スカパー!とJSATが経営統合 − 事業規模拡大でHD化など推進
株式会社スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー!)とジェイサット株式会社(JSAT)は本日、新たに持株会社を設立し、経営統合を行うと発表した。
本日東京都内で記者発表会が行われ、スカパー!の仁藤雅夫社長とJSATの磯崎澄社長が経営統合の背景や効果について説明した。
スカパー!は、有料多チャンネルサービスのプラットフォームとして国内最大規模。近年ではCS放送だけでなく、光ファイバーを使ったコンテンツ配信サービスも展開している。JSATは9機の衛星を保有する会社で、国内外の衛星通信事業のほか、スカパー!の衛星放送インフラを支えている。
2007年4月に、両社共同で持ち株会社「スカパー・JSAT株式会社」を設立し、その100%出資の子会社として、スカパー!とJSATが実際の事業運営にあたる。持株会社の会長にはJSATの秋山政徳氏が、社長にはスカパー!の仁藤雅夫社長が就任する予定。
現在の売上高は、スカパー!が875億円、JSATが385億円。経常利益はスカパー!が10億円、JSATが102億円(すべて連結、2007年度見込み)。経営統合することで事業規模が拡大し、資金に余裕ができることから、マーケティング活動やコンテンツの強化などが可能になるとしている。
スカパー!の仁藤雅夫社長は、「欧米では衛星保有とプラットフォーム、コンテンツ制作を同じ会社が手がける例が多いが、国内ではこれらが別の会社で行われており、それぞれの事業範囲内で利益の最大化を図っている。これでは総合的な市場拡大に限界があり、垂直的に事業を統合する必要があると判断した」と、今回の経営統合の背景を説明する。
また仁藤社長は、地上デジタル放送や光ファイバーの普及、携帯電話の機能高度化、IP放送の普及、CATVの台頭など、放送や通信をめぐる環境が大きく変化していると指摘。これらのサービスとの競争に勝っていくため、根本的な事業構造の改革が必要になった、と統合の意義を強調した。
統合によるシナジー効果の第一に挙げられたのは、既存の衛星放送事業の最適化と市場拡大。二社の収入を合わせることで、これまで以上に積極的なマーケティングを行うことが可能になるほか、HD放送の強化も図っていく。
スカパー!は既に、2008年夏頃に124/128度CS放送で10チャンネル程度のHD放送を開始することを発表しているが、仁藤社長は「豊富になる資金をバックに、コンテンツ制作会社に対してもHDに移行しやすい環境を整える」と説明。2009年秋には20チャンネル程度を追加し、「HDでも多チャンネルを実現する」という。
また仁藤社長は、レコーダー機能を内蔵したSTB「DVR」を例に出し、「このような、視聴者のニーズに対応した商品づくりをさらに加速させる」と説明。具体的には、ハイスペックなDVRや、双方向対応機器などの開発・提供を行っていく。
そのほか、仁藤社長は、経営統合のシナジー効果として、「規模の拡大による水平展開の強化」と「持ち株会社機能強化による効率的なグループ経営」の2点を挙げた。水平展開の強化では、IPやVOD、モバイルなどの新メディアを利用したサービス展開を検討しており、「特にIPについては、色々な準備を進めているところだ。近いうちに発表ができると思う」(仁藤社長)と説明した。
両社の2007年度の業績見込みは前述の通りで、売上高の単純合算は1,260億円程度となるが、統合後は、2011年に2〜3,000億円程度の売上高を目標としていく。
以下、記者発表会で行われた質疑応答をご紹介する。
Q: GyaOやIPマルチキャスト、JCOMの動向についてどう思うか?
A: たしかに、これらやYouTubeに代表されるようなものが登場して人気を集めている。ただしこれらを脅威に感じていない。我々がIPテレビ分野でできることは何か、という観点から検討していきたい。これらのサービスと敵対しているというイメージではない。
CATVについては、トリプルプレイができる強みがあると認識している。我々の光ファイバーの事業では、これらをさらに上回るサービスを展開したい。新たな環境の中、もっと競争力のあるサービスを作ることができると考えている(仁藤)。
Q: コンテンツの供給能力を高めるということについて、具体的に方策を教えて欲しい。
A: 強引に業界再編をしたいということではない。たとえばHD化などは、放送事業者によってはコスト面でなかなか対応できないでいる。インフラコストを抑えながらHD化できるような仕組みを整えたい(仁藤)。
Q: 具体的な加入者拡大の道筋を教えて欲しい。
A: たとえ話で説明するとわかりやすいと思う。アンテナの取り付けキャンペーンをもっと大きく展開したいと考えても、現在のスカパー!の規模では難しい。統合後はもっと大きなキャンペーンが打てるようになる。これは一例だが、実際に行おうと思っている(仁藤)。
販売促進費用の強化を、5年で4割から5割増加させられる。また、HD化を推進することもできる。解約率の防止と、STBの高機能化も可能になる。ポータブル型の端末と連動したりといった合わせ技を色々と展開していきたい(磯崎)。
Q: オプティキャストと衛星放送の事業間の衝突はあるか?
A: 110度も含め、マルチプラットフォーム展開をしている意味は、それぞれのプラットフォームの特長でそれぞれを補完し合うことができるということ。多少カニバリズムはあるのは事実だが、加入者を総合的に獲得していこうという戦略だ(仁藤)。
Q: 日本のトラポン使用代は高いと言われているが、これを下げることはあるか?
