【CES総覧】“フルHDの次”が見えてきた「2007 International CES」を振り返る
今年で40周年を迎えた、米国・ラスベガスで行われる世界最大の家電/PC展示会「International CES」。1月8日から11日まで開催された今年は、例年を上回る来場者数、出展者数を数えたようで、オーディオビジュアル機器を中心に大きな盛り上がりを見せた。トピックごとに今年のCESを振り返ってみよう。(記事中のテキストリンクは全てPhile-web関連記事にリンクしています)
■プレスカンファレンス
開催前日の1月7日を中心に、多くのAVメーカーがプレスカンファレンスを実施した。ここでの話題の中心は、やはり薄型テレビ。松下電器は42V型のフルHDプラズマテレビを発表。これまで50V型以上でフルHDモデルを発売してきた同社だが、これをさらに小型モデルにも展開していく計画だ。
東芝はREGZAの新製品を公開した。日本の最新モデルでも搭載されていない数々の新技術が搭載されており、国内展開にも注目が集まっている。
また、シャープが108V型の液晶テレビを発表し、世界最大のサイズで話題を集めた。サムスンは「デジタルTVで世界No.1に」なる目標を公言し、そのための施策を説明した。
さらにパイオニアは、同社が今夏発売予定の新プラズマテレビを発表。パネルの最低輝度を大幅に落とし、ダイレクトカラーフィルターにも手を加えたほか、新たなASICも開発したという。
■薄型ディスプレイ
今回のCESの展示では、各社が一斉にフルHD解像度のテレビを出展。プレスカンファレンスでも出展されたモデルのほかにも、日立がブースでiVDR搭載モデルを参考出展。同社はLEDをバックライトに用いた液晶テレビも展示するなど、様々な技術展示を展開した。
液晶テレビでは、60Hzの映像を120Hzにアップコンバートして駆動する技術を各社がアピール。中でも山之内正氏は、画像解析によってガンマを制御した映像を挿入し、自然な動きと明るさを両立させたという東芝の技術に注目している。また、LEDバックライトを搭載したモデルや、ソニー/東芝がxvYCCをサポートするなど、色彩表現をさらに高めるための取り組みも目立った。
プラズマテレビは、前述の松下の42V型フルHDプラズマや、日立の新たなフルHDモデル、そしてパイオニアの新世代モデルなど、フルHD化と高画質化を同時に進めているという印象を受けた。
液晶・プラズマ以外でも、大きな話題となった展示がある。ソニーの27型有機ELディスプレイがそれだ。複数パネルの貼り合わせではなく、単独パネルでこのサイズを実現したこともさることながら、その高い画質も注目の的になった。100万対1というハイコントラスト、ピーク輝度600cd/m2と、AV用のディスプレイとして高い性能を誇っており、山之内氏は「圧倒的なコントラスト感とリッチな発色が、既存の薄型ディスプレイとは別格の現実感を生む。視野角も応答速度もCRT並みで、精細感の高さは群を抜く」と評している。
また同じくソニーは、レーザー光源を用いたSXRDリアプロも展示。リアプロ関連では、TIもLED光源を使って10万対1のコントラスト比を実現したモデルを出展して話題を集めた。
テレビを中心にしたホームネットワークへの取り組みも加速した。ソニーは、「BRAVIA Internet Video Link」サービスを米国で今年スタートさせる。AOL VideoやYahoo! video、Grouperなどの動画を無料でストリーミング再生することができるほか、ニュースや天気予報を表示することもできるというものだ。また、シャープはDLNA対応のネットワークAQUOSを参考展示。PLCを使ってPCやDLNA対応機器にアクセスし、動画や静止画、音楽を楽しめるというもの。既存技術を組み合わせたシステムだけに、早期の導入が期待できそうだ。
■Blu-ray Disc V.S. HD DVD
