もはや「DCD-A110 Limited」な仕様

デノン、新旗艦SACDプレーヤー「DCD-3000NE」。110周年機ベースにSX1 Limited譲りの高品質パーツを多数投入

公開日 2024/11/05 16:00 編集部:杉山康介
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デノンは、SACDプレーヤー新モデル「DCD-3000NE」を12月下旬より発売する。価格は462,000円(税込)。

DCD-3000NE

■高品質パーツ大量投入など、もはや「DCD-A110 Limited」なフラグシップSACDプレーヤー



9月に発売されたプリメインアンプ「PMA-3000NE」と対をなすSACD/CDプレーヤー。デノンのHi-Fiコンポーネントでは “SX11シリーズ”、“A110シリーズ” が2024年12月の生産分をもって生産終了となることから、この “3000シリーズ” が新たなフラグシップとなるかたちだ。

同社の田中氏によると、ベースとなるのは2020年に発売された創業110周年機の「DCD-A110」だが、当時「次の10年につながる技術を」という想いのもとで開発したことから、回路の完成度が非常に高いため、基本的な設計を踏襲。開発期間のうち、より多くの時間をサウンドマスター・山内慎一氏のサウンドチェックに割いたという。

また、「DCD-SX1 Limited」に用いられた高品質パーツを多数投入。SX1 Limitedと同じ「オーディオ的快感と、音楽的感動の両立」というコンセプトのもとで作り上げていることもあり、「DCD-3000NEというモデルは『DCD-A110 Limited』と言っても過言ではない」と語る。

左がDCD-A110、右がDCD-3000NEの内部構造。基本的な設計は同じながら、細かいところで仕様が変わっている

ディスクドライブには独自開発の「Advanced S.V.H Mechanism」を採用し、アナログ波形再生技術も最上位バージョンの「Ultra AL32 Processing」を搭載。ステレオDACを左右チャンネルに各2基ずつ用いる「Quad DAC構成」、DAC近くにクロックジェネレーターを配置する「DACマスタークロックデザイン」、フルディスクリートのI/V変換アンプ、差動合成アンプなど、先述の通り基本的な設計はDCD-A110から受け継いでいる。

大きな変更点としては、まずオーディオ基板を2層から4層へと変更したことが挙げられる。これによってアナロググランドを強化し、デジタル基板やドライブメカからのノイズに強くなったという。

オーディオ基板を4層へと変更

また、DACチップもTI製の「PCM1795」からESS製「ES9018K2M」へと変更されているが、このチップは発熱しやすいタイプとのことで、基板を多層化することで放熱効率を向上させている。動作を安定させるだけではなく、熱に弱いピックアップを熱から守ることによって製品寿命の向上にも寄与しているそうだ。

デジタル基板やアナログ基板、デジタル電源基板の接続には、新たに基板を使用。ケーブルによる製品間の個体差を排除できるのとともに、不要な電気的干渉も低減している。

基板同士の接続に基板を用いるBoard to Board方式を採用

DAC回路は新採用のES9018K2Mチップに最適化するため、電源、回路ともに新規で設計。部品点数が削減され、緩やかなロールオフの特性になったことでクセのない音質にも貢献したとする。クロックも従来の44.1kHz系、48kHz系に、DSD系を新たに加えた計3種類を搭載する。

I/V変換の出力カスコード回路のパワートランジスタの大型化や、差動入力回路、差動合成回路の定電流源のトランジスタのブラッシュアップも実施。パワートランジスタは非オーディオ用ながら特性が良いものを用いているという。

A110ではドライブメカに1mm厚の銅製カバーを装着していたところ、本製品では山内氏による吟味のもと、1.5mm厚のA6061航空グレードアルミニウム製カバーを採用。また、A110ではドライブメカ後部に主に静電気対策用の銅製プレートが配置されていたが、理想とする音質を実現するため、シールドFFCケーブルを銅テープにするなどさまざまな静電気対策を施し、プレートを外している。

ドライブメカのカバーをA6061アルミニウムに変更

電源トランスのベースプレートも、A110が1mmアルミ×2だったのに対し、3mm A6061アルミ×1に変更。ケーブルの捻り方も再検討されている。そしてカスタムコンデンサーなどの高音質パーツをデジタル/アナログ回路、電源回路とあらゆる箇所に投入。一般的なパーツに比べると非常に高額ながら、「SX1 Limitedに肉薄する個数を投入している」とのこと。

サウンドは山内氏のフィロソフィーである「Vivid & Spacious」に基づいてチューニング。田中氏は「3000シリーズはSX1 Limitedで実現されていた有機的なサウンドと、A110で実現できた現代的な情報量や空間表現がうまくブレンドされたサウンドになっている」と語っていた。

山内慎一氏

外形寸法は434W×138H×405Dmmで、質量は16.8kg。

■編集部インプレッション



デノンでは製品発表の際に試聴の時間を設けているが、今回は「デノンディスクプレーヤー20年の歩み」と題し、2004年に発売された「DCD-SA1」、2013年に発売された「DCD-SX1」との聴き比べを実施。

性能面で見ると、DCD-SA1は24bitのアナログ波形再生技術「Advanced AL24 Processing」を搭載。元々はディスクプレーヤーのエンジニアだったという山内氏によると、SA1のAL24は初めてFPGAを使って開発されたもので、当時新しいことに挑戦したい方たちが集まって作り上げた思い出深いモデルだそうだ。

DCD-SA1

DCD-SX1は32bitの「Advanced AL32 Processing」を搭載。今やデノンのお家芸とも言えるカスタムコンデンサーは、本機の前世代機である「DCD-SX」などから使われるようになったもので、このSX1は「ある程度投入されるようになった時期」とのこと。

DCD-SX1

最初に申し上げると、SA1だって単体で聴けば決して悪いとは思わない。しかしSX1での進化は顕著で、まず音の質感が圧倒的に違う。SX1は音がシルクのように滑らかできめ細かく、ギターやパーカッションをキレ良く描写。特に中域より上の見通しが良くなっていることが分かる反面、低域はそこまで劇的には変わっていないようにも思える。

続いて3000NEに切り替えると、低域が劇的に改善され、全帯域にわたっての統一感が生まれる。ギターやパーカッションも鮮度がより上がるとともに、音場も拡大。こうして時代ごとに並べてみると、Vivid & Spaciousサウンドが熟成していく様がよく分かる。

解像感や分解能が高い、というよりも「CDに収録されている音をそのまま素直に取り出している」ような自然さで、ピアニッシモでもピントが合った、かつわざとらしさのない音像を描き出す。ある種モニター的なサウンドとも言えそうだが、決してストイックさはなく、ごく普通にリラックスして音楽を楽しめるのが嬉しい。

そして、今回の試聴に使われた同シリーズのプリメイン・PMA-3000NEとのマッチングについても触れておきたい。以前、PMA-3000NEだけで聴いた際には、今までにはないサウンドの鋭さ、シャープさをわずかに感じたが、DCD-3000NEと組み合わせるとシャープな印象はなく、Vivid & Spaciousサウンドとして今までよりも高いレベルに到達したことがよく分かる。

DCD-3000NEもPMA-3000NEも、単体として十分にレベルの高い製品ではあるが、シリーズ同士で揃えることで真価を発揮してくれるようだ。発売にあたっては全国のオーディオ専門店などで組み合わせ試聴会が開催されるだろう。是非とも最新のデノンHi-Fiサウンドを体験してみていただきたい。

PMA-3000NEと“3000シリーズ”揃えで試聴を行った

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