A: トラポン代の設定は公平中立にやりたい。ただし、HD対応については、ある程度の融通性を持って対応していきたいと考えている(磯崎)。
(Phile-web編集部)
本日東京都内で記者発表会が行われ、スカパー!の仁藤雅夫社長とJSATの磯崎澄社長が経営統合の背景や効果について説明した。
スカパー!は、有料多チャンネルサービスのプラットフォームとして国内最大規模。近年ではCS放送だけでなく、光ファイバーを使ったコンテンツ配信サービスも展開している。JSATは9機の衛星を保有する会社で、国内外の衛星通信事業のほか、スカパー!の衛星放送インフラを支えている。
2007年4月に、両社共同で持ち株会社「スカパー・JSAT株式会社」を設立し、その100%出資の子会社として、スカパー!とJSATが実際の事業運営にあたる。持株会社の会長にはJSATの秋山政徳氏が、社長にはスカパー!の仁藤雅夫社長が就任する予定。
現在の売上高は、スカパー!が875億円、JSATが385億円。経常利益はスカパー!が10億円、JSATが102億円(すべて連結、2007年度見込み)。経営統合することで事業規模が拡大し、資金に余裕ができることから、マーケティング活動やコンテンツの強化などが可能になるとしている。
スカパー!の仁藤雅夫社長は、「欧米では衛星保有とプラットフォーム、コンテンツ制作を同じ会社が手がける例が多いが、国内ではこれらが別の会社で行われており、それぞれの事業範囲内で利益の最大化を図っている。これでは総合的な市場拡大に限界があり、垂直的に事業を統合する必要があると判断した」と、今回の経営統合の背景を説明する。
また仁藤社長は、地上デジタル放送や光ファイバーの普及、携帯電話の機能高度化、IP放送の普及、CATVの台頭など、放送や通信をめぐる環境が大きく変化していると指摘。これらのサービスとの競争に勝っていくため、根本的な事業構造の改革が必要になった、と統合の意義を強調した。
統合によるシナジー効果の第一に挙げられたのは、既存の衛星放送事業の最適化と市場拡大。二社の収入を合わせることで、これまで以上に積極的なマーケティングを行うことが可能になるほか、HD放送の強化も図っていく。
スカパー!は既に、2008年夏頃に124/128度CS放送で10チャンネル程度のHD放送を開始することを発表しているが、仁藤社長は「豊富になる資金をバックに、コンテンツ制作会社に対してもHDに移行しやすい環境を整える」と説明。2009年秋には20チャンネル程度を追加し、「HDでも多チャンネルを実現する」という。
また仁藤社長は、レコーダー機能を内蔵したSTB「DVR」を例に出し、「このような、視聴者のニーズに対応した商品づくりをさらに加速させる」と説明。具体的には、ハイスペックなDVRや、双方向対応機器などの開発・提供を行っていく。
そのほか、仁藤社長は、経営統合のシナジー効果として、「規模の拡大による水平展開の強化」と「持ち株会社機能強化による効率的なグループ経営」の2点を挙げた。水平展開の強化では、IPやVOD、モバイルなどの新メディアを利用したサービス展開を検討しており、「特にIPについては、色々な準備を進めているところだ。近いうちに発表ができると思う」(仁藤社長)と説明した。
両社の2007年度の業績見込みは前述の通りで、売上高の単純合算は1,260億円程度となるが、統合後は、2011年に2〜3,000億円程度の売上高を目標としていく。
以下、記者発表会で行われた質疑応答をご紹介する。
Q: GyaOやIPマルチキャスト、JCOMの動向についてどう思うか?
A: たしかに、これらやYouTubeに代表されるようなものが登場して人気を集めている。ただしこれらを脅威に感じていない。我々がIPテレビ分野でできることは何か、という観点から検討していきたい。これらのサービスと敵対しているというイメージではない。
CATVについては、トリプルプレイができる強みがあると認識している。我々の光ファイバーの事業では、これらをさらに上回るサービスを展開したい。新たな環境の中、もっと競争力のあるサービスを作ることができると考えている(仁藤)。
Q: コンテンツの供給能力を高めるということについて、具体的に方策を教えて欲しい。
A: 強引に業界再編をしたいということではない。たとえばHD化などは、放送事業者によってはコスト面でなかなか対応できないでいる。インフラコストを抑えながらHD化できるような仕組みを整えたい(仁藤)。
Q: 具体的な加入者拡大の道筋を教えて欲しい。
A: たとえ話で説明するとわかりやすいと思う。アンテナの取り付けキャンペーンをもっと大きく展開したいと考えても、現在のスカパー!の規模では難しい。統合後はもっと大きなキャンペーンが打てるようになる。これは一例だが、実際に行おうと思っている(仁藤)。
販売促進費用の強化を、5年で4割から5割増加させられる。また、HD化を推進することもできる。解約率の防止と、STBの高機能化も可能になる。ポータブル型の端末と連動したりといった合わせ技を色々と展開していきたい(磯崎)。
Q: オプティキャストと衛星放送の事業間の衝突はあるか?
A: 110度も含め、マルチプラットフォーム展開をしている意味は、それぞれのプラットフォームの特長でそれぞれを補完し合うことができるということ。多少カニバリズムはあるのは事実だが、加入者を総合的に獲得していこうという戦略だ(仁藤)。
Q: 日本のトラポン使用代は高いと言われているが、これを下げることはあるか?
A: トラポン代の設定は公平中立にやりたい。ただし、HD対応については、ある程度の融通性を持って対応していきたいと考えている(磯崎)。
(Phile-web編集部)