ヤマハ、米Klipschのスピーカー販売を開始 製品の共同開発も
●米クリプシュ・オーディオ・テクノロジーズ社とヤマハ(株)は、スピーカーおよびホームシアターシステムなどの共同商品開発や、海外市場における販売協力等の業務提携、国内でのクリプシュ社全製品の販売総代理店契約に基本合意した。
クリプシュ・オーディオ・テクノロジーズ社は、「Klipsch」ブランドのスピーカーを製造・販売している。1946年創業の老舗で、本社はインディアナポリスに構える。従業員数は約300人。
クリプシュの現在のスピーカー売上げシェアは12.1%で米国第1位に位置づけられる。映画館用スピーカーでも推定50%のシェアを得ており、さらにハードロックカフェやGAP、エディーバウアー、オールドネイビーなどのオフィシャルスピーカーとしても使用されている。
本日行われた発表会では、同社の提携内容がくわしく説明された。ヤマハはクリプシュ製品すべての国内販売権を持ち、まず11月にReferenceシリーズと2.1chスピーカー「GMX A-2.1」を発売する。その後、年内には壁面・天井埋め込みタイプのスピーカーも販売開始する。
ヤマハ(株)常務取締役の前嶋邦啓氏は、同社AV・IT事業の概要について説明。「AV・IT事業はヤマハの中核事業に位置づけられる。連結売上高は14%程度だが、付加価値の取れる事業構造を構築し、競争戦略の推進と成長戦略の明確化を行うことにより、2006年7月期には売上げ1,000億円をねらう」とし、「そのためにコア事業のホームシアター分野でNo.1戦略を徹底する」と述べた。具体的には、「AVアンプでのトップシェア確保、ホームシアターシステムの拡大市場への対応」を目指すとともに、「今回のクリプシュとの提携によりスピーカー事業も強化する」という。
また前嶋氏は、「クリプシュのスピーカーを手に入れることで、カスタムインストレーションビジネスや映画館、ミニシアター、商空間ビジネスも開拓できる」と語り、今回の提携により成長戦略を明確化すると説明した。
今回の業務提携の詳細については、AV・IT事業部 マーケティング室 室長の安藤貞敏氏が説明した。同氏は「創業者のポール・クリプシュが1953年に考案した『クリプシュ・ホーン』により、指向性の良い音が実現した。このホーンが現在もクリプシュスピーカーのアイデンティティーになっている」と述べ、スピーカーの特徴について「高能率、指向特性のよさ、ワイドでフラットな周波数特性、低歪」であることと説明した。
同氏は、今回の業務提携の内容について「クリプシュ社全製品の国内販売総代理」「商品の共同開発」「販売提携」の3つを挙げ、商品共同開発については、「ヤマハのノウハウとクリプシュのノウハウを組み合わせ、日本市場向けスピーカーの開発を行う」とともに、「ヤマハのエレクトロニクス事業とクリプシュのスピーカーノウハウを組み合わせ、ホームシアターシステムの開発も行う」と説明。販売提携に関しては、「ヤマハAVアンプとクリプシュスピーカーのシステム販売を行う」とし、販売店の店頭での組み合わせ提案を行うほか、カタログ、ウェブでも共同プロモーションを実施するとした。さらにミニシアター事業も開拓し、20〜100席のミニシアターに対し、ヤマハとクリプシュ製品でトータル提案を行うと述べた。
また安藤氏は、「現在クリプシュは437商品を5000店以上の販売店や商社を通じて66ヶ国で販売している」とその規模を強調した。
クリプシュの概要については、同社会長兼CEOのフレッド・S・クリプシュ氏からも説明が行われた。フレッド氏によると、同氏の親戚が保有していたクリプシュの株を、1989年に同氏が買い取り、本格的な事業展開がスタートしたという。「買収したときは小さな会社で、全米のスピーカー売上げのトップ25にも入らなかった。現在は450近い製品を揃え、全米No.1ブランドに成長できた。1995年以来、アメリカの高級オーディオ市場は年々縮小しているが、クリプシュはその中で毎年高成長を続けている」。ヤマハとの提携に関しては、「我々は発展の可能性を世界中で探している。エレクトロニクス部門で有数のブランドであるヤマハと今回提携したことにより、我々のスピーカーと、ヤマハのAVアンプと、相互に補完関係が生まれ、ユーザーに付加価値を提案できる」と語った。