薄型テレビ以外では、BD陣営対HD DVD陣営の舌戦が今年も加熱。HD DVDが3層51GBの新HD DVD-ROMやインタラクティブ機能で同社の優位性をアピールすれば、BDAはタイトル数の豊富さを挙げ、Blu-rayの優位は揺るがないと主張するといった具合。この戦いは当分の間続きそうだ。
一方、規格争いを尻目に、LG電子はBDとHD DVDに両対応したコンパチプレーヤーを発表、世界中の注目を集めた。また、ワーナーは片面がBD、片面がHD DVDの「トータル Hi Def」ディスクを発表。ソフト側から両フォーマットを統合させる試みとして話題となった。
実際のプレーヤーでは、サムスン電子が第2世代のBDプレーヤーを発表したほか、ソニーは「Sapphire」と名付けたプロトタイププレーヤーを発表。HD DVDでは、東芝がミドルクラスのプレーヤーを新たにアナウンスしたほか、オンキヨーやメリディアンなどから、2007年中にプレーヤーが登場することが発表された。また、アルパインも車載用HD DVDの開発を表明した。レコーダー関連は、米国ではあまり市場が大きくないこともあり、ほとんど展示が見られなかった。
■次世代音声フォーマット
今回のCESの開催前、薄型テレビなどと並んで出展が期待されたのが、ドルビーTrueHDやDTS-HDといった次世代音声フォーマットに対応したAVアンプだった。
これらの次世代音声フォーマットをビットストリームで伝送するには、HDMI Ver1.3端子が必要になる。このHDMI 1.3端子を搭載したAVアンプは、デノン、ソニー、オンキヨーから試作機が公開された。具体的には、夏から秋にかけて対応AVアンプが登場することになるだろう。
またCES会場では、DTS、ドルビーの両社がSouth Hallにブースを構え、技術の優位性をアピール。Phile-webではドルビーのJack Buser氏、DTSのBrian Towne氏のインタビュー記事を掲載した。
■ビデオカメラ
ディスプレイと同様、ビデオカメラでもHD化が加速。中でも圧巻だったのは、ソニーがHDの新モデル4機種を一挙に展示し、さらにSDモデルも合わせると16機種を発表したことだ。HDモデルはAVCHDとHDVの2本立てで、さらに新たな色空間「x.v.Color」をサポート。対応テレビと組み合わせることで、これまで以上の色再現が可能になる。
また日立製作所は、日本で18週連続ナンバーワンを続けているHDD+DVDハイブリッドカメラを、いよいよ全米でも展開する。さらに、HDD容量を8GBから30GBに増やしたモデルも公開し、このモデルは日本でも近々発表となる見込みだ。
ビクターはHDDムービー“Everio”のフルHDモデルを展示。記録メディアは60GB・HDDで、1920×1080iのフルHD記録を実現している。同時に、撮影した映像をDVDに記録するDVDライターも発表された。
このほか、松下電器はHDDカメラを北米で展開することを明らかにしたほか、DVDカメラの新モデルも新たに発表。三洋はHD対応のXacti最新バージョンを発表した。
■ピュアオーディオ
CESではAV関連だけでなく、オーディオ関連メーカーも多数製品を展示している。Phile-webでレポートした中で注目のモデルは、TADの新フラグシップ「TAD-R1」、モニターオーディオのPlatinumシリーズ、エソテリックのSACD/プリメインシステムと自社ブランドスピーカーなどだ。
■まとめ
見てきたように、今年のCESでは、今後のAV/オーディオを占う数々の新技術、新製品が登場した。北米も日本と変わらず、薄型ディスプレイが話題の中心になっている。
ディスプレイで各社がこぞって力を入れていたのは、“フルHDの次”を担う独自の高画質技術。薄型テレビは1,920×1,080画素のフルHDモデルが当たり前になり、それだけでは差別化できないという構図が昨年に比べ一層鮮明になった。そのため、パネルや駆動回路、画像処理LSIの見直し、そして有機ELなど新たなカテゴリーへのチャレンジまで、各社各様の取り組みを見ることができた。今年は、これらの技術をベースにして、さらに進化したディスプレイやソース機器が一斉に発売されるはず。AVファンにとって見逃せない1年になりそうだ。
