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東京・青山円形劇場公演「VICTORIA」アフタートーク

公開日 2005/07/08 17:30
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カナダ・ケベック州のパフォーミングアーティスト、デュルシネア・ラングフェルダー
カナダ・ケベック州から来日「VICTORIA」の女優デュルシネア・ラングフェルダーのアフタートークより、カナダ・モントリオールを拠点に演劇・ダンスなどをミックスした公演を続けるマルチアーティスト、デュルシネア・ラングフェルダーの公演「VICTORIA」(ビクトリア)が東京・青山円形劇場で行われている。(7月6日〜10日東京青山円形劇場、13日(水)名古屋市天白文化小劇場、15日(金)京都府立府民ホール・アルティ、18日(月・祝)神戸アートビレッジセンター。)

登場するのは車椅子に乗ったアルツハイマー症の老女と、病院の看護士。病院で人生の最後のときを迎える90歳の女性の姿が、ユーモアと時には残酷さもあるほろ苦さで描かれている。日本語字幕のつく英語上演。青山円形劇場では公演後に連日アフタートークがおこなわれる。

6日青山円形劇場の公演では観客に語りかけたり、とんでもないプレゼントをしようとするVICTORIAの姿に観客席から暖かい笑いが起こった。モントリオールはカナダの中のフランス語文化圏。ヨーロッパ的な文化や様々な文化が混交する地から来日した公演は、ダンスや映像や人形劇も交えて行われ、死や加齢という重いテーマに軽やかに開かれた態度で取り組む勇気を考えさせるものだった。

本公演についての問い合わせは、以下のURLから。
東京:http://www.aoyama.org/
名古屋:http://www.culture.city.nagoya.jp/naka/tenpaku/main.html#top
京都:http://www.alti.org/
神戸:http://kavc.or.jp/

(取材、記事:山之内優子)

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6日の公演後、デュルシネアさんの暖かい人柄が感じられたアフター・トークより抜粋でお送りします。

デュルシネア・ラングフェルダー :Dulcinea Langfelder

「VICTORIA」 アフター・トーク より
聞き手・舞踊評論家:石井達朗氏

「 肯定的に人生を見つめ、立ち向かってもらいたい。」

(1) 勇気のいるテーマでした。

石井:高齢化社会については日本でもいつも話題になっていますが、そうしたテーマは小説でとりあげられることはあっても実際にパフォーマンス・アートでは取り上げられることはあまりありません。このテーマを選ばれたことに感銘を受けました。なぜこのテーマを選ばれたのですか?

ラングフェルダー:私がユーモアのある悲劇が好きだということを知っているある友人からこういうテーマについての話がありました。とてもおもしろいと思いましたけれど、勇気のいる難しいテーマで、4年間かかってやっと作り上げました。

その間も難しくつらかったので何度も挫折しそうになりました。その頃、私の父が亡くなり私は最後の時まで一緒にいたのですが、それで、このテーマをやはりやってみようと思いました。人生の最後の時に父がどう感じていたか、父の立場になって父が感じていたかもしれないことを演じてみようと思ったんです。
もし私が父の立場になって、さらに私が人生の肯定的な面を強調することができるならば、人生の最後と対決する助けに少しなるかもしれないと思ったのです。

(2)実際の病院にいる方から発見したユーモア

石井:この舞台は病院の光景をとても的確に扱っています。実際に病院に行かれたのですか?

ラングフェルダー:ええ。数々の病院や養護施設に行き、そこにいる方と実際に何度もお話しました。この芝居の主人公のビクトリアにはモデルの方がいらして、この劇の台詞の多くはその方が実際におっしゃった言葉なんです。この方に私はいつも笑わされ、彼女のおかげでユーモアや喜劇的側面というものを発見できました。

3)様々な要素が共存する日本の伝統演劇に関心があります。

石井:舞台で多くのことをされていますが、ご経歴はどのようなものですか?

ラングフェルダー:4歳から踊り初めてダンスは今も大好きなんですが、自分は物語ることがしたいんだということが早い時期にわかりました。それでどんな風にしたら踊って、かつ物語ることができるのかと思って、たくさんのことを研究しました。エチエンヌ・ルクールさんというフランスのパントマイムの大御所にもつきましたし、日本の舞台演劇、特に能と歌舞伎にはずっと魅了されています。それは能も歌舞伎も演劇と舞踊が上演の中で共存しているからなんです。

(4)ビクトリアは特定の国ではなく、どこにでもいる人。

観客からの質問:この芝居の中ではなぜいろいろな国の言葉が使われているのですか?

ラングフェルド:VICTORIAを唯一つの文化に属するのではなく、多くのものが交じり合ったものにしたかったからです。

石井:ラングフェルドさんご自身もマルチ・カルチュラルな方ですね。

ラングフェルド:ええ、私自身とても混ざっています。私も両親もニューヨークで生まれですが、母の両親はシチリア生まれで父の両親はスロヴァキア生まれです。

(5)ビクトリアは犠牲者ではなく主人公です。

質問:この劇を年取った方の前で公演されたことはありますか?

ラングフェルダー:モントリオールで平均75歳ぐらい、中にはこの90歳のビクトリアおばあちゃんよりも年取った方の前で上演したことがありました。その時はすごく怖かったんですが、お客さんはとても喜んで、ちょっと刺激的なシーンや皮肉なシーンでもげらげら笑ってくれました。それはビクトリアが犠牲者ではなくこの劇の主人公だったからなんです。

質問:ビクトリアおばあちゃんが人生を楽しむために大切にしたことはどんなことだと思われますか?

ラングフェルド:それは私自身、いつもVICTORIAに相談していることなんです。私がビクトリアでいるときには状況が悪くならないように変えることはとても簡単に思えますが、自分自身ではビクトリアほどには、それはできていないです。

石井:ありがとうございました。

(2005年7月3日:青山円形劇場「VICTORIA」上演後アフター・トークより。取材・採録:山之内優子)

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