世界に発信するアジアの監督たち 〜マレーシア編〜 アミール・ムハマド監督インタビュー (3) (4)
アミール・ムハマド監督 (写真:Danny Lim) |
Interview with Amir Muhammad
インタビュー・文 / 山之内 優子
by Yuko Yamanouchi
3. 最新作は東京で撮影
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−現在、ムハマド監督が東京で撮影されている映画は、どんな映画ですか?
監督:「TOKYO MAGIC HOUR」っていう題の長編映画で、出演者には、プロではない人を一種の役者として使っています。
−主役の方は、マレーシアの方ですか?
監督:はい。あらかじめ、たくさんインタビュー撮影もしたんですけれど、それは、全部使わないことにしました。内容は、実験的なラブストーリー映画で、デジタルビデオメディアの実験でもある映画。そういう映画としては、世界で初めての映画です(笑)。どのシーンも一種のデジタル処理をしています。モノローグが多くて、イメージへの反応があるという・・・・。
−撮影クルーは日本人ですか?
監督:ええ。東京で頼みました。
−監督の意図するところは、日本人クルーに完全に伝わりますか?
監督:決して伝わらないです(笑)。というのは、僕はクルーに意図を伝えることをしないので、誰も僕の意図は知らないんです。僕はただ、どんなタイプのイメージが欲しいかを言うだけですから。
−すると、あなたの映画では、編集がとても大事なんですね。
監督:もちろんそうです。撮影した場面を集めてから、あらかじめ考えた脚本が変わることもありえますし。
−映画の完成と上映はいつですか?
監督:撮影は12月に東京で終えます。上映は未定だけれど、2004年の初めには、日本から帰国して、アメリカのサンダンス映画祭に行きますし、ジャカルタでドキュメンタリー映画を撮る予定もあるから、もしかしたら、7月にクアラルンプールで、ジャカルタで作った映画と一緒に上映するかもしれません。
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4. 長編第2作「ビッグ・ドリアン」のクルーと機材
−2003年の秋、山形で上映された長編第2作の「ビッグドリアン」についてうかがいたいのですが、はじめに、この映画のクルーや機材について教えてください。
監督:僕の友人、5,6人でクルーを組みました。カメラマンのウー・ミン・ジンは、僕よりずっと若いけれど、大学で映画について教えていて、他の人たちも大学を卒業したばかりの人たち。プロデューサーのジェイムス・リーは僕の親友で、第一作の長編映画の俳優でもあるんです。
−「Lips to Lips」という映画ですね。
監督:そう。その映画は、クアラ・ルンプールの一日のうちに起こるできごとを描いたコメディです。でも、見て面白くないっていう人もいるので、僕は、「Lips to Lips」を実験的コメディと呼んでいるんだ(笑い)。
編集は、テレンス・ラジが、ヴェロシティ(Velocity)というプロフェッショナルなシステムでやりました。
−もし、DVカメラがなかったとしても、映画を撮ろうと思いましたか?
監督:もちろん。
−フィルムでも?
監督:フィルムはちょっと、お金がかかり過ぎるけれど、何とか、映画を撮る道を見つけたと思いますよ。
−上映はどんなところでされているんですか?
監督:大学や、東京のアップリンクファクトリーのような、インディペント映画を上映するような小さな映画館ですね。
−パソコンによる映画の配信は考えますか?
監督:マレーシアでは、高速インターネットは、まだ現実的なものではないんです。ブロードバンドを使う人の数も多くない。ひとつの画面を見るのに、すごく待っていなければならない(笑)。やっても、たぶん、まだ短いものしかできません。
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