(Phile-web編集部・風間)
ces2007
■プレスカンファレンス
開催前日の1月7日を中心に、多くのAVメーカーがプレスカンファレンスを実施した。ここでの話題の中心は、やはり薄型テレビ。松下電器は42V型のフルHDプラズマテレビを発表。これまで50V型以上でフルHDモデルを発売してきた同社だが、これをさらに小型モデルにも展開していく計画だ。
東芝はREGZAの新製品を公開した。日本の最新モデルでも搭載されていない数々の新技術が搭載されており、国内展開にも注目が集まっている。
また、シャープが108V型の液晶テレビを発表し、世界最大のサイズで話題を集めた。サムスンは「デジタルTVで世界No.1に」なる目標を公言し、そのための施策を説明した。
さらにパイオニアは、同社が今夏発売予定の新プラズマテレビを発表。パネルの最低輝度を大幅に落とし、ダイレクトカラーフィルターにも手を加えたほか、新たなASICも開発したという。
■薄型ディスプレイ
今回のCESの展示では、各社が一斉にフルHD解像度のテレビを出展。プレスカンファレンスでも出展されたモデルのほかにも、日立がブースでiVDR搭載モデルを参考出展。同社はLEDをバックライトに用いた液晶テレビも展示するなど、様々な技術展示を展開した。
液晶テレビでは、60Hzの映像を120Hzにアップコンバートして駆動する技術を各社がアピール。中でも山之内正氏は、画像解析によってガンマを制御した映像を挿入し、自然な動きと明るさを両立させたという東芝の技術に注目している。また、LEDバックライトを搭載したモデルや、ソニー/東芝がxvYCCをサポートするなど、色彩表現をさらに高めるための取り組みも目立った。
プラズマテレビは、前述の松下の42V型フルHDプラズマや、日立の新たなフルHDモデル、そしてパイオニアの新世代モデルなど、フルHD化と高画質化を同時に進めているという印象を受けた。
液晶・プラズマ以外でも、大きな話題となった展示がある。ソニーの27型有機ELディスプレイがそれだ。複数パネルの貼り合わせではなく、単独パネルでこのサイズを実現したこともさることながら、その高い画質も注目の的になった。100万対1というハイコントラスト、ピーク輝度600cd/m2と、AV用のディスプレイとして高い性能を誇っており、山之内氏は「圧倒的なコントラスト感とリッチな発色が、既存の薄型ディスプレイとは別格の現実感を生む。視野角も応答速度もCRT並みで、精細感の高さは群を抜く」と評している。
また同じくソニーは、レーザー光源を用いたSXRDリアプロも展示。リアプロ関連では、TIもLED光源を使って10万対1のコントラスト比を実現したモデルを出展して話題を集めた。
テレビを中心にしたホームネットワークへの取り組みも加速した。ソニーは、「BRAVIA Internet Video Link」サービスを米国で今年スタートさせる。AOL VideoやYahoo! video、Grouperなどの動画を無料でストリーミング再生することができるほか、ニュースや天気予報を表示することもできるというものだ。また、シャープはDLNA対応のネットワークAQUOSを参考展示。PLCを使ってPCやDLNA対応機器にアクセスし、動画や静止画、音楽を楽しめるというもの。既存技術を組み合わせたシステムだけに、早期の導入が期待できそうだ。
■Blu-ray Disc V.S. HD DVD
薄型テレビ以外では、BD陣営対HD DVD陣営の舌戦が今年も加熱。HD DVDが3層51GBの新HD DVD-ROMやインタラクティブ機能で同社の優位性をアピールすれば、BDAはタイトル数の豊富さを挙げ、Blu-rayの優位は揺るがないと主張するといった具合。この戦いは当分の間続きそうだ。
