ハイブリッドカメラ「DZ-HS303」を増田和夫が試す<1> 「カメラ革命」は本当か
●DVD+HDDでカメラを変える
日立ディスクムービーの次の一手は、カメラ機構を一新する「カメラ革命」であった。ご存じの通り、ディスクムービーはDVDカメラとHDDカメラという2つのタイプに分かれて進化している。選択肢が広がったのは良いけれど、それぞれにメリット&デメリットがあるため、どちらのタイプを選ぼうか?と迷っている人も多いだろう。それならば、カメラにDVDとHDDの両方を載せれば、最強のムービーになる、という発想で作られたのが本機だ。
本機「DZ-HS303」は日立ビデオカメラ“Wooo”の最新モデルで、DVDマルチドライブを搭載しDVD-R/RAM/-RW/一層+RW(いずれも8cmメディア)の録画再生に対応する。さらに、日立GST社製の8GB 1インチHDD「Microdrive」も内蔵し、DVDまたはHDD(排他利用)にSD品質のMPEG2動画記録が可能だ。DVDの汎用性とHDDの長時間録画のメリットを兼ね備えることで、最強のメディア対応を図った意欲作といえるだろう。さらにカメラ単体でHDDからDVDにダビングもできてしまう。一言でいえば、HDD搭載のDVDレコーダーをそのままビデオカメラに載せたような、世界初のハイブリッド・アーキテクチャーを実現しているのである。
●ディスク記録のノウハウを結集
「ビデオカメラを変えるには、まず基本構造を変革しよう、と考えた」(日立製作所の開発担当者、以下同じ)というコンセプトで生れたのが、DVD+HDDという新しい設計思想だ。新しいといっても一過性のアイデアではなく、斬新さの背景には開発の歴史がある。
日立はディスク記録カメラの老舗で「ムービーでもディスク記録が主流になると確信して、1990年代からディスクムービーの開発を進めてきた」という同社は、1997年に世界で初めてHDD記録のMPEGカメラを発売している。「当初からHDDとDVD双方のディスク記録を考えていましたが、DVDの普及度の高さから、DVDカムを先行して開発した」という2000年には、世界初のDVDカムを発売してDVDカメラをリードしてきた。「DVDカムの開発が進み、DVDカムは前モデルで第6世代機に進化して、小型化や撮影機能、高画質化などすべての面で目標を達成できたと思えるまでになりました。DVDカムは完成できた。今こそカメラを次の新しいステージに進化させる時だ、と判断して今回のハイブリッド化に踏み切ったのです」。まさに満を期してのハイブリッド化といえるだろう。
さらに技術的な背景としては「最新のMicrodriveの容量が8GBにまでアップしたので、ハイブリッド化にゴーサインを出せた」とのことで、本機は、日立LGデータストレージ製のDVDマルチドライブに加え、日立GST社製の超小型&大容量Microdriveの搭載によって、ハイブリッド機でありながら、従来のDVDカム(DZ-GX3300)と比べて重量増はわずか15g、サイズはまったく同じ、というハンドリングの良さを実現している。日立グループのシナジー効果を活かす、という同社のデジタルAV戦略が本機でも実践されているのである。
●ハイブリッドカムは予想以上に便利
モノに新しい価値と競争力が求められている今、まずアーキテクチャーを変える、というポリシーは正しい選択に思える。ここでポイントになるのは、新しいアーキテクチャーはユーザーに支持されてこそ活きる、ということだ。「お客様の利便性からハイブリッド化を選びました。というのも、弊社の調査結果では、お客様の約9割が、購入の際にDVDカメラにするか?それともHDDカメラにしようか?と迷われているからです。DVDとHDDのメリットを兼ね備えたハイブリッドカムなら、迷わずお選びいただけると確信して開発しました」。
冒頭に書いたように”全部入りなので安心”という特徴は多くの人にアピールしそうだ。最近の日立AV機器は、こうした明快な魅力作りが上手いと思う。さらに、本機を実際に使ってみると、保険的な安心感以上に便利であることが実感できる。
まず、最大3時間というHDD長時間録画のメリットを活かせるのが便利だ。本機ではDVDへの直接録画も可能だが、HDDに記録すればディスク交換の手間が省け、撮影に集中できる。DVDを入れ忘れたり、決定的なシーンでDVDの容量切れになってしまった…というトラブルも避けられるだろう。最高画質EXTRAモードで撮ってもメディア残量が気にならない点も使いやすい。数日の旅行でも多くのDVDメディアを持ち歩く必要がない点も助かる。バッテリーの持ちも連続約125分(HDD記録時)とトップレベルで、HDDの大容量を活かせる仕様となっている。