販売戦略に関しては、ヤマハエレクトロニクスマーケティング(株)社長の中山二三夫氏が説明した。同氏は「クリプシュのスピーカーが加わることにより、これまでのホームシアター市場だけでなく、劇場用スピーカー市場、プレミアムスピーカー市場、住商空間市場にも事業を拡大していく」とし、売上げについては「2007年に10億円を目指す」と抱負を述べた。
以下、発表会場で行われた質疑応答の模様をすべてご紹介する。
Q 今回の提携のメリットを、両社それぞれの立場から説明して欲しい。
A <ヤマハ>ヤマハのスピーカー売上げは年間100億円。特にYST方式のサブウーファーが強いが、ホームシアタースピーカーは非常に幅が広く、ヤマハだけでは対応できない。足りない部分をクリプシュのスピーカーで補完できるし、将来的には共同開発を行うことで魅力のある製品を作れると考えている。 <クリプシュ>クリプシュは米国内では強いが、世界全体を見回すとそれほどでもない。今回の提携でグローバルなシェア獲得に弾みがつく。さらに、エレクトロニクス技術、スピーカー技術でそれぞれ強みを持つ2社が協力し合うことにより、今までにない製品作りが可能になる。
Q まずは比較的低価格のスピーカーから国内に導入するとのことだが、価格がヤマハの既存スピーカーと重なる部分もあると思う。どのように棲み分けを図るのか?
A ヤマハのスピーカーはバランスが良く緻密な音作りが特徴で、クリプシュはホーンサウンドによる華やかなサウンドが特徴となる。それぞれ違う良さをもつものとして提案したい。
Q ヤマハのホームシアター製品にどういう印象を持っているか?
A 我々の持っていないコア技術を持っている。サブウーファー、エレクトロニクス技術などは特に素晴らしい。
Q 共同開発製品が登場するタイミングは?
A 9月9日に提携の最終契約をしたばかりで、まだくわしい内容はこれから詰めたい。
Q ボーズ、JBLと比べた時のクリプシュの特徴は?
A <ヤマハ>ホーンサウンドが特徴だ。 <クリプシュ>現在我々はシェアナンバーワンになったが、我々が高品質・高性能なモデルの開発に専念したことも大きな理由だ。他メーカーは本業以外の事業に手を出した。
(Phile-web編集部)
クリプシュ・オーディオ・テクノロジーズ社は、「Klipsch」ブランドのスピーカーを製造・販売している。1946年創業の老舗で、本社はインディアナポリスに構える。従業員数は約300人。
クリプシュの現在のスピーカー売上げシェアは12.1%で米国第1位に位置づけられる。映画館用スピーカーでも推定50%のシェアを得ており、さらにハードロックカフェやGAP、エディーバウアー、オールドネイビーなどのオフィシャルスピーカーとしても使用されている。
本日行われた発表会では、同社の提携内容がくわしく説明された。ヤマハはクリプシュ製品すべての国内販売権を持ち、まず11月にReferenceシリーズと2.1chスピーカー「GMX A-2.1」を発売する。その後、年内には壁面・天井埋め込みタイプのスピーカーも販売開始する。
ヤマハ(株)常務取締役の前嶋邦啓氏は、同社AV・IT事業の概要について説明。「AV・IT事業はヤマハの中核事業に位置づけられる。連結売上高は14%程度だが、付加価値の取れる事業構造を構築し、競争戦略の推進と成長戦略の明確化を行うことにより、2006年7月期には売上げ1,000億円をねらう」とし、「そのためにコア事業のホームシアター分野でNo.1戦略を徹底する」と述べた。具体的には、「AVアンプでのトップシェア確保、ホームシアターシステムの拡大市場への対応」を目指すとともに、「今回のクリプシュとの提携によりスピーカー事業も強化する」という。
また前嶋氏は、「クリプシュのスピーカーを手に入れることで、カスタムインストレーションビジネスや映画館、ミニシアター、商空間ビジネスも開拓できる」と語り、今回の提携により成長戦略を明確化すると説明した。
今回の業務提携の詳細については、AV・IT事業部 マーケティング室 室長の安藤貞敏氏が説明した。同氏は「創業者のポール・クリプシュが1953年に考案した『クリプシュ・ホーン』により、指向性の良い音が実現した。このホーンが現在もクリプシュスピーカーのアイデンティティーになっている」と述べ、スピーカーの特徴について「高能率、指向特性のよさ、ワイドでフラットな周波数特性、低歪」であることと説明した。