一方、規格争いを尻目に、LG電子はBDとHD DVDに両対応したコンパチプレーヤーを発表、世界中の注目を集めた。また、ワーナーは片面がBD、片面がHD DVDの「トータル Hi Def」ディスクを発表。ソフト側から両フォーマットを統合させる試みとして話題となった。
実際のプレーヤーでは、サムスン電子が第2世代のBDプレーヤーを発表したほか、ソニーは「Sapphire」と名付けたプロトタイププレーヤーを発表。HD DVDでは、東芝がミドルクラスのプレーヤーを新たにアナウンスしたほか、オンキヨーやメリディアンなどから、2007年中にプレーヤーが登場することが発表された。また、アルパインも車載用HD DVDの開発を表明した。レコーダー関連は、米国ではあまり市場が大きくないこともあり、ほとんど展示が見られなかった。
■次世代音声フォーマット
今回のCESの開催前、薄型テレビなどと並んで出展が期待されたのが、ドルビーTrueHDやDTS-HDといった次世代音声フォーマットに対応したAVアンプだった。
これらの次世代音声フォーマットをビットストリームで伝送するには、HDMI Ver1.3端子が必要になる。このHDMI 1.3端子を搭載したAVアンプは、デノン、ソニー、オンキヨーから試作機が公開された。具体的には、夏から秋にかけて対応AVアンプが登場することになるだろう。
またCES会場では、DTS、ドルビーの両社がSouth Hallにブースを構え、技術の優位性をアピール。Phile-webではドルビーのJack Buser氏、DTSのBrian Towne氏のインタビュー記事を掲載した。
■ビデオカメラ
ディスプレイと同様、ビデオカメラでもHD化が加速。中でも圧巻だったのは、ソニーがHDの新モデル4機種を一挙に展示し、さらにSDモデルも合わせると16機種を発表したことだ。HDモデルはAVCHDとHDVの2本立てで、さらに新たな色空間「x.v.Color」をサポート。対応テレビと組み合わせることで、これまで以上の色再現が可能になる。
また日立製作所は、日本で18週連続ナンバーワンを続けているHDD+DVDハイブリッドカメラを、いよいよ全米でも展開する。さらに、HDD容量を8GBから30GBに増やしたモデルも公開し、このモデルは日本でも近々発表となる見込みだ。
ビクターはHDDムービー“Everio”のフルHDモデルを展示。記録メディアは60GB・HDDで、1920×1080iのフルHD記録を実現している。同時に、撮影した映像をDVDに記録するDVDライターも発表された。
このほか、松下電器はHDDカメラを北米で展開することを明らかにしたほか、DVDカメラの新モデルも新たに発表。三洋はHD対応のXacti最新バージョンを発表した。
■ピュアオーディオ
CESではAV関連だけでなく、オーディオ関連メーカーも多数製品を展示している。Phile-webでレポートした中で注目のモデルは、TADの新フラグシップ「TAD-R1」、モニターオーディオのPlatinumシリーズ、エソテリックのSACD/プリメインシステムと自社ブランドスピーカーなどだ。
■まとめ
見てきたように、今年のCESでは、今後のAV/オーディオを占う数々の新技術、新製品が登場した。北米も日本と変わらず、薄型ディスプレイが話題の中心になっている。
ディスプレイで各社がこぞって力を入れていたのは、“フルHDの次”を担う独自の高画質技術。薄型テレビは1,920×1,080画素のフルHDモデルが当たり前になり、それだけでは差別化できないという構図が昨年に比べ一層鮮明になった。そのため、パネルや駆動回路、画像処理LSIの見直し、そして有機ELなど新たなカテゴリーへのチャレンジまで、各社各様の取り組みを見ることができた。今年は、これらの技術をベースにして、さらに進化したディスプレイやソース機器が一斉に発売されるはず。AVファンにとって見逃せない1年になりそうだ。
(Phile-web編集部・風間)
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