こうしてHDDに録り貯めた映像を、カメラ単体で8cmDVD-R/RAM/-RW/+RWに高速ダビングできるのが、ハイブリッド機ならではの使いこなしといえる。HDDカメラでは最終保存のために外付けDVDドライブやPCが必須になるが、本機はそうした機器や手間が不要で、撮影→HDD編集→DVDダビング操作をカメラ内で完結して行える点がフレンドリーだ。
なお、確実にダビングを行うために、ダビング操作は付属のACアダプター・チャージャー接続で行う仕様となっている。特にDVD-R使用時は編集後ダビングが有効だろう。このように”HDDに録って、好きなシーンだけをDVD-Rなどに残す”という使いこなしは、すでにDVDレコーダーで馴染み深いが、ビデオカメラがハイブリッド化することで新しい便利さが生まれる。
例えば、結婚式などの会場で、HDDに撮った映像をDVDにダビングして、その場で配ったり、実家に帰省した際に、実家で撮った映像をDVDにダビングして、帰省中に親に手渡せる、といった新しい使いこなしも簡単に実現できる。DVDを配ってもオリジナルの映像はHDDに保存されているので、手軽に映像を共有できるしくみだ。このように本機の”その場でダビング”機能を活用すれば、あいさつ感覚でDVDを手渡せる。これはコミュニケーション寄りの新しい使いこなしかもしれない。家族撮りからビジネスユースまで、アイデア次第で便利に活用できそうだ。
ビデオカメラでは、テープからディスクへ、というトレンドが定着しているが、そのさらに先にあるDVD+HDDという「カメラ革命」を体験できるのが、本機の魅力といえるだろう。
(増田和夫)
増田和夫 プロフィール
パソコン&ネット歴十数年のベテランPC使い。PC雑誌やデジタル映像関係のメディアで活躍中。デジカメにも精通し、写真誌にスチル作品を発表するフォトグラファーでもある。 AV歴も長く、VTRは黎明期からβ・VHS共に熱中した大の録画機ファン。自宅ロフトでプロジェクターを楽しむ映画ファンでもある。DVDなどの記録媒体の記事にも強い。取材は現場主義で、ジャーナリスティックなインタビュー記事も得意としている。
日立ディスクムービーの次の一手は、カメラ機構を一新する「カメラ革命」であった。ご存じの通り、ディスクムービーはDVDカメラとHDDカメラという2つのタイプに分かれて進化している。選択肢が広がったのは良いけれど、それぞれにメリット&デメリットがあるため、どちらのタイプを選ぼうか?と迷っている人も多いだろう。それならば、カメラにDVDとHDDの両方を載せれば、最強のムービーになる、という発想で作られたのが本機だ。
本機「DZ-HS303」は日立ビデオカメラ“Wooo”の最新モデルで、DVDマルチドライブを搭載しDVD-R/RAM/-RW/一層+RW(いずれも8cmメディア)の録画再生に対応する。さらに、日立GST社製の8GB 1インチHDD「Microdrive」も内蔵し、DVDまたはHDD(排他利用)にSD品質のMPEG2動画記録が可能だ。DVDの汎用性とHDDの長時間録画のメリットを兼ね備えることで、最強のメディア対応を図った意欲作といえるだろう。さらにカメラ単体でHDDからDVDにダビングもできてしまう。一言でいえば、HDD搭載のDVDレコーダーをそのままビデオカメラに載せたような、世界初のハイブリッド・アーキテクチャーを実現しているのである。
●ディスク記録のノウハウを結集
「ビデオカメラを変えるには、まず基本構造を変革しよう、と考えた」(日立製作所の開発担当者、以下同じ)というコンセプトで生れたのが、DVD+HDDという新しい設計思想だ。新しいといっても一過性のアイデアではなく、斬新さの背景には開発の歴史がある。
日立はディスク記録カメラの老舗で「ムービーでもディスク記録が主流になると確信して、1990年代からディスクムービーの開発を進めてきた」という同社は、1997年に世界で初めてHDD記録のMPEGカメラを発売している。「当初からHDDとDVD双方のディスク記録を考えていましたが、DVDの普及度の高さから、DVDカムを先行して開発した」という2000年には、世界初のDVDカムを発売してDVDカメラをリードしてきた。「DVDカムの開発が進み、DVDカムは前モデルで第6世代機に進化して、小型化や撮影機能、高画質化などすべての面で目標を達成できたと思えるまでになりました。DVDカムは完成できた。今こそカメラを次の新しいステージに進化させる時だ、と判断して今回のハイブリッド化に踏み切ったのです」。まさに満を期してのハイブリッド化といえるだろう。