同氏は、今回の業務提携の内容について「クリプシュ社全製品の国内販売総代理」「商品の共同開発」「販売提携」の3つを挙げ、商品共同開発については、「ヤマハのノウハウとクリプシュのノウハウを組み合わせ、日本市場向けスピーカーの開発を行う」とともに、「ヤマハのエレクトロニクス事業とクリプシュのスピーカーノウハウを組み合わせ、ホームシアターシステムの開発も行う」と説明。販売提携に関しては、「ヤマハAVアンプとクリプシュスピーカーのシステム販売を行う」とし、販売店の店頭での組み合わせ提案を行うほか、カタログ、ウェブでも共同プロモーションを実施するとした。さらにミニシアター事業も開拓し、20〜100席のミニシアターに対し、ヤマハとクリプシュ製品でトータル提案を行うと述べた。
また安藤氏は、「現在クリプシュは437商品を5000店以上の販売店や商社を通じて66ヶ国で販売している」とその規模を強調した。
クリプシュの概要については、同社会長兼CEOのフレッド・S・クリプシュ氏からも説明が行われた。フレッド氏によると、同氏の親戚が保有していたクリプシュの株を、1989年に同氏が買い取り、本格的な事業展開がスタートしたという。「買収したときは小さな会社で、全米のスピーカー売上げのトップ25にも入らなかった。現在は450近い製品を揃え、全米No.1ブランドに成長できた。1995年以来、アメリカの高級オーディオ市場は年々縮小しているが、クリプシュはその中で毎年高成長を続けている」。ヤマハとの提携に関しては、「我々は発展の可能性を世界中で探している。エレクトロニクス部門で有数のブランドであるヤマハと今回提携したことにより、我々のスピーカーと、ヤマハのAVアンプと、相互に補完関係が生まれ、ユーザーに付加価値を提案できる」と語った。
販売戦略に関しては、ヤマハエレクトロニクスマーケティング(株)社長の中山二三夫氏が説明した。同氏は「クリプシュのスピーカーが加わることにより、これまでのホームシアター市場だけでなく、劇場用スピーカー市場、プレミアムスピーカー市場、住商空間市場にも事業を拡大していく」とし、売上げについては「2007年に10億円を目指す」と抱負を述べた。
以下、発表会場で行われた質疑応答の模様をすべてご紹介する。
Q 今回の提携のメリットを、両社それぞれの立場から説明して欲しい。
A <ヤマハ>ヤマハのスピーカー売上げは年間100億円。特にYST方式のサブウーファーが強いが、ホームシアタースピーカーは非常に幅が広く、ヤマハだけでは対応できない。足りない部分をクリプシュのスピーカーで補完できるし、将来的には共同開発を行うことで魅力のある製品を作れると考えている。 <クリプシュ>クリプシュは米国内では強いが、世界全体を見回すとそれほどでもない。今回の提携でグローバルなシェア獲得に弾みがつく。さらに、エレクトロニクス技術、スピーカー技術でそれぞれ強みを持つ2社が協力し合うことにより、今までにない製品作りが可能になる。
Q まずは比較的低価格のスピーカーから国内に導入するとのことだが、価格がヤマハの既存スピーカーと重なる部分もあると思う。どのように棲み分けを図るのか?
A ヤマハのスピーカーはバランスが良く緻密な音作りが特徴で、クリプシュはホーンサウンドによる華やかなサウンドが特徴となる。それぞれ違う良さをもつものとして提案したい。
Q ヤマハのホームシアター製品にどういう印象を持っているか?
A 我々の持っていないコア技術を持っている。サブウーファー、エレクトロニクス技術などは特に素晴らしい。
Q 共同開発製品が登場するタイミングは?
A 9月9日に提携の最終契約をしたばかりで、まだくわしい内容はこれから詰めたい。
Q ボーズ、JBLと比べた時のクリプシュの特徴は?
A <ヤマハ>ホーンサウンドが特徴だ。 <クリプシュ>現在我々はシェアナンバーワンになったが、我々が高品質・高性能なモデルの開発に専念したことも大きな理由だ。他メーカーは本業以外の事業に手を出した。
(Phile-web編集部)