。
トライムは、新製品となるaudisonの8chDSPアンプ「FORZA AF M8.14bit」を搭載したフォルクスワーゲンの「ゴルフ」をデモカーとして展示。今回のコンテストの基準車として選ばれた車でもあり、ユニットの繋がり感の自然さが素晴らしく、誇張のないサウンドステージの構築がなされている。実は車の背面に補正用の小型スピーカーユニットを左右に取り付けており、担当の石井さんによると「奥行き感の表現に違いが出ます」とのこと。
ディナウディオからは、新たに「ESOTAN MF171 MKII」というミッドウーファーユニットを先行で展示。サエクコマースはカーオーディオ専用の電源ケーブル、KOJO TECHNOLOGYはカーオーディオ専用仮想アース、M&M DESIGNはUSB/RCAケーブル等、ホームオーディオとカーオーディオの垣根を超えて活動するブランドも増えており、各社のデモカーでその音質を確認することもできる。
また、イース・コーポレーションは新たにaune audioのカーオーディオ用プレーヤー「GTS1」&クロックジェネレーター「AC2」を初展示。プレーヤーは、背面のUSB端子にストレージを差し込んで再生することができるもので、今年後半の発売を予定しているという。カーオーディオ向けのクロックジェネレーターも今後注目のアイテムになりそうだ。
今年のAコースは激戦区だったようで、審査員の小原氏も山之内氏も「特に上位グレードの車は非常にレベルの高い戦いになっている」と口を揃える。
今年のAコースの優勝は、昨年に引き続き須田山徹雄さんのBMW「X6」。イングラフはディーラーデモカーコースは惜しくも4位と表彰台を逃したが、Aコースの6位までに5台を送り込むという大健闘を見せた。「X6」は情報量や質感の豊かさ、上下左右奥行きまで自在に広がるステージング、それらを高度にまとめ上げる密度感高いサウンドで、ホームオーディオも凌駕するような世界観を提供する。
ダイハツのテリオスキッドで参戦する常連の堀田雅雄さん(ショップ:M.E.I)は7位に入賞。試聴するたびにアッと驚く音作りをしてくる堀田さんだが、今回もまた目の前で歌っているような生々しさや臨場感には、思わず時間を忘れて聴き惚れてしまう。
Bコースにおいても、価格以上の実力を発揮した車がいくつも見られた。3位に入賞した澤井孝行さんのBMW「X2」(ショップ:サウンドフリークス)は、ダイアナ・パントンの声の伸びやかさが、車の天井を超えてさらに上へ上と広がっていく印象。10位入賞の江口藍里さん(ショップ:カーオーディオクラブ)は、ダッシュボード上でのステージングの構築力には目を見張るものがあった。
小原氏は講評において、「今回のAコースの音は、上位の車と下位の車の差が大きくあったように思います。上位入賞の車は、アベレージ以上の忠実さを実現した上で、“聴かせどころ”を巧みに作っており、時間を忘れて聴いていたいと思いました」と振り返る。
カーオーディオの楽しさをさらに広げる車が多く登場したことは、今年後半にも各地で開催されるカーオーディオコンテストに向けた、さらなる飛躍発展に期待ができそうだ。
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