さらに技術的な背景としては「最新のMicrodriveの容量が8GBにまでアップしたので、ハイブリッド化にゴーサインを出せた」とのことで、本機は、日立LGデータストレージ製のDVDマルチドライブに加え、日立GST社製の超小型&大容量Microdriveの搭載によって、ハイブリッド機でありながら、従来のDVDカム(DZ-GX3300)と比べて重量増はわずか15g、サイズはまったく同じ、というハンドリングの良さを実現している。日立グループのシナジー効果を活かす、という同社のデジタルAV戦略が本機でも実践されているのである。
●ハイブリッドカムは予想以上に便利
モノに新しい価値と競争力が求められている今、まずアーキテクチャーを変える、というポリシーは正しい選択に思える。ここでポイントになるのは、新しいアーキテクチャーはユーザーに支持されてこそ活きる、ということだ。「お客様の利便性からハイブリッド化を選びました。というのも、弊社の調査結果では、お客様の約9割が、購入の際にDVDカメラにするか?それともHDDカメラにしようか?と迷われているからです。DVDとHDDのメリットを兼ね備えたハイブリッドカムなら、迷わずお選びいただけると確信して開発しました」。
冒頭に書いたように”全部入りなので安心”という特徴は多くの人にアピールしそうだ。最近の日立AV機器は、こうした明快な魅力作りが上手いと思う。さらに、本機を実際に使ってみると、保険的な安心感以上に便利であることが実感できる。
まず、最大3時間というHDD長時間録画のメリットを活かせるのが便利だ。本機ではDVDへの直接録画も可能だが、HDDに記録すればディスク交換の手間が省け、撮影に集中できる。DVDを入れ忘れたり、決定的なシーンでDVDの容量切れになってしまった…というトラブルも避けられるだろう。最高画質EXTRAモードで撮ってもメディア残量が気にならない点も使いやすい。数日の旅行でも多くのDVDメディアを持ち歩く必要がない点も助かる。バッテリーの持ちも連続約125分(HDD記録時)とトップレベルで、HDDの大容量を活かせる仕様となっている。
こうしてHDDに録り貯めた映像を、カメラ単体で8cmDVD-R/RAM/-RW/+RWに高速ダビングできるのが、ハイブリッド機ならではの使いこなしといえる。HDDカメラでは最終保存のために外付けDVDドライブやPCが必須になるが、本機はそうした機器や手間が不要で、撮影→HDD編集→DVDダビング操作をカメラ内で完結して行える点がフレンドリーだ。
なお、確実にダビングを行うために、ダビング操作は付属のACアダプター・チャージャー接続で行う仕様となっている。特にDVD-R使用時は編集後ダビングが有効だろう。このように”HDDに録って、好きなシーンだけをDVD-Rなどに残す”という使いこなしは、すでにDVDレコーダーで馴染み深いが、ビデオカメラがハイブリッド化することで新しい便利さが生まれる。
例えば、結婚式などの会場で、HDDに撮った映像をDVDにダビングして、その場で配ったり、実家に帰省した際に、実家で撮った映像をDVDにダビングして、帰省中に親に手渡せる、といった新しい使いこなしも簡単に実現できる。DVDを配ってもオリジナルの映像はHDDに保存されているので、手軽に映像を共有できるしくみだ。このように本機の”その場でダビング”機能を活用すれば、あいさつ感覚でDVDを手渡せる。これはコミュニケーション寄りの新しい使いこなしかもしれない。家族撮りからビジネスユースまで、アイデア次第で便利に活用できそうだ。
ビデオカメラでは、テープからディスクへ、というトレンドが定着しているが、そのさらに先にあるDVD+HDDという「カメラ革命」を体験できるのが、本機の魅力といえるだろう。
(増田和夫)
増田和夫 プロフィール
パソコン&ネット歴十数年のベテランPC使い。PC雑誌やデジタル映像関係のメディアで活躍中。デジカメにも精通し、写真誌にスチル作品を発表するフォトグラファーでもある。 AV歴も長く、VTRは黎明期からβ・VHS共に熱中した大の録画機ファン。自宅ロフトでプロジェクターを楽しむ映画ファンでもある。DVDなどの記録媒体の記事にも強い。取材は現場主義で、ジャーナリスティックなインタビュー記事も得